第4話 デート
俺はその日、麗華と一緒に出掛けていた。勿論、昨日約束したためであって、それ以外の理由はない…はず。俺は街を歩いていると、服屋を見つけた。
「なぁ、服屋行かないか?」
「別に良いけど、どうして?」
「いや、お前の分の服を買っておかないとダメだろう?今見たらその服しか持ってなさそうだし…」
「あ〜、なんだ、そんなこと?別に買わなくても良いよ。滅多に着ないし」
「なら決まりだな。さ、行こっか」
「えぇ!?今のを聞いててどうしてそうなるのよ!」
俺は麗華がそう言うにも関わらず服屋に入った。見ると、かなりの服が置いてあり、マネキンの量も半端ではなかった。俺は店員に
「あの、店員さん、彼女に似合う服をお願いします。どうも自分ではあまり服の良さというか、コーディネートというのが苦手なもので…」
「かしこまりました。では、こちらへ」
そう言って麗華は試着室へ店員に連れていかれた。俺はその間ずっと考えていた。どうすれば麗華を元の体に戻せるのだろうか、ということを。今は体から意識が抜け出している状態で、例えるなら幽体離脱をして、そのまま戻れなくなった、と言えば分かるだろうか?
それを更に深く考えようとした時に、
「悠真くん、どうかな?似合ってる?」
「…あ、うん、似合ってるよ」
俺は一瞬何が何だか分からなかった。麗華がまるで別人のようになっていたからだ。それにしても、店員の服選びは凄いが更にそれをすぐに着こなす麗華もある意味凄いと言わざるを得ない。今度服屋に行く時には少しばかり覚悟しておかなければならないだろう…。
「ところで、麗華は行きたい所とかある?」
「う〜ん、行きたい所か…。あ!」
「麗華、急にどうしたの?」
「良いところ思い出しちゃった♪あ、でも、それは夜にならないとダメかもね」
そう言って麗華は笑った。やはり、元からここに住んでる人をデートに誘うとリードされるのは当然と言えよう。自分からデートに誘ったのがアホらしく感じてきたが、それはそれで良いだろう。俺と麗華は何気ない会話をしながら街を歩いていると、不意に
「悠真くんって、中学時代どうだったの?」
と麗華に聞かれた。思い出したくはなかったが、ここで強情になるのはちょっと…と思い、簡単にではあるが話すことにした。
「そうだなぁ…まとめると優等生かな?」
「はっきりしないのね」
「いや、別にそういう事じゃないんだけど…」
「そういう事じゃないってどういうことよ」
「優等生ってのは間違えてないんだけど、よく学校じゃ苛められててね。霊が見えるってのもあったんだろうけどね…。」
「全然そんな風には見えないんだけど?」
俺は全く信じてくれない麗華に、かなり前に親に送ってもらった中学時代(1年の時)の写真を見せた。
「あ、本当だ」
「まぁ、それも仕方ないよ。俺が今こうなった原因があるからね…」
「原因?」
「話すと長くなるんだけど…良い?」
「私は別に良いけど…」
そうして俺は中学時代、何があったのかを順序立てて話した。最初は驚いていたが、途中から堪えきれなくなったように吹き出した。
「何かおかしかったところあるかな?」
「ふふっ…おかしかったも何も、よく暴力団の組員を相手にできたね。弱かったのは不幸中の幸いって覚えといた方が良いかもしれないけど」
「あはは…肝に銘じておくよ…」
「でも、剣道を習ってたのは不思議だったなー。どのくらいだったの?」
「えっ?どのくらいって?」
「だから、何段とかあるでしょ?それのこと」
「あ、ごめん、覚えてない」
そう言った途端に、
「なんでそんな事を覚えてないのかな…?」
と呟く声が聞こえた。そういう他愛の無い話をしながら街を散歩し続けていると、日も暮れてきた。すると麗華の顔がキラキラしてきているのが分かった。言っていた所がロマンチックそうなのはこの顔を見れば分かった。
「さ、行こっか悠真くん」
「行くってどこに?」
「良いから良いからっ♪」
俺はそうやって麗華に腕を引っ張られ、走らされた。
「ほら、どう?ここは」
どこかと思えば、街が一眸できる高台だった。こういう所は、良く恋愛ドラマに出てきそうなきがする。ここで男女が向き合ってキスをする、こんな流れが分かりやすいだろうか?確かに俺も今彼女をここに連れて来たいと思ったが、生憎と彼女はいないし、片思いの相手は俺の隣にいる意識体(幽霊)だし…。
「なんか、良いよね…。こんなところ、1回来てみたかったんだ♪それも男子と一緒に。私がもし死んでも、この思い出が作れたらもう良いかなって…」
俺はその言葉を聞いて、知らず知らずのうちに麗華を抱いていた。
「お前が死んだら?お前が死んだら俺の今の思いはどうなるんだよ…」
「悠真くん…」
「別に何度フラれようと俺は構わない。俺がどれだけ本気かが分かったもらえたらそれで良いんだ。麗華、お前の事が好きだ。俺と付き合ってくれ」
「前にも言ったと思うけど、まずはお互いをよく知ってからだと思うよ?」
「まぁ…そう言われたら、そう、だよね…」
「良いよ。付き合ってあげる。お互いをよく知るなら、付き合ってからの方がもっとよく分かるかもしれないしね」
「え…?」
俺はその時、一瞬頭が真っ白になった。何が起きたのか分からなかった。
「そんなとぼけた顔をしないでよ。悠真くんは今から私の彼氏なんだから♪」
「という事は…。OKってこと…?」
「さっきから何度も言ってるじゃん。OKだよ」
「やったー…」
俺はその喜んだが、すぐに気が抜けてしまい最後まで喜ぶ事ができなかった。これで俺と麗華は付き合うことになった。




