表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千年巫女の代理人  作者: 夕暮パセリ
第二十二章 シャクナゲ舞う南部紀行
1194/1206

サヴォンリンナ神殿への道行き32 水辺の柳とスイングドア 付録:リファニの卵事情

 祐司とパーヴォットはちょうどいい時刻だったこともあってあって、見事に咲き誇った”アッシヤの森のシャクナゲ”と名付けられたシャクナゲの花を見ながら昼食を摂った。


 この日はヘルコ船舶商会ネルナン支店が用意してくれた弁当があった。またいつもなら湯を沸かしてハーブティーを入れるなどの手間があるが、この日は気温が高かったので水筒に入れたハーブティーを飲んだ。


 そして祐司とパーヴォットは半刻(一時間)ほどシャクナゲの花を堪能しながら休息を取った。


 その間に最初にいた行商人達と巡礼達は祐司とパーヴォットがやって来たネルナンの方向に向かっていなくなり、入れ替わるように別の巡礼の集団、ほぼ手ぶらな地元の者達という集団がしばらくシャクナゲを見入っていた。


 そして一時間の間に立ち止まらずにシャクナゲを一瞥して街道を進む者もあり、数十人近くが街道を行き来した。



「南部は美しい場所ですね。何か人の顔も温和に見えます」


 再び街道を歩き出しすとすぐにパーヴォットが言った。


「南部も争乱はあるが、大半は昔からの領主で婚姻関係で固まっており争いになっても境界付近の小競り合い程度のことが多い。

まあ事なかれ主義の領主が大半で現状維持をしていればいいという考えだろう。ただリファニア全体が動く時にそのような旗幟を鮮明にしない態度は賢いとはいえない。


 モンデラーネ公と緊張関係にあるドノバ侯爵、ナデルフェト公爵やノヴェレサルナ女侯爵、そしてロカチコンド子爵、北西誓約者同盟が王権支持を明確に打ち出したのは常に緊張状態にあるので時勢というものに敏感だからだ」


 祐司は感想を述べるように言った。


祐司もパーヴォットと同じようにリファニア南部の風景は美しいと感じていた。


 そいてそれは広葉樹の比率が高く、盛夏に向けてまだ日々木々の葉がその緑を深くしているからだろうと祐司は思った。


 そしてその風景は日本の初夏の風景により近い。



挿絵(By みてみん)




「ねえ、ユウジ様、この夏の道行きに相応しい詩歌はありますか」


 パーヴォットが突然思いついたように言った。


「そうだな、わたしの故郷の詩歌は春と秋を詠ったものが多い」


 祐司は来た来たと思った。


 リファニアの”言葉”と日本語は親和性がある。リファニアの”言語”は、屈折語的な要素があるンド=ヨーロッパ系の原ケルト語が基底になり抱合語的な要素があるリファニアの先住民であるイス人のイス語の影響を受けた混合言語であり、膠着語に分類される日本語とは形態が異なる。


 ただしインド=ヨーロッパ系の言語ながら語順は、英語などよりは日本語に似ている。すなわち、「S・V」「S・O・V」「S・O・C・V」または「S・C・O・V」という語順である。ただ、語の入れ替えは、自由度が高い。


 そしてリファニアの”言葉”と日本語は言語感覚という定数で捉えられない部分が似ている。


 その為に日本の”和歌”とリファニアの”詩歌(五行詩)”は相互に翻訳してもぴったりと情感がはまる。


 有名な詩歌を憶えておくことはリファニアでは基本的な教養とされている。そして時にパーヴォットは祐司に祐司の知っている詩歌をねだることがある。

(第八章 花咲き、花散る王都タチ 王都に舞う木の葉25 チュコト神殿再訪 下 参照)

(第十二章 西岸は潮風の旅路 春嵐至り芽吹きが満つる22 長閑のどかは続かず 参照)


 そこで祐司はパーヴォットに詩歌をねだられてもいいように季節に応じて幾つかの和歌を用意していた。

以前はスマートフォンにダウンロードした百科事典を利用していたが、これはかなり面倒な上に収録されている和歌はそうは多くない。


 ところが祐司が聖都マルタンにいた頃にスマートフォンを操作していると、ゴミ箱の中に消去されていないアプリがあることに気が付いた。

 ゴミ箱のデータは普通は一ヶ月で消去されるはずであるが、どうしことか祐司がリファニアに移転してくる直前にゴミ箱に移したアプリが残っていた。


 そのアプリとは祐司が大学時代に大学の図書館が試験的に作った二十一の勅撰和歌集と万葉集金槐和歌集などの著名な和歌集に収録された和歌のデータベースである。

 幾つかの条件を指定するとそれにあった和歌が出てくるという仕組みで大学の図書館では希望する学生がダウンロードすることを許可していた。


 祐司がその和歌のデータベースをダウンロードしたのは、祐司がつき合っていた女性が日本文学を専攻しておりデートの時などの話題づくりになるかという動機だった。

 しかしその女性にリファニアに移転する直前に振られてしまったので、もう使う事も無く無駄に記憶容量だけを使うと思ってゴミ箱に移したのだ。

(第一章 旅路の始まり 尖塔山よりの脱出1 わたしは誰かはわかるけど、ここはどこ? 参照)


 しかし祐司はそのデータベースをパーヴォットのおねだりの爲に使用することにしてゴミ箱から取り出していた。



「道の辺に 清水流る 柳蔭 しばしとてこそ たちどまりつれ」


 祐司は道端を流れる小川と目の前に柳の木があるのを見ながら言った。



挿絵(By みてみん)




 祐司が口ずさんだ「道の辺に 清水流る 柳蔭 しばしとてこそ たちどまりつれ」は新古今和歌集に収録された西行の歌で「道のほとりに、清らかな水が小川となって流れ、柳が涼しい木陰を作っているところに、わずかな間休もうと立ち止まったのだが(結局長い時間を過ごしてしまった)」という意味になる。


「夏の旅路にぴったりの詩歌ですね」


 パーヴォットが心地よさげな顔付きと口調で言った。


「ここで馬とラバに水を飲ませよう」


 祐司は無粋とは思ったが現実的な言葉で返した。



 祐司とパーヴォットは昼食後一刻半(三時間)ほどで宿泊予定地のメルムゼ村に到着した。


 メルムゼ村は百軒ほどの家屋が村の中心部にあり種々の常設店が軒を並べており小さな街という雰囲気だった。


 このような地域の核となるような村は街道沿いにしばしば見られる。またそのような村は宿場町としての機能がある。


 祐司とパーヴォットはヘルコ船舶商会ネルナン支店の手代ナルドルと打ち合わせていた”銀ポプラ亭”という旅籠に顔を出した。

 

 ”銀ポプラ亭”は木造三階建ての立派な建物だった。

*話末注あり


「良い宿ですが高そうですね」


 パーヴォットが少し心配げに言った。


「パーヴォットはリファニアにおける同年配の女の子の中ではかなり金持ちの部類だと思うぞ」


 祐司は半ば冷やかすような口調で言った。


 パーヴォットは祐司が領主を務めるマール州マール州バナミナ郡ビルボラ村の地頭であり、バーリフェルト男爵が祐司とパーヴォットの種々の働きで自家を救ってくれた御礼に広大な農地の地主になった。

(第六章 サトラル高原、麦畑をわたる風に吹かれて 嵐の後13 祐司の礼服とパーヴォットのドレス 下 参照)

(第十一章 冬神スカジナの黄昏 王都の陽光8 パーヴォットの見合い話 下 参照)


 その年間収入だけで現代日本の物価換算で数百万円以上の収入があり、他から種々の御礼として貰った金額を合わせると二千万円ほどの資産もある。


特に祐司はチカイ(茶)のインサイダー取引で金貨百九十二枚を得た時に、パーヴォットも手伝ってくれたからと金貨五十枚(一千万円相当)を無理に渡したのと、妻の不義の現場を見つけてくれた礼として王家の高位家臣プリャーニル・バルドイから金貨四十枚(八百万円相当)を貰ったのを山分けにしたのが大きい金額である。

(第十章 王都の玉雪 冬の足音18 チカイ会議 -リファニアの茶会- 下 参照)

(第十一章 冬神スカジナの黄昏 春の女神セルピナ25 マーレー亭の夜 参照)



「人間には分というものがあります」


 パーヴォットはふっと息を吐いて言った。


「その分も備わってきたように思えるが」


 祐司は半ば本気で言った。祐司の目から見てパーヴォットは郷士身分の若い女性という品格が身についてきたと祐司は感じしている。


「わたしは奢らず自分を失わない生き方をしたいと思います。わたしのような若輩者が傍若無人な贅沢をしていると見られると余計な妬みを受けてしまいます」


 パーヴォットはしっかりした口調で言った。祐司はパーヴォットから諫められたような感じを受けた。



「まあ、そうは言っても手代のナルドルさんが手配してくれた旅籠だ。ここに宿泊するしかないだろう」


「そうで御座いました。生意気なことを言って申し訳ありません」


「宿泊費の半分はこちら持ちだ。法外な値段でもなかろう」


 恐縮するパーヴォットに祐司はこれ以上に地雷原に踏み込まないように話題を逸らした。


 手代のナルドルは宿泊代はヘルコ船舶商会ネルナン支店が出すといっていたのだが、祐司は自分の巡礼のための旅であり、巡礼の路銀は自分の稼いだ金か喜捨によって賄わなければならないと主張した。


 そこで困ったナルドルがヘルコ船舶商会ネルナン支店長エラファ・ボンデラルドに相談して、エラファ・ボンデラルドが代参を祐司に頼んだということで宿泊費の半分を喜捨するという形になった。


 祐司が”銀ポプラ亭”に入ろうとすると、そのドアが上下に開口部があるスイングドアであることに驚かされた。


 祐司は今までリファニアでスイングドアを見かけたことはなかった。


 スイングドアは内外どちらの方向にも動くドアで通常はバネの作用を利用して閉まった状態になっている。金属加工技術が未熟なリファニアにしては分相応な装置であると祐司は感じた。


スイングドアを右手で開けて祐司は”銀ポプラ亭”に入った。祐司は後に続くパーヴォットの為に扉を開けたままにしておきパーヴォットが通過すると手を離した。


 無論ドアはスイングドアであるからひとりでに閉まる。


「え、どうして?」


 スイングドアを見たことのないパーヴォットが驚いた。



挿絵(By みてみん)




「後で原理を説明するよ」


 祐司は微笑んでパーヴォットに耳打ちすると、正面のカウンターに向かった。


「ジャギール・ユウジと同行のパーヴォットです。予約していただいていると思います」


 祐司は番頭と思える初老の男に声をかけた。


「はい。お伺いしております。すぐにお部屋にご案内いたします」


 男は丁寧な口調で祐司に言うと、「お客様のご到着だ。お荷物を二階の三号と四号室へお運びしなさい」とカウンターの向こうにある開いた扉に声をかけた。


「面白い仕掛けで御座いましょう」


 まだスイングドアを見ているパーヴォットに男が声をかけた。


「これは真新しそうですが、何処から購入したのですか」


「はい、ヘルコ船舶商会ネルナン支店から購入しました。新しい仕掛けで大々的に売り出す前に使って評判を教えて欲しいと頼まれました」


男は祐司の質問ににこやかな口調で答えた。


 祐司はスイングドアは十九世紀のアメリカ合衆国から来たサラエリザベスの知識によるものだろうと思った。


 ただ十九世の紀アメリカ合衆国でスイングドアといえば酒場が連想される。


 祐司はサラエリザベス本人に聞いたことはなかったが敬虔なクリスチャンであるサラエリザベスであれば酒場には良い感情があったとは思えない。



挿絵(By みてみん)




 その酒場の象徴のようなスイングドアをリファニアで売り出したのは、おそらく娘のソフィアネッテ(アルシャネル)かその夫で商才溢れるギスムンドルの説得が実ったのだろうと祐司は思った。


 祐司とパーヴォットが案内された部屋はそう広くはなかったが王都の上質な旅籠の部屋並の雰囲気があり寝具も真新しい上質なモノだった。


 流石に旅籠内には風呂はなかったが、すぐ近所に風呂屋があり少々汗をかいた体をさっぱりした状態に出来た。


 夕食はなかなか豪華でグレイビーソースのかかったローストビーフ、鴨肉の蒸し焼き、フレンチドレッシングのようなドレッシングのかかった温野菜、白身魚とタマネギの入ったチャウダー、そして小麦パンだった。

 

 リファニア南部は食材が豊富でグレンビーソースとドレッシングは地方ごとに多くの種類があるということだった。


「南部に生まれなかったことで損をした気分です」


 パーヴォットはどの料理を食べても「これは美味しいです」と言いながらかなりの勢いで全ての料理を平らげてから心底悔やむような口調で言った。



「まあ、日常食べているモノは他のリファニアの地域とはそうはかわらないだろう」


 祐司はそうは言ったがこれから南部の旅を続けていくうちに、南部は日常食でも他の地域と比べて一品多い、またはひと味味付けに手間をかけていると言うことに気が付くことになる。



 翌日の朝食もパーヴォットの大好物である卵料理にカマスの油煮、具の多い野菜スープ、ライ麦パンという献立だった。


 さて祐司が出発しようとして宿泊費を聞くと二人で銅貨三十六枚という請求だった。


 宿泊費は祐司とヘルコ船舶商会ネルナン支店で折半ということで話がついている。しかし中程度のレベルの旅籠で夕食付きの宿泊費が銅貨二十五枚程度であるから、高級旅籠である”銀ポプラ亭”の宿泊費は豪華な二食がついて一人当たり銅貨五十枚から銀貨一枚程度でもおかしくない。 

*銅貨六十枚で銀貨一枚


 その相場観からすれば祐司は銀貨一枚程度を請求されるはずだと思っていた。


 そのことを番頭に問うと「はい、素泊まりの宿泊費の半額とお食事代はヘルコ船舶商会ネルナン支店のナルドルさんからすでにいただいております。ご請求額は宿泊費の半額です」とい返事だった。


「上手いことしてやられたな。宿泊費の半分は素泊まりの金額というのがヘルコ船舶商会ネルナン支店の解釈だったんだ」


 祐司は苦笑した。 



注:リファニアのポプラ

 ポプラはヤナギ科ヤマナラシ属またはハコヤナギ属の樹木です。ポプラという呼び名はラテン語の「人々、共同体、国民」などを意味するポプルス(populus)が語源という説があり、これは古代ローマで公共の場にポプラが植えられていたことに由来しているとされます。


 ちなみにポプルス(populus)から派生したのが英語のポピュラー(popular)です。


 もう一つはポプルスが元々震えるという意味があったことからポプラの葉が僅かな風で震えることに由来します。


 ポプラの仲間で日本の固有種であるヤマナラシ(山鳴し)が葉がわずかな風にも揺れて鳴ることからきた名称ですから同根です。


 さてこのポプラの仲間は北半球に六十種ほどあります。


 日本で一般にポプラと呼ぶのは明治以降にアメリカ合衆国経由で街路樹として導入されたヨーロッパから中央アジアに分布するセイヨウヤマナラシセ(ユーラシアヤマナラシ、セイヨウハコヤナギ)です。

 

 リファニアにもこのセイヨウヤマナラシはかなり古い時代から導入されており成長が早く樹形が整っているので街路樹として利用されています。

 本文で出てきた例では王都近郊のリファニアで最も人気がある王妃であるスバックハウ王の妃カリニカが建立したハギス神殿の参道に植えられています。


 祐司とパーヴォットは王都近郊の著名神殿を参拝する”十二所参り”のおりにこの美しく紅葉したポプラ並木を見ています。

(第九章 ミウス神に抱かれし王都タチ 北風と灰色雲13 十二所参り 七 スバックハウ王と王妃カリニカ ④ 参照)



挿絵(By みてみん)




 このセイヨウヤマナラシの移入以前はポプラの類がリファニアに自生していなかったワケではありません。

 リファニアには現在のカナダに広く分布するアメリカヤマナラシが分布しています。


 しかし街路樹などとして植えられているのはセイヨウヤマナラシです。


 これは気候風土の関係もあってリファニアではアメリカヤマナラシは上へ上へと伸びて中層以下には枝を伸ばしません。

 それに対してセイヨウヤマナラシはアメリカヤマナラシより硬木になるのに中層以下にも枝を伸ばします。


 現在のアメリカ合衆国ではあまり樹高が高くならないので管理しやすいアメリカヤマナラシが街路樹として選ばれますが、リファニアでは樹高のある樹木が好まれるのと低い位置に枝を伸ばした樹木の方が風雪を防ぎ雨宿りも出来るという理由でセイヨウヤマナラシが街路樹として選ばれます。



挿絵(By みてみん)




付録:リファニアの卵事情

 料理に使う卵と言えばほとんどの地域で鶏の卵のことです。鶏は東南アジアの森林地帯に棲息するキジ科のセキショクヤケイに源を求める家禽です。

鶏が飼育されだしたのは中国北部と見られており、紀元前二千年頃には西アジア、紀元前千五百年頃にはエジプトに伝播したものと思われます。


 ところがリファニア世界では紀元前二千五百年前後に”空の割れた日”という大災悪が襲来してアジア地域は壊滅状態になります。

 この為にリファニア世界では”千の言葉の世界”と呼ばれる部族社会や小国分立状態のインド以東の東アジアでしか鶏は見られません。


 品種改良も遅れているので利用も細々した形でしかありません。


 鶏が多くの地域にいない爲にリファニアで使用される卵はアヒル、ウズラと七面鳥の卵です。


 このうちリファニアでは品種改良で軽減されていますがアヒルの卵は独特の泥臭いような味があるので、タマネギなどの香味の強い野菜とハーブを混ぜ込んだオムレツのような状態で食べるのが一般的でアヒルの卵だけを食べることは原則としてありません。


 そのようなアヒルの卵でも一羽当たりの年間の産卵数は百個前後で生産量が少ないこともあり現代日本の感覚からすれば一個が数百円ほどもします。


 一方ウズラの卵はクセがなく安価ですが、如何せん小型なので一人前の卵焼きを作るとすれば数個は必要で矢張り数百円ほどはかかります。


 なおウズラを家禽として飼って卵を得るのは数百年前に日本で開始されました。リファニアではヘロタイニアから千年数百年以上前に持ち込まれて食肉用として飼育されていたのが、産卵数の多い個体を掛け合わせて矢張り数百年前に産卵用としても飼育され出しました。


 なおリファニアのウズラはヨーロッパウズラでウズラよりやや大型です。



挿絵(By みてみん)




 七面鳥はキレナイト(北アメリカ)から導入されました。卵は鶏より一回りほど大きく味も鶏にちかいのですが飼育数は限定的で年間の産卵数もアヒルよりさらに少なく百に満たないので希少な食材です。


 ただし王領キレナイトでは農村部ではほとんどの家庭が飼育しており、都市部でも自家用に飼育する家庭があり、卵も大いに利用されています。


 基本的にリファニアでは卵は高級食材と見なされます。


 卵を入手するのに最も適した鶏の導入が当面困難な状況で、現在のリファニアでその代替になり得るのが雷鳥です。


雷鳥は日本では希少な種として特別天然記念物となって保護されていますが、リファニアではちょっとした高山ではありふれた鳥です。

 リファニアの雷鳥は固有種のリファニア雷鳥で日本の雷鳥より一回り大きくその肉は美味です。

(第三章 光の壁、風駈けるキリオキス山脈 キリオキスを越えて4 キリオキスの邂逅 参照)


 この為に数百年前から冬季に新鮮な肉を得る為にリファニアを室内で飼う者が現れました。

 雷鳥は昆虫などを補助的に食べることがありますが、基本的に草食で樹木の芽・葉・実や高山草本の葉・芽・花などを食べます。


 この為にリファニアの雷鳥はフスマや未生の実が残る脱穀後の麦類の穂、砕いた堅果、はては野菜の残渣といった人間が利用しずらいモノで飼育できます。


 その結果徐々に品種が固定されて、より大型化するとともに餌を心配せずに安定した生活を送る中で夏羽のまま換羽をせずに年中産卵する個体が出てきました。


 こうした個体の産む卵は鶏の卵の三分の二ほどの大きさで味も鶏の卵に負けていません。



挿絵(By みてみん)




 もう百年もしないうちに雷鳥に卵は大きくなって、年間百個以上の卵を産卵する品種が生み出されてリファニアでも次第に卵は一般的な食材になるでしょう。


 リファニアにおける卵料理は前述したようにアヒルの卵を使用した場合はアヒルの卵の味を誤魔化すためにタマネギやハーブを混入したオムレツです。


 地域によっては刻んだベーコンや茹でたジャガイモを入れます。それは卵料理というより種々の食材を固めておくために卵を使うという発想になります。


 ウズラの卵はゆで卵、目玉焼き、卵焼きといった一般的な卵料理になりますが、一人前に数個を使います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ