13.受付7
ミミが帰ると、アリアは静かに出迎えた。
「お帰りなさいませ、ミミ様」
「うん」
ミミはカウンターに二つのものを置いた。インク壺と、鍵。
「……あの蝿野郎から、手に入れた。どんなものだろう?」
「これは……」
アリアはまず、インク壺を手に取った。
「……異なる力を持つ虫は、異なるインクを持つと言います。これこそ、正にそれでしょう」
アリアは静かに告げた。
申し訳ございません。
「今、受付にはこのインクを扱う道具がありません。……せめて、保管しておくのがよろしいでしょう」
「……何とまあ」
ミミは嘆息した。こめかみを指でとんとんと叩き、それからもう一度息を吐いた。
「……コーヒーを一杯、貰えるかな」
「すぐにも」
コーヒーと、もう一つ。ミミに供されたのは、小さなカップケーキ。
「これは?」
「ありものでございますが……よろしければ」
「……ふぅん」
ミミは一口齧った。
「……甘い」
「かつて、頭脳労働のお供にと」
「ああ……なるほど」
ミミはコーヒーを啜った。それからまた、小さく一口を齧る。
「すごい甘いな……これ」
「どうすれば、このインクは使い物になるんだい?」
「妹の一人に、道具作りを得意とする者がおります。それを頼むべきかと」
「そうか……なら、そのインクは預かっておいてくれるかな」
「かしこまりました」
アリアはカウンターから真新しいインク壺を取り出した。ちらちらと燦めくインクを移し替え、蓋をした。
「じゃあ……この鍵について聞こうか」
「はい。これは当館の第二閲覧室の鍵でございます」
「第二……」
ミミはコーヒーを舐めた。
「……僕の冒険は、まだ続くみたいだな……」
「……ミミ様」
アリアは眉を下げた。ミミは小さく笑って言った。
「いや、ごめん。続けて」
「……第一閲覧室は、受付より続いておりますが。第二閲覧室は第一閲覧室の先にあり、長らく断絶しておりました。現在どうなっているか、全く分かりません」
「む」
「しかし、妹の一人がそちらに囚われている筈です」
「ほう」
アリアは腰を折り、頭を垂れた。
「ミミ様。どうか、妹をよろしくお願い致します」
ミミはコーヒーを啜った。カップを空けて、手巾で口を拭った。
「やるだけはやるよ」
第二閲覧室の鍵
真鍮でできた小さな鍵。第二閲覧室の扉を開く。
第二閲覧室は最も開かれた区画であり、多数の写本室が併設されている。かつては多くの筆記者を招いたものだが、今や蝕まれて久しい。
ようやく一面クリア。二面以降は戦力を増やしてサクサク行くつもりです。筆もサクサク進めばいいのに……。




