9話 クラス会議
すぐには、誰も喋らなかった。
まず口を開いたのは、こう言う状況に詳しい中村くんだった。
「とりあえず現状整理しね?」
「俺ら、金なし、食料なし、地図なし、身分証なしだろ?」
「あの城戻るのは論外として、森行くか、別の街探すかじゃねえの?」
彼が口火をきると、皆一斉に口を開いた。
「論外って決めていいわけ?」
「森って魔物いるんでしょ?怖くない?」
「そもそも今日寝る場所どうすんの?」
「水は?」
「食べ物は?」
全員が口々に問題点を言って、不安が戻ってきた。
皆も同じなのか、だんだん口を閉じていく。
先生を見上げても、彼女は木を背に座って、こちらを見守っているだけだった。
「選択肢を整理しましょう。
このまま魔の森に向かうか、あの城に戻るか、他の街にいくか。
他に選択が浮かぶ人は?何も持っていない今からすぐ行えるもので」
今度は、委員長の玲奈ちゃんが仕切り出す。
本当にクラス会議みたいだ。
異世界で、私たち絶望的な状況なのに。
「いや、まず地図ないんだから、他の街とか地理わからんくない?」
「それは、魔の森も同じでしょ?もう足勝手に動かないし」
「でも、あの城に戻るってのはないわよ。今度こそ奴隷にされるだけだわ」
「でも帰れる方法があるかもしれないよ?」
「いや、ありえないよ。私先生の言うとおりだと思う。
奴隷契約してきたんだから、教えてくれるわけない。
すぐ帰れないって考えた方がいいと思う」
「それはそうだけど……じゃあどうすんだよ?街に行ったって王国領だったら?」
「森は普通に死ぬだろ。この世界魔物だっているらしいじゃん」
「じゃあどこ行くのよ」
話し合いは堂々巡りだった。
何も解決してないし、何も決めれてない。でも、皆言うことは、それぞれ正しい。
どうしよう。
美玖がまた不安に思って俯くと、小松くんが言う。
「そもそもさ、皆何の能力持ってんの?」
「あ……確かに。蓮のくせにいいこと言うじゃん!」
「どう言うこと?」
「誰が何の能力持ってるか次第で問題解決するんじゃねってこと」
岩城くんが、小松くんの肩を叩きながら、言う。
「いや、痛えって。しかも、俺にめっちゃ失礼」
「んな事ねえよ。普段お前おちゃらけた事言って、盛り上げるだけじゃん。いわばムードメーカーではあるけど、バカじゃん」
「いや、お前に言われたくねえよ。お前もイベントの度に、テンションバカ高いじゃん」
2人の言い争いに、クラスに笑いが戻る。
さっきまで深刻な顔をしていたのに、爆笑してる人もいる。
「おい、笑いすぎだろ、そこ」
「あははは。い、いや、だってなんかいつも通りクラスにいるみたいだなって思って。こんなことになってんのにさ」
彼女の発言に皆でしんみりすると、委員長が手を打ち鳴らした。
「はいはい。そこ、漫才終わったら、会議に戻るわよ。
小松くんの言う通り、方針決めるより先に、能力確認しましょう。
私は、連携指揮。私が指示をすることで、仲間の連携を取りやすくするみたい。
はい、まずはさっき早速異能使ってた武田くんから」
「え、俺から?俺、野歩。悪路とか野営に強いっぽい」
「え、武田それめちゃくちゃ今欲しいやつじゃん」
初っ端から、欲しい能力持ってる人いるんだ。
美玖は、ちょっと変なところで感心した。
次に、佐伯さんが言う。
「順番で言うと、私かな?私は危機感応」
「それさっき使ってたやつ?」
「うん」
「んじゃ次、隣だから、菅原。あんたに回すわ」
「俺かよ。俺、収納」
「……は?」
「収納」
「それ一番先に言えよ!」
「いや、言う暇ねえだろ。名前は蔵納って言うらしいけど、いわばゲームの収納。マジでまんま」
「いや待って、今何入ってんの?」
「何も」
「空っぽかよ!」
「今日来たんだから当たり前だろ!地球では使えねえし」
「そりゃそうか。んじゃ、次俺な。俺、盛宴。おんなじことしてる仲間のやる気とか体力、連携を上げるらしい。まあ、俺が楽しんでないとダメだけど」
「うわ、岩城。それ性格まんまじゃん」
誰かが笑って、誰かが能力言って、また誰かが笑う。
状況は絶望的なままなのに、いつもの楽しいクラスが戻ってきていた。
「ちょっと待って。それさ、皆そうなんじゃない?」
「それって?はっきり言いなよ、千紘」
「いや、能力が性格まんまってやつ。ちなみに、私は構理解析。あらゆるものの構造や繋がりを解析して理解する力。知らないものは時間かかる。ちなみに、あの人たちのものは、調べられんかった。ごめん」
「いや、謝る必要ないでしょ」
里緒ちゃんが、上野さんを、呆れたようにしながら慰めた。
林くんが真剣な顔をして、手を挙げる。
「はい、林くん」
「上野の言ってることマジだと思う。俺、弓さえあれば、多分獲物狩って来れる。
能力名は、導く矢で、導矢。名前の通り、射ってからも矢の方向を変えれる」
「それ、チートじゃん」
「いや、だから、弓がないと無理」
一個問題が解決するかと思ったのに。
次の問題まで出てきちゃった。
美玖が落ち込みかけたところで、江藤さんが言う。
「じゃあ弓作れない?こんだけいれば、誰か工作系いるでしょ」
「材料いるだろ」
「枝ならその辺にいっぱいあるでしょ。糸だって、蔦から取るとか。質を気にしなければ、作れはするんじゃない?」
「はいはーい。俺、仕掛細工」
「はい小川確保」
「待って、蔦そのままじゃ弓弦に向かなくない?」
「植物詳しいやつ」
「森川」
「呼ばれた気がする」
「呼んだよ。森川、能力何?」
「育生。植物のこと大体わかって、生長促進とかもできる。ただ、ものは要る」
「それはその辺にあるのからでいいだろ、まずは。てか、このまんま会議続けると、日暮れる。
大雑把に必要な能力で、手挙げてもらおうぜ」




