12話 今夜のために
班分けを終えた私たちは、今日の拠点探しのために、森を分け入っていた。
幸い、森の中には一応道があって、藪の中にいちいち突っ込んで行かなくてもいい。
拠点を見つけた後、先生が、草刈りと、結界を張ってくれるらしい。
先生を見ると、彼女は歩きながら、生徒から預かった腕輪をさわって、細工をしていた。
「どうしたの?美玖」
「あ、奈々ちゃん。いや、先生なら、なんでもできるのに、どうして私たちにさせるんだろう?って考えてたの」
「それなら、多分私わかるわ」
「玲奈ちゃん」
「先生は私たち以上に危険を覚悟してる。だから、私たちが、先生がいなくても、生きていけるように考えさせてるように見える。少なくとも私には」
「そっか。全部先生がやらないのはそういう意味があったんだ。先生らしいな、よし。なら、私も頑張らないと」
美玖は体の前で拳を握った。
「おーい。斎藤、佐伯。ここなんかいいんじゃないか?」
武田くんが、ちょっと前で手を振っている。
美玖が駆け寄ると、そこは確かに開けていて、明るかった。
「ここ悪くないと思う。地面も乾いてるし、平ら。周りも見える。水捌けもいいと思う」
「……待って」
「私もいいと思うけど、杏奈ちゃん何か感じる?」
美玖は、顔を顰めている佐伯杏奈を振り返る。
彼女は、上を見上げて、しきりに首を傾げている。
「なんか……上が嫌なんだけど……なんでなのか、さっぱり」
「あっ!」
悩む杏奈ちゃんの言葉に、中村くんが叫ぶ。
「どした?駿。なんか気づいた?」
「いや、この世界魔物が実際にいるんだろ?なら、空飛ぶ奴とかもいるんじゃねえの?」
「ああ、そう言うこと。確かにここ空から丸見えだね」
「武田、気づかんかったん?」
「いや、多分俺の能力、俺が知ってること元にしてるわ。地球でも鳥はいるけど、襲われることは考えねえから。
そっか。ここ異世界で、魔物いるんだったな。
次は気ぃつける」
次に、武田くんが見つけた野営地候補は、杏奈ちゃんの危機感応も、私の違和観測も、クリアして、今夜はそこで過ごすことに決定した。
草は茂ってたけど、地面は平らで、ある程度開けていて、周囲は見えるけど、上空はそこそこ木々に遮られている。人の手も入っている様子は見られない。
早速、先生が、魔法で草刈りをして、結界を張ってくれた。
「先生!その魔法は風魔法ですか?結界はどんな魔法ですか?私も使えますか?」
上野さんが、先生に質問を浴びせる。
彼女、すでに何回か先生に魔法の質問してたよね?
魔法に興味があるのかな?意外だけど。
「落ち着きなさい。今度簡単なのから教えてやるから。
他にも興味があるやつは覚えとけよー」
先生がそう言うのに、あちこちから返事や歓声が飛ぶ。
皆興味あるんだなあ。
いや、私もあるけど。
これはゲームの魔法たちがカッコ良すぎるのがいけない。
さて、拠点が決まったら、班ごとに分かれて、探索することになってたよね。
私は、食料探しとかの周辺採取班だったな。
美玖は、メンバーのところに寄っていこうとすると、先生が全員を集めた。
彼女の手には、元奴隷契約の腕輪が山ほど抱えられていた。
「全員集合!班ごとに分かれて調査する前に、お前たちに、万が一の防御用魔道具を渡す」
「えー!先生、それさっきのやつじゃん!また体、操られん?」
「奴隷契約の術式は全部丸ごと削除したから平気だ。代わりに、15分以上は続く小規模結界3回分と、1回きりだが反撃用雷術式を入れた。器はいいから、ギリギリ入ったぞ。再利用だ」
「マジか。先生それ本当なん?」
「ただ、言った通り使い切りだから、万が一のための最終手段用だな。もし探索で使ったなら、退却後、私に言うように。また入れる」
生徒皆から、どよめきが聞こえる。
これなら、多少は安心かも。
「油断はするな。この世界について、私たちは誰も知らない。できる限り手は尽くしたが、これでなんとかなるかはわからん。全員気を引き締めて行けよ。じゃあ、解散!」
私たちは、先生から、腕輪を受け取って、班ごとに集まった。
まずはメンバーで方針を決めないと。




