↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
葉音を紡ぐ ――世界樹の麓で  作者: 葉森かなで
二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
74/130

74 嵐のあとしまつ

 嵐の翌日は快晴だった。

 幸いにも巣の範囲に被害はなかったが、今日は総出で「根っこのジャングル」周辺の復旧作業にあたっていた。


「崩落箇所から泥が流れ込んだんだな。水は引いたけどどうしたらいいんだ……」

 ドロドロの地面を前に、葉月がぼやいていた。

 それは皆も同じ意見だった。


 仁が大まかな担当を割り振っていった。

「根っこのジャングル」の床は元々土ですし、このままでいいでしょう。坑道の先の崩落箇所の補強をしながら、調査を葉月が中心でお願いします」


「わかった絵葉もこっちね。それからそこの子蟻集団は土を脇に集めて……」

 葉月が早速采配を振い始めた。


「ジャングルの奥の石灰岩の坑道は、私が指示を出しましょう。双葉と紬葉はその先のキノコ部屋をなんとかできそうか見てもらえますか?」

「了解です」

 と各々が動き始めた。


 辿りついたキノコ部屋はひどい有様だった。

 泥は入り込んでいなかったが、かなりの水が流れたようだ。

「水に浸かってたキノコは置いとくと害になるな」


 双葉と紬葉は話し合い、二人が印をつけた部分のキノコを子蟻の人海戦術で収穫、破棄する事を決めた。

 子蟻たちは楽しそうにキノコ狩りを始めた。

「このキノコは食べられませんからね!」

 紬葉が子蟻たちに注意して回った。


「幸いな事に、天井のキノコは水没を免れたから、また増えるでしょう」

 双葉は天井のひかるキノコに言い聞かせているようだった。


「坑道の掃除用に滴る水を貯めてね」

 紬葉が子蟻たちに指示を出していた。


 次に双葉は、奥の黒い根っこの部屋を見に行く事にした。

「紬葉、しばらく頼む。本葉を連れてくね」


 歩きながら本葉に注意事項を伝えた。

「あの黒いのは危険だから、近寄らない、触らない、周りのものを拾わない」


 そうして奥にたどり着いたが、ここは特に問題はないようだった。


 本葉は初めてみる黒い根っこを凝視していた。

「なんの匂いだろう。病気?カビ?」

「それがわからないよね。観察だけじゃ限界があるけど、危険は冒せない」

「これって、古い大きな木の根っこなんだよね」


 近寄ろうとする本葉を引き留め、

「そうだよ。でも長居無用。さあ、引き返そう」

 双葉も黒い根っこをもう一度見てから言った。

 根っこは黒く、なんとなく無理をしている感じがした。


 二人は、キノコ部屋に戻った。


 キノコの採集は大方終わっていた。

 大量のキノコを採取した後の壁に、一人入れる程度の穴が見つかった。

「ここから水が流れたのか……?」

 本葉が穴を覗き込みながら言った。穴は奥まで繋がっているのか、今でも水がちょろちょろと流れていた。


「ここ、過去に水が流れていた後ですね」

 紬葉が床を指差した。


「水の出口も反対側にある?」

「出口らしきもの……」

 双葉と本葉はそう言いながら壁を調査したが、それらしき穴は見つからなかった。


「天井から滴る水も含めて、床の石灰岩の隙間から水が抜けているのかも」

 紬葉が床を触りながら言った。

「この下に水路が通ってる? いや、専門外だからわからないな」

 同じように双葉も床を調べた。


「葉月か絵葉を呼ぶ?」

 本葉の問いに、少し考えて双葉が答えた。

「ここの片付けは一段落したし、相談に戻ろうか」



 キノコ部屋の外、石灰岩の坑道も泥はほとんど流れ込んでおらず、サッと水を流して終了したようだった。

 皆で根っこのジャングルを抜け、坑道に戻ってきた。


 残念ながら、泥水で冠水したこの通路の片付けは、まだまだだった。

「あー、キノコ部屋の調査どころじゃないね」

 双葉の言葉にみんな頷き、こちらの手伝いをはじめた。



 この辺りは巣の範囲ではない。

 ただし、昨日のように泥流が流れ込んだり外敵が侵入するのは困る。


 応急処置で泥を端にまとめた後は、方針を決める必要があった。

 塞ぐのか、崩落箇所を補強して先を調査するのか。

 ここは泉の広場と巣の本部を結ぶ、泉通りにつながる重要な道だ。

 安全には十分に気を配る必要がある。


「こちらの道は塞ぎましょう。幸いにも泥がたくさんあります」

 仁が言う。負けずに、葉月が答えた。

「せっかく崩落箇所の土が押し流されて先が見えるのに。道を通すチャンスだよ」

「これ以上巣を広げてどうするのですか。泉の広場まででも、まだまだ場所が余っています」

「でも、せっかく道があるのに」

「崩落箇所の土が流されたからといって、坑道が安全になったわけではありません」

「それはそうだけど」

「外敵の侵入もあり得ます」

「……」

 だんだんと勝負が見えてきたようだ。


「逆にこの道を塞げば、泉の広場を含めて一帯を巣として、もっと開発できます」

「……たしかにそうかもしれない」

「開発には葉月の力が必要ですよ」

 仁にそう諭されて、崩落箇所の手前で坑道を塞ぐことが決まった。


「とりあえず泥を積むとして、それだけじゃまた水が流れ込む危険がある」

 葉月の言葉に、絵葉が付け加えた。

「石を積んで、草を混ぜた泥で塞ぐのがベストです」


「石……あ、さっき泥を片付けていたら、床に石灰岩の層が見えてたよ。使えそう?」

 泥を片付けていた一葉が手を挙げて言った。

「石灰岩か。まあ他に選択肢がないな。後は草が難題だな……」


 それを聞いて今度は風葉が手を挙げた。

「根っこのジャングルの床一面に落ちてる、細かいヒゲ根は?」

 少し入り口で拾ってきて葉月に見せた。


「ああ、これは良いな。おあつらえ向きに泥に混じってる。決まりだな」


 そうと決まると、みんなそれぞれ動き出した。

 葉月と仁が塞ぐ位置を決めて、紬葉と共に壁を強化していく。


 風葉と護葉を中心に、根っこジャングルから、ヒゲ根を集めてくる。


 双葉と本葉、絵葉を中心にそれを泥と練って粘土のようにする。

「どうせだから、さっき洞窟で集めたキノコもちぎって入れるか」

「どうせ処分するし、繊維って意味では一緒?」

「そうそう、実験みたいなものだよ」

 皆が見ていない間に、双葉と本葉が不穏な動きをしていた。

 忙しさの中で、誰も気付くことはなかった……


 子蟻たちもせっせと石灰岩を積み、ヒゲ根を混ぜた泥を隙間に詰めていく。

 みんなの働きで、みるみるうちに坑道は塞がった。


「後は乾くのを待ちましょう」

 仁がそう宣言して、みんな引き上げていった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 仁の日誌


 泥流に使った坑道を補修の上、安全のために塞いだ。

 今後は水没を防げると良いのだが。

 どこから水が入ったのか明日以降、地上からも確認の予定。


 これで泉の広場のエリアの安全性が上がったと思う。

 泉通りも、今後は気軽に子蟻が行き来できるだろう。


 補修中に石灰岩の層を発見。

 採掘場として使えるか、今後要検討。


 キノコ洞窟の下に水が流れている可能性も報告された。

 青い池につながる水路があるのかもしれない。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。