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葉音を紡ぐ ――世界樹の麓で  作者: 葉森かなで
二章

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107/130

107 葛の根っこを掘り出そう

新規連載「末神様は、突然天空を追い出されました」始めました。

この話の前日譚です。そちらもよろしくお願いします

 予定は未定。

 今日のような日にぴったりな言葉だ。

 事前に綿密な計画を立てたはずなのに、何一つ上手く行っていない。


 原因は……まあそれは言ってもしようがない。神様のしたことだ。

 今は今日中に葛の根っこを掘り出し、露出した世界樹の根っこを地中に埋める。

 そのことに集中しよう。

 仁は苛立つ心を表に出さないように、笑顔で言った。


「さあ、時間がありません。安全第一で、かつ手際よく行きましょう」


 現地を見た葉月は、あまりの惨状に呆れながらも、的確に足場を作り坑道復旧の指示を出した。

 クモの守弦が、足場に素早く糸をかけて転落しないよう網を張った。


 葛の根っこはすでに露出しているのだ。急げば今日中に回収出来る。

 仁の合図でみんなが一斉に作業にかかった。


 泥の斜面でも移動できる身軽な動物たちが、枯れた蔓を集めて回る。

 上から蔓を垂らすと、ナキウサギが器用に葛の根に巻きつけて結んで回った。

 リス一家が、葛の根っこを素早く齧って分割していく。

 細かい根っこは、ナキウサギのお兄ちゃんが頑張って噛み切って回った。


「まずは、最初の蔓を引き上げて!」

 齧り終わったリスの声で、クマとイノシシが先頭で蔓を引っ張った。


 ズズズズッ。

 世界樹に巻き付いていた葛の根っこが動いた。

「いいぞ、そのまま引っ張って!」

 仁の合図で、さらに踏ん張った。

 ちょうど根っこが斜面を登り切った瞬間だった。


「うわっ!」

 先頭のクマの足がズルッと滑ったのだ。


「大丈夫!?」

「大丈夫だ!」

 そう言いながら、クマは泥の中に座り込んでいた。衝撃で泥が四方八方に飛び散り、辺りの動物たちまでもが泥だらけだ。


「葛の根っこは無事か?」

 クマの言葉に慌てて確認にいくと、みんなが口々に叫んだ。

「大きい!」

「美味しそう!」


 その後も、大きな葛の根っこが引き上げられるたびに、歓声が上がる。

 気温が上昇したので、冬には外に出ない動物までが集まってきていた。


 大きな塊は、手分けして一旦青い池に運び、泥を落としてから分配することになった。

 カエルと蟻人が運べる小さなサイズの物は、地下の坑道から水路に運ぶ。

 みんな泥まみれになったが、今は食料が不足しがちな真冬だ。

 思わぬご馳走に、大喜びで作業が進んだ。


 問題は露出してしまった世界樹の根っこをどうやって埋めるかだろう。

 実際、この抉れた斜面を放置すると、地下の大空洞にも影響が出る可能性が高いのだ。


 だが、葛の根っこを取り除き終わった頃には、太陽は傾き始めていた。

 冬の日暮れは早い。

 仁はどうするべきか、決めきれず焦っていた。


 その時、双葉が言った。

「世界樹が、この露出した根っこはこのままで良いって言ってるよ。この南斜面は危ないから、根っこで補強するんだって」

 みんなが作業する間、双葉ずっと世界樹の調査をしていたのだ。

 植物に関することだ。今は意味がわからなくとも、双葉の言うことが正しいのだろう。


「では、動物の皆さんはもう帰ってください。分配はクマにお任せします」

 仁の言葉にクマが頷き、リスとナキウサギのお兄ちゃんを背中に乗せた。

「冬は日暮れが早い。急いで戻るぞ!」


 残った葛の根っこも動物たちが手分けして担ぎ、足早に帰って行った。

「今日はありがとう」

「また一緒に掘り出そうぜ」

「ボートで遊びにきてね」

 みんなの姿が見えなくなるまで、蟻人たちは見送った。


「さて、地下に降りて通路を塞がないといけないですね」

 仁の言葉に、葉月が自慢げに答えた。

「それは抜かりないよ。葛の根っこを引き抜いた跡は埋め戻したし、風や雪が吹き込まないように工事済み。守弦も糸を張って手伝ってくれたんだ」

「カエル族も土運びを手伝いました。お忘れなく!」


 地下のみんなも力を合わせて手伝ってくれたらしい。

 葛の根っこがなくなったおかげで、世界樹に続く道もなんとか通れるようになっていた。


「でも、まだ危ないから開通とはいかないかな。この先の通路はイノシシが掘って壊したみたいだし」

「そうですね。とりあえず今日は水路に戻って、葛の根っこを山分けしましょうか」


 何一つ計画通りにいかないと思っていたが、葛の根っこは収穫できたし、坑道も仮復旧した。

 怪我人もなく良い一日だったと言えるだろう。


 大空洞に戻ると、お風呂が準備されていた。

 みんなは笑いながら身体中についた泥を流して、真冬の収穫を喜びあったのだった。










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