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葉音を紡ぐ ――世界樹の麓で  作者: 葉森かなで
二章

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103/130

103 姿の見えない伝え方

 世界樹へ続く道の途中。葛の根が世界樹の根に巻き付いている辺りに作ると決めた、出入り口は難航していた。


 地上は南向きの斜面だ。陽当たりはいいが、土地が痩せていて木は少なく、冬以外は蔓性の植物に覆われている。

 巣の第二出入り口周辺もだが、世界樹の東側一帯は土地が荒れていて地盤が緩い。


「これは、難題だわ。通路を掘らないと場所を知らせられないけど、掘るためには葛の根っこが邪魔すぎる」

 何日もかけて葉月が調査した結論だ。

 葉月の技術を駆使しても、ギリギリ蟻人一人が通れる穴しか掘れなかった。

 しかも、いつ崩れてもおかしくない。


「菌糸マットが広範囲に根付いて地盤が安定しないと、新規の坑道は難しいかもしれません」

 絵葉も、同意した。


「これは、地上から掘ってもらう以外ないね」

 葉月の言葉に、仁はため息をついた。

「どうやって根っこの場所を地上に知らせたらいいのか……」


 同じ頃、カエルも言った。

「お手上げだ。動物たちに上手く伝えられない。交渉事は得意じゃないんだよ」


 葛の根っこをクマやイノシシに掘り出して欲しい。その要望は青い池周辺の動物たちに歓迎された。冬の食べ物は少ない。地下茎はご馳走だ。

 でも、今回は世界樹の根っこが絡んでいる。比喩ではなく、現実に葛の根が絡みついているのだ。下手に掘り出すと世界樹が傷つく。

 そう聞いて、動物たちは動揺した。しかも、地上からでは正確な場所もわからない。


「どうやって掘るんだ」

「どこを掘るんだ」

「深さはどれくらい」

 次々に質問されて、カエルはお手上げだった。


「蟻人が出向いて交渉してくれよ。得意だろう?」

 カエルは気軽に言うが、この季節に青い池に行くなんて自殺行為だ。

 いくらカラスに運んで貰っても、寒さで動けなくなるだろう。

 仁が躊躇していると、本葉が言った。

「水路をボートで行ったらどう?」


 キャンプの時に作った、泉で使ったボートは、みんな乗りこなしている。

「たしかに使えますね。特に行きは水の流れに乗っていくだけですし」

 仁の言葉に、カエルが後押しする。

「水路は流れは緩やかだし、大きく曲がる箇所もない。ロープをつけたら帰りはカエルが引っ張るよ」

「あのボートは三人乗りですね。だれを派遣するべきか……」


 巣で蟻人たちが話し合った結果、一葉、結葉、絵葉に決まった。

 なぜ結葉が選ばれたか。それは蟻人たちの長い長い話し合いだった。




 地下の葛の根の位置をどうやって地上の動物たちに知らせるか。

 難問中の難問だった。

 当初は、カエルたちが呼び貝を地下から一斉に鳴らして、穴の上に出した、赤く染めたリボンを上空からカラスに見つけてもらう予定だった。

 でも地盤が弱く、大きな穴は掘れなかったのだ。

 蟻人一人がギリギリ通れる穴しか空いていない。

 いくら地下で音を鳴らしても、地上には届かない。


「イノシシに匂いで見つけてもらうしかないのでは」

「辺り一面掘り返されるよ。そもそも葛の根っこは一つとは限らない」


「地下で火を焚いて、狼煙は」

「グネグネ曲がった、小さな小さな穴しか空いていないのに。地下が大変なことになるよ」


 色々な案が出ては、一瞬で消えた。

 一葉は投げやりに言った。

「見えないところにいる動物に連絡なんて無理だろ。蟻人同士でも、近距離でしか伝わらないのに」


「そうだよ。遠方でもわかるのなんて、結葉くらいだよ。そういえば結葉って、どこまでフェロモン完治できるの?」

 葉月の質問に、結葉は少し考えてから答えた。

「いつも私は巣にいるので。そこからだと世界樹の辺りまでは分かりますね。もちろん、蟻人がそこにいるならですよ」


「冬じゃなければ、結葉を地上に向かわせれば簡単なのに。この季節じゃ一瞬で凍死だよ」

 葉月の言葉に、一葉が目を見開いた。

「それだよ!結葉を地上に向かわせればいいんだ!」

 みんなが信じられない!と驚いた。

 葉月が慌てて訂正した。

「結葉を寒さの中に放り出すわけじゃないよ!」


 葉月の案はこうだった。

 水路を使ってボートで洞窟の出口に行く。ここまでは決定している。

 そこから外に出る時に、動物の毛皮の中に潜り込んで運んで貰えば凍えないのではないか。

 そうして地下から葉月が司令を出し、結葉が受け取れば動物たちに詳細を伝えられる。


 躊躇する結葉に、一葉が言った。

「地上には私が同行するよ。どうかな」

 護葉も頷いた。

「私も同行して護衛しよう」

 二人に励まされ、結葉が恐る恐るだが頷いた。


「じゃあ、ボートには一葉、結葉、護葉でいいかな」

 と決まりかけたが、葉月が反対した。

「動物たちに場所を説明するなら、絵葉の絵が必要だろう」


 結局、話合いには一葉、結葉、絵葉が参加するが、地上へは絵葉に変わって護葉が参加。

 護葉は別途、ボートの練習をしておくと決まったのだった。



 ーーーーーーーーーーーー

 仁の日誌


 葛の根の掘り出し計画が着々と進んでいく。

 結局、一葉、結葉、護葉が地上に出る計画になった。

 普段なら、結葉が危機を察知して救助に向かえるが、今回はその結葉が現場に行くのだ。

 危険すぎて反対したいが、計画は動き出してしまった。


 守弦がカラスと連絡を取り、空からバックアップを約束してもらったのは救いだ。


 無事を祈ることしかできない。

 娘たちならきっと大丈夫だ。

 そう信じている。
















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