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葉音を紡ぐ ――世界樹の麓で  作者: 葉森かなで
二章

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101/130

101 カエル族の歌

 風葉、葉月、双葉、守弦、カエル。

 一行は、双葉に急かされ足早に坑道を進んだ。


「よく見ると、この坑道はカエル族が掘ったものじゃないな。こんなに真っ直ぐ長くは掘れないよ。どんな生き物が掘ったんだろうな」

 カエルが観察しながら言った。


「カエル族だって、古い種族だろ。記録が残っているんじゃないのか?」

 守弦が不思議そうにきいた。

「俺たちは水辺の生物だぞ。残っているのは歌と楽器くらいだ」

「あと、酒と宴会もだろう」

「まあ、そうだな」


 悲壮な顔の仁には悪いが、緊張感の感じられない道中だ。



 現地に着いた双葉は、すぐに根っこに駆け寄った。

 やはり世界樹には、ガッチリと茶色い根っこが巻き付いている。

 世界樹を締め上げていると言っても良いかもしれない。


「世界樹が苦しそうだね……巻き付いてる方の根っこも、別に悪い植物なわけではなさそうだけど……」

 そう言って根を傷つけると、少し白濁した汁がじわりと滲み出た。

 舐めてみると、土の匂いの奥に、かすかな甘みがある。


「ちょっと葉月、古の地図を見せて」

 そう言われて、葉月が鞄から地図を出すと、双葉が笑い出した。


 みんながキョトンとする中、双葉が言った。

「初めから地図に答えが書いてあるじゃないか」

 そう言って古の地図の一点を指差した。


 最初に納得したのは守弦だ。

「ああ、ちょっと場所がズレているが、おそらく間違いないな。」

「そうでしょう。これだよ。葛の根っこだろう。地図に書き残すほど、昔は蟻人も採集していたんだろうね」


「ああ、『くずのうた』の葛か。みんな食べてたらしいな」

 カエルの言葉に、みんなが驚いた。


「子ども向けの童謡だよ。『くずのうた』って題名で、意味はよくわからないけどカエル族に伝わってる」

 そういうと、カエルは歌い出した



 つるも葉っぱも 根も宝

 捨てるところは ありません

 春夏秋冬 恵みをくれる

 くずは大地の 贈りもの



 つるは編み上げ 籠にして

 葉っぱは包んで 皿になる

 細いところも 無駄にせず

 くずはみんなの 相棒さ



 冬には根っこを 掘り出して 

 水にさらせば 白い粉

 そのまま食べても おいしいよ

 くずはみんなの たからもの



 「こんな感じ。今は、カエル族は食べないけどね」

「立派な口伝じゃないか!さすがカエル族」

 珍しく守弦に褒められたカエルは照れくさそうに笑った。


「『冬には根っこを 掘り出して』か。これだけ大きいと、動物たちに頼む必要があるね」

 風葉の言葉に、カエルが頷いた。

「そうだな。それも大きめのヤツじゃないと。クマかイノシシか?」

「その辺かな。でも、小型種もいないと、世界樹の根っこが傷つくと困る」

 葉月が巻きつき具合している。

「動物への交渉は引き受けた。あいつら集まってると思うから行ってくる。冬は食料が不足するし喜ばれるだろう。問題は、この位置をどうやって知らせるかだな。そこは任せたぞ」


 カエルが水路を辿って、動物たちに交渉に行くことになった。

 一緒に風葉が戻り、仁たちに状況を報告することになった。


「さてと、どうやって地上への目印をつけようか。この辺りは、地上が斜面だと思うんだ」

 葉月が頭を悩ませながら、根っこのまわりを軽く掘っている。


「冬じゃなければ、ここから地上に出て呼べば良いけど……寒さで死ぬよね」

 双葉も根っこの状態を見ながら答えた。


「穴を開けて目印を出したらわかりやすい?」

「斜面だよ。誰が見つけるの?」

「カラス?」

「まあカラスなら、冬でも冬眠しないからね。連絡取る方法があるかな?」

 二人が考えていると、守弦が言った。

「私なら、世界樹の枝に行ける。カラスもいるだろう。任せてもらえるか?」

「「もちろん」」


 そうやって、徐々に計画は固まっていった。


 まずは地上に向けて出口を掘る。

 そこに、赤く染色したクモのリボンを何本かたてる。

 雪が降る今なら、よく目立つはずだ。

 決行の時間に、カエルたちが地下から一斉に呼び貝を鳴らす。

 空中からカラスが見つけてくれたら成功だ。

 あとは赤い印を基に、動物たちが掘ってくれるだろう。


 同時に、この坑道は掘ったあと地盤が緩む。

 迂回路を検討することも決まった。


「まあ、詳細なルートは、みんなで慎重に相談する必要があるけどな」

 葉月の言葉にみんな頷いた。


 動物たちとの打ち合わせ

 赤いリボンの作成

 迂回路の検討

 ここに出入り口を作る


「まあ、控えめに言っても、この冬の一大プロジェクトだな」

 そう言いながらも、葉月の目は未来を見つめて輝いていた。


 根っこの調査をしながら、双葉が言った。

「とりあえず、運べそうな根っこ持って帰らない?美味しいものは食べてみないとね」

「これもお酒になるかもな」

 二人は、せっせと根っこを掘り出し始めた。


 ーーーーーーーーーーーーーーー

 仁の日誌


 世界樹への坑道には、葛の根が立ち塞がっていた。

 隙間から先へ進んでみた風葉と護葉の調査で、その坑道の奥は、無事世界樹につながっていることが確認された。


 葛の根っこの掘り出しに、クマ、イノシシをはじめ、寒さに強い動物たちの協力も得られた。

 一番の問題は、世界樹の根っこを傷つけないように、巻き付いた葛を取り除くことだ。

 そして重要な点は、世界樹に干渉しない部分の葛は残しておくことだと双葉が主張。

 今後の貴重な食料であるらしい。









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