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サイドストーリー5 魔女の子育て

 つばの広い帽子の斜め対角に宝石飾りをぶら下げて目深に被り、顔には覆面をして丈の長いマントを羽織るという出で立ちで、男はランセンの街を訪れていた。


 幾ばくかの金を支払って上等な宝石類を買い求めていると、店の主人が愛想笑いを浮かべながら話しだした。


「景気が良いようだね」


 ぶっきらぼうに「……それなりにな」と答えたが、店主は上客相手に世間話がしたくて堪らない様だ。それもそのはず、ここは大国ヒュリムトンの領地であるものの、旧ルーデンベルンとの国境近くにある町だ。

 紫焔の魔導士グォドレイの策略により崩壊したルーデンベルンは、恐らく世界初となる国王を持たない国、共和国として立て直しを図っている真っ只中だ。情勢が不安定で商人の往来も減り、贅沢品である宝石類の売れ行きが(すこぶ)る不調だった。


「貴族にでも仕えているのかい?」


 店主が尚も話しかけた。男は手に取って見つめていた上等なネックレスも買い求めると、ため息交じりに答えた。


「まさか。俺様は人に使われる程従順じゃいられない性質でな。ところで……」


 男は目深に被った帽子の下で、言いづらそうにもごもごと口を動かした。


「この辺りに、ベビーベットとか、ガキんちょの用品を扱ってる店はあるか?」


 店主は眉を上げると、男の後方を指さした。


「六軒先の角の店さ。貴族様御用達の店だが、あんたなら問題ないだろう。めでたいね、男の子かい?」


 慌てた様に「お、俺の子じゃねぇよ!」と言うと、男はわたわたと店を出た。店主は「また来てくれな!」とその背中に声を掛けたが、男は心の中で『もう来るもんか』と悪態をついた。


 町での買い物を済ませて、鬱蒼と木々が生い茂る深い森の中へと男は歩を進めた。


 大木を利用して作られたツリーハウスを見上げながら男は暫くの間そのまま佇んで、幅の広い袖口から煙管を取り出しては、赤子に良く無いと仕舞い込み、溜息をつく。


——ミリーにガキが産まれたって知らせを聞いて来た訳だが……。ものっそ行きづれぇ。だが、難儀してるって聞いたし、ガキをわんさか産んだら遊びに行くって約束もしちまったしなぁ……。


 先日、愛弟子のミルドレットから、共通の友人となったハリエッド経由で手紙を渡された。


『お師匠様、元気にしてるかな? あたしはすっごく元気! 

 これを読んでるってことは、無事復活したんだよね?


 実は、先日子供を出産したんだけれど、なんと双子だったの。一度で二度おいしいなんてラッキー過ぎだよね!

 しかも男女同時だなんて、あたし、神がかってない!?

 とにかく、一度絶対に会いに来てね。子供が生まれたら来てくれるって約束したのはお師匠様なんだから。


 もし約束破ったら、ハリエットさんに頼んで強制召喚して貰っちゃうよ。

 う〇こ中に呼び出されたくなかったら、自分で来てね! 待ってるから!』


——相変わらず品のねぇ奴だ。王太子妃になる為に身に付けた淑女としての教養はすっかり消え失せちまったらしい。


 うんざりした様に項垂れると、再びため息をついてツリーハウスを見上げた。


 赤子が二人も居る気配など微塵もなく静かなものだ。鳥のさえずりや木々の葉が揺れる音、自分の耳に下げられたピアスが奏でる微かな音しか聞こえて来ないのだから。


 ひょっとして留守なのだろうか? と思いながら、ツリーハウスの階段を上っていくと、迂闊にも自分で以前仕掛けておいた検知魔法にかかり、軒先に吊り下げられた金属製の飾りが高い音を放った。


——しまった!


 ガタン! と音と共に扉が開け放たれて、銀髪にサファイアの様な瞳をした女性が顔を出した。艶やかな銀髪が日の光を浴びて輝き、潤んだ瞳を向けて、柔らかそうな桜色の唇を噛みしめる。


 彼女は男の姿を見るなり、パッと駆けて両腕を大きく広げぎゅっと抱き着いた。


「お師匠様! 本当に!? 夢じゃなく!?」

「お、おい。ミリー……」

「すっごく逢いたかった!! 逢いたくて堪らなかったっ!!」


 ミルドレットに抱きしめられて、グォドレイは困った様に眉を下げた。


「落ち着けって……」

「どうして直ぐ会いに来てくれなかったの? 何処に行ってたの!? あたし、お師匠様が居なくなっちゃって寂しくて堪らなかったっ!!」


 ミルドレットの頭を遠慮がちに撫でると、「寂しい思いさせちまってすまなかった」と言って、つばの広い帽子と覆面を外した。


 アメジストの様な瞳が相変わらず優しく向けられ、さらりと零れる深い紫色の髪が艶めいて、耳につけられた大きなピアスが甲高い金属音を放った。


 ミルドレットは久方ぶりに見る師の姿に瞳を潤ませると、彼の存在を味わうかのように胸に顔を埋めた。

 ほんのりとした煙管の匂いに混じり、魔術で使う香薬の匂いが香る。その香りも懐かしく感じて、すぅっと吸い込んだ。


「おい、吸うなよ」

「なんで?」

「煙管の匂いがするだろう? お前さんや赤子に良く無いだろうからな」

「でも、なんだか以前より匂いが薄い気がするけど」


 ミルドレットの突っ込みに、グォドレイはしぱしぱと瞬きをした後、照れた様に瞳を細めて言った。


「お前さんから連絡貰ってから、一応吸わない様に気を付けてたからな……」


 ポリポリと左手で頭を掻くグォドレイの様子をまじまじと見つめて、ミルドレットは素っ頓狂な声を上げた。


「お師匠様、左腕が生えて来たの!?」

「生えて来ねぇよ!? バケモンか俺様は!?」

「だって、あたしのせいで無くしちゃったのに!」


 グォドレイは小さく笑うと、左手をミルドレットの前に差し出して動かして見せた。


「お前さんが心の傷を乗り越えたからな。今そうやって俺の魔力無しで元気なのも、完全に回復したからってことだ。つまりは、お前さんにはもう、俺が必要じゃなくなったってこった」


——だから、逢いに来るのは正しいことなのか、凄く迷った。


「必要とか、そんな道具みたいな言い方したら変だよ」


 ミルドレットはそう言うと、ぎゅっとグォドレイに抱き着いた。


「言ったでしょう? あたしは死んでもお師匠様の事が大好きだって。大好きな人とはずっと一緒に繋がっていたいもの。居なくなったりしたら寂しいに決まってるよ。お師匠様は、あたしと会えなくなっても寂しく無かったの?」


 う……と、グォドレイは顔を顰めた。

 事あるごとにミルドレットの顔を思い出しては毎日の様にため息をついていた。愛しくて、大切で堪らない人から離れざるを得なかったのだから、寂しくないはずなどない。


 グォドレイがボソリと「寂しかったに決まってるじゃねぇか」と言った。


 ミルドレットは満面の笑みを向けると、「嬉しい!」と言って再びグォドレイの胸に顔を埋めた。


 大木の葉がサラサラと揺れ、深緑の葉が舞い散った。差し込む光をチラチラと葉の間から照らし、鳥たちが心地の良いさえずりを奏でる。森全体が主の帰りを喜び歓迎しているかのようだ。


「……また逢えて、本当に良かった」


 グォドレイの胸の中で、ミルドレットが呟く様に言った。


「本当は、来てくれないんじゃないかってずっと不安だったの。あたしは、お師匠様に迷惑をかけてばかりいるから。もう、嫌いになっちゃったんじゃないかって。お師匠様に贈った指輪の効果で、あたしから解放されてるもの。お師匠様の意志が無いと会えないでしょう?」


「俺がお前さんを嫌いになるはずが無いだろう」


 グォドレイはそう言うと、ミルドレットの頭にキスをした。


「俺様の愛情(命)は、そんなに軽いモンじゃねぇさ」


 誰にでも命を差し出すわけではない。ミルドレットだからこそ、捧げても良いと思った。永遠の寂しさで空いてしまっていた心の空白を、彼女だけが埋めてくれていたのだから。


「ありがとう、お師匠様。あたしに魔術だけじゃなく、愛情を教えてくれて」

「んな大層なモンを教えたりしてねぇけど……」


——ただ、俺がお前さんを愛しちまっただけだ。


「お師匠様から教わったことを、あたしは絶対に忘れないし、大切にしていきたい。あたしの子供達も、その子供達もずっと、永遠に」


——ずっと、永遠に……。


 ミルドレットの温もりを感じながら、最愛の人の、その子孫達へと紡がれていく愛情を想像し、心がじわりと沁みる様な感覚を覚えた。


 だが、シャラリと音を発して彼女の耳で揺れるピアスを認め、グォドレイはズキリと胸を痛めた。


「お前さん、そのピアス……」


 その魔道具の効果は、人の寿命を延ばすものだ。それは最早、『人』ではなくなってしまうということを意味しているようなものだ。

 グォドレイは罪悪感に唇を噛みしめたが、ミルドレットが小さく笑って答えた。


「知ってる。もう解析も終わったもの」


 グォドレイは眉を寄せると、「外さないのか?」と問いかけた。

 ミルドレットは頷くと、ぎゅっとグォドレイを抱きしめた。


「絶対に外さないよ」


 それは、いつか二人で共に生きる未来を約束する言葉だった。


「ニールも知ってるよ。解析に協力してくれたもの」

「だが、お前……」

「あ、何も言わないで!」


 ミルドレットはパッとグォドレイの口を塞ぐと、ニコリと笑みを浮かべた。


「今は何も聞きたくない。その時になったら、お師匠様がどうしたいか教えて。あたしは、お師匠様の気持ちを縛り付けるつもりなんて無いの。勿論、振られちゃったら悲しいけれど、それはその時に考える事にするから」


 人とは違う生き方をするが、決してそれによってグォドレイの足枷にはならない。自分が望んでそうしているのだと、ミルドレットは言っているのだ。

 先の事は分からない。グォドレイにとってミルドレット以上に愛する者が現れないとも限らないのだから。


 ミルドレットは「それよりも赤ちゃん、抱っこしてあげて!」と言って少しはしゃいだ様にグォドレイの手を引いた。


「今ね、ニールはちょっと留守にしてるんだ。直ぐに帰って来ると思うけど」


 彼女に手を引かれ遠慮がちに室内へと入って行くと、綺麗に片づけられた部屋の奥にソファに寝かしつけられた赤子が二人、すやすやと寝息を立てている様子が見えた。


 ミルドレットに促されて側へと寄ってみると、グォドレイの深い紫色の髪とミルドレットの銀髪とを混ぜ合わせたような葵色(あおいいろ)の髪の赤子と、銀髪の赤子の姿が見えてグォドレイは息が止まる思いでピタリと足を止めた。


——葵色……? ニコニコ仮面の野郎は赤みがかった栗色の髪だ。つまりこの髪色は……まさか……!


 その様子に、ミルドレットはクスクスと笑った。


「この子ね、お師匠様に似てるの」

「……なんてこった、俺の魔力がお前さんの子供に作用しちまったってことか」

「凄いでしょう? あたし、お師匠様の子供産んじゃったみたいじゃない?」


 得意気に言うミルドレットに、グォドレイはたじたじとした。


「お前さん、それでいいのかよ!?」

「どうして?」

「いや、だって。血統はニコニコ仮面とのガキだろう? あいつに似てる要素はどっかにあるのか?」


 ミルドレットは葵色の髪の子を指して、「この子はマクシミリアン。お兄ちゃんなんだよ」と言った後、銀髪の子を指した。


「この子はレオノーラ。妹なんだけれど、目がニールと全く同じなの」

「ニコニコしてんのか?」


 グォドレイの突っ込みに、ミルドレットは声を上げて笑った。


「そうじゃなくて、瞳の色がダークグリーンなの」


 ミルドレットはそう言ってマクシミリアンを抱き上げると、そっとグォドレイに「抱っこしてあげて」と差し出した。


 葵色の髪の赤子を見つめ、グォドレイは困った様にため息を吐いた。


「……参ったなぁ。俺様、永く生きてるが、赤子を抱くのは初めてだ」

「まだ首が座ってないから、支えてあげてね」


 覚束ない様子でそっとマクシミリアンを抱くと、グォドレイは自分の腕の中ですやすやと眠る子をじっと見つめた。


「全然起きねぇんだな」

「うん。眠りの魔術を掛けたから」


「!?」


 ぎょっとしてミルドレットを見ると、彼女は欠伸しながら伸びをした。


「その子育て方法でいいのかよ」


 当然な突っ込みを入れるグォドレイに、ミルドレットは呑気な様子で「だって、その方が楽なんだもの」と答えた。


「そりゃあ、そうだろうが……うーむ……」


 腹落ちしない様子のグォドレイにミルドレットは頬を膨らませると、不満気な目を向けた。


「二人共、泣き喚くとめちゃくちゃな魔術を使って大変なんだよ!?」

「めちゃくちゃな魔術だと?」

「うん。お師匠様の魔力を引き継いだみたい。だからお師匠様のせいだね」

「俺のせいかよ!?」


「ええ、そうです。ですから責任をとってくださいね」


 ニールがそう言いながら室内へと入って来ると、ミルドレットは「お帰りなさい!」と言って出迎えた。

 赤みがかった栗色の髪に、ニコニコとした笑顔は相変わらずで、グォドレイは気まずく思って目を逸らした。


「おう、お前さんも元気そうだな。だが、久しぶりに顔を合わせてみりゃ責任って、何で俺様が……」

「マクシミリアンを貴方の弟子に迎えて頂きたいと思っているのです」


 ニールの言葉に、グォドレイは目をまん丸にして自分の腕に抱かれている赤子を見つめた。


「は!? 俺様の!? ちょ、勝手に決めんなよ!」


 グォドレイが喚く様に言うと、スパーン!! と魔法薬の調合に使用する小皿が飛んできて、慌てて避けた。


「な、なんだ!?」


 と、言った後、視線を感じて見下ろすと、葵色の髪をした赤子が、紫紺(しこん)の瞳を見開いて、じっとグォドレイを見つめていた。


「……まさか」


 眉を寄せ、冗談半分にマクシミリアンに心を読む魔術を掛けたグォドレイは、脳内に響く言葉に唖然とした。


『パパ!!』


「違ぇよっ!!」


 慌てて突っ込みを入れたが、マクシミリアンは瞳いっぱいに涙を溜め始めた。そして棚の上の小皿が数枚グォドレイ目掛けて飛んで来たので、舌打ちをして印を切った。


 皿がピタリと空中で止まり、うんざりした様にため息を吐く。


「成程な、こいつは子育て大変そうだ」

「そうなの……」


 ミルドレットが困った様に笑うと、ニールは「だから責任を取ってくださいと言っているんです」と言ってソファに腰かけた。


「レオノーラも少しは魔術が使える様ですが、マクシミリアンは桁違いなのです。私達の様な普通の人間には子育てが困難です」

「お前さん、自分を普通の人間だと思ってんのか……」


 グォドレイの突っ込みにもものともせず、ニールは言葉を続けた。


「とはいえ、貴方も住むとなれば手狭になりますので、増築しなければなりません」


 さらりと言ったニールの言葉に、グォドレイは一瞬流しかけてぎょっとしてアメジストの様な瞳を向けた。


「は!? 一緒に住むだって!?」


 ぽかんとした後ミルドレットへと視線を向けると、彼女は嬉しそうに笑みを向けた。


「素敵でしょ? 魔力の強い大変子育ても、皆で一緒に協力したら全部解決!」

「待て待て! 師匠を子守り扱いする気か!? しかも住み込みだと!?」


——馬鹿言うな! 新婚の家に居候できるかっ!!


「ニコニコ仮面、なんとか言ってやれよ! ミリーとの家族水入らずの生活に邪魔者が混じるだなんて、お前さんだって嫌だろ!?」


 当然強く同意するはずだと思っていたというのに、グォドレイに向かってニールは全力で首を左右に振った。


「全く嫌ではありません。寧ろ、宜しくお願いします」


 ぎょっとしてグォドレイは大慌てで反論した。


「おい、落ち着け!? お前さん、俺様の事大嫌いだよな!?」


 グォドレイのその言葉に、ニールは再び全力で首を左右に振った。


「いいえ? 大好きですが」


 ニコニコと笑顔を浮かべたままそう言うニールを見つめ、グォドレイは思いきり顔を顰めた。それは折角の美形が台無しになる程の顰め具合で、ニールは思わず吹き出してしまった。


「明日世界が崩壊するんじゃねーか……?」


 ニールはじっとグォドレイを感情の無い目で見つめ、何やら口をパクパクと動かした。どうやら心を読めと言っている様だと理解したグォドレイは、渋々ニールへと魔術を掛けた。


『どうか協力してください。このままでは、私はマクシミリアンを殺してしまいそうです』


「!?」


 グォドレイがぎょっとして腕の中のマクシミリアンへと視線を落とした時、赤子とは思えない冷たい瞳ですっと見つめ返された。

 瞬間的に殺気を感じたと共に、グォドレイは自分の身がツリーハウスの外へと移動させられている事に気が付いた。


 サラサラと木々の葉が擦れる音を耳にしながら、それがマクシミリアンの仕業であると理解して、呆然とした。

 腕の中に居たはずの赤子が、姿を消しているのだから。


 ツリーハウスの扉が開き、ニールが顔を出すとうんざりした様にため息を吐いた。


「マクシミリアンは、そうやって気に入らないと直ぐに人を瞬間移動させるんです。私も先ほど被害に遭いまして」


「まじか。新生児でこれって事は……」


「今ですら機嫌を害せば最遠で隣国まで飛ばされます。お分かり頂けましたか?」


 年を重ねる毎に理性も育まれるだろうが、魔力も強くなる事だろう。

 マクシミリアンを抱いたミルドレットが心配そうに顔を出すと、懇願する様な瞳をグォドレイへと向けた。


「お願い、お師匠様! 助けて」

「うーむ、厄介だなぁ」


 わしわしとグォドレイは頭を掻くと、うんざりした様にため息を吐いた。

 ニールはともかく、ミルドレットがどこぞと知れない国に飛ばされ様ものならば、心配極まりない。


 ニールはともかく……。


「……解った。俺様がなんとかしようじゃねぇか」

「やったぁ! お師匠様とまた一緒に暮らせるなんて、すっごく嬉しいっ!!」


 大喜びするミルドレットの傍らで、ニールがいつもの笑顔仮面にピシリと罅を入れていたが、こればかりはどうすることも出来ない様で、「宜しくお願いします」と棒読みで言葉を発した。


 ツリーハウスのすぐ側に、グォドレイの魔術により離れが建てられた。マクシミリアンの育児には協力するが、流石に新婚夫婦と同居するのは気が引けると、配慮した結果だった。

 室内にはグォドレイが街で購入したベビー用品が詰め込まれ、まさか自分がそれを使って育児をする羽目になるとはと、困った様に頭を掻いたのは言うまでもない。


 こうして、奇妙な共同生活が始まる事となったのだ。


「さてと、マクシミリアンは長ったらしいからな、マックスでいいだろ?」


 グォドレイがそう言った瞬間、隣国へと飛ばされた訳だが……。


 どうやらマクシミリアンは『マックス』と呼ばれる事を異常な程に毛嫌いするらしい。愛称は『リアン』という事になり、ツリーハウス内では『マックス』は禁句となった。

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