第128話 「メメチャンバ伝説後編」と「時の扉」
パドリアヌスが、ル・デスア湖畔でアートランドと対峙している頃、アラン達はジャンバランのスチュアートリア帝国軍の砦で、ノアとキースから報告を受けていた。
「それで、その森に入ってみたんだね?」
と、アランが尋ねるとノアとキースは揃って「はい」と答えた。
「もちろん、ヴァイオレット・フィールド参謀の許可を得て森を探索しました」
と、キースがシオンの顔を見ながら言うと、
「はい、私が許可を出しました」
と、シオンが静かに頷きながら言った。
「それで、君が捜していた場所は見つかったのかい?ノア」
「はい。見つけました」
アランの問いにノアは複雑な表情を浮かべながら答えた。
なぜなら、あれほど捜して見つからなかった場所が、今回に限り、いとも簡単に見つかったからだった。
「でも、不思議なんです。ネオ君と探しに行った時にも見つかりませんでしたし、それから何度も行っても見つからなかったのに…。今回に限って見つけられたんです」
「私も前回ノアと共に森に入った時には見つからなかったのですが、今回はすんなりと見つかって驚きました。まるで、今まで隠されていたかのようです」
と、キースもノア同様に不可解な気持ちを持っていた。
「つまり、今まで隠されていて見つからなかったということだね?」
と、言いながらアランはシオンを見た。
アランとシオンには、ノアとキースの話を聞いて思うところがあった。
アランは、ノアと初めて会った際にノアからリゲル・ラナに来た時の話を聞いた。
その際に、ふたりが地球から飛ばされて来たという魔法陣のある洞窟は、海の音が聞こえる森の中だと言っていた。
つまり、その洞窟は海岸に近い森の中にあるということになるので、捜すのに苦労するとは思えない。
だが、ノアもネオも何度も探しても見つからなかったという。
その話を聞いた時に、アランは、以前調べた『時の扉』のことを思い出したのである。
アランは、ウィリアム皇太子から『魔の森』に関する予知を聞いた際に『時の扉』についての調査と資料を集めることをシオンに依頼した。
今、ノアの話から考えられるのは、ノアたちが飛ばされた場所こそ『時の扉』だったのではないか?
『魔の森』に存在すると言われていた『時の扉』は、パドラル国内のジャバランの森にあったのか?
あるいは、『時の扉』は、ひとつではなく複数存在するものなのかもしれない。
アランとシオンは、そう考えていた。
「ノアたちが現れた場所が『時の扉』なのかもしれないな」
「はい、私もそう考えました」
シオン参謀は、そう考えてノアに森の探索を許可したのだ。
ただ、ノアひとりでは危険だと思い常にキースを同行させた。
というのも、シオンが集めた『時の扉』に関する資料には、魔力や神聖力を持たない者が時を越えた場合、二度と元の場所には戻れない、もしくは死を意味するとされていたからだ。
神聖力を持つ者に関しては、往来経験のある者の記録があったが、魔術師レベル者は魂だけが転移して生まれ直すらしいとのことだった。
しかし、ノアもネオも魔力を全く持たないのに、生まれ直しではなく転移している。
もしかしたら、地球からリゲル・ラナへは転移されるが、リゲル・ラナから地球へは生まれ直しになるのかもしれない。
だが、その点に関する記録が無いので、予想の範囲を出ない仮説となる。
どちらにしても、神聖力を持たない転移者であるノアにとっては、再び『時の扉』を通ることは危険を伴う。
下手をしたら、魂ごと宇宙空間に飛ばされてしまうリスクも考えられる。
彼らには、まだ宇宙に関しての知識は乏しく曖昧だったが漠然としてたイメージながらも、過去の様々から予測をしていた。
詳しいことはわからなくとも、ノアが再び『時の扉』に接近する事への危険をシオンは感じていた。
だから、決してノアを魔法陣に近寄らせぬようキースに命じていたのだった。
「それで、洞窟の中には入って確認したのかい?」
と、言うアランの問いに答えたのはキースだった。
「はい、ノアを洞窟の入り口に待たせて、私だけ中に入って確認して参りました。中は暗かったので魔法の光を灯して確認したところ、地面に丸く平らになっている場所があり、そこにマジュ文字らしき字が書かれた魔法陣がありました」
「マジュ文字らしき?」
と、帝国神聖魔術士養成大学の教師でもあるトゥルリー大佐が思わず言った。
「はい」
と、キースが答えると、それにに付け加えるようにシオンが言った。
「もし、文字が書かれていても読まないようにと私が命じました。下手に読んで扉が発動したらキースも別星に飛ばされるかもしれませんし、ノアには魂のリスクもありますから」
シオンの説明を受けて、その場に居たアラン、トゥルリー、マリアも、それは賢明な判断だと思っていた。
「僕も参謀長官から、僕が魔法陣の文字を読んだら命が危ないと言われたので、見つけた時にはドキドキしてしまいました」
と、ノアが言った。
ノアは、知らずにネオとふたりで、また、ひとりでも探した事があったので、その時に見つからなくて良かったと思っていた。
もし、見つけていたら、また魔法陣の文字を読んでいたに違いないからだ。
特に、マジュ文字をマスターした今だからこそ、しっかり読んでいたに違いない。
「それが『時の扉』だとしたら、常に開いているわけではないのだろう。確認するなら今しか無いということだな」
と、ボソリとアランが言うと、
「それはなりませんよ!」と、シオンが慌てて叫んだ。
「そう言うと思っていたよ、シオン」
と、アランは慌てふためくシオンを見て笑顔で言った。
だが、アランはウィリアム皇太子の予知からの流れを思うと、これは自分に課せられた使命のように思えてならなかった。
何よりもカレン・マリナシス卿から聞いたメメチャンバ伝説の後半。
悪しき水面の湖畔に渦巻く闇に挑みしメメチャンバ
己の迷いに打ち勝ち、闇を越え、宙を越え、
光の如き歳月も越える勇士
百年の歳月の波も瞬く光の如く、十年も一日の如し。
闇の鏡面を切り裂き、時の流れを泳ぎ切り
メメチャンバを慕いし者たちと共に
時の空を越えて戻りし時、世界の調和が蘇るであろう
全ては宇宙の規矩であり、
宇宙を司りし則である。
「悪しき水面の湖畔に渦巻く闇に挑みしメメチャン」
ここまでは、既に実現している。
しかし、それ以降の予言はこれからだ。
「己の迷いに打ち勝ち、闇を越え、宙を越え、光の如き歳月も越える勇士」
これが自分のことだとするなら、やはり「宙を越え、光の如き歳月も越える」には『時の扉』が、無関係とは思えない。
そして、アランはトゥルリーに向かって言った。
「カレンから聞いたメメチャンバ伝説の後半は、我々のための予言だよな?」
「ああ、カレンの曽祖父の予知だとカレンが言っていたからな。メメチャンバが我々のことである事はもう否めない」
と、トゥルリーはアランの問いに答えて言った。
トゥルリーもアランと同じようにメメャンバ伝説を思い出していたのである。
アランがやろうとしている事も予想していたし、彼に付き従う覚悟もとっくに出来ていた。
そして、アランの決断を待っていた。
「悪いな、トゥルリー。またお前にも苦労かけることになるかもしれん」
と、アランが言うと
「何を今さら、もう200年以上もずっとだぞ?言わずもがなだ!」
と、トゥルリーは爽やかな笑顔で答えた。
「私も忘れないでよ?今回は私だけ別行動は許さないからね!」
と、マリアがちらりとシオンの表情を確認しなから言った。
今にも泣き出しそうな表情にも見えるシオンを見ながらアランが静かに言った。
「シオンにも引き続き苦労をかけることになる。むしろ、これから一番大変なのはシオンだと思っている。もし、私に何かあれば、各部族との正式な契約やパドラル国の建国についての指揮官は、シオン参謀になるだろうからな」
「では、私も共に…」
と、言いたかったシオンだったが、彼は賢い男だった。
自分の感情を抑えきれずに自分の役割や使命をなおざりにするようなシオン参謀長ではない。
「私は、アラン様を信じて自分の役割を果たす覚悟です。ですから、アラン様も私を信じてくれぐれも無茶はしないでください」
と、言った。
アランがスチュアートリア帝国の平和と豊かな未来の為に身を賭して生きているのと同様、シオン・ミッシェル・ヴァイオレット・フィールド参謀室長官も同じく、帝国の為に人生を捧げる覚悟で生きている。
それぞれに己の分があり、その能力に応じて天から与えられた役割が有る。
それを忘れるシオンではなかった。
「ありがとうシオン、私も信じているよ」
シオンは、私的な感情をぐっと堪えて、片手を胸に当てながら一礼しながら
「有難き幸せ」と、感謝の意を示した。
「では、私とトゥルリーとマリアで、その『時の扉』を確認して来る。キース、案内してくれ!」
と、アランが言うとノアが慌てて
「案内なら僕が!」と、言った。
すると、アランはノアの両肩に手を置いて静かに言った。
「君は、ここでシオンと待機していてくれ。以前、君に私は言ったよね?君はKey Personなのだろうと。皇帝陛下は、私と君がKey Personだと言っていた。鍵は、同時に2つはいらないよ?それに、もし、君とネオは、『時の扉』に二度と近寄ってはいけないと思う」
不満そうな顔のノアに向かって、アランの代わりにシオンが答えた。
「君には、命の危険があるから、魔法陣の文字を読んでも、近寄ってもならないと言いましたよね?」
「はい。だから僕は洞窟の中に入りませんでした」
と、ノアはシオンに答えた。
「君は、生きてリゲル・ラナから地球へ行くことは出来ません。私が調べた限りで、神聖力を持つ者でないと往復することは不可能のようなのです。今の君が、再び『時の扉』に吸い寄せられた場合、魂がリゲル・ラナと地球の狭間に飛ばされる可能性が高いのです」
ノアの肩に手を置いたままシオンの説明を聞いていたがアランが、再びノアに向かって言った。
「でも、どうしても君が地球に戻りたいと言うのなら止めはしないよ。転移は出来なくても転生、生まれ変わりという形で地球に戻れる可能性はある」
教え子でもあるノアを案じているトゥルリーとマリアもノアの気持ちを確認するように彼を見つめた。
「ノア、君はどうしたい?」
と、アランに問われたノアは、迷わずに答えた。
「僕は、地球よりこのリゲル・ラナで生きたいです。それにネオ君だけひとりここに残して僕だけ地球に帰れません」
笑顔で即座に、そう答えたノアに対してアランも笑顔で言った。
「それは良かった。君には、まだリゲル・ラナでやらなければならない使命があると思うんだ。私に与えられた使命とは別にね」
「そんな、僕に使命なんて…。でも、地球から僕とネオ君がここへ飛ばされたのは事実ですし、きっと意味があるんですよね?」
「そうよ、ノア。あなたにしか出来ないことが、きっとあるのよ」
と、マリアもノアに近づいて言った。
「頼むぞ、ノア」
と、トゥルリーも言った。
「はい」
ノアは、憧れのレッドリオン閣下と、信頼しているふたりの恩師に自分の存在と価値を肯定されたようで心から嬉しく思っていた。
「では、キース、行こう!」
アランは、一時でも早く現場へ行かなければと思っていた。
『時の扉』は、いつでも開いているものでは無いらしいからだ。
「はい、ご案内します、閣下!」
こうして、4人はジャンバラン砦から『時の扉』があるという洞窟のある森へ向って行った。
その4人の後ろ姿を複雑な思いで見送るシオンとノアだった。
そこへオスカーが慌てたように入って来た。
「失礼いたします。閣下と参謀長に急ぎのご報告が…」
「そんなに慌ててどうしたブルーフォレスト卿?」
と、いつも礼儀正しく落ち着いて滅多に動じないオスカーの慌てた様子にシオンとノアは、その緊急性を感じとっていた。
「レッドリオン総司令官閣下は?」
「閣下は、たった今キースの案内で『時の扉』の捜索へ出かけたところです」
と、シオンが答えるとオスカーは続けて言った。
「そうでしたか。では、ヴァイオレット・フィールド参謀長にご報告です。先ほど、ブルーフォレスト城の父から領地内の森で異変を感じたとのことなのですが、その森にポリアンナ達5人が魔法の練習に出掛けたまま戻らないとのことです」
「えっ?」
オスカーの報告にシオン以上に驚いたのはノアだった。
「ブルーフォレスト辺境伯領の森とは、例の『魔の森』のあるところですね?」
と、シオンが尋ねた。
「はい。ですが、それはかなり奥の方で、妹たちが行ったのは、城に近い金鱗竜の訓練を行っている場所です。冬期は、竜の訓練に使用していないので魔法の練習に行ったようです」
「なにやら、嫌な予感がしますね」
シオンもオスカーも神聖力を持つHoly Mageなので、皇帝や皇太子程では無いが、予知の能力がある。
「はい、私もそう感じております」
と、オスカーもただならぬ事態だと感じとっていた。
「ブルーフォレスト卿。新年祭の休暇中にも関わらず近衛騎士団とは別の任務に携わって貰い苦労でした。『オセロ作戦』も無事に成功したことでもあります、君には自領に戻ることを許可します。しばらく、ブルーフォレスト辺境伯の元で自領の警備に当たって下さい」
「ありがとうござます!何かあればすぐに、ご報告致します」
と、オスカーが言うとノアがシオンの顔を見ながら言った。
「あの僕は…」
ノアは、『時の扉』のことが気になってこのジャバラン砦に残っていたが、その目的も果たした今、クリストファーやアンナと共に帝国神聖魔術士養成大学へ戻る必要がある。
しかも、そのふたりと共にポリアンナ達に何かあったとなれば、居ても立ってもいられない。
「君は学生ですから学校へ戻られねばなりません。ブルーフォレスト卿と共に行って、学友と合流して帝国大へ戻りなさい」
と、シオンはノアの気持ちを汲んでオスカーと共に行くことを許可した。
「但し、そちらにも『時の扉』があった場合は、絶対に近寄らないように。これはレッドリオン閣下のご命令ですからね!ブルーフォレスト卿もしっかり見張っていて下さい」
と、シオンは厳しい口調でふたりに命じた。
「はい!」
「御意!」
ノアもオスカーも、ただならぬ気配に気を引き締めて返答した。
いよいよ何かが大きく動き出す。
何か予期せぬお揃いことが始まる。
そんな気配に襲われた三人は、思わず身震いがするほど背筋がゾクゾクするのを感じていた。
ついに、時の歯車がギシギシと音を立てて激しく回り出したのである。
オスカーとノアが、金鱗竜の背に乗ってブルーフォレスト城へ向いジャンバラン砦を出発した頃、アラン、トゥルリー、マリアの3人はキースの案内で森の中を進んでいた。
「なるほど、これでは馬では進めないな」
脚に絡みついて来る足元に生い茂るの熱帯の地方特有の弦草を振り払いながらアランが言った。
三人の前を進むキースは、自分の剣で行く手を阻む草や木々を切りながら答えて言った。
「数日前にノアと私で下草を借りながら通った道なのに、もうこんなに生い茂っているのですから、恐ろしい回復力です」
「全く目印になるものも無いし、まるで惑わそうとしているようだな」
と、キースのすぐ後ろを歩くトゥルリーも周囲の草を払いながら言った。
その後ろをアラン、マリアと続いた。
すると、急にアランが背筋に寒気が走るのを感じて身震いをして立ち止まった。
そして、前を行くキース、トゥルリーに言った。
「キース、案内をありがとう。トゥルリー、マリアも。ここからは俺ひとりで行く。ここからは迷わず行けると思う」
そう言うアランを振り返ってトゥルリーが言った。
「何を今さら、俺はどこまでもお前と一緒に行かねばならん。俺とお前ふたりでメメチャンバだからな。俺が欠けてしまったら、メメチャンバ伝説は実現しないだろ?」
トゥルリーの意思はゆるがない。
すると、マリアも起こった口調で言った。
「何をこの期に及んで言っているの?アラン。私もトゥルリーも何があってもあなたに着いて行くってと言ったじゃない!」
アランは、前後のふたりの剣幕に押され気味になりながら苦笑いをした。
「ああ、そうだったな。今さらで悪かった。俺自身に迷いがあるのかもしれない。今、地の底から呼ばれた気がして武者震いがしたんだ。とうに覚悟は決めていたから俺がどうなろうとも構わないのだが、他の者を巻き込むことになるのがどうにも…」
と、いつに無く気弱な顔で言うアランにトゥルリーが言った。
「これは、お前だけに課せられた使命では無いんだ。皇帝陛下の予知は確定未来だ。そこには、お前と共に俺とマリアが居ると陛下から聞かされている。お前、同様に俺とマリアも覚悟はとうに出来ているのだよ」
「そうよ、行くわよ!アラン。三人で子供の頃に森で探検ごっこをしたのを思い出してワクワクするわ!」
そういう行ってマリアは、アランの前に出てトゥルリーと共に歩き出した。
「やれやれ、ふたりとも普段は俺の忠実な部下のふりして、いざとなると強情だからなぁ」
と、言いながら、3人の上官のやりとりをポカンとした顔で聞いていたキースの横に並んで言った。
「キース、君は私たちに何かあっても砦に戻ってシオンに報告してくれ。君には、君の使命があるはずだ。シオンの力になってやって欲しい」
「はい、わかりました」
キースは、これから何が起こるのかはわからないが、3人上官の話から、何か重大なことが起こるのだろうと思った。
「まだ、正式な騎士の任命式も終わっていない君にこんな役目を課すのは心苦しいが、ノアとネオのことも頼むよ!」
そうこうしているうちに、4人は目的の場所に到着した。
そこは、木々の生い茂った崖下に洞穴の入り口が、ぽっかりと口を開くようにしてあった。
「ここだな?」
アラン、トゥルリー、マリアはすぐにその場所が自分たちを招く場所だとわかった。
「ええ、間違いないわね」
「なぜか、引き寄せられている気がする」
洞窟の入り口は、崖の上に茂った木の枝やツル性の植物が垂れ下がり、その存在を隠そうとしているかのようだった。
中は真っ暗で、じめじめした空気が中から溢れて来るようにも思えた。
「キース、君はこの入り口から少し離れたところで待機していてくれ。何かあったら、すぐに砦に戻ってシオンに報告してくれ」
総司令官であるキースの命令は絶対である。
自分も上官たちのお供したい気持ちでいっぱいのキースだったが、まだHoly Mage騎士になったばかりの未熟な自分は足手まといなると自覚していた。
そして、騎士の敬礼をしながら言った。
「了解致しました。お気をつけて!」
「では、後は頼むぞ」
と、言ってアランはトゥルリーとマリアを伴い真っ暗な洞穴の中に消えて行った。
すると、間もなく洞穴の入り口の周囲の木々やツル草がまるで生き物のように動き出し、その入り口を覆い隠してしまった。
「えっ?」と、焦ったキースがそのツル草を剣で切ってみた。
神聖力を使って洞穴の入り口があった付近の草木を焼き払ってみたが、その下には崖があるだけで洞穴の入り口は消え失せていた。
念のため、アラン達に精神感応でアクセスを試みてみたが反応はなかった。
上官たちを飲み込んだ洞穴の口が開いていたはずの場所を見つめてキースが立ち尽くしていると、みるみる目の前のつる草が伸び出し周囲の木の枝で覆われて、どこが洞穴だったのかさっぱりわからなくなっていた。
これでは、二度と同じ場所にはたどり着けないだろう。
すると、その様子を呆然としながら見ているキースの脳裏にメチャンバ伝説の一説が浮かんだ。
〝闇の鏡面を切り裂き、時の流れを泳ぎ切り
メメチャンバを慕いし者たちと共に
時の空を越えて戻りし時、世界の調和が蘇るであろう〟
「時の空を越えて、必ず皆様でお戻りになるに違いない」




