第8話 魔剣 対 神器
~魔剣 対 神器~
「今宵のレーヴァテインは血に飢えておるぞ。」
その言葉でとりあえずその武器がレーヴァテインだという事が分かる。炎の魔剣、あるいは杖、レーヴァテインだったっけ。けど失礼ながら、そんなすごい武器が簡単に手に入るものかね?俺は少し疑いの目を向ける。
冒険者 パーティーメンバー
戦士:女性:ヒューマン:C級以上?
魔法使い:男性:ヒューマン:D級
弓使い:女性:グラスランナー:D級
格闘家:女性:ヒューマン:D級
魔法使いのミリアルドは中央におり、こちらから見て右前方を戦士、左前方を格闘家が押さえる。
と弓使いが何歩か後ろに下がった。
うちの門は高さ約4mの門柱が2本立っているだけで、その間の約5mの開け放たれた通路が門という事になる。門柱から連なるように約2mの石垣で敷地が囲われており、その上に乗って戦うことも可能だ。だが、弓兵の存在を確認していたので、門の中に引き込んで戦う作戦だ。俺たち守備部隊は彼ら冒険者を引き込むように門を取り囲むように布陣する。
今度は考えられたパーティーのようにも思うし、注意しなければ。きっと、まず突っ込んでくるのは前衛の二人。それもおそらくはあの魔剣持ちの剣士の方だろう。普段アホなことばかり言っているゴブリンたちもゴリゴリに緊張している様子だ。
が、門の向こうからまた会話が聞こえる。格闘家と剣士だ。
「先生、どうぞお願いします(イライラ)」
「とりあえず様子見が必要でしょ。まずは貴女から。」
「いえいえ。様子見ならば、まずは先生の剣技で牽制でしょう?(イライライラ)」
「は?私が前に出たら、あなたの攻撃が届かないでしょ?この射程ゼロ。」
「射程ゼロお?キレた。私もう帰る!」
ブチ切れた格闘家が帰ろうとする。
「ままま、待ってよ。フィオ、落ち着いて。先生も先生だ。貴方には前金も払ってるんだ。ちゃんと働いてもらわないと。」
ミリアルドが両名を説得にかかる。
え?今じゃね?
「総員、後に続け~!」
俺を先頭にゴブリンの群れが突進する。
「え?」
予想外の行動に冒険者たちは反応が遅れた。
うがあああああ!!俺が巨大な棍棒をぶん回すと、魔法使いミリアルドと格闘家フィオが吹っ飛ばされた。
「あれぇ~~」「うわぁ~~」
やっぱりゴリマッチョ、最高ぅ!
ミリアルドは弓使いの方に飛んでいき、弓をつがえようとした弓使いにぶつかった。
「わっ。ミリアルド、邪魔!」
「いってぇ~~~」
格闘家フィオは転倒した際に擦った膝をさする。
一方の剣士はふわりと俺の攻撃をよけ、後ろに飛ぶと間合いを作った。流石と言わざるを得ない。俺は剣士と向かい合った。俺から見て左手の街道や草原の上は雪崩れ込んできたゴブリンによってミリアルドらとの混戦状態になりつつあるが、ミリアルドらはあまり強くないので、いずれ片が付くだろう。俺だけが一番危険であろう剣士と向き合っている。ゴブリンども、狡くない?
女剣士はすっと、背中の大剣を抜き放った。溶岩石のような深い灰色の刀身に金色のルーン文字が刻まれており、なかなかに禍々しい。
「今宵のレーヴァテインは一味違うぞ。」
はいはい。そっちの下りの台詞もあったな。まだ11時前ですよ。高まる気温のせいで、刀身が陽炎のように揺らめいても見える。が、不思議と恐怖心はない。なんたって、一度刺されて死んでるからね。レーヴァテインだろうが、出刃包丁だろうが、殺傷力があったら結局同じだと悟りを開いている。経験って大事だなぁ。ありがとう、美咲!
「どう違おうが、最後に立っていた方が勝ちってね。」
「ふ~ん。ホブゴブリンにしてはなかなかイイ事言うじゃない。でも、武器が粗末よね。かわいそうに。なかなかやるようだけれど、このレーヴァテインの敵じゃないわ。」
「武器なんて、使いやすさが大事さ。強さだ、ランクだ、しょうもないこと言ってんじゃねぇよ。」
あれ?俺、今、誰と話しているんだっけ?女剣士?それともこの剣と話している?女剣士はうつろな目をしてぼーっとしている。
「今宵のレーヴァテインは・・・」蓄音機みたいな女剣士の言葉にかぶせるように、キレ気味なレーヴァテインの声が重なる。「生意気なこと言ってくれるわね。さすがに頭に来たわ。レーヴァティンの名にかけて、サクッと決めてやる。さようなら、ゴブリンさん♡」
くそ。やっぱり人を乗っ取り操る剣だったのか。剣士には意思が宿っていない。この怪しい剣と喋っていたとはっきり理解した。もはや剣士の眼など見ず、レーヴァテインを睨みつけた。こいつ(レーヴァテイン)を凹ませるには。
最強の武器。というか神器。
俺は棍棒をシコシコ擦った。シコシコシコシコシコシコシコシコ・・・・煙が出る程に。グッド・ルッキンの奇跡を刷り込むのだ。
やがて棍棒が金色の光を放ち・・・美しいハンマーに生まれ変わる。
それは世界最強のハンマー
雷神の槌
「ととと、トールハンマー???ミョン様?・・・参りました。」
それ、あなたの推しの名前とかですか?正解はミョルニルです。
どさっ。剣が芝生の上に落ちる。
魔剣レーヴァテインは気絶した。
そして女剣士は意識を失って倒れた。意識は元からなかったのかも知れないが。
時を同じくして、1ランク下の殴り合いはゴブリン勢の勝利に終わった。魔法使いミリアルドは既にボコボコにされて、服もはぎとられて、乞食のような恰好で連行されていく。コマンド~に関節技を決められていた格闘家フィオは抵抗をやめた。グラスランナーの弓使いは小柄なゴブリンたちにわっしょいされながら連れていかれた。
コマンド~がやって来て、見事な敬礼をする。そしてその右手をグーにして左胸に当てる。
「やはり、ゴーダ様は真の英雄。私共、あなた様に永久の忠誠を誓います。」
見ると、コマンド~以外のノーマルたちも右手を左胸に当てている。そんな、心臓を捧げなくてもいいんだが・・・
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玉座の間は殺気立っていた。
王様バーンは流石に厳しい顔をして魔法使いミリアルドを睨みつけた。
「懲りない奴だな。その方、もっと身の丈に合った冒険でもしておればよかろう?」
この住処もといゴブリン砦エレクツィオンはそこそこ難易度の高いクエストに設定されていることが、先の仲間割れの会話などからも分かってきた。うなだれた魔法使いに言葉はなかった。
「一般牢にでも叩き込んでおけ。」
近衛兵2名が両脇から彼をつかんで、下の階に連行して行った。あとは女性だけなので、優しいバーンになるのかと思いきや、今日のバーンは機嫌が悪い。
「あれを持ってこい。」
そう言うと、また別の近衛兵が、魔剣レーヴァテインを持って、バーンの前に奉じた。レーヴァテインは相変わらず気絶したままなのか、無言で、通常の剣のようである。一瞥してぱちんと刀身を指ではじくと、横に立つ大臣ルフトをじろっと見た。
「ルフトよ。お遊びが過ぎたな。まさかお前の作品に我らの砦が襲撃されるとは思ってもみなかったぞ。」
へ?どういうこと?
「申し訳ございません陛下。岩にでも縛り付けておきます。」
ルフトは答えるが、命を賭けて戦った俺はどうも納得できない。
「すみません。ルフト大臣の作品ってどういうことなんですか?」
「あぁ。ゴーダ君にも申し訳ないことをしたな。こいつは私が刀剣に思考型マナを供与して作成した、いわば『思考する剣』なのだ。だがまさか、所持した人間の意識を乗っ取るとは思ってもみなかった。」
「そんな危険なものが、なんで敵の手に渡ったのですか?」
「どうしても欲しい魔導書があってな。行商人と交換したのだ。あ、いやその段階ではただの『思考する剣』のつもりだったのでな。」
相変わらず気まずそうだ。
「まぁ、ゴーダ君も多めに見てやってくれ。君は周囲からの期待も含め、守備隊長に昇進だ。」
「は・・・はい。頑張ります。」
ん?これって昇進なのか?どう考えても守備隊長<近衛兵のようにしか思えない。それに、常に危険な前線に出っぱなしということにならないだろうか?
「ゴーダさんが出てくれるならば、近衛兵はもう門番をする必要はないな。ゴーダさんにお任せだ。」
近衛兵の中からそんな声が聞こえる。いやぁぁ。誰か助けて。天国に最も近いポストを用意されてしまった!
「見ろ。ゴーダが涙を流して喜んでいるぞ。」
バーンが言うと、
「私のレーヴァテインも怪我の功名というものですな。」
とルフトもふざけたことを言ってのけた。
こうして、大臣手作りのインチキ魔剣と、はったりだけのニセ神器の戦いは格の差で、神器に軍配が上がった。
そして俺は、守備隊長という名誉の死と隣り合わせの役割を押し付けられた。
強いって、損な事かも?!
武器紹介 その1
魔剣レーヴァテイン/コードネーム「レイア」
大臣ルフトが作った思考型の剣。女性的人格「レイア」として他者との意思疎通が可能である。ルフトは自分が魔神ロキの別称とたまたま同じ名前であることから、その名前を付けた。中二病のノリは否めない。元の素材がファイアーソードのため、炎を発することも出来る。




