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第6話 私ってば

~私ってば~


溜息をつきながら、サマンサの部屋に入った。


お互いにへの字眉でご対面だ。


「ど~も~。こんばんは~。」

俺はとりあえず他人行儀な挨拶をした。まだ他人みたいなものだろう。


「こ、こんばんは。」

思いつめたような表情で彼女が答える。


「まぁ、まずは座って話でもしようか。」

ソファーセットの横に荷物を置くと、俺はソファーの一つに掛け、彼女にも席を勧めた。一体どちらの部屋だか分かりゃあしない。


沈黙


くそっ。埒が明かない。


「あのさぁ、まずは君の身の上を聞こうか。」

俺は先の襲撃の際に戦いなれない、彼女の姿を観察していた。パーティー内で特に戦力外だった魔法使いその2?、それが彼女サマンサだった。魔導書のページに書かれた文章を指でなぞり、読み上げながら、もたもたと詠唱していた。・・・呪文、覚えてないんか~~い!そう俺は心で突っ込んだ。紫色の電撃魔法が一発だけ。小柄なゴブリンが一人だけ気絶した。治療の甲斐もあって彼はその後回復し、今日は風呂の掃除を担当していたそうだ。


その戦闘に使われた魔導書は、このソファーセットのセンターテーブルに「ぽん」と置き去りにされている。魔導書を開いてみる。新品のように何も手を加えられた形跡がない。ふーん。魔導書を閉じて元の位置に戻した。


相変わらず口を閉じている彼女に代わって話を進める。

「この魔導書や所作を見るに、君はなりたての魔法使いというか、そもそもただの素人にしか見えないな。」

彼女がビクッと体を動かした。

「君は、本当に冒険者なのか?」


語調が強かったのか、何なのか、彼女がぐずぐずと泣き始めた。そして、言葉が漏れ始める。

「わたし、わたし、こんなつもりじゃなかったんです。」


「君は誰かに強引に誘われて、ここに来てしまった・・・と。」

俺は当りをつけて喋った。


「そうなんです。あのインチキ魔法使い、ミリアルドに誘われたんです。」

魔法使い、男性名。バーンの手前、あらゆる物を置き去りに、パンツ一丁で逃げて行った男性の魔法使いを思い出した。


「あの、炎の使い手か?」


「はい。彼に『君は魔法の才能がある。僕たちのパーティーに加わらないか?』って誘われて。どうしようかなって迷っていたら、『いい給料出すよ』って更に言い寄られて。私もリンゴ売りの時給が安かったから、つい。」


 おいおい、一体どこの闇バイトだ。その後、彼女はミリアルドの付き添いで冒険者ギルドにすぐさま登録、初参戦したという訳だ。それも、エロいゴブリンたちの住処の攻略クエストだと知らされずにだ。

「それは酷い。こんな『うぶ』な少女を、エロの危険地帯に放り込むなんて。なんて、非人道的なんだ!」

俺の人類愛が炸裂した。


「え?」


 彼女がきょとんとしている。それもそうだ。俺の発言は一体誰の味方をしている発言なのか分からない。いや、少なくとも彼女、サマンサの味方をしている発言であるには違いないが。


だがその数秒後、


「ふふふ。まさか、そのエロいゴブリンさんにそんな風に言われるなんて思ってもみませんでした。」

彼女はついに笑った。


「まぁ、確かに俺も、『俺の立場でいう事じゃねーな。』とは思ったよ。」


「不思議。貴方は何者なの?ゴブリンさん。」

彼女の笑みは止まらない。


「ゴーダだ。そして、それを知ったら、きっと引き返せないことになるぞ。」


「それでも知りたい。知りたいなぁ。」

彼女の目がトロットしている。なんだ、なんだ、なんだ。全然いけるじゃねぇか!

そうだ、彼女は理不尽な現実に投げ込まれた自分を理解してほしかった。ただそれだけなんだ。

そんなの、俺がしつこいぐらい理解して、共感してやる。そして、思い出してもただの笑い話になるようにしてやる。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 彼女をやや横向きに抱き寄せる。繋ぎ合う俺の右手と彼女の左手。


 まるでソシアルダンスをするように。お互いのことを探し合い、音楽に身を任せるように。彼女の右の頬に自分の左の頬を当てる。お互いの呼吸がすぐそばで共鳴している。そのまま鏡台の鏡に二人の姿が入り込むように座っている位置をずらす。


挿絵(By みてみん)


「見てごらん。こんなにも君は美しい。」


 俺は言った。嘘でも誇張でもない。背中の中央まで伸びたピンクブロンドの髪。その美しい髪が彼女の動きに合わせて桃色の光の輪を生じる。紅の差した白雪のような肌。キラキラと輝く紫色(アメジスト)の目がこの俺にも、彼女自身にも魔法をかける。さぁ、この魔法の時間を踊り明かそう。


 つないだ手は離さないままに、彼女をもっと近くに引き寄せる。擦り合うお互いの鼻先が一瞬じゃれ合ったが、一気に互いの温度が届くぐらいに唇が迫った。ちょっと意地悪く、薄桃色の彼女の唇から距離を取る。切なそうな彼女の瞳。すかさず唇をそっと重ねる。喜びに震える彼女の瞳が閉じ、一筋の涙が流れる。その涙をぬぐうように、柔らかな唇の舞が彼女の上の唇と下の唇を行き来しながら包み込んでいく。


「ああっ。」


 身を震わせ、彼女の空いている右の腕が俺を強く引き寄せる。より強く当てられた唇の合間から、彼女の舌が滑り込んでくる。しなやかで、桃色の高級な果物のようなその舌を堪能する。意外にも長い、その美しい舌を根元からその先端まで愛し尽くす。


「はあっ、はあっ。私ってば、舌が長くて、とっても恥ずかしいの。はっ。はっ。」

「何を言ってやがる。こんな美しいものを隠し持っていて、何が恥ずかしいだ。」


俺は軽く叱ると、さらに執拗にその舌を愛して回った。その輪郭を舐め上げ、舐め下ろし、その全てを包み込んで擦り上げる。


「すごい、すごいよぅ。」


乱れた呼吸が苦しくて、彼女が逃げる。逃がさない。再び彼女の唇と美しい舌を捕まえると。同じように蹂躙を繰り返す。繰り返しながら、彼女のボディラインも開放していく。ヴァレリアと比べてこそやや小ぶりなものの、しっかりと形よく、張りのある彼女の胸を両手で包み込み、掴み上げ、揉み解してゆく。


「ああああああっ。」


再び彼女が身を震わせた。刺激に敏感な若い体。未熟な体に何故男たちが夢中になるのかが分かる。それは可能性の結晶だからだ。未完成なアイドル。未完成なアーティスト。未完成な女神たち。その先の可能性、輝く結晶にこそ夢を見るのだと。


「はぁ、も、もう、ゆるひて。」


 超絶な体験に少し音を上げ始めている。大変だろう、でもこれで終わりじゃないんだ。別段、フィニッシュに持っていくことだけが男と女のコミュニケーションの全てじゃない。触れ合って心地よさを感じて。そんなスタイルだってある。


 だが今晩は二人にとっての初夜だ。その足跡を残さなければならない。


 そして、グッド・ルッキン!の奇跡が空になっている今、是が非でもチャージをしておきたい。


 だから許せ。少し強引だが、全力で最後まで奪いに行く。


・・・


 いよいよ最後の一歩手前まで来た。


「痛いのかな?痛いって言うよね?怖いな。」

彼女は怖気づいているようだ。


「無理はしなくていいよ。やめるかい?」

そう意思確認をすると、彼女は天邪鬼に首を振った。


 じゃ。ゆっくり、でも確実に腰を沈めていく。パチッと何かが爆ぜたような気がした。彼女は目を瞑ったままでいる。だからこちらもそのままで瞑想するように心と体を鎮めた。どれだけしてからだろうか、ゆっくりと体を離すようにして、またゆっくり体を近づけた。ゆっくり、ゆっくりほぐすように続けてゆく。


「はうっ。」


 驚いたような声を彼女が上げるが。もう痛がったり苦しがってはいないようだ。大丈夫。後は好きにさせてもらう。少しずつスピードを上げてゆく。お互いの心の臓の脈動に合う速度まで、その速度を目指して加速する。彼女も必死にそのスピードについてくる。あっ。あっ。高鳴る声と鼓動。


 来る、また来る。その力が、俺の体の奥の芯から湧いてくる。


 ぐっ、ぐっ、グッド・ルッキ~~~~ン!!!


 もう彼女は大丈夫だ。自信を持った艶やかな女の腕で彼女が俺を抱きとめる。いつの間にかイイ女に成長したじゃねぇか。


 予想外に次ぐ予想外。まさかの大成功に心が完全チャージされたのは俺だけじゃないだろう。


 二人は固く体を寄せ合いながら、深い眠りに落ちて行った。

人物紹介 その5


サマンサ


 街でリンゴを売っていた少女。怪しい魔法使い、ミリアルドに「いい時給のバイトあるんだけど。」と誘われて冒険者に。魔法の素養はあったらしく、魔導書を読み上げると魔法は発動する。ただ、呪文を覚えていないので、魔導書をあたかも辞書のように扱う。

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