第33話 勇者パーティーを追放・・・
第33話 勇者パーティーを追放・・・
-魔王討伐を手伝ってほしい-
勇者が俺たちに頼み込んでいる。勇者パーティーを追放される奴は他の世界線では数知れないが、勇者パーティーに頼み込まれた奴っていただろうか?いえーい。俺が初なんじゃね?
「勇者パーティーに頼み込まれたので、魔王討伐に参加してみました!」・・・おう。普通過ぎるじゃねえか!何の捻りもない。
ではなく、共闘してほしいという事なのかな?まぁ、続きを聞いてみましょう。と思ったら、横やりが入る。
「ちょっと待てよ。イスカンダル。コイツら、まだB~D級の中級~初級の冒険者じゃないか。そんな相手にナニ頼み込んでんだ!」
やんちゃそうな獣王エルザが声を荒げた。ワーウルフ・・・じゃない。彼女もヒルダさんと同じコボルトだろうけれど、よりワイルド感があるなぁ。色も浅黒くて、若干うちのヴァレリアとキャラが被る。もっともヴァレリアは知的で落ち着いている感じもあって、それにもかかわらず、俺に盲目なところが最高なんだが、冒険者としてはC級だ。彼女、エルザも当然A級。クラスはバーン王と同じグラップラー。格闘家の上位クラスだ。
「まぁ待て。彼らは冒険者になりたて、復帰したてなのだから、クラスが低くて当たり前だ。ランクやレベルなんか、じきに上がるさ。僕の特殊能力で分かるが、彼らには資質がある。とくに僕と同じ転生者、ゴーダ君の資質はとてつもない。」
イスカンダルは手で遮るようにして説得する。
「うむ、そうか。そうなのか?」
まだ何か燻ぶっている感じだが、一応エルザは収まった。しかし俺自身もエルザと同様の疑問を客観的に感じている。俺たち、勇者パーティーに比べたら、今は相当に弱いだろうけれど?
「私のパーティーはまだまだ全体的な底上げが必要です。それに性質柄、直接攻撃には強いですが、魔法攻撃には穴がある。そんなものでお役に立てるでしょうか?」
「むしろ見込んだ通りだ。僕のパーティーでは、僕以外は直接攻撃に対してかなり貧弱だ。一方、魔防においてはエルザを除いてかなりの自信がある。」
イスカンダルは目を輝かせた。
「うっ。」
対照的に、エルザは苦い顔をしている。
勇者、マスター・メイジのアナスタシア、ビショップのルクレツィア、スナイパーではあるが、エルフと言う種族上、魔防の高いカチュア。エルザ、大丈夫か?勇者パーティー、追放されるんじゃねえぞ。徳の高そうなイスカンダルが、しかも婚姻まで結んだ相手をそんな酷い扱いにするとも思えないが。
「本当に、直接攻撃に対して固いのは僕だけなんだ。エルザもカチュアも回避能力は高いが、一発食らうとデカい。」
付け足すようにイスカンダルは言う。エルザがどんどん小さくなってゆく。エルザ、やばくない?というか、格闘家系が潰しが利かない系統なのかも知れないが。
「なるほど。二つのパーティーでそれぞれ得意なカードをこなしてゆけば、楽に先へ進むことが出来ますね。」
「それがまさしく狙いなんだ。ゴーダ君なら分かって貰えると思ったよ。」
「それで、いつ頃の討伐開始を目標にしましょう?」
「2週間と2日後、水竜の曜日が『寅の日』でもある。旅立ちには最高の日取りだ。」
また出た。東洋的オカルト。それに水竜の曜日って、普通に水曜日でよくないか?
「了解しました。」
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こうして、エース軍×エロス軍の会談が終了して、ギルドの受付に戻ってくると勇者様一行は「じゃ、討伐に出るぞ~。ヒルダさん、ありがとうございました!」とそそくさと出て行った。勇者様狙いの女冒険者たちはあっけに取られている。こちらも多少食わされたような気持になったが、切り替えよう。
掲示板を5人で見に行く。背の高い美琴は皆に前を譲って、前かがみになりながら貼り紙を覗き込んでいる。なんだかんだで、女性ってさりげなく気が利くなぁ。
-腐れ外道狼の討伐-
①場所 ポルジオの森
②分類 討伐クエスト
③等級 中級クエスト、B、C級推奨
④内容 ポルジオの森に『姉たちの贈り物』の1体、『腐れ外道狼』が出現した。周辺住民の被害、ポルジオ茸採集中に襲われる、等の被害が拡大している。勇気ある冒険者諸君の検討を期待する。討伐対象は攻撃力、スピード共に高く、氷結魔法も使う難敵であるとの情報を得ている。
⑤報酬支払 冒険者ギルド/ポルジオ茸採集者ギルド
おお、昨晩食したポルジオ茸の産地がピンチだ。皆様が望む、魅惑の夜の扉が閉じられてしまいかねない。これは早急に対処せねば。ランク的にもちょうどいいねぇ。
「ポルジオ茸がヤバいよ~」
「世のため、人のため、頑張りませんとね。」
妻たちも同じ気持ちのようだ。
迷わずその貼り紙を受付に持ってゆくと、ヒルダさんが応対してくれる。内容を見たヒルダさんは顔を顰めつつ、
「何だか、私の下位互換みたいな魔物ね。」
と討伐対象の事を指して言う。俺は思わず笑ってしまった。「ヒルダさん、お茶目!」ヒルダさんも釣られるように笑い始めた。
「そんな。ヒルダさんとこの魔物は全くの別物です。私たちは一切手加減せず叩きのめしてきますから、ご安心ください。」
真面目一徹で受け流す美琴。俺の前に美琴が割り込んだせいで、ヒルダさんが全く見えない。おい、どうした。気が利かない奴め。いや、あえて邪魔されている?そうか、エンカウント・セクロス防止か。ううむ・・・
モヤモヤした気分のまま出発するのだった。
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街に出ると、見たことのある猫耳の女性が店番をしている。
「あら、ルル。今日はここの当番なの?」
ヴァレリアが声を掛ける。ギルドの酒場店員もやっているルイーズが今日は街で働いている。懐かしいことに、コーデリアと一緒に食べたホットドッグ?の屋台だ。
「ええ、しのぎが足りなくて。ほんと、ブルストサンドの作り方ばかり上手くなっちゃって、困っているのよ。買っていくでしょ?」
討伐に出るのに、昼食の事を考えていなかった。売り子さんも押しが強く、大変に商売上手である。にしても、勇者パーティーでもない、一般のパーティーを追放された人がここにいる。哀愁を感じずにはいられない。手際よくサンドを作ってゆく器用な手先とうっすら汗の滲む項を見ていたら、俺のブルストもむくむくとお元気になってしまった。その反応を見て、ヴァレリアは溜息をつきつつ、苦笑いをしていた。
-姉たちの贈り物-
この世界、フューチュリアの人達は知っている。フューチュリアの全てを司る至高神、女神スクードは実は三姉妹の末妹で、二人の姉たちはこれまた別の世界を統治している。その姉たちは妹が作ったほんわか世界を、「スリルが少ない」「エンターテインメント性に欠ける」と言って、危険な魔物たちを次々にこの世界に寄贈してくれるのだ。魔物たちは幼稚な自我を持っており、勝手にフューチュリアの各地で暴れ回っている。一般住民にとっては迷惑この上ない。だが悪い事ばかりではない。寄贈された魔物は神の魔力で創造されたものであり、これを倒すと、その核である魔力の結晶、スフィアを残してくれる。そのスフィアが生活を便利にしてくれていることは、今までの生活でも身に沁みている。危険な災害でもあり、資源でもある・・そんな魔物を狩るのが冒険者の生業の一つだ。
ポルジオの森
鬱蒼と木々が生い茂り、場所によっては薄暗いひんやりとした森林が広がっている。ただ地形はなだらかで、移動は容易。エンカウントの雑魚モンスターも大したレベルではない。腕慣らしには最適だ。先程女性4人の冒険者パーティーと遭遇して、軽く会話してきた。物欲しそうに俺を見る女性冒険者たち。彼女たちは少し先の、ヌルム大平原に向かうそうだ。
そういえば、ヴァレリアはあまり積極的に彼女たちと俺の交流を邪魔しなかったな。
しばらくすると雑魚モンスターが出現する。サマンサの4連撃サンダーで全滅だった。
グリーンスライム×4
HP 120
MP 44
戦闘能力値(MAX:255)
STR:44
INT:13
DEX:20
SPD:48
DEF:72
MNT:42
ああ、スライム汁の原料ね。雑魚との戦闘と言うか、草食動物の狩りを成功させた気分だ。その後も食虫カズラや殺人兎といった雑魚と遊んでやった。昼になったので、ブルストサンドで昼食を摂りつつ、休憩した。食べ終わって、周囲を見て回る。まだ討伐目標までは距離がある様子だ。森の感じが、とても穏やかだ。こんな第六感を持っているあたり、俺たちゴブリンはやはり、本当は「グリーン・エルフ」なんだろうか。ノリス博士こと副守備隊長の言うとおりに。
茂みの中から声がする。妻たちが女子生徒のように連れ立って御手洗いをしていらっしゃる様子だ。
ちょっとエロい気持ちになり、ブルストがふるんっとそそり立ったが(男性の共感率は8割ぐらいありそうだが)、いかん、いかん。品性を立てよう。その場を去ることにする。音を立てず、抜き足差し足で去ろうとするが、そのぶん会話が耳に入ってしまった。ヴァレリアとサマンサのようだ。
「ヴァレリアさん、ゴーダ様のことは自由にさせるんですか?」
「そうね。今朝まで必死に露払いしてきたけど、旦那様にはストレスかなって。」
「そしたら、女性に手を出しまくって、ヒットポイントが・・・」
おいおい。出しまくるって・・・そんなことは・・・多分ないよ!?
「ジョスリンさんの店でいっぱいポーションも買っておけばいいでしょ。」
「まぁ、そうですけど、本当にいいんですか?」
「いいの。あんまりギチギチやると、私たちが鬼嫁みたくなって旦那様に嫌われてしまう。だから方針転換よ。」
「そっかぁ。ヴァレリアさんは偉いなぁ。私なんか自分の事ばかりになって、相手の事を考える余裕もないんじゃって。」
「そんなことないわ。サマンサさんは旦那様の役に立つために魔法を頑張って来たじゃない。」
「えへへ。ありがとう。」
なんかズルをしたようで、少し後ろめたい。
でもとてもいい気分になった。
しかし、ヴァレリアは二人っきりの時には「使徒様」、公衆の面前では「あなた様」、三人称では「旦那様」と忙しいな。細やかな気配りのできるヴァレリアならではなんだと思う。
先にキャンプ地に戻ると、退屈気味の美琴とノルンが目を向けて来た。
「ゴーダさん。『へなちょこ狼』と戦う前に皆の能力も確認しておきましょうよ。」
ノルンだ。名前が違っています。
「カンスト目指して頑張らないと、魔王にさっくり殺られかねないぞ、ご主人様。」
カンストって、やり込みゲーマーみたいなことを言ってくれるわ。吹いた。
「では早速美琴から。」
ノルンの手鏡で美琴の能力値を一緒に覗き込む。顔が近いというか、頬をくっつけて手鏡を覗き込む。あぁ、君はこんなにも綺麗だ。いい匂いがする。くらくら・・・じゃなく。
名前:美琴
職業:侍マスター
LV:26
HP 3320
MP 155
戦闘能力値(MAX:255)
STR:145
INT:88
DEX:146
SPD:132
DEF:153
MNT:90
俺のブルストの節操なさのおかげで、話が進まない気がする。気のせい、だろうか?
人物紹介 その24
ルイーズ(ルル)
ヴァレリアと同じアンモニオン出身のワーキャット。年齢はヴァレリアの一つ下。俊敏さと器用さを生かすために弓兵となったが、骸骨だらけの平原で役に立たないという理由でパーティーを追放された。俊敏さと器用さを生かして、今はあちこちで調理スキルを爆上げしている。




