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第32話 エース軍×エロス軍



第32話 エース軍×エロス軍




 ノルンとの実験が概ね1時間半ぐらいかかり、下の居間ではまったり(ぐったり?)した他の妻たちがいた。


「あ、お疲れ様。結構時間がかかりましたねぇ。」

 サマンサが声を掛けて来る。


 持って来た焼き菓子をポリポリ齧りながら、ヴァレリアと美琴がこちらに濁った目を向ける。多少待ちくたびれた感がある。


「何回も何回もお楽しみで、羨ましいです。出発が明日だったら、私の番だったはずだったのに。」

「ご主人様は無限回数出来るはずなので、このまま順番に楽しむか。」


「こらこら。さっきまでの賢明で素敵な妻たちはどこへ行った?実際試してみたところ、ヴァレリア達の想定通りだったんだ。」


 俺はなるべく第1~第3夫人をムラムラさせないよう、端的に研究結果を報告した。


「へええ。あまりプレイスタイルで差が出ないものなんですね。」

「女性側もどうなっているか気になりますね。」

「相手によっても違うのだろうか?これはより詳しく調べる必要があるな。」


 謎の研究チームが発足しそうである。頼むからやめてくれぇええ



「あ、あのさ、明日からは本当に気を付けるよ。とりあえず、明日からは冒険者稼業の開始だし、気晴らしに飲みに行こうよ!」

 俺は変な流れを切りたくて、必死で提案した。


「おお、いいねえ。飲みなら、毎日でもいいぞ、ご主人様。」

 美琴だ。昨日も大概飲んだろう?


「いいですわね。街に戻るの久しぶりだし、楽しみ。」

 可愛げあるサマンサ。


「ギルドの酒場じゃなく、普通の街の酒場にしましょう。」

 昼間の事を考えてか、提案するヴァレリア。


「おお、俺もその方がいい気がするな。」


「私、今日だけは教義を忘れて皆さんの楽しみに付き合いますわ。」

 ノルンだ。自由過ぎて、教義なんてものに縛られているようにはこれっぽっちも見えない。


 こうして、俺たちは街に繰り出した。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 馬屋と同じブロックには商人や旅人たちを中心とした客をもてなす酒場が何軒も集まっている。そのうちの一軒、「山猫亭」を選んだ。やはり商人の全体数が普段よりも少ないせいか、予約などしなくても5人席を占領出来る。「美味しい肉料理と山菜料理、コクのあるエールを心行くまでお楽しみください!」とお品書きの表紙に書かれている。


 ああ、インテリゴブリンの俺様はこの世界の文字は何でも問題なく読み書き出来るのだ。


(ふんぞり返るゴーダ)




 ・・・明らかに心優しい女神様のご加護だ。


 スクード様、お慕い申し上げております!




「どれもこれも美味しそうじゃないか!」


 お品書きを見ただけで、素敵な物が出てくることが想像される。


「いいですねえ。いいですねえ。」

 サマンサも涎を垂らしている。


「これなんか、とてもいいんじゃないですか?」

 サマンサは怪しい目線で俺を挟んで反対側にいるヴァレリアに話しかける。


      <宴会席次>


      ノルン 美琴


   ヴァレリア   サマンサ

         俺

    


「ポルジオ茸のクリーム煮、パイ包み。『甘く香るポルジオ茸は一口食べれば精力抜群。魅惑の夜の扉が、今開かれる』ですってよ、ヴァレリアさん。」


「ほんと。とってもいいわね。サマンサさん。しかもパイ包みですって。意味深ですね。」


「・・・」

 ダメだ。こいつら。


「ご主人様は私のパイ包みを存分に楽しまれたからな。ちょっと飽きてしまわれました?」


「え?美琴さんのパイ包みですか?俄然興味がわきますね。」

 ノルンも変な方向に話を持って行こうとする。


「ままま。そのパイ包み、注文しよう。まずは乾杯だ!」


「皆さん、ジョッキは回りました?では、チーム・ゴーダ誕生を祝って、乾杯!」「乾杯!!」


 ヴァレリアの音頭で、元気よくジョッキがぶつかり合った。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 宴は続いていた・・・昨日のエロい宴の事じゃない。楽しい普通の酒の席だ。最近何でも言葉尻をエロの方向に捕えてしまう。間違いなくゴブリンの職業病だ。ポルジオ茸はぶなしめじによく似た、ごく普通のキノコだった。ポルジオ茸よりも、たっぷり入ったベーコンの塩味とうま味の方が俺には主役に感じるよ。酒にも合うな~。


「おいしいですね。あなた様。」


「ほんとだね。お世辞じゃなく『美味しい』って言えるのは何より幸せだ。」


 そんな会話をしていると、店員さんに案内されて俺たちと同じ、5人グループぐらいの集団がすぐ後ろの席に座る。


「なぁ、イスカンダル、今日は好きに飲み食いしていいんだろ?」

 やや男っぽい女性の声が聞こえる。


「ポイズンドラゴン討伐祝いだ。今日は好きにやってくれ、エルザ。」

 若い男性の声だ。


「やったああああ!」


「勇者様、いつも豪気ですわね。」

 甘ったるい、しかし同時にしっかりと芯を感じさせる声だ。


「ルクレツィア、頑張った妻たちに楽しんでもらうのは当たり前だろう。」


 なんか、イイ感じのハーレム集団だな。聞き耳を立てながら思った。男1人に妻4人。どこかと構成が一緒だ。でも名前に何だか聞き覚えがあるな。イスカンダル、ルクレツィア、S級冒険者・・・あーーーっ!!


 後ろをチラ見すると、白銀の鎧の肩当に紫色のワッペンが見える。ダサい。いやいや、紫色、S級冒険者。間違いない。噂に聞く勇者パーティーだ。


 でもいきなり話しかけるのもなんだか・・・。向こうは討伐祝いとやらで盛り上がるんだろうし、邪魔はしないでおこう。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「だいたいれすよぉ。皆さんはおっぱい星人じゃないれすか?私一人ですよ、蛇舌星人。」

 サマンサがとぐろを巻き始めた。一体どんな星人だ?


「あああ。まぁ、サマンサさんの蛇舌は誰もが羨むものだよ。自信を持っていただいて・・・。」

 酒豪でしゃきっとしたままの美琴が諫めている。珍しい光景だ。


「そうれすかぁ?美琴さんのパイ包み、いいなあああ。」


 またパイ包みの話に戻って来た。


「ああ、あれはですね。あれはおっぱいがどうの、というより、体のサイズの問題で。ご主人様は私より上背がないので。だからこう、組み合った時のサイズ感で、こんなふうに。」


 身振り手振りで詳細に説明する美琴。乗せられてんじゃねぇよ!


「いやああん。えっちいいい♡」


「アンダーバストをぎゅっと締め上げられたときの征服された感なんて、もう、ゾクゾクする♡」

 真っ赤な頬に両手を添えて、美琴は体をゆすっている。


「なるほど、それが『お義母さんと僕』なんら。いいらぁ。じゅるっ。」

 片方の口から少し涎を垂らしながら、サマンサが言う。


 いやはや、会話がどぎついな。


「すみませーん。」

 隣接した席から店員さんに声がかかる。


「あのですね、あちらの席の方たちの会話がエロ過ぎて・・・」

「ムラムラなさったんですね?」

「じゃなくて、しっかり注意してもらえませんか?」

「分かりました。皆さんも健康的に楽しまれたいのですよね?」

「そうよ、宜しくね。」

「はい。畏まりました。」


 店員もやや天然ボケだが、ちゃんとその後注意しに来た。


「出ようか?」俺が言うと、「じゃあ、私お会計してきますね。」とヴァレリアがカウンターに走った。残った俺たちもそそくさと席を立ったが、ふらついたサマンサが隣の席の白い鎧の男に・・・


 どんっ


「おおっ。大丈夫かい?」

 被害者は優しく気遣ってくれた。


「すびません、すびません。」

 ひた謝るサマンサや俺たち。だが、


「その出で立ち、君たちも冒険者なのかい?」


 若い男が順番に俺たちを見る。俺と勇者は目が合った。


「あ~~!!順番が次の人!!」「あ~~!!前で受付していた人!!」


「え?受付?」

 横にいた神官、おそらくビショップのルクレツィアが怪訝な顔をする。


「あ、いやいや・・・。人違いだ。」


 勇者はその場を凌ごうとする。俺もそれに合わせるように、うんうん頷く。またまた大声を出したせいで、周囲の多くの目が集まってきている。この場ではあまり込み入った話は出来ない雰囲気だ。


 そんな感じで、とりあえず誤魔化しつつ、俺は思い出していた。


 そうだ、異世界転生の手続きをしたスクードの部屋。星空のような模様の部屋。俺の目の前にはくたびれたスーツ姿の男性が立っていた。転生作業をしている真横に出現したらしい俺はスクードに叱られて、彼の後ろに並んで順番待ちをしたのだった。彼は剣士として異世界に旅立った。希望は勇者だったが、「クラスチェンジすれば勇者になれるぞ」という女神のアドバイスを受けて、素直に受け入れて旅立ったのだ。そうか、頑張られて、本当に勇者になったんだ。何か妙に感動した。


「それはそうと、君も随分腕が立ちそうだね。ちょっと相談したいこともあるから、明日、この街の冒険者ギルドで会わないか?」


「私なんかでよければ、もちろん宜しくお願いします。午前中には行くと思いますので。」


「分かった。僕はイスカンダル。挨拶がてら朝からお邪魔しているから、10時頃来てくれないか?」


「畏まりました。あ、申し遅れましたが、ゴーダといいます。」


 高いお会計を支払った太客だったため、出禁にこそならなかったものの、恥ずかしい思いで退店した。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 翌朝、冒険者ギルドに着くと、異様な人だかりが出来ていた。


 彼の4人のパーティーメンバーが周囲をガードしているが、厚かましい女冒険者が次々と勇者イスカンダルにちょっかいを出す。触れようとする。


「キャアア~~!!勇者様ぁ!」

「こっちに目線下さい!」

「今朝は何食べて来たんですかぁ?」

「好きな本は何ですか?」

「遊びに行くなら、どこに行きますか?」


 それに対して勇者イスカンダルは慣れたもので、


「何も食べてないよ」「それはナイショ」何を聞かれてものらりくらりな感じだ・・・一体どこの最強アイドル様だ!一番星の生まれ変わりか?ああ?


 それでも徐々に疲れて来たのか、俺たちの到着に彼はほっとした顔を見せた。


「ゴーダ君こっちだ!ヒルダさんから応接室をお借りしている、行こう!」


 エース軍もエロス軍も逃げ込むように応接室に駆け込んだ。



     <応接室席次>


 エース軍       エロス軍


 星読み アナスタシア 巨姫 美琴

 聖女 ルクレツィア  蛇舌 サマンサ

 勇者 イスカンダル  艶王 ゴーダ

 獣王 エルザ     妄信 ヴァレリア

 天弓 カチュア    邪道 ノルン


 それぞれのパーティーの面子が一堂に会した。こちらは通り名が悪の親玉と四天王のノリではないか?!


「はぁ、正直辛いものがあったよ。」

 と勇者。


「大人気ですね。当然でしょうけども。」

 俺も人気では悔しいが負けた。


挿絵(By みてみん)


 ふうっ。ため息をつきながら、イスカンダルは俺の顔を眺めた。彼の顔の人相や髪型はスクードの部屋そのままだったが、黒髪・濃い色の目から炎のような赤髪と深い碧眼に切り替わったルックスがファンタジー世界の主役らしい風格を備えている。


「なんというか、ゴーダ君も面白い見た目になったものだね。顔が変わっていたら、分からないところだったよ。」


 確かにこっちは緑色の肌だ。背も少し縮んでゴリマッチョに。


「本当ですね。あ、どこまで話していいのでしょうか?」


「大丈夫。うちの妻たちには僕の転生や元の世界のことなどもちゃんと話してあるから。」


 イスカンダルのパーティーメンバーもみんなお手付き、いや、ちゃんと奥さんだった。


「良かったです。やはり大切な相手との秘密の共有は重要ですね。」


 多少話せている細かさの差はあるが、美琴に至るまで、大切な妻たちと転生関連の情報は共有している。美琴にも一昨日の晩に寝物語で転生の話などを伝えた。彼女は俺が『元倭人』だと知ると、狂喜してプラス一回戦が発生してしまった。今朝も「好きすぎて滅殺!」とか物騒なことを言いながら、庭で素振りをしていたなぁ。


「ゴーダ君のパーティーメンバーも皆奥さん達なんだ。絆は万全だ。」


 イスカンダルは見回した。うちの奥様方はみな顔を赤らめてコクっと頷く。それを見て、イスカンダルは続ける。


「僕は勇者と言う性質上、魔王を倒すのが使命だ。だが現状不安を抱えてもいる。


・・・そこでお願いだ。魔王討伐を手伝ってほしい!」




人物紹介 その23


勇者イスカンダル/泉貫太(いずみ・かんた)


誠実で丁寧に業務をこなしてきた社畜。歪んだ現代日本でそれは評価されず、金なし、女なし、運なしの悲惨な人生を歩んでいた。睡眠不足からの心不全で若くして亡くなる。フューチュリアに転生した彼には素晴らしい異世界ライフが待っていた。当然だ!

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