第3話 戦利品の分配
~戦利品の分配~
「あ。私は無理だな。奥さん、4人おるし。」
ゴブリン王バーンへの逆指名に失敗した戦士、ワーキャットの女性は口をあんぐりと開けた。
「すまんな。だが、安心せい。うちには元気のいいのが沢山おる。例えば後ろにいる奴でどうだ?」
「へっ?」「え?」俺とワーキャットの女性が同時に声を上げた。
彼女は振り向いて俺を見た。途端に俺は目を逸らしてしまった。
いきなり目を合わせるなんて、そんな。ぽっ
しばらく彼女は俺を観察していたが、「わかりました。」とボソッと言った。
俺は心の中でガッツポーズをした。一体どんな『棚ぼた』だか分かりゃぁしない。
正直、初めて見た時から思ってたんだよな。何となく美咲に感じが似ているんだ。ぽっ。
彼女の返事を聞いたバーンが、まるで教会の司祭のように両手を広げて言う。
「ここに戦士ヴァレリアと近衛兵・・・名前なんだっけ?」
「ゴーダです。」
「近衛兵ゴーダの結婚を認める。」
周囲から拍手が沸き起こる。
やばいよ。母さん。異世界に来て、俺、いきなり結婚しちゃったよ。涙がちょちょ切れた。
その後、エルフの弓使いベアトリクスは近衛兵長モズに嫁ぎ~の。
法術師のノルンは大臣ルフトの第2夫人となった。
ノルンは白い法衣(体の線が分かりやすいシスター服に似ている)を着ている妙齢の女性だ。
スタイルも抜群で、ゴブリンたちのいやらしい目線に晒されている。
だが、意外にもルフトはあまり喜んでいる風には見えなかった。
最後に魔法使いその2?が残された。
「う~ん。君は年齢的に引っかかるんだよね。サマンサ、君はいくつになるんだ?」
「15になります。」
「人生設計的に、相手はある程度年齢が近い方がいいな。」
バーンは今度は結婚相談所の人みたいなことを言う。
「よろしいですか?陛下。」
ルフトが横から口を挟む。
「なんだ?」
「例えばですが、一旦私の養女にして、それから誰かに再分配などすればどうでしょう?」
「はっはっは。それは・・・ダメだな。」
今までの優しい表情のバーンから、乾いた笑い、そして鋭い顔つきへと三転した。
細められた目からはビームでも飛び出しそうな勢いだ。
「だ、ダメですか?」
ルフトはたじろいだ。
それで、俺にはピーンと来たね。ルフトはきっとロリコン趣味があるね。間違いない。
まぁ、でも異世界なんだから、うるさい規制とかも気にしなくていいんじゃない?
少なくとも俺は理解のある方だけど。
「サマンサの代わりに、お前には魔法使いが置いていったものを一式やろう。」
「分かりました。でも、魔導書だけで結構です。あとは自分のアイテムの方が上級です。」
「よし、とりあえずお試し結婚ということで、ゴーダに預けるか。
サマンサはゴーダの許嫁とする。」
「へっ?」「え?」俺とワーキャットの女性が同時に声を上げた。
ぱちぱちぱち。先ほどよりもぬるい拍手が起こる。
何だかよく分からないが、嫁さんと~許嫁が~できた~。
そして、王様バーンが大臣ルフトに厳しかったのもよく分からない。
分からないことだらけだが、まだ転生して初日だった。流れに乗っていこう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ゴブリンの住処において、それぞれの妻は自室を与えられる。
そして、妻もちのゴブリンはその部屋を渡り歩き、自室は持たない。らしい。
俺の部屋に戻ったら、既に別のゴブリンが荷物を運び入れていた。
俺は、転生して1日足らずで、元の部屋を追い出されることとなる。
「元の部屋」というのもおかしい。持ち物も最小限のものしかない。
きっとあのツンドラ女神がピポパポ適当にデータ入力をして部屋、持ち物を設定したのだろう。
「ゴーダさん、うらやましいなぁ。」
俺の部屋の占領を着々と進めながら、のんびり顔のゴブリンが頬を染めて、
勝手に俺の「妻身食い(つまみぐい)ライフ」を妄想している。
「だけどよぉ。たまには自分の時間だって欲しいだろうがよ。」
さらに、行く先が建前上でも自分の部屋ではない。
妻を「ご馳走様」できるのはたまらねぇが、人の部屋に居させてもらう居候感もあり、
ちょっと居心地が悪いようにも思う。
はっ。ひょっとしてこれがマリッジブルーというものなのか!
俺は悟った・・・が、ふと横を見ると、のんびり顔が少し渋い顔をしている。
「そんなこと言っていると、成長しませんよ。」
俺はモブに諭された。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
第一夫人、ヴァレリアの部屋
第一夫人がヴァレリア、第二夫人がサマンサということになるのだろうか。
サマンサは「お試し」「許嫁」なのだから、現在のところはこの女が唯一の妻だ。
俺様はゴブリン。いずれどんどん増やしてハーレム生活よ。ふはは。
「荷物はそこに置かないでくれるかしら?」
「はい。すみません。」
「テーブルの位置を変えたいから、手を貸してちょうだい。」
「はい。こっちを持てばいいかな」
「ふぅ。いい感じになったわね。」
「そうだね。これでやっとゆっくり楽しめるね。」
「まあ待って。」
話がそこで止まった。話というか、「ご馳走様」に持っていく流れを絶たれた。
うぐぐ。
「わたし、まだ貴方の事、なにも知らないんだけれど。」
それはご尤もだ。
「俺はゴーダ。近衛兵に先程なった。それまではノーマルだった。
それから、それから・・・え~っと。え~っと。」
何も情報がない。これは異世界転生の話をするべきなんだろうか?会っていきなり?
「?」彼女も首をかしげている。
「一旦君を抱いてからでもいいかな。その方がするっと込み入った話も話しやすいんだが。」
そうだ、そうすれば自然と話せる流れになる。
「それが嫌だって言ってるじゃない。話してくれたら・・・むしろ全然いいよ。」
彼女は顔を赤らめる。
言えないことはあるにせよ、核となる部分は誠実でないとな。
「お伝え出来ることがないんだ。本当に生まれてすぐなもんで。」
「ウソ。ちゃんと喋れるし、何でも知ってそうじゃない。」
何だか女性ってそういうところ、勘が鋭い。
「噓じゃない。女神に最初からそう作られて生まれて来たんだ。」
「!! 貴方は『使徒』ってことなのね?」
急に彼女の瞳に興味の光が舞い込んだ。
一番に頭に浮かんだのは、エ〇ンゲリオンに出てくるヘンテコ物体だったが、そうだな、
中世的なこの世界の事、天使様みたいなものだろう。
前世では、俺は悩み多き女性たちの天使様みたいなものだ。
「自分でそうだ、と言える確証もないんだが、そうかも知れない。」
がばっと彼女が抱き着いてきた。
「『使徒様』、私に聖なる力をお注ぎください!」
キタキタキタ~~!!
「おお。いいとも。『性』なる力を感じるがよい。」
初めて彼女としっかり見つめ合った。やっぱり抜群にかわいい。オレンジ色の瞳に細かい星が散りばめられ、その中に俺自身が浮かんでいる。彼女の瞳の宇宙に取り込まれたようだ。ミルクティーのようなしっとりとした色と質感の肌。形の良い胸から腰のライン、お尻から膝に至るまでのバランスが例えようもない。引き締まったお尻の先に猫の尻尾がゆらゆらと揺れている。
一度離した体を優しく抱き寄せ、羽が触れるように優しく口づける。天使の羽のように。
しっとりした唇を感じるように擦り上げる。擦り当てる。
やがて、切なくも物欲しい気持ちを露に吸い上げる。ちゅっ。
一度また顔を離す。真っ赤に頬を赤らめた彼女の顔が見て取れた。
「素敵」
うっとりとした目で彼女が言う。
更に強く引き寄せて唇を味わう。弾力のある果実を弾くように、つまみ上げるように堪能する。
唇を味わいながら、彼女の髪に触れる。絹のように滑らかな栗色の髪。何て心地よい手触りなんだろう。
無心になって撫で回す。
彼女もこちらの髪を撫で回す。はぁ、何という快感だろう。頬にも、耳にも触れてくる。
やがて高い耳の先にも。「ホフッ」そ、そこは弱いんだ。
悪戯っぽく彼女が笑った。
やったな。この野郎。こちらも猫耳を優しくつまんだ。「ひゃん!!」
何て濃密な時間なんだろう。男に生まれて、こんなにも喜びを感じる時間が外にあるだろうか?
執拗に唇を奪いに行く。さらに激しく、より湿度を上げてそれは繰り返される。
恋焦がれていた舌をなめ上げる。吸い上げる。
いやらしい俺の両の手は、吸いつくような彼女の肌を撫で回す。
たわわに実った両の乳房を鷲掴み、擦り、撫で回し、彼女のリンパの流れと心を開放してゆく。
お互いに隠し持っていた素晴らしいものを愛で合い、触れて、味わう。
切なさが既に限界に達している。
「来て。」
彼女の誘うままに、彼女の中に入っていく。
おおお。体の芯が熱い。心と同時に全身が溶けてしまいそうだ。
二人の呼吸、リズムが高鳴り、どんどんシンクロ率を上げていく。
近づいている。最後の時が!
ああ、いまそこに、そこに手が届きそうだ!
ぐっ、ぐっ、グッド・ルッキ~~~~ン!!!
・・・・
「ユニークスキル、『グッド・ルッキン!』が発動しました。」
快楽の大空を飛翔するその身に、ツンドラ女神が録音したらしき音声が聞こえてきた。
だが今は、それはどうでもいい。
美しい彼女の体に自分の体を重ね恍惚の表情で、俺は微睡んでいた。
人物紹介その3
ヴァレリア
ワーキャットの戦士。頑張って鍛えてはいるものの、もともとの腕力が足りず、大剣に振り回されている。抜け目ない性質もあり、楽していい生活が出来ることを夢見ている。夫であるゴーダのことを「使徒様」と呼び、慕うようになる。




