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第2話 いきなりの襲撃

第2話 ~いきなりの襲撃~


ここは、バルトリン王国の南部にある農村地帯。

その外れに我々ゴブリンの住処がある。


「今日もいい天気だな。」

「マブい女とやりてー。」


暇なゴブリンたちがヤンキー座りで低俗な会話をしている。実に、どこまでもそのまんまだ。


「けど、あれだな。こええ女とはやりたくねぇな。」

「後腐れないのがいい。」

「それな。」

二人はハイタッチをして、ケラケラと笑っている。


こいつら、意外と深い話をしてやがった。

何かが俺の後頭部に突き刺さった。前世の記憶がよみがえる。


俺の名はゴーダ。この住処で下っ端の兵士をしているノーマルのゴブリンだ。

かつて人間だった頃には合田猛(ごうだ・たける)という氏名だったが、

こちらの世界に来た途端、苗字が名前に変わった。


「タケルなんて、偉そうな名前だね。あの御方のお名前と同じじゃないかい。消しとくよ。」


闇の中に落ちて行きながら、あのツンドラ女神の声が追ってきた。

一体どこの「千とち〇ろ」だっつーの。

え?ゴーダチーズのゴーダでもねぇよ。ちゃんとゴウダ様由来だっつうの。

で、その女神のおかげで、この世界では「タケル」と声に出して言えない強制力が働いている。

まぁいい。俺は、俺だ。


満足していることもある。やはり、顔立ちがそのままだったことが一番だ。

そして頭髪。つるんつるんの禿げが多いゴブリン一味のなかで、俺は数少ない髪持ちだ。

サラッとまとまりやすい髪質。これもまた前世と変わりがない。

魅了?効果のあるグッド・ルッキンなんか使わなくても、女とヤレるだろう。はっはっは。

いや待て。グッド・ルッキンっていったいどうやって使うんだ?どんな感じに効果が出るんだ?


実は今日が異世界初日だから、正直何も分かっていない。ただ群れに混じっている風を装う。


「たたた、大変だ~。」

突然ひ弱そうなゴブリンが転がるように走ってくる。

「門番の連中が、冒険者にやられた~。」


そこそこの強敵らしい。皆が戦闘準備をしているので、俺も近くにあった棍棒を手に取って振ってみた。

全然軽い。ゴリマッチョになってしまったからだろう。

正面入り口からまっすぐ奥に向かうメイン通路で新たに戦闘が起こっている。



冒険者、パーティーメンバー


戦士:女性:ワーキャット

魔法使い:男性:ヒューマン

弓使い:女性:エルフ

法術士:女性:ヒューマン

魔法使いその2?:女性:ヒューマン



何だか前衛ワントップでバランスの悪いパーティーに見える。たまに法術師も前に出ては叩かれている。

「きゃあっ」

必死で錫杖を振り回して応戦するが、相手に何のダメージも生んでいない。殴られる一方だ。

唯一の前衛職種、ワーキャットの女性は大きな剣を振り回して相手を威圧するが、剣が長すぎて、天井に突き刺さった。

「くっ、こんにゃろ~~。」

真っ赤な顔をして突き刺さった剣を引き抜こうとしている。ふんふん言いながら形のいいヒップをふりふり。

それを見たアホなゴブリンたちがゲラゲラ笑う。

笑ったまま、弓使いの矢や男性の魔法使いのファイヤーボールで異世界に次々と旅立っていく。意外と戦えているのはこの弓使いと男性の魔法使いのようだ。


そして、もう一人の魔法使いその2?、その女性はというと、魔導書のページに書かれた文章を指でなぞり、読み上げながら、もたもたと詠唱している。

・・・呪文、覚えてないんか~~い!

ターン。紫色の電撃魔法が飛び、やっと一人倒した。おう、お疲れさん。


俺はというと、そんな戦況を少し離れた場所でぼーっと見ている。だって、俺が何もしなくても、次から次に仲間の(?)ゴブリンたちが戦場に駆け込んでいくのだ。俺という戦力、必要あるのかね?


最初は冒険者がゴブリンたちを次々と殲滅してゆく戦いだったが、しばらくして弓使いが弓を使い切り、魔法使いがMPを使い切って、冒険者たちの旗色が悪くなった。ワーキャットの女性と男性の魔法使いが殴られてどさっと倒れる。

後の3人はすぐさま降伏した。


降伏した3人は大人しく連行されていく。後には気を失っているワーキャットの女性と男性の魔法使い。

男性の魔法使いを貧相なゴブリンたちが5人がかりぐらいで運んでゆく。

ワーキャットの女性の周りに群がったゴブリンの一人が俺に声を掛ける。

「あんた、力ありそうだな。ちょっと手を貸してくれや。」

あぁ、運べってことね。

「よっと。」


そう言うと自分は女性を背負いあげた。ゴリマッチョの俺には全然と言っていいほど軽い代物だった。


「おおお。」周囲から感嘆の声が上がる。

「棍棒、頼むわ。」

俺は彼女を担ぐために置き去りにした棍棒をすぐ横にいたゴブリンに持たせると、そのゴブリンを伴って魔法使いを運んでいる奴らに続いた。女性は気を失ったままだ。背中の彼女の顔を拝むことは出来ないが、なんだか野性的ないい匂いがして心が躍った。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


玉座には、俺よりも少し上背のありそうな、マッチョなゴブリンが腰かけていた。頭はつるつるだ。「王」に違いない。

そして、そのすぐ横に細身で、これまたそこそこ上背のあるゴブリンが控えていた。「大臣」と言ったところだろうか。禿げあがった広い額の上に鶏のトサカの様な白髪が逆立って生えている。玉座の間に俺が女性を担ぎ込むと、「王」が声を掛けてきた。

「お前、強そうだな。今日から近衛兵になれ。」

「はっ。謹んでお受けします。」

え?どゆこと?そんなに人手不足なん?いきなりそんな風に言われて、断る選択もなかったけれど。


一方「大臣」の方は冒険者たちがそれぞれに持っていた手帳を見比べている様子だったが、やがて玉座に報告した。

「陛下。確認しましたが、とくに、王族や貴族といった者はいないようですな。」

「ごくろう。ルフト。」


俺は運び込んだワーキャットの女性を足元に置き、その場に立っていた。謁見が始まりそうだが、近衛兵なので、このままこの場にいて問題ないだろう。

王が手で合図すると、別の近衛兵がやってきて、バケツに入った水をワーキャットの女性と魔法使いの男性にぶっかけた。

「ブハッ。」ふたりとも目を覚まして、その場に正座した。

その他の3人もずっと前からその場に正座している。

全パーティーメンバーが玉座に坐する「王」を見上げる格好になった。


「冒険者諸君、残念だったな。私はこの群れの王、バーンだ。」

威圧感のある挨拶に、敗者たちは項垂れたようにしている。

「おい、お前。」

「あひっ。」

名指しされた男性の魔法使いは変な声を上げた。

「良い魔導書を持っているな。あと杖やローブも。そいつらを置いていけば、命だけは助けてやる。」

「わっ、わかりましたっ」

テンパっている魔法使いはブーツやズボンすらも脱ぎ捨て、パンツ一丁で逃げて行った。

「ぎゃはははは。」小柄なゴブリンたちが甲高い笑い声をあげる。


唯一の男が情けなく逃げ去り、後には女性4名だけが残された。


ゴブリンの群れの中に、女性4名だけが残された。


そう、ゴブリンの群れの中に女性だけが・・・


大事なことなので何度も言ってしまった。これは、ひょっとして、アレなのか?俺は何だか体全体がゾクゾクして、思わず生唾を飲み込んだ。俺は一体、何を期待しているのだ?


と・こ・ろ・が


「女性陣はもう楽にしていいよ。」

超・超・超・超猫なで声でバーンが言う。え?なんじゃそりゃ。俺は脱力して床に崩れ落ちそうになった。

「それではお言葉に甘えさせて頂きます。」

足が痺れて辛かったのか、ワーキャットの女性はよろめきながら正座をお姉座りに変えた。

他の女性たちも、三角座りをしたり、前に足を投げ出したりしている。こいつら・・・体育の授業の待ち時間か!?

「君たちも冒険者稼業をしてきたからにはある程度は知っているだろうけど・・・、降伏したからにはここに住んでもらうからね?」

バーンは話を続ける。体勢はまちまちだが、4人とも真面目に話を聞いて頷いている。

「何か希望はあるかな?」

「私は王妃を希望したいです。」

な・・・ということはバーンの奥さんになることを希望しているという事か。まだこの世界の雰囲気が掴めていないが、こんなゴブリン逆指名的なことがあるんか。俺としては何かちょっと残念だが、彼女が王を選んだのであればしょうがない。


な・の・に


「あ。私は無理だな。奥さん、4人おるし。」

ええええ?エロの王様であるゴブリンが、しかもそのゴブリンの王様が、断るのおお??

人物?紹介その2


女神スクード

ゴーダの転生に関わったツンドラ女神。自分より高位の女神である姉に脅迫されながら、嫌々異世界転生業務に携わっている。転生の手続き作業が嫌で、転生後の転生者の様子を直に見に行くのが趣味となりつつある。

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