第23話 グッバイ魔王軍
転生したらゴブリン 第23話
~グッバイ魔王軍~
玉座の間
いつもより覇気のないというか、慣れないことをさせられて調子がくるっているような、そんな王様バーンが玉座で落ち着きない様子でいる。
「え?あの?これでいいの?」
渡された原稿を見て、後ろにいる青の魔導士にひそひそ確認している。
「いいんですっ!」
コーデリアの、少し大きめのウィスパーボイスはここまで丸聞こえだ。ひそひそ会見か?
「あ・・・え~。今回の戦利品分配を申し伝える。ごほんっ。」咳払いで言葉を止める。
「侍マスター、美琴、正式な妻となるまで、守備隊長ゴーダの『性奴隷』とする。一方、現在許嫁として保留していた、許嫁サマンサを第二夫人として正式に認める。」
パチパチパチパチ!!!
守備隊の奴らなど、一部の人物たちから割れるような拍手が送られ、そのうちその波は玉座の間全体に波及した。バーンの後ろで拍手喝采しつつ満足げなコーデリアやノルンたち女性陣。本来他の奥さんたちにも親切な彼女たちだが、美琴に対してだけは変なスイッチが入ってしまったようだ。「自称あいどる発言」は事件だった。やはりこれは極悪看守ゴーダによる教育が必要・・・なんだろうか?
通常の婚姻発表とは異なる。美琴はもう犬の首輪もつけていないけれども、やはりなんだか少し元気のない感じに見えるな。でも『性奴隷』と言っても実際は檻に入れられる訳でも、折檻される訳でもなく、普通の奥さんのように部屋を与えられる。そして普通に営んで、良い映像サンプルを残したら、それがスカサハ商会によって世界に拡散する。そんなもんじゃあ。
名称だけなら、ゴブリンの巣に囚われた哀れな元女冒険者の筋書き、なのだが・・・
馬車の中での馬鹿話は置いておいて、この処遇は意外にもサマンサに対する配慮なのかも知れない。奥さんたちに親切で智謀の主であるコーデリアの策、のような気がするのだった。
その他のアイドルたちは有力者や勇ましい功労者達に次々と嫁いで行って、今回の戦利品分配は終了した。
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今日は重要な会議になるようだが、「夕食を摂りながらにしよう」とバーンは言っていた。それまでの時間が少し空いている。俺は自分がしでかした破壊行為のために、ある商業施設を慰問していた。
「窓ガラスが完全にやられたわね。あとはこのベッドも修理に出さないと、使えないわね。見て下さいよ、守備隊長。見事におっ勃ってますよ。」
被害状況を確認しながらマッサージ店主のノルンが言う。窓ガラスは木っ端みじんに割れ、窓際にはその破片が散乱している。そして、窓付近に置かれているマッサージ用のベッドの一つに深々と美琴の薙刀が突き刺さって、その柄が直立している。
「誠に、何とお詫びして良いか・・・。片付け、手伝います。ええ、手伝いますともっ。」
急いで窓ガラスの破片を片付け、ベッドから薙刀を引っこ抜き、その運搬を手伝い、ぽっかりと空いた窓枠に薄い木の板を当ててゆく。室内がちょっと暗くなるけれども、新しい窓ガラスが設置されるまでの辛抱だ。意外と早く片付けることが出来たな。
「来てくれて助かりました。折角来たのですから、久しぶりにマッサージ、どうですか?」
アロマキャンドルに火を灯しながら、ノルンが言う。窓が一つなくなったせいで、やや薄暗い、ムード感のある室内に様変わりした。妙な期待感が膨らむ・・が。
「うん。今日はイケナイ感じのはやめておいて、普通のだけにお願いします。肩とか背中とか張っているからな~。」
「えええ?流れに任せてもいいんじゃないですか?」
ノルンは相変わらず天真爛漫だ。
ぎゅっ、ぎゅぎゅっ。少し強めの指圧が気持ちいい。腰の周りなど、比較的下半身が中心になってきた。というか、明らかにそっち方向だ。下半身の血流が良くなってくる。ほふっ。絶対に今のはツボか何かだろう。彼女の目が熱っぽく怪しい光を放つ。俺の上で動き回る香しい匂い。たまにわざと張りのある体を押し当てて来る。
こんなの我慢できるわけがない。
「どおですかぁ?」
止めとばかりに甘い声で囁く。
思わず抱き寄せて口づけてしまった。一瞬驚いた彼女の顔だったが、すぐに妖艶な表情に変わった。俺以上に強い力で腕を絡めてくる彼女。もう止められはしない。
はっ、あっ、はっ
口づけの合間に苦し気に息を切らす彼女。その肌が途轍もなく熱い。先ほどまでの力仕事で溜まった熱もそこに籠っている。俺の掌は脇から形の良い桃の輪郭をなぞるようにして、腰のラインへ。円を描くように臀部をまさぐり、最後にお気に入りの腹部へと到達する。
「ま、また、やるんですか?淫紋。」
蒸気を放ちそうな息を放出しながら、彼女が言う。
「当り前だ。待っていたのだろう?」
図星だったようで、彼女の体がビクンッと跳ねる。
描かれる薄紫色の紋章。思えば彼女、ノルンがその最初の人だった。この紋章が二人の絆のようにも感じる。同じことを考えていたのかも知れない。彼女もそれを愛おし気に見つめている。
だが・・・
あああああああ!
それをなぞると、そのような美しい思い出を吹き飛ばすように、淫靡な演舞が開始される。相変わらず狭い施術用のベッドから転げ落ちそうになりながら、彼女の肢体が躍動する。彼女のその動きを抑え込むかのように吸い付き、鷲掴みにする。
あはぁ!!
彼女の口の端から零れ落ちた涎でさえ、奏でられた美しい旋律のようだ。拾い、舐め上げて、彼女の頬にキスをする。
「嬉しい、嬉しい、嬉しい!」
再び彼女にきつく抱擁される。
今だな。彼女の奥深く、お元気くんを投入してゆく。
ううっ。すごいっ。これだけでもうダメっ。
まだ何も動いてすらいないのに、ガクガクと震えた彼女が軽く気を失う。でもまだ駄目だぞ。こんな程度では終わらない。少しずつ、少しずつ、練り上げ、擦り上げるようにして動き始める。
ああああ、もうだめ。もうだめだよぅ
泣き叫び、懇願するかのように彼女の嬌声が響き渡る。一緒に最後まで持って行こう。速度を上げてゆく。
来ている。
ぐっ
ぐっ
グッド・ルッキ~~ン!!
「ユニークスキル、グッド・ルッキンが発動しました。」
女神スクードの声がする。うん素敵。でもぼーっとしている頭で思った。発動というよりは、チャージ完了、だよな。なんて、しょうもないことにツッコミを入れるのはやめよう。とりあえず、ノルンとしっかり抱き合い、最高の気持ちを確かめ合った。そして、幅狭いベッドから落ちないようにしたのだった。
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本当に、お手伝いが都合の良い言い訳になってしまった。ほふっ。頬を赤らめる。大浴場から戻ると、リストランテに宴席が設けられていた。先客がいる。ミリアルドだ。
「あ、どおも。なんだかここまで案内されて、あとは放置だったから驚いたよ。」
「今回は大収穫だから、君の接待も兼ねているんじゃないの?」
「へー。それは乙な。ありがたく頂いていくとしよう。」
しばらくすると人型に戻ったスカサハやら、転生組のゴブリンたちが集まり始めた。最後にバーンとルフトがそれぞれコーデリアとノルンを連れてやってきて、全員揃った。流石に先程までの事を思うと、ルフト夫妻を直視できない部分はある。ところでルフトには通い妻(?)のような風変わりな女性も複数いるようで、本人は不自由していない様子だそうだ。ノルンはいいのだろうか?どうする気なんだろうか?俺、本気で彼女を譲り受けたいな。
だがひとまず置いといて、食事ミーティングだ。
「おお、ミリアルド君、今日は随分と大漁だったじゃないか。ご苦労様。」
バーンはまずミリアルドに声を掛ける。予想の通りだった。
「いえいえ、とんでもない。オーガ娘が暴れたので少し冷や冷やしました。」
「幸い、うちも有望株がおるのでな。」
「良かったです。」
そんな二人の会話がなされる間に飲み物が注がれ始める。
「では乾杯と行こうか!」
皆にワインが行き届き、グラスを掲げる。
「では、スカサハの無事と、今回の大量の戦利品を祝して、乾杯!」「乾杯!」
グイッとあおると酸味と芳醇な香りが鼻を抜ける。これはクセになりそうだ。が、会議だもの。抑え気味に。
「本当に、私なんかのために全てを投じて下さって、ありがとうございました。」
スカサハがバーンに恭しく礼を述べる。
「何を他人行儀な。まさしく運命共同体ではないか。」
バーンはニコニコしている。
「しかし、話を聞けば聞くほどに信じられませんな。こんなに積極的に我々の商売を妨害されたことなど、今まで一度もありませんでしたからな。」
横からルフトが口を挟む。
「私も驚きましたわ。でも結果として騎士団の詰め所には魔王軍が作成したと思われる文書が残されましたから、確たる証拠になってしまいましたね。」
コーデリアが言う通り、我々はジョスリン子爵の呪文によって正体が明らかになったその文書を見た。偽書だと分かった時の所長の驚きっぷりは見ものだったな。若干コントだったぞ。
「本当に、そこまでする必要があるのか?と思って、頭の中から疑問符が消えない。」
バーンも顎を撫でる。
「でもそうすると、そんな信用できない相手について行くのが我々の運命なのか?と問いたくなりますね。」
生真面目なモズが直球な発言をする。
それを軽く手で制して、バーンは周囲を見渡した。
「今のモズの発言は間違いなく皆の本音だと思う。酒の上だ。気楽に挙手してくれ。魔王軍にこれからも従って行こうというものはいるか?」
シーン・・・
誰からも手は上がらなかった。
しばらくして。
「そりゃそうですよね?!」「一生懸命編集している芸術作品をお釈迦になんてできませんよ。」「魔王の趣味趣向で左右されるなんてアホらしいですね。」
サトゥー、ゴリさん、スカサハと3人の編集者たちが次々に声を上げる。
「偉そうな魔王には今までも頭に来てましたでしょ?あなた様。」
コーデリアが煽る。
「おお。まったくだ。言いたい放題で上納金ばかりせびる。アホかと言いたい。」
グイッとワインを煽り、バーンがマジ顔をする。
「お前はどうなんだ、ゴーダ。」
何故か急にルフトに意見を振られる。
「俺は・・・。男が元気にエロを求め続ける。これが活気ある社会の源だと思います。それを邪魔するような存在や風潮こそが『悪』です。悪の根源、魔王をぶっ倒しましょう!!」
「おおおお!!!」「それでこそ守備隊長!」
歓喜の声が上がる。
気付くと食事ミーティングは決起集会に変わっていた。皆に素晴らしい笑顔が花咲いている。飲めや歌えの大騒ぎ。魔王がなんぼのもんじゃ!我々は自由だ!
その様子を見て、ミリアルドだけは目を白黒させている。
え?魔王軍と戦うの?あんたたち、一応魔物でしょ?そんな反応だ。それに関しては俺だって共感するところはある。言い放ってしまった自分の言葉に、踊らされている自分自身を感じたりもする。転生して魔物だと思っていたら~、いつのまにか魔王に反旗を翻してしまったあ~。こんなことって、ありますう?
人物紹介 その18
ミリアルド・ベルグストロン
女性を拉致する悪いゴブリンを討伐する英雄、ゴブリン・〇レイヤーに憧れて冒険者となる。今やその目的は完全に忘れ去られた。出身は北側諸国の大貴族であることが判明、ゴブリンたちからも命の安全を確約された。




