第17話 重商主義
~重商主義~
執務室に向かう二階の通路は野次馬のゴブリンたちでいっぱいだ。先導する俺のあとを歩く「童貞を殺すセーター」に視線が集まる。前にいる俺や、後ろについてくる彼女、スカサハの従業員などには0.1%の視線も注がれない。そりゃそうだぁ。執務室の入り口を警備していた近衛兵たちにしても同じ状況だった。目線を外そうとしては吸い寄せられ、外そうとすれば吸い寄せられる。何やってるんだ?(笑)仕方ない。いかなる人間も、重力とおっぱいには逆らえないのだ!ちなみに、おっぱいも重力には逆らえないのだが、不都合な現実からは目を背けておこう。
「お久しぶりです。バーン陛下、ルフト卿。」
従業員たちは通路に待たせ、執務室に単身で入ったスカサハはフレンドリーに幹部2名に挨拶すると、バーン、ルフトの順で少し情熱的にハグをする。
う、うらやまし~~~。
「転生して間もないゴーダにはこちらから紹介しておくな。オークのスカサハはただの行商人ではない。このエレクツィオンの商品を各地へ売り込んでくれている、いわば総合代理店さんなのだ。」
スカサハの腰にまだ手を回したままの状態のルフトが説明してくれた。紹介を受けて、スカサハが改まったお辞儀をする。どうやらルフトやシャーマン部との繋がりが特に強いようである。このエレクツィオン砦ではよく魔法アイテムらしきスフィアをよく見かける。あれの販売などに関わっているんだろうな。一体どんな魔法アイテムかは知らないんだけれども。
「さて、皆離れていないで、集まろうや。」
バーンが声を掛ける。皆それぞれの立場もあり、部屋のそこかしこに立っていた。バーンが席から立ち上がって執務机の前に出ると、幹部達は皆部屋の中央に集まってきて、輪になった。スカサハを挟むようにバーンとルフト。ゴブリン・シャーマンのゴリさんとサトゥー、近衛兵長モズもいる。そして俺の横にはコーデリアもやって来た。
「我々は今大変難しい状況に置かれている。新魔王がとても侵攻に『熱心』だからだ。我々はそもそも『熱心』ではない。大陸諸国と商売で繋がっている我らは、今や中立こそを最善としているのだ。」
バーンは状況を説明する。
すぐさまスカサハが手を上げた。
「確かに侵攻には魔王カサンドラは熱心です。ただ彼女は破壊や圧政を目的としている訳ではないのです。『聖教会』の影響力を排除し、自由な魔の世界を築きたいのでしょう。我々の商品にしても、『聖教会』は厳しく取り締まってきますが、彼女の支配地域ではそうはならない筈です。多分。」
んんん?
『聖教会』が取り締まる商品?
いったいどんなものを輸出?販売?しているのだろう?
「多分・・・では困るなぁ。」
とバーン。
「あれが完全に売れなくなると仮定しますと、売り上げの5割、純利益にしては実に8割を持っていかれることになりますからな。魔王の政策次第でうちは大きな影響を受けます。」
ルフトも横から情報を入れる。
「以前、女性の魔王の代に、BL以外の18禁ものは全て禁止されましたからな。」
物知りなゴリさんも懸念を訴える。
しかし、18禁?いったい何のことだ?
「私はBLだけでもやっていけます。じゅるっ。」
スカサハが怪しい反応を見せる。
「個人的趣向はおいといて・・・」
スカサハにツッコみつつコーデリアが意見を発言する。
「仮に新魔王に禁止されても、うちは何とか掻い潜って闇販売していくしかないわね。そもそもうちはBLものなんて販売していないし。全部ノーマルな感じの系統でしょ?」
コーデリアの言葉に皆渋い顔で静まり返る。
だから、18禁とか闇販売とか、明らかに年配の人とかに聞いたことのある裏ビデオとかなんとか、そんな奴しか思い浮かばないんですけど~
「とりあえず今編集中の良作が溜まっていますから、明日はスカサハさんに手伝ってもらいつつ、現場で出来ることも考えていきたいと思います。」
サトゥーの言葉に頷いたバーンが会議の終了を告げた。
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その日の夜のサマンサはやはり興奮していた。
「ゴーダ様、カッコいい!エッチ専門の人かと思っていましたけど、あんなに強いなんて。」
おいおい、今までそんな風に思われていたのか!一瞬コケかけた。でも強いって最高ぅ。まじで強すぎて滅!って奴よ。クレイジー、クレイジー、魔法防御クレイジー♪
「そうだ。強すぎる君と俺。掛け合わせたらどうなるのかな?」むふふ。
「どうなるのでしょう?」
悪戯に彼女も微笑む。微笑んだ彼女が部屋の鏡に映り込む。
「しかし、この部屋もそうだけれど、どこの部屋も鏡がキラキラしているな。サマンサも自分で磨いているの?」
「違いますよ。鏡はリース品だとか言っていましたよ。だから、鏡拭き専門の人が昨日来たのよ。よその奥さんたちのグループだったけど、驚いた~。でも料金もかからないから安心。」
食堂の人もマッサージ屋の人もそうだけど、色んな働く女性がいるんだな。あ~、あのノルンのマッサージ屋はどうだろう?ちゃんと商売する気はあるのかな?守備隊長割引の回数券がまだ残っている。ごくっ。
「あれれ?何かいやらしいことを考えてますね~」
サマンサは俺のお元気くんの動きにいち早く気付き、指でツンツンしたりしている。余計なことを考えてしまったけれど、今はサマンサの方に集中しよう。本当にめっきり色っぽくなった。素晴らしい。完全にゴーダ開発に違いないのだ。俺は様々な喜びと共にサマンサを抱き寄せて口づけた。お互いでお互いを味わい、味わいつくす。
彼女はしばらくすると、その腕から逃げるように、すっと頭を下げると、俺のお元気くんをはむっと咥えた。
おおおっ。
そして、ぐーっと全部行ったかと思いきや、先の方へ、そして自信を持つようになった美しい長い舌で俺のお元気くんの輪郭をなぞっていく。なぞり、そして巻き付け、擦った摩擦熱でその温度を増してゆく。
ふはああああ。
まだ夜は始まったばかりだ。
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次の日の午後。俺は守備隊の統率をコマンド~ことブリーフに任せて、シャーマン部を訪れた。ここはいろいろと謎だが、このエレクツィオン砦の肝であることは間違いないのだ。シャーマン部の奥にさらに通じる扉があり、「編集室」と書かれている。その奥からあは~ん、な声が聞こえてくる。
えっ?何それ?と思いつつ、ドアをノックする。
「どうぞー。」
気軽なサトゥーの声が聞こえる。
ドアを開けて中に入ると、昼間だけに巨大豚の姿に戻ったスカサハ、ゴリさん、サトゥーらが、真剣にモニターを見ている。それは、ゴブリンと女性が激しく致している映像だった。
「なかなか良質だな。」
ゴリさんが呟く。
「生活感のある部分はカットして、中心的な動作シーンをカットしてつなげて、オープニングに持って来たりして組んでみました。」
今どきの若者っぽいサトゥーが答える。少しウェーブのかかった前髪をかき上げる。
「あなたたち、よくこんなの見続けていて平気ね?ゴブリンでしょ?」
モニターをしっかりと見続けながらも、スカサハが言う。
「そりゃ、拷問に近いものはありますよ。独りで編集している時なんて、一本抜いとく?てなりますよ。」
「きゃははは。」
サトゥーの切り返しにスカサハが爆笑する。
「笑い事じゃないですよ。スカサハさんがもし今『人型』だったら、確実に僕らに食べられてますよ。ふん。」
「お、それいいなぁ。萌える設定じゃねぇか。俺たちが編集しているうちにムラムラしてきて、スカサハさんを押し倒すっていう筋書きだな。どうだい、スカサハさん?」
ゴリさんも横から口を挟む。俺以上にゴリマッチョで少し無精ひげのゴリさんが言うとリアリティがあるというか、エロい企画が分かりやすく頭に浮かんでくる。お元気くんが一気に元気になった。
「そ~ね~。それは面白い企画だけど、私、直接顧客と会うことも多いから、あまり安売りは出来ないわね。あくまで『とっておき』として、残しておきましょうよ。」
スカサハは全く物怖じもせず、論理的に返す。
「とりあえず、他の女優さんでそのパターン、やってみましょうよ。」
サトゥーが折衷案を叩き込む。
「しゃーねーか。ティンと来たんだがな。」
不完全燃焼でゴリさんはくすぶったまま、保存ボタンのようなものを押して、その場を締めた。
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「守備隊長、申し訳ない。ちょうど編集が終わりかけていたところだったもので。お待たせしました。」
ゴリさんはモニターから目を外し、こちらに向き直ると、隣の席を勧めた。どうぞ、とポットから注いだブラックコーヒーを差し出された。「いただきます」一夜漬けのテスト勉強、その朝方に飲んだコーヒーの味を思い出して、どことなく懐かしい。
「あえて見てもらおうという意図もあったんだけどね。正直どう思った?さっきの映像。」
「懐かしいというか、向こうの世界でもお世話になりましたね。でも、ゴブリンが男役だとエロさが増しますね。」
「でしょ?そこが売りなんすよ。貴族の仮面舞踏会や裏酒場なんかでこれが重宝される訳よ。個人でコレクションしている大富豪もいる。スカサハさんの手腕もあるけれど、高くで取引されるんだよね、この映像スフィア。」
「それで、魔法のスフィアを沢山見かける訳ですか。」
「そういうこと。でね。今日は守備隊長ゴーダ殿にお願いしたいことがあって。」
「?」
コーヒーに口をつけつつ、俺は首をかしげる。
「君に、専属の男優になってほしいんだ。」
ぶ~~~~っ!!!!!
俺は、コーヒーをぶちまけてしまった!
人物紹介 その14
サトゥー/佐藤大樹
元携帯電話のショップ店員。うんざりする年寄りの相手をしていた過去と決別。生き生きと動画編集しているゴブリン・シャーマン。




