第15話 遊んでばかりじゃいられません
~遊んでばかりじゃいられません~
長い一日は続いていた。あの後森の中でコーデリアにお代わりを要求され、淫紋付きプレイをもう一度楽しんだのだった。そうしたらとっぷりと日も傾いてきた。「日没までには戻って来いよ」そう言われていたのだ。エレクツィオンの砦に帰る道程をかなり巻きにしている。コーデリアなんて、意外にも童貞キラーなのかも知れないな、などダジャレに起因した余計な考え事をしている。本当に、時間配分は交渉20分、馬屋騒ぎ20分、家宅捜索30分、エロ3時間以上という感じだった。
パッカパッカパッカ・・・速歩の速度でシンボルルドルフ号に跨るコーデリアに遅れないように、こちらもランニング。ゴブリンの姿では足が短いので、思うように馬の速度について行けていない。苦しい。息が切れる。いや、人間の時だって、この速度で走り続けていたら、辛かっただろう。
「ひっ、ひっ、ふ~~。コ・コーデリア、まっ、待ってください。」
「しょうがないわね。」
そう言うと、シンボル君の速度を常歩に落としてくれた。これでやっとこちらも走らずに済む。シンボル君も抗アレルギー薬の眠気が落ち着いたのか、しっかり仕事してくれます。
「ありがとう。さすがにハーフマラソンはキツイかな。」
「向こうの世界の走るスポーツだったかしら?」
「それ。しかもエロで体力を使った後だからさらにキツイ。」
「頑張ったわね。偉い。偉い。」
息が少し収まってきた。
「それにしても、そんなに自由にしていていいもんなんですか?」
今更遅いけれど、小心な俺はやはり気にする。
「ああ。バーンのことを気にしているのね。」
「一応人妻だ、とかなんとか言っていたじゃないですか?」
「そぉねぇ~。5日に1回しか回ってこないんじゃ、ちょっと物足りないし。ということで、バーンの方は私を含めた5人の王妃を相手にしている訳でしょ。私だって複数を相手にする権利があって然るべきじゃない?」
確かにそれは「大」正論だ。
「バーンの事はどう思っているの?」
「ん?大好き。」
無邪気な少女のように微笑んで彼女は答える。
「じゃ、わたくしめ、ゴーダの事は?」
「もちろん同じぐらい大好き!」
にっこりと笑ってくれた。不意を突いたような質問に対する答え。彼女の言葉には一切の偽りも、揺らぎもなかった。一夫多妻、多夫一妻、どちらだってあり得る世界な訳だ。やっぱり人間(最近自分やバーン達がゴブリンであることを忘れがち)、色々と深いなぁと思う。
そんなやり取りの先に、エレクツィオンの砦が見えてきた訳だが、なんだかまた偉く物々しい雰囲気に包まれている。ただ、めんどくせ~、とダルい感じに思った。こちらの世界に来てから、色んなことに遭遇しているので、感覚が少し麻痺してきているらしい。おなじみの門柱しかない正門をくぐると、前庭に漆黒の鎧の兵士が数名。そして、馬・・・ではなく二本足の高速移動生物が手綱をつけられた状態で並んでいる。
おおお、ドラゴンだ。
ドラゴンと呼んでいいのかもわからないが、恐竜で言えば、ガリミムスだったか、足の速い恐竜の類によく似ている。犬耳の若い男が彼らを世話して回っている。彼らは与えられた餌を食べたり、水を飲んだりしている。羽毛も所々生えており、つぶらな瞳で周囲をきょろきょろ見回している。大人しい性格の様子だ。
「あら、ドラゴンが来ているのね。魔王軍かしら。」
別段何ともない事のように、コーデリアが言う。
ま、魔王軍・・・
俺は流石にたじろいだ。
「確か街で、ジョスリンさんが、ここも魔王配下だとか言ってましたよね。」
「うん、一応は。でも、裏の社会は色々とあるのよ。」
そう彼女はマフィアの女みたいなことを言うと、シンボルルドルフ号から降り立ち、守備部隊のゴブリンに手綱を委ねた。
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玉座の間に、異形の使者が訪れていた。
使者?
それとも死者?
諸々のメディアでファンタジーに慣れている現代人でもなければ、泡を吹いて卒倒しそうな相手だった。服装は至って折り目正しく整った、高位の魔導士の服装だ。丁寧に刺繍の施された艶やかな魔法のローブを着こなした彼は、輝くまでに白き白骨とどす黒い靄の2種類で体が構成されている。真っ白な髑髏と対照的な暗黒の眼窩の奥には緑色の光体が光り、辛うじて彼が意思を持った、生きた(?)存在であることを物語っていた。
俺とクローディアはその死者使者の後ろから王の玉座に近づきつつあった。
「モルガンはネクロマンサー・・・いやリッチという職種なんですかね?」
「あぁ、そう見て間違いないだろう。」
「かっこいい~。でも自分がなりたいかと言われば、そうでもないんですが。」
「おいおい。声が大きいぞ。」
「だって、お元気くんも白骨化してるんでしょ?女とヤレないじゃないですか。」
「だから、おい。今は勘弁してくれないか?」
モズともうひとりの近衛兵が玉座の間の入り口付近でひそひそ話しているが、本当に、本人に聞こえたらどうする。モズは半泣きでうっすらとこめかみに血管を浮き立たせた。これは・・・このアホ近衛兵はおそらく左遷だな。
彼らの横を抜けて、王様バーンやそのリッチの使者に近づいたとき、バーンもリッチも俺たちに気付いた。
「おう、ご苦労だったな。」
とバーン。
「これはこれはコーデリア王妃に守備隊長のゴーダ様。お初にお目にかかります。魔王様直属の魔法部隊を指揮しております、リッチのモルガンと申します。」
モルガンは振り返り、丁寧に挨拶をした。
あ、ども。俺も低姿勢。というか、リッチの迫力に少し押された。やっぱ、怖い。
「遠路ご苦労でしたね。御来訪の折りに失礼いたしました。」
対してコーデリアは余裕綽々に歩きながら瀟洒に頭を下げつつ言うと、バーンの脇に上品に立った。
俺も近衛兵に混じる感じで、部屋の隅に立った。
「それで、ご返答は如何なさいますか?」
モルガンは王様バーンに向き直って言った。
「もちろん前向きに検討はしてみるが、返答は書簡にさせてもらおうか。」
「今すぐのご返答はいただけないと。」
「こちらにも様々な『しがらみ』がある。それを精査した上でないと、何とも申し上げられない。」
「いいでしょう。新魔王カサンドラ様は寛容なお方。ですが、あまり商売にかまけて本分をお忘れなきよう。」
「あい分かった。」
少し不機嫌そうになったバーン。それを見て、軽く一礼すると、モルガンはすーっと滑るように出口へと向かった。なんと、彼の両脇を警護していた漆黒の鎧の兵士も同様に彼のあとをついてゆく。歩くことなく、明らかに宙に浮いていた。その移動の様子も実に不気味さを感じた。
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モルガンが去って行ってから、コーデリアと俺は執事リリアとも話をつけて来たことを王様バーンと大臣ルフトに報告した。それだけの為になんでこんなに時間がかかったのかって?そこには触れられず良かった。交渉20分、エロ3時間以上ですからねぇ・・・ほとんど仕事していません(汗)。こんな有様の会社なら、潰れます。きっと潰れます。
とりあえず、風呂にでも入り直して、ヴァレリアの元を目指そう。
その晩、ヴァレリアに初めて淫紋を試した。俺のことを『使徒様』と崇拝するヴァレリア。淫紋が彼女の下腹部に描かれた途端、彼女は崇高な神を見るかのごとくに俺のことを見た。それはそうだろう。まさにそれは神の奇跡の印のように見えたに違いない。それだけでも夢心地だというのに・・・効果はばっちりあるのだ。弾力のある彼女の体の全てが、想像を絶する快感にブルブルと震え、何度も、何度も、熱いジュースを撒き散らして痙攣する。
使徒様、すごい、すごいです。私、おかしくなりそう。
ほんとに、あっ、もう何もっ、考えらえないっ、うあっ、はっ、はっ。
使徒様、ああっ、ひいいっ、使徒様ぁあああああああ!!!
遂に彼女は気を失った。
心地よく体を小刻みに揺すりながら、彼女は今、別の世界を旅している途中のようだ。俺自身も驚いて、自分の手を見つめていた。流石にここまでの刺激、快感を相手に与えたことは今までになかったのではないだろうか?
まさに、淫魔覚醒!
よく分からない興奮の坩堝に精神が叩き込まれかけたところで、目の前に何日かぶりのお方が出現した。
「おうおう。相変わらず素敵・・・じゃなかった、激しいのう。」
だらしなく応接セットの背もたれに腕をかけて、態度の悪い高利貸しのような姿勢でスクードが座っている。ベッドの上のヴァレリアは彼女からも見える位置だ。明らかに彼女は疲れ切っている様子だった。
「しばらく来なかったじゃないですか?というか、あの『ユニークスキル、グッド・ルッキン!が発動しました。』って奴はどうしたんですか?あれ、綺麗な声だし、結構エロくて好きだったんですけど。」
心の読める彼女にはカッコつけて言葉を選んでも仕方がない。ありのままに気持ちを音声に変換した。
「ありがとうのう。じゃが、ここ数日、大変だったんじゃ。忙しくて、ゴーダの身辺のことも見れておらんかったんじゃ。まったく、とほほ。」
「何かあったんですか?トラブルとか?」
先日の、電話口の「姉」とのやり取りを覚えている。
「今度は妾が悪いわけではないのじゃ。あまりにも転生者の怨念が強すぎてのう。ステータスが滅茶苦茶に跳ね上がってしまったのじゃ。それを姉貴がわざわざこの世界に送り込みおって。他にいくらでもあるじゃろう?真の戦闘狂どもが集っているような世界が。ここはわしのお気に入りで、結構優しい世界なのじゃ。こんなところに、あんな奴を・・・一体姉貴は何を考えておるのやら。世界樹に問い合わせて、修正を試みても、単に『権限がありません』、と返されるのじゃ。おぬしもそういった不快な思いをパソコンで感じたことがあるじゃろう?」
ぼやき尽くす女神様は何だかとても親近感が沸く。
「ありますね。急いで作業を進めたいときに変にブロックされたりすると、『あーーっ』って叫びたくもなりますよ。」
「うん、うん。ありがとう。やっぱりゴーダと話していると元気が出るな。次からはちゃんと発動の時もモニターで見ておるからな。メッセージも入るから楽しみにしておれ。」
スクードがそう言ったその時、
んんん。
ベッドの方で声がする。
どうやらヴァレリアが目を覚ましそうだ。
「いかん。お姫様が目覚めそうじゃ。じゃあの。また近々」
そう言うと、ほんの一瞬、優しい笑顔を見せたスクードは大急ぎで空間から消滅した。
大収穫の笑顔だと思った。
にしても・・・モニターで見ていると言っていたな。あのメッセージも、行為を見ながら入れているのか!
人物紹介 その12
ジョスリン
グレーフェンの街で魔法アイテムショップ、マギア・ルージュを経営する。元冒険者、魔法使いの老人。その実力は確かなもので、かつて勇者パーティーと共に魔王討伐にも参加した経験を持つ。




