第11話 交渉人エックス
~交渉人エックス~
俺はおもむろに手を上げた。
王様バーンの執務室。横には大臣ルフトも立っている。
「何かいい交渉の決着点というか、こちらが貰っていいものでも考えついたか?」
バーンが尋ねてきた。
「はい。ナイスバディの冒険者や舌が長くてエロい冒険者をたくさん送り込んでもらいましょう。」
「それはゴーダ君の好みだろう?私は奥ゆかしい感じの子がいいのだが。」
ルフトが割って入った。
「私は積極的な女性であれば、どんなタイプでも好みだ。」
バーンも勝手なことを言っている。
「いや、ある程度は系統を絞ってもらった方が。」と俺。
「その意見には同感だな。」とルフト。
「お前たちの意見は偏狭なのだ。もっといろいろと試した方が自分の成長のためにもなる。」
バーンのピカリン頭から後光が差した。
しかしなんだ、一向にまとまる気配がない。
「あのう。少し話がそれてしまいましたが、つまりはこういうことです。これからもミリアルド君には魅力的な女性冒険者をたくさん引き連れてこのエレクツィオン砦を攻略してもらいます。そして、降伏してもらいます。女性冒険者は戦利品に。ミリアルド君は女性冒険者と分けてひとまず捕縛したことにして、こっそり逃がします。そして、また攻略してもらう。」
「今までもおいしい目を見てきた訳だが・・・わるいわね。ありがとね~。これからも~よろしくね~♪って訳だな。」
バーンが平成の歌の歌詞みたいなノリで言う。
「では約定を交わして、契約を明確にしましょう。あまりいつまでも闇取引のようなことは続けられませんから、3回ぐらい貢献してもらえば放免。それでこちらとしては満足なのではないでしょうか?」
ルフトもノリノリで計画を練っている。
しかしあれだ、この話がまとまれば、ミリアルドは晴れてエレクツィオン砦お抱えの女衒となる訳だな。限定3回だが。この話に乗るだろうか?牢屋に入っている彼としては選択の余地なく飛びつく話かもしれないが~。
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「やります。やらせてください!」
やる気満々の新卒社員のような反応が即座に帰ってきた。
俺が意思確認のために牢屋を訪れると、ミリアルドは目を輝かせてその女衒的な作戦に応じると言った。まぁ、自分の懐も痛む訳でもないし。労力はある程度かかるが、命には代えられないだろう。
「分かった。陛下にも伝えておく。だが、すぐに、とはいかない。身受け人になるあんたの執事とも話を通しておきたい。明日名代を出す予定だから、開放はおそらく明後日だろう。」
「やったーーー!!!ほんと、退屈だったんだよね。読み物ったって、エロ本ばかりだし、ここ。」
あ、うーん。さすがにゴブリンの住処だけのことはある。でも、檻に入れられているだけで、ふかふかのベッドもあり、飯もちゃんと出てくるのだ、文句を言う話ではないぞ。
「ミステリー小説なら1冊余っているぞ。」
「え?なんていう奴ですか?」
「そして誰も勃起しなくなった、って題名かな?」
「あ、それは嫌だな~」
「だろ?俺も勧められて拒否はしている。だからエロ本で我慢しな。」
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わがままな牢屋人の相手をいつまでもしている時間はない。すぐに執務室に戻った。ミリアルドの事を伝えると、
「よし、では早速明日、コーデリアと共にグレーフェンの街に行ってこい。んで、その執事とやらに会ってこい。コーデリアのことは知っているな?」
「はい。存じております。」
昼のお風呂に・・・ということはもちろん言わないでおこう。にしても、そのお風呂で予告というか予言されたように、まさか二人で出かけることになるとは。これは、きっと、何も起こらない訳がない。
とりあえず、その晩はサマンサを普通に喜ばせた。というよりも、普通以上にめちゃくちゃに喜ばせた。あの新技(?)である淫紋がサマンサ相手にも大いに炸裂したのだ。これはやばい。もはや、どんな女性相手にも無双してしまう禁断の技になりつつある。スキル本来の目的意識を失いそうである。
とにかくすごすぎて、R15ではお話しすることは出来ないから、今度外伝かなにかの形で、本編とは切り離して書いてみよう。って俺は一体誰に話しかけているんだ?
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翌日の8時にコーデリアと正門前で待ち合わせし、街へと向かう。お嬢様コーデリアは馬上にて日傘を差しており、その手綱を引く従者が俺という訳だ。それはいい。それはいいとして。
「もうちょっと何とかならなかったのでしょうか?」
俺は馬上の人に文句を言った。
「しょうがないじゃない。他の子もこうやって来たのよ。」
どうやら今までにもコーデリアの奴は僕のゴブリンを連れて、街に繰り出していたようである。俺の文句の理由。それはこの変装スタイルにある。顔から首、デコルテに至るまでと前腕までの腕にも、しっかりとこげ茶色のドウランが塗られ、クソ暑い中カツラも頭に乗っけている。お洒落なドレッドスタイルだ。これで立派な南洋諸国の戦士の出来上がり。カツラは使いまわしているのか、なんだかすっぱい汗の臭いがしみ込んでいる。ひ~。
「私は髪の毛もありますから、頭部はそのままで良かったのではないでしょうか?」
俺はさらに突っ込んだ指摘をしてみた。
「あなたの髪ね。きれいにまとまっていてカッコいいわよ。」
「いやぁ、それほどでも・・・じゃなくてカツラ、取ってもいいですか?」
「ダメよ。ただでさえ目立つんだから、変装は徹底してもらわないと!」
「ううう。臭い。」
涙目になっている俺の目に中世の街並みが飛び込んできた。尖塔の上の鐘楼、城壁の上に見えるいくつものオレンジ色の屋根を鳥たちが渡っていく。城門をくぐると、がやがやと聞こえる会話の声、威勢のいい売り文句。奏でられる弦楽器の音色。様々な音に彩られた活気の坩堝に放り込まれた。おいしそうな匂い、煌びやかな装飾品、新鮮な農作物・・・異世界の市場、一生見ていられる光景だ。これはアガるわぁ。
先ほどまでぐずっていた俺だったが、今は子供のように目を輝かせてあれこれ見て回っている。我ながら、おもちゃを与えられて泣き止む子供みたいだなと思った。そんな俺を見て、
「ふふっ。かわいい。」
コーデリアは母性たっぷりの笑顔で見守っていた。
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街の中央の広場に来ると、コーデリアは日時計で時間を確かめた。
「まだ11時前ね。ちょっと寄りたいところもあるから、『執事さん』のところに行くのは午後一番にしましょうか。」
馬屋に馬を預けて身軽になった二人は、商店の立ち並ぶエリアに向かった。
「魔法アイテム マギカ・ルージュ」
そう書かれた看板のお店に入る。カランカラ~ン。心地よいドア鈴の音が響く。正面のカウンターで読み物をしていた白髭のおじいが顔を上げた。
「コーディ!久しぶりじゃないか。」
おじいは相好を崩した。
「ジョスリンさんも相変わらずお元気そうで。」
「年中暇じゃから、楽させてもらっておるわ。ところでそっちが今度の護衛さんかえ?」
「今回から護衛してくれることになったゴーダです。」コーデリアが紹介してくれた。
「宜しくお願いします。」と俺。
「ほう、いい面構えじゃな。この子も元人間なのか?」
ジョスリンはコーデリアに聞いた。
「あちらの世界でバーンともご縁があったみたいですわよ。」
「なるほどのぅ。」
そんなことまで話しているとは、かなり信頼できる相手のようだ。
「ところでジョスリンさん。魔法使いのミリアルドもこちらのお店には来ることあるのかしら?」
「もちろん。ポーションやらなんやら、よく買って行ってくれとるぞ。」
「羽振りは良さそうね。」
「あぁ、何でも北側諸国の貴族様なんじゃろ?執事の方も魔法使いらしいしのう。その辺の裏事情を知りたかったのかい?」
「さすがは、ジョスリンさん。そう。相手が嘘をついていないか裏を取りたくて。実は・・・」
コーデリアは今回のいきさつをジョスリンおじいに話した。
「はっはっは!」
全部聞き終えたジョスリンおじいは、少しポッコリと出たおなかを叩いて笑った。
「我々を咎めないのですか?」
俺はつい不思議に思って聞いてしまった。
「まぁ、それがゴブリンの性っちゅうもんじゃろう。それに王国内はどこも女性が余っておる。」
「それじゃ、女性冒険者を沢山捕まえても、国の損害とかにはならない訳ですね?」
「なる訳ない。困るのはギルドぐらいじゃ。会員が減って会費収入が減るからな。」
実に経営的な話だ。
「それで熱心に攻略クエストにはしてくるわけですか。」
「それもあるし・・・あとはエレクツィオン砦だって曲がりなりにも魔王の勢力の側じゃからな。」
やはりそこはお約束の設定。
「あ、余計な話を長々と、すみません。」
俺は話に割り込み過ぎたことをコーデリアにお詫びした。
「ううん、平気よ。それじゃジョスリンさん、そういう訳で、また近いうちに。」
そう言って優雅な歩き方で出口へ向かうと、ジョスリンおじいにウィンクして店の外へ出る。おじいはとても名残惜しそうだった。
「おう。待っとるぞい。」
その言葉にお辞儀しつつ、俺もバタバタとコーデリアを追って退店した。
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市場に戻ってきた。
餓鬼んちょゴーダ復活である。
あれこれきょろきょろ見ていると、
「何食べようか?」
コーデリアが聞いてきた。まるでお買い物中のお母さんと息子みたいだ。自分が興味を示したホットドッグみたいな軽食と飲み物をコーデリアが買ってくれた。二人して広場の噴水の縁に腰かけてB級グルメを頬張る。ちゃんと・・・というのは失礼か。塩味の効いたソーセージと少し酸味のあるパンがマッチしていて俺には美味しい。でもコーデリアには庶民的すぎるかな?と思って横を覗いたら、上品なしぐさではあるが美味しそうにパクパクと食べ進んでいる。
「意外と庶民的なんですね?」
そんな感想を言ってしまった。
「だって、私も元冒険者よ。街で買い食いしたり、山野で携行食を食べたり、普通にしてたもの。」
彼女も例にもれず、元戦利品なのだ。
「そっか。さっきのジョスリンさんもその頃からの知り合いなんですね。」
「そうよ。ただのお店屋さんと客というよりも、先生と生徒かしらね。今でも頼りにしているの。」
駆け出しの冒険者時代の彼女に思いを馳せて青い空を見上げた。今も若々しくて綺麗だけど、貫禄はあるものなぁ。一昨日あたりに、他の奥さんの相談なんかを受けていて、熱心に対応していた彼女を見ている。そういう人柄も惚れてしまう要因なんだろうけど。敬愛すべき淑女をもう一度見た。
「ねぇ、ゴーダ、見て見て。」
やけにまん丸いふざけた目をして、彼女はホットドッグのソーセージの先を口に入れたり出したり、ペロペロ舐め回したりしている。んふ~~ん♡
畜生。
さっきまでの俺の感動と尊敬を返せ!
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広場の日時計が午後1時をお届けしていた。もうそろそろお邪魔してもいいんじゃないかな。ミリアルドに渡された地図を頼りに、彼ら、ミリアルドと執事が仮住まいしている物件を探す。確かに、落ち着いた雰囲気の良い区画に小綺麗な一軒家を見つけた。さほどの大きさではないが、2階建てで、窓の数からしても上下含めて5~6部屋はありそうだ。二人で住むには余るぐらいの造り。やはり財力は本物のようだ。
コンコン。
百合の花柄のついたドアノックでノックする。
執事セバスチャン(?)、出てこいや!
「はい。少々お待ちを」
セバスチャンは意外にも甲高い声だった。
ガチャ
あれ?女性?
「お待たせしました。」中から出て来たのは、プラチナシルバーの髪、青紫色の目の若い女性だった。しかも、メイド服を着ている。上品で瀟洒な立ち居振る舞いだが、怪し気な来客を見て、即座に表情が曇った。それを見て、同性であるコーデリアがスッと前に出た。
「こちら、ベルグストロンさんのお宅でお間違いないでしょうか?」
「はい。生憎と主人は留守にしております。」
「貴女は?」
「執事のリリアと申します。」
「リリアさん。貴方のご主人、ミリアルド・ベルグストロンさんのことで少々お話がありまして。」
その言葉を聞いて、気付くところがあったのだろう。彼女ははっとしたようだった。「どうぞ中へ。」そう言うと、俺たちを応接の間へ瀟洒に案内してくれた。
街紹介 その1
グレーフェンの街
エレクツィオンの砦から最も近くにある城塞に囲まれた街。冒険者ギルドにはエレクツィオン攻略のクエストが立っているが、成し遂げた者はおらず、難易度はどんどん上昇している。




