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第10話 肉体の語り合い

~肉体の語り合い~


軽い気絶から復活して、俺は鼻血をティッシュで拭き取った。そう、このエロの館、エレクツィオン砦にはティッシュも存在している。健康で衛生的で楽しいエロにはティッシュは欠かせないのだ!


さてさて、なぜか目の前に俺の合わせ鏡みたいに鼻血を拭き取っている人がいる。


白いマイクロビキニの麗人、ノルンだった。


「はぁ、はぁ、大胸筋も二頭筋も仕上がりが凄すぎます。見ていて私、クラクラしちゃう。」


あ、だめだこりゃ。こういうキャラ、いそうだよなぁ。うっとりと『俺の』おっぱいを撫でまわす白魚の指からは変態のオーラが立ち昇っている。「ゴリマッチョ、需要あるんだな」と何だか冷静に状況を分析していると、お元気くんが珍しく、しおらしくなっているではないか。


「えへへ。腹直筋、シックスパック~~!」


もはやマッサージでもなく、涎を垂らして、嗜好品を撫でまわしている彼女がいる。


「あれ?」


やがて、大人しくなった俺のお元気くんに気付いて、彼女は気を落とした。そうですよね~~。申し訳ない。


ま、でも、いきなりすぎてビックリしただけで、本来は嫌なことでも何でもない。男だって、自分の事を誉められたい。讃えられたい。見た目にせよ、中身にせよ。彼女は褒めたたえることが出来るのだから、それは素晴らしいことなのだ。イカンのは、自分の世界に没頭し過ぎることぐらいだ。だが、その俺の気持ちの回復とは裏腹に彼女は凹んだままのようだ。


「すみません。私、つい、いつもの悪い癖が・・・」


 自分のことを分かってはいるようだ。しょげたまま正座している彼女の腹部はぽよんと軽く二段になっている。俺の視線に気付いて、それを両手でスッと隠した。これも原因かもしれない。冒険者もやっていた彼女。基本的に鍛えられている体だが、しっかり腹筋の出ているヴァレリアや何もしていないくせに縦線が一本入っているサマンサと比べて肉付きが良い。とはいえ、クビレがないわけでもない。元の体質もあることだし。


 俺は彼女が戦利品になった、つい先日のことを思い出していた。ゴブリンたちから注がれた熱い羨望の視線。もっと自信を持つべきだ。讃え合おう。お互いに。


「筋肉好きはいいことだ。でも、俺はただの肉の塊じゃない。それも含めた俺という人間を見て欲しいんだ。女性だって普通そうなんじゃないか?」


「はい。」

応える彼女はしおらしかった。


「よし。じゃ、お仕置きだ。」


「え?えええ??」


 彼女の驚きは置いておいて、自分は先ほど自分に塗りたくられたオイルのボトルのノズルをプシュッと押すと、手に相当量ぶちまけた。両手に練り込み、それを彼女の両肩にべちゃっと落とし、塗り広げていく。肩から腕。垂れて落ちた胸の谷間、腹部。太ももへ。元から艶々した膝まで来ると、今度はふくらはぎから足の裏、足の指に到達した。足の指一本一本と俺の手の指を絡める。


「んんんぅ」


 彼女が頬を赤らめて熱っぽい声を上げた。余った親指で土踏まずをぐりぐりとマッサージした。


「あは。上手っ。」


足の甲からすらりと伸びた脛、膝に戻り、内またを両掌で摺り上げる。


「あ。あ。はぁ。」


わざと危険ゾーンを掠るようにいやらしい悪戯指で線を描き、腹に帰ってきた。そこだけは、彼女は触られることを躊躇っているように感じる。


「きれいな形じゃないか。」


「そんなことないです。」


やはりそうか。ここがコンプレックスらしい。そんなものは払しょくさせて、彼女に翼を与えなければならない。それが天使様、使徒様?の役割なのだ。


「以前、スケベな酒場のマスターが言ってたんだけれど、この部分がポッコリしているのは、小笊腹(しょうけばら)といって美女の条件みたいなものなんだってさ。」


「そうなんですか?」

意外と素直じゃないというか、根が深いというか・・・ならば、こうだ!


俺は念じながら、彼女の腹を擦り続けた。グッドルッキン!の奇跡を注入する。慈しむように。その魅力を最大限に引き出したら、一体何が現れるのだろう?俺自身にも予想がつかない。やがて、彼女の腹部が発光し始める。


「えええ?」

まばゆい光に驚いた彼女の目が青色の宝石のようだ。


そこには薄紫色を基調とした紋章が現れていた。女性陰部の内部構造、その先の子宮から卵管までを幾何学的な模様で抽象化して書かれた、怪しくも美しい紋章。マイクロビキニの今の彼女の姿にもこれ以上ないほどに似合っている。


「これは何なの?」

知識がないらしく、彼女が聞いてくる。


「うむ。『淫紋』という奴だ。」


「いん・・もん?」


「あぁ。通常はただのペインティングみたいなものだが、本物には相手を支配する実効的な力も存在している。」


 そうだ。普通は遊び好きなカップルなどがお遊びでつけるものだが、魔法も存在するこの世界の事だ。奇跡を封入してもいるのだから、実際に効果も期待できる。ぜひ試してみなくてはな。


俺は、その図柄をなぞるようにして、彼女の反応を見た。


「ううぅ」


反応は予想通りだ。これは本物だ。だが、シンプルに性感帯に変わっちゃったような?!


「すごい。下半身を鷲掴みにされたみたいです。」

キラキラと熱っぽい目で彼女が見てくる。


「変にやり過ぎていなければいいけど。」


「大丈夫。続けてください。」


両手の人差し指で外側から内側へ。中央を円を描くように撫でる。そして下の危険ゾーンへ。


ぶるぶるぶるっ。彼女の体の反応だけで凄さが分かる。一度そこから手を放して、彼女の両肩を掴んで支える。でないと、狭いベッドから転がり落ちそうな勢いだった。


「ノルン、君は美しい。それは見た目だけの話じゃない。男というものをこよなく愛し、自信を与えてくれる。」


「うれしい。」


彼女に口づけながら、オイルをおわん型の美しい胸部に塗りつけていく。豊かな胸の先端が、当たり前のように零れる。男ならば誰もが夢見る光景だ。オイルでコーティングされた彼女の体の全てが、まるで高級なチョコレート細工のようでもある。また口づけて、それでも先ほどの作業をねちっこく、容赦なく続けてゆく。


「あああぁ。」


再びの下腹部へ。『淫紋』の模様をなぞるように指を走らせる。


「んふううううっ!」


もう十分に待ちあぐねてもいるようだ。彼女の腰を優しく抱き寄せると、後ろから自らを重ねてゆく。一番深いところまで到達した段階で『淫紋』の模様を少し強めに擦り上げた。


「あっはああああ!!」

部屋に響き渡る声を出して、彼女の体が激しく痙攣した。その痙攣によって俺も強く小刻みなリズムに擦られて、長く持ちそうにはない。なんとか、なんとか持たせようと頑張った。この素敵な時間を終わらせたくないと踏ん張ったが、あまりに凄い快感に、それは厳しい様子だった。


やがてその時が迫る。ぐっ。ぐっ。グッドルッキ~~ン!!


何回かの経験で少し分かってきた。奇跡がチャージされているときの感覚だ。どんな仕組みかは分からないが。でもそうだ、心が解放された。そんな感じだろうか。


朦朧とした意識の状態を現わすほとんど白目で、彼女がテンプレートなエロ事の締めの言葉を言う。

「またのご・ご利用・・・お・お待ちしております。」


俺は何枚かのバスタオルを見繕うと、彼女にかけて、静かに退出した。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


いやぁ、午前中から俺は何をやっているのだろうか?

気付くと、正午を少し回っている。入浴は朝のうちに済ませていたが、このていらくではまた入浴し直さなければならない。今晩のお相手の妻、サマンサに失礼に当たる。俺は男湯を目指した。そう言えば以前もこのぐらいのタイミングで、男湯に切り替わってからも居座り続けていたコーデリアと出くわしている。


まさかな?


ちなみに今日のお風呂は「乳頭の湯」、乳白色のお肌に良い泉質のお風呂だってさ。本当に凝っている。


洗い場で体をゆすいで、湯船に向かう。


・・・


いらっしゃった。


「こんにちわ。」

俺はジト目でコーデリアを見た。


「あら、おひさしぶり。夜遅くまでミステリー小説を読んでいたら朝起きるのが遅くなって。」


正直、理由まで白々しく感じる。というか、居座っていることはもはや当たり前の事実と化している。


「どんなの、読んでるんですか?」


「そして誰も勃起しなくなった、とかいう題名のやつね。今度貸そうか?」


「いや、結構です。読んでそうなったら堪ったもんじゃありません。私にとっては、もはや危険文書です。」


「あははははは。そうねぇ。元気なゴーダ君がそうなったら大変ね。」

コーデリアは右腕を後頭部に回して、「うふ~ん」なポーズで脇をこちらに披露している。持ち上げられた乳房が湯面からはみ出てしまいそうだ。


挿絵(By みてみん)


ちきしょー。馬鹿にしやがって。理性とは真反対に、お元気くんはむくむくと元気になっている。


「ま、それは冗談として・・・」


一体どこまでが、何が冗談だったのかもわからないが


「今度街に出かけるから、護衛をお願いするわね。」


「へ?街?」


「グレーフェンの街よ。冒険者がいるところ。」


「危険じゃないですか?」


「まぁ、いつも大丈夫だし。私は普通に人間だし。」


そりゃそうだ。俺はこの緑の肌だから、どうすればいいのだろう?その質問をする暇もなく、


「またその時になったら説明するわね。じゃっ。」


そう言うと彼女は立ち上がった(!)


乳白色の湯水が彼女の白桃のような乳房から流れ落ちる。それを見た俺は、彼女自身が出した乳汁のように錯覚して興奮した。こいつ、毎回絶対にわざとやっている~。ご機嫌そうな彼女は、鼻歌を歌いながら去って行った。


本当に毎度毎度、である。お元気くんが一向に収まる気配を見せないのも、毎度毎度である。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


困ったお風呂荒らしのあとはどんな困った人と出会うのだろう?


散歩に戻ったものの、なんだか落ち着かない気分でいる。こういう時はだいたい何かが起こるんだよな。風呂から上がって、一度ヴァレリアの部屋にでも荷物を取りに行こうかな、とか思っていたら、バタバタと足音が近づいてくる。コマンド~だった。


「ゴーダ様。大変です。一般牢に捕えていた魔法使い、ミリアルドが交渉を持ちかけてきております。」


「なんだ。待遇に不満でもあるのか?」


「ちょうど看守をノリスが受け持っている時間帯でして、まずは彼に話を持ち掛けたみたいですが。」


いまいちよく分からない話だ。一応話を聞かない限りはどうしようもないな。公休は返上でやるべきことをするしかない。そういう約束だったから諦める。やっぱりここは、ややブラックな企業かも知れない。


俺は牢屋の監視室に入り、ノリスと面会した。


「すみません。私ではどうしようもない案件でして。」

生真面目なノリスは毒でも飲み込んだような顔になった。


「いいから、気にするな。それよりも先に奴の言い分を聞こうじゃないか。」


 ノリスの話によるとこうだ。奴はここからかなり北方、北側諸国の大貴族の家柄だというのだ。グレーフェンの街を根城に、今は冒険者をしているが、それも武者修行のためだという。街には自分が故郷から連れてきた執事もひとりいる。執事に言って身代金を用意させるから、代わりにここから出してくれ。というのだ。それは俺でも交渉できる立場にはないな。王様バーンに話を上げておこう。


「陛下、ちょっとよろしいですか?」


昼のお風呂に入るたびにあなたの奥様に誘惑(悪戯?)されて・・・じゃなかった。ミリアルドの事だ。


「今日は休みじゃなかったのか?どうしたのだ?」


予定を把握していたこともあり、バーンも驚いた様子だった。自分はミリアルドの件を上奏した。横で聞いていた大臣ルフトが顔を顰めていた。彼のデータバンク上はミリアルドは貴族でないことになっていた。まぁ、北側諸国?そんな遠い国の貴族なんて正直知ったことではないが。


「そうだなぁ。身代金というのがイメージが悪いな。交渉というのであれば・・・」

話を聞き終わったバーンは体面を考えている様子だった。


正直、金に困ってはいなさそうなエレクツィオン砦、欲しいものがあるとすればそれはひとつ。


俺的には、まさにひとつ。


俺はおもむろに手を上げた。

人物紹介 その8


ルフト/古田洋一(ふるた・よういち)


研究者で、合田が通う大学の講師でもあった。うっかりと研究室のパソコンに引き込んでしまったエロ画像を女子生徒に見られる。セクハラという重罪にパニックとなり逃亡。工事中の非常階段から転落、あえなくこの世を去る。ソフトなロリコン趣味。

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