プロローグ: 帰還と新たなる座標
古代都市レムリアの崩壊は、魔の海域に巨大な渦潮を残し、賢者の石の秘密を再び深海へと葬り去ったかのように見えた。だが、メンデレ秀城の脳裏には、あの石碑に刻まれていた究極の融合魔法陣が、イッテルビウムの力によって一瞬で記憶され、焼き付いていた。
ガリオン・ハート号は、ガリオ・マーレの神業的な操船技術と、秀城とアメリが連携して展開した時空安定化フィールドによって、荒れ狂う魔の海域からの奇跡的な脱出に成功した。船倉では、オクシアとアメリが負傷したジンク、ナトリ、ガリオの治療に当たっていた。キュリウムの聖なる放射線の応用と、アメリシウムの持続再生の波動が組み合わさり、プルトニウム・パルスによって負った深刻な魔力ダメージも、驚異的な速度で回復していった。
秀城は、虹色に輝く『賢者の剣』を握りしめ、甲板で荒れ狂う海を見つめていた。 「(アルケミスは、俺が魔法陣を記憶したことを知って逃げた。奴は必ず俺を追ってくる。そして、奴の言う『崩壊』の力でしか起動しないという言葉…あれが真実なら、俺がこの魔法陣を完成させることは、奴の計画を完成させる手助けになってしまうのか…?)」
「メンデレ様」 アメリが、秀城の隣に静かに立った。彼女の青銀色の瞳は、海の嵐よりも深い憂いを帯びていた。 「アルケミスの言葉に、惑わされてはいけません。彼が『崩壊』と呼ぶ力は、元素の強制的な支配。私たちが目指す『調和』とは、元素の意志を尊重し、共鳴する力。同じ魔法陣だとしても、起動させる『意志』によって、その結果は全く異なるはずです」
「アメリ様…」 「私たちは、賢者の石の魔法陣を完成させなければなりません。アルケミスの『崩壊』の魔法陣に対抗できる、唯一の『調和』の魔法陣として」
アメリの言葉に、秀城の迷いは晴れた。 「ありがとう、アメリ様。その通りだ。俺は、俺のやり方で、この魔法陣を完成させる。そのためには、残りのアクチノイド元素…バークリウム(Bk)、カリホルニウム(Cf)、アインスタイニウム(Es)…を見つけ出さなければならない」
数日後、一行は地下都市「エレメンタ・アサイラム」に帰還した。 アルゴン、セレン、アルカイアが、緊迫した面持ちで彼らを迎えた。
「無事だったか、メンデレ君!」 アルゴンは、秀城の無事と、レベル19への到達、そして新たな仲間アメリの存在に安堵の表情を浮かべた。 「賢者の石の正体が、魔法陣だったとは…。そして、アルケミスがプルトニウムの完全制御に成功していたとは…事態は我々の想像を遥かに超えている」
秀城は、レムリアでの出来事、ウラン・ゴーレムとの死闘、キュリウムの習得、そしてアルケミスとの対決の全てを詳細に報告した。
図書館の主アルカイアは、秀城が記憶した賢者の石の魔法陣の写しを見て、深く頷いた。 「…間違いない。これは、ウーアの世界の崩壊時に失われた、『元素転換の秘法』そのものじゃ。そして、アルケミスの言う通り、この魔法陣は不完全じゃ」
「不完全…?」
「うむ。この魔法陣は、『安定の島』の超重元素をこの世界に固定する『器』に過ぎん。起動には、膨大なエネルギーを供給する『鍵』が必要じゃ。アルケミスは、プルトニウムの『崩壊』をその鍵にしようとしておる。じゃが、それではレムリアの二の舞…いや、それ以上の破滅を招く」 アルカイアは、秀城の虹色の剣を一瞥した。 「だが、君が『調和』の力で生み出したその剣…それこそが、本来の『鍵』となる可能性を示しておる」
「では、俺たちは残りのアクチノイド元素を探さねばなりません。アルケミスより先に」
「うむ」アルカイアは、元素図書館の深淵の区画から、さらに古い星図盤を取り出した。「君がレムリアの地図から見つけた『異界への座標』…あれは、古代ウーア文明が、元素の探求のために設置した転移装置、『ワールド・ゲート』の場所を示しておる」
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