第1章: 地図の示す場所、古代都市「レムリア」
一行は、忘れられた谷から最も近い港町を目指し、数日間の旅を続けていた。道中、秀城はアメリと元素の調和についての議論を深め、ジンクとオクシアはアメリの支援魔法との連携訓練を行った。
彼らが目指す港町「アクアポート」は、大陸東海岸に位置する、海洋貿易の中心地だった。しかし、秀城たちが持つ地図の座標は、現在のどの海図にも載っていない、広大な外洋の真っただ中を指し示していた。
アクアポートのギルドで、秀城は熟練の船乗りや歴史学者たちに地図を見せ、情報を求めた。
「この座標は…」
ギルドの資料室で、白髭の老学者が虫眼鏡を片手に地図を覗き込んだ。
「間違いない。ここは、現代の海図からは消されているが、古代文献にのみ記されている、『魔の海域』と呼ばれる場所じゃ」
「魔の海域…ですか?」
オクシアが尋ねた。
「うむ。その海域は、一年中、巨大な嵐と、時空の歪みが発生し、生きて帰ってきた者はいないと言われておる。そして…その海域の中心にこそ、かつて海に沈んだとされる、古代都市『レムリア』が存在したという伝説がある」
「レムリア…!」
秀城は、その名前に聞き覚えがあった。元素図書館の深淵の区画で、ウーアの世界の崩壊に関する記録と共に、断片的に記されていた古代文明の一つだ。
「『始まりの地』とは、そのレムリアのことなのかもしれません」
アメリが静かに言った。
「ウーアの世界の崩壊を逃れた人々が、賢者の石をそこに隠した…」
「だが、魔の海域を越えるのは不可能だ」
老学者は首を振った。
「嵐と時空の歪みだぞ。どんな船でも一瞬で飲み込まれてしまう」
秀城たちが情報を集めていると、ギルドの掲示板の前で騒ぎが起きていた。
「まただ!アルケミスの残党め!港の倉庫から『海鳴石』を盗んでいきやがった!」
秀城たちが駆け寄ると、港の警備隊員が憤慨していた。
「海鳴石?」
「ああ。この港で採れる、特殊な鉱石でな。魔力を通すと、海獣の嫌う特殊な音波を出すんだ。高値で取引されるんだが、最近、黒いローブの連中(元素狩り)に立て続けに盗まれていてな…」
「元素狩りだ!」
ジンクが反応した。
「奴ら、海鳴石を集めて何をする気だ?」
秀城の脳裏に、アルケミスのウラン鉱石収集の記憶が蘇った。
(奴らは、地上でも着実に動いている。海鳴石…海獣避け?いや、あるいは、海獣を呼び寄せるために使うのか…?)
その時、一人の船乗りが、秀城たちの会話を聞いて、嘲笑うように言った。
「魔の海域に行きてぇだと?命知らずな連中だ。あんたらがどんなに強くても、あの海の『主』には勝てねぇよ。それに、あの海域を渡れる船乗りなんて、今のアクアポートにゃ一人しかいねぇ」
「その人はどこに!?」
秀城が詰め寄った。
「…港の西の外れにいる、変わり者さ。ガリオ・マーレ。奴なら、あんたらの望みを叶えてくれるかもしれねぇな。もっとも、奴の『試練』を乗り越えられれば、の話だがな」
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