プロローグ: 新たな仲間、アメリ
忘れられた谷の古代結界が修復され、ウラン爆弾の汚染がアメリシウムの力によって浄化された数日後。メンデレ秀城、ジンク、オクシア、ナトリ、そして新たに仲間となったアメリ・カレントの五人は、谷の民たちに見送られ、次なる目的地「始まりの地」を目指して出発した。
アメリ・カレント。彼女は、数千年にわたり外界との接触を断ってきたアメリ族の巫女であり、世界で唯一のアメリシウム(Am)の使い手だ。彼女の加入は、秀城のパーティーにとって計り知れない戦力増強となった。
谷を出て最初の夜、一行は山岳地帯の麓で野営の準備をしていた。秀城はジンクと共に焚き火の準備をし、オクシアは周囲に警戒結界を張り、ナトリはアメリに興味津々といった様子で話しかけていた。アメリは、生まれて初めて見る「谷の外の世界」の空気に、少し緊張しながらも、その青銀色の瞳を好奇心で輝かせていた。
「アメリ様って、ずっとあの谷にいたんですよね?外の世界って、どうですか?」
ナトリが、焼いた干し肉を差し出しながら尋ねた。
アメリは、それを受け取り、小さく微笑んだ。
「…驚きの連続です。空気がこれほど乾燥している場所があることも、これほど多くの人々が、元素の力を制御せずに暮らしていることも。そして…」
アメリは、秀城の方を見つめた。
「あなたたちのように、様々な元素の力が調和して共存しているパーティーがあることも、私にとっては奇跡のようです」
「へへーん、私たちは最強のパーティーですからね!」
ナトリが胸を張る。
「アメリ様のアメリシウムの力、改めて見せていただけますか?」
秀城が、真剣な表情で尋ねた。彼は、アルケミスとの戦いに備え、アメリの力の正確な特性を把握しておきたかった。
「はい」
アメリは立ち上がり、焚き火の炎に向かって静かに手をかざした。
「アメリシウムの本質は『持続』と『制御』。そして、不安定な力を『鎮静化』させることです」
アメリが詠唱を始めると、彼女の手のひらから青白い光が放たれた。その光が焚き火の炎に触れると、激しく燃え盛っていた炎が、まるで意志を持ったかのように、穏やかで安定した揺らめきに変わった。魔力の暴走が完全に抑え込まれ、熱効率だけが純粋に高められた状態だ。
「すごい…!炎の力を弱めるんじゃなくて、安定させてる…!」
ナトリが、自身のナトリウムの力とは正反対の現象に目を見開いた。
「これが、プルトニウムの崩壊連鎖を止める鍵です」
秀城は、その光景を見て確信を深めた。
「アルケミスの『崩壊』に対し、アメリ様の『鎮静化』は、完璧なカウンターになる」
「それだけではありません」
アメリは、次にオクシアに向き直った。
「オクシア様、あなたの回復魔法を、負傷した小鳥(ジンクが先ほど見つけていた)にかけてみてください」
オクシアが頷き、小鳥に【癒しの息吹】をかける。すると、アメリがその上からアメリシウムの青白い光を重ねた。 「【持続再生の波動(Eternal Heal)】」 アメリシウムの力が、オクシアの酸素の力を触媒し、増幅させる。小鳥の折れた翼が、目に見える速度で再生し、羽ばたき始めたのだ。
「私の…私の回復魔法が、こんな力に…!」
オクシアは自身の手に宿った奇跡に驚愕した。
「アメリシウムは、他の元素の力を持続・強化させます。特に、オクシア様の酸素やジンク様の亜鉛とは、生命力という点で非常に相性が良いのです」
ジンクは、その光景を見てニヤリと笑った。
「こいつは頼もしい仲間が加わったぜ。これで、アルケミスがどこから来ようと、返り討ちにしてやれる」
秀城は、アルカイアから託された「始まりの地」への地図を広げた。そこには、大陸の広大な海洋を越えた先に、小さな島影が記されているだけだった。
「次の目的地は、この地図が示す『始まりの地』。そこにあるという『賢者の石』が、アルケミスの超重元素に対抗する鍵になるかもしれない」
秀城は、新たな仲間と共に、未知なる海への旅立ちを決意した。
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