第2章: 崩壊の序曲、プルトニウムの胎動
地下都市の中心広場。かつて美しい噴水があった場所は、今は禍々しい黒いエネルギーの渦に飲み込まれていた。アルケミス・ダークは、その渦の中心に静かに浮かび、両手を広げていた。彼の周囲には、目に見えないほどの速度で回転するプルトニウムの原子核が、まるで衛星のように周回していた。
「来たか、メンデレ・秀城」
アルケミスの声は、以前よりもさらに歪み、非人間的な響きを帯びていた。
「お前の到着を待っていたぞ。この究極の崩壊の瞬間を、共に見届けようではないか」
秀城は、アルケミスの周囲に渦巻くエネルギーを見て戦慄した。それは、単なる魔力ではない。プルトニウムの核分裂によって発生する、制御不能なエネルギーの奔流そのものだった。既に、連鎖反応は始まっており、アルケミスはそのエネルギーを辛うじて自身の魔力で抑え込んでいる状態に見えた。
「アルケミス!お前は正気か!?その力は、お前自身をも滅ぼすぞ!」
「滅び?違うな。これは再生だ」
アルケミスは恍惚とした表情で言った。
「この旧世界の元素バランスを一度完全に崩壊させ、そして私の手で、新たな秩序を創造する。そのために、この地下都市の豊富な元素エネルギーが必要だったのだ。お前が現れたことで、私の計画は最終段階に入った」
アルケミスの足元から、黒い触手のようなエネルギーが伸び、広場の地面や壁に張り巡らされた魔法陣に侵食していく。都市のエネルギーを吸い上げ、プルトニウムの連鎖反応をさらに加速させるつもりだ。
「やめろ!」
秀城は、イッテルビウムの超光速発動で、ホルミウムで収束させた原子崩壊レーザーを放った。アルケミスの防御結界を貫通し、彼の肩を掠める。
「ぐ…!やはりその精度か!だが、今の私には、その程度の攻撃はもはや意味をなさない!」
アルケミスは、肩の傷を一瞬で再生させると、プルトニウムのエネルギーの一部を解放した。黒いエネルギー波が、津波のように秀城を襲う。
「波動変換結界!」
秀城は、ツリウムと不活性元素の力で結界を展開。エネルギー波は結界に吸収され、無害な光へと変換される。しかし、その威力は凄まじく、結界の維持だけで秀城のMPが大きく削られた。
「防御は完璧か。だが、いつまで持つかな?このプルトニウムのエネルギーは無限だぞ!」
アルケミスは嘲笑し、次々とエネルギー波を放ってくる。
秀城は防御に徹しながら、アルケミスの隙を窺った。彼のプルトニウム制御は完璧に見えたが、秀城のイッテルビウムの超感覚は、その制御の中に微細な揺らぎを捉えていた。連鎖反応を抑え込むために、アルケミスは膨大な精神力を消費しており、完全に制御しきれていないのだ。
(隙は必ずある…!彼が連鎖反応をコントロールしようとする、その一点を突く!)
秀城は、アルケミスの魔力の流れを読み、彼の制御の焦点となっているプルトニウム原子核の一つに狙いを定めた。
「超光速発動!プロトアクチニウム・ニードル!」
秀城は、プロトアクチニウムの力を、イッテルビウムの精度で極限まで細く、速く練り上げ、針のようなエネルギーとして放った。それは、アルケミスの防御結界を無視し、彼の制御下にあるプルトニウム原子核の一つに、直接干渉した。
「なっ…!?」
アルケミスは、自身の制御下に亀裂が入るのを感じた。秀城のプロトアクチニウムの安定化の力が、プルトニウムの崩壊の連鎖に楔を打ち込んだのだ。
アルケミスの周囲を渦巻いていた黒いエネルギーが、一瞬、大きく揺らいだ。連鎖反応が乱れ、制御が効かなくなる兆候が見えた。
「貴様…!私の連鎖反応の核に直接干渉したのか…!」
アルケミスは、初めて本気の怒りの表情を見せた。彼は、秀城がプロトアクチニウムを習得したことを知らなかった。
「これで終わりだ、アルケミス!」
秀城は、この好機を逃さなかった。彼は、自身の持つ全ての力を解放する準備を始めた。アルケミスの崩壊の力を、完全に中和するための、究極の調和の魔法を発動させるために。
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