プロローグ: 嵐の前の静寂、決意の刻
元素図書館での試練を乗り越え、メンデレ秀城が禁断のアクチノイド元素、プロトアクチニウム(Pa)の力を手にしてから数日が経過した。地下都市「エレメンタ・アサイラム」は、一見すると平穏を取り戻していたが、その水面下ではかつてない緊張感が支配していた。アルケミス・ダークによる「究極の元素」を用いた総攻撃が、いつ始まってもおかしくない状況だったからだ。
秀城は、守護者本部の一室で、ジンク、オクシア、そして新たに彼の護衛兼共闘者となったプラチナ、セレンと共に、最終的な作戦の確認を行っていた。部屋の中央には、地下都市の立体模型が置かれ、アルゴン・ノーブルが最新の防御状況を説明していた。
「都市全体の防御結界は、ケイ素、鉄、そして新たに白金族の元素を加えた三重構造に強化した。特に、秀城君のプロトアクチニウムの力と共鳴するよう調整した時空安定化フィールドを都市境界に展開し、アルケミスの空間転移による奇襲を最大限警戒している」
アルゴンの声は落ち着いていたが、その瞳の奥には深い憂慮の色があった。
「しかし、問題はアルケミスの「究極の元素」…我々の分析では、彼が使うのはプルトニウム(Pu)で間違いないだろう。元素図書館の記録によれば、プルトニウムの核分裂連鎖反応は、一度始まれば我々の知る元素魔法では停止させることが極めて困難だ」
秀城は、自身の右手に宿るプロトアクチニウムの、静かだが底知れない力を感じながら言った。
「俺の崩壊中和結界は、プルトニウムの連鎖反応を止めるためにあります。アルケミスがその力を使うなら、俺が必ず中和します。問題は、彼がそれをいつ、どこで、どのように使うかです」
セレンが鋭い視線を模型に向けた。
「奴の狙いは、メンデレ、君自身だ。しかし、同時にこの都市…いや、この世界の元素バランスそのものを破壊しようとしている可能性が高い。プルトニウムの力を最大限に引き出すには、触媒となる大量の元素エネルギーが必要だ。奴は、この地下都市そのものを、巨大な元素炉に見立てているのかもしれない」
「つまり、俺を誘い出し、都市の中心部でプルトニウムを暴走させる…それが奴の狙いか」
秀城の背筋に冷たいものが走った。
プラチナが静かに立ち上がり、秀城の隣に来た。
「メンデレ、あなたは一人ではないわ。私たちがいる。ジンクの雷撃、オクシアの回復と防御、そして私の白金の絶対防御。あなたのプロトアクチニウムの力が発動するまで、私たちが必ず時間を稼ぐ」
「ああ。俺たち「元素探求者」と守護者の力を合わせれば、アルケミスだって止められるはずだ!」
ジンクが力強く拳を握った。
「皆…ありがとう」
秀城は仲間たちの顔を見渡し、深く頷いた。
「俺は、俺たちの調和の力が、アルケミスの崩壊の力に必ず打ち勝つと信じている」
その時、都市全体に、これまで聞いたことのない、甲高い警報音が鳴り響いた。管制室からの緊急通信がアルゴンの持つ通信機に入る。
「アルゴン様!都市境界に、正体不明の超高エネルギー反応を検知!時空安定化フィールドが…歪曲しています!」
アルケミスの総攻撃が、ついに始まったのだ。しかも、それは彼らの予想を遥かに超える形で。
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