第2章: アルケミスの影と元素崩壊
アルケミスの登場と共に、戦場の空気が一変した。 それまで必死に戦っていた元素狩りの戦闘員たちは、一斉に動きを止め、主の降臨に傅くかのようにその場に膝をつき、頭を垂れた。彼らの目には、恐怖と狂信的な崇拝の色が浮かんでいる。 一方、地下都市の守護者たちは、アルケミスの放つ圧倒的なプレッシャーに体を硬くし、最大の警戒態勢を取った。アルゴンやセレン といった幹部たちは、苦々しげにアルケミスを睨みつけている。
「アルケミス…!」
セレンが低い声で唸った。彼女とアルケミスの間には、過去の因縁があるのだろうか、見えない火花が散っているようだった。
「セレンか。また私の邪魔をするか。相変わらずだな」
アルケミスはセレンを一瞥したが、すぐに興味を失ったように秀城に視線を戻した。仮面の下の目が、秀城の魂を射抜くように見つめている。
「ずいぶんと成長したようだな、メンデレ・秀城。元素も六十個か 。レベルも16 。素晴らしい。実に素晴らしい素材だ」
「お前の好きにはさせない!」
秀城はチタン合金剣を構え、アルケミスに真っ向から向き直った。恐怖はある。だが、それ以上に仲間を守るという強い意志が彼を支えていた。
「無駄だと言っているだろう。お前の力は、いずれ私のものになる運命なのだ」
アルケミスは嘲笑し、右手をゆっくりと上げた。その手のひらに、闇よりも深い、黒いエネルギーが集束していく。それは、以前メタルシティでセレンたちを苦しめた 、あらゆる元素魔法を無力化する忌まわしき力。
「まずは、この騒がしい魔法の応酬を黙らせるとしよう」
アルケミスの声に、愉悦の色が滲んだ。
「「究極融合魔法・元素崩壊」!」
漆黒の波動が、アルケミスを中心に巨大なドーム状に広がっていく。それは音もなく、しかし確実に広場全体を覆い尽くした。 波動が通過した瞬間、守護者たちの体から魔法のオーラが掻き消えた。杖の輝きは失われ、魔法陣は霧散した。
「ま、魔法が…発動しない!」
「またこれか!なんて力だ!」
守護者たちが動揺する。前回と同じく、アルカリ金属や希ガスといった一部の例外を除き、ほとんどの元素魔法が完全に使えなくなってしまったのだ 。魔法に頼っていた戦士たちは、武器を握りしめることしかできない。
「ははは!無力だな!元素使いから魔法を奪えば、ただの虫けら同然!」
アルケミスは高笑いした。
「さあ、抵抗する術を失ったお前たちに何ができる?蹂躙してやれ!」
アルケミスの号令を受け、膝をついていた元素狩りの戦闘員たちが、再び猛然と動き出した。魔法を使えなくなった守護者たちに、容赦なく襲いかかる。剣や槍、体術を駆使し、一方的な殺戮が始まった。
「くそっ!接近戦だ!」
ジンクが剣を抜き、応戦しようとする。だが、魔法による強化がなければ、彼の戦闘力は半減する。数の上で圧倒的に不利な状況で、守護者たちは次々と倒れていった。
「メンデレさん!」
ナトリとオクシアも杖を構えるが、炎も氷も現れない。もどかしげに唇を噛む。
アルケミスは、眼下で繰り広げられる惨状を、まるで演劇でも観るかのように満足そうに眺めていた。 そして、ゆっくりと、獲物を見定めるように秀城に近づいてくる。
「さあ、メンデレ・秀城。お前の番だ。その稀有な力、「全元素習得」 …そして、その「元素崩壊無効」
のスキルごと、この私に渡してもらおうか」 アルケミスの目が、仮面の下でギラリと光った。
秀城は歯を食いしばった。仲間たちが次々と倒れていく。プラチナたち貴金属族は耐性があるため 戦えているが、多勢に無勢だ。このままでは全滅してしまう。
(本当に、俺だけは影響を受けないのか…?アルゴンさんの推測は正しかったのか? )
スキル「元素崩壊無効」 。六十個の元素を習得したことで得られた、特別な力。秀城は、この力に賭けるしかなかった。
「試してみるか?お前のそのスキルが本物かどうかを」
アルケミスが嘲るように言い、秀城に向かって黒いエネルギー弾を放った。それは純粋な魔力の塊であり、元素魔法ではないため、「元素崩壊」の影響下でも使用できるアルケミスの切り札の一つだった。
秀城は咄嗟に防御魔法を展開しようとした。
(頼む…!白金の力よ! )
秀城の手のひらに、眩い白金の光が集まった。 そして、光り輝く盾、「白金の盾」が、秀城の前に確かに現れた!
「なっ…!?」
アルケミスが初めて驚愕の声を上げた。
「馬鹿な!?なぜ魔法が使える!?「元素崩壊」が効かぬだと!?」
スキル「元素崩壊無効」 。
それは本物だった。 秀城だけが、「元素崩壊」の影響を受けずに、元素魔法を行使できるのだ。
「お前には、俺の力は奪えない!」
秀城は叫び、チタン合金剣を構え、アルケミスに向かって大地を蹴った。絶望的な戦況の中で、唯一の希望の光として。
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