第2章:襲撃者
翌朝、三人はアルミナルを出発した。
アルマとアレンが見送りに来てくれた。
「気をつけてな。東への道は、魔物も多い」
「はい。ありがとうございました」
「飛翔の練習、忘れるなよ」
「もちろんです!」
三人は東への道を進み始めた。
道は山岳地帯を抜け、徐々に平原に変わっていく。
「十日か...長いですね」
ナトリが呟いた。
「でも、途中で色々な街に寄れるわよ」
オクシアが地図を確認した。
「三日目にミネラルタウン、六日目にメタルシティ。どちらも鉱山の街ね」
「鉱山の街なら、金属元素使いがいるかもしれない」
秀城は期待した。
一日目は、順調だった。
魔物も何匹か現れたが、レベル11になった秀城たちには、それほど脅威ではなかった。
夜、野営地で焚き火を囲んでいると、ナトリが言った。
「メンデレさん、もう元素が十三個ですね」
「ああ。十分の一を超えた」
「すごいペースですよね。このままいけば、一年で全部習得できるんじゃないですか?」
「さすがにそれは...」
秀城は笑った。
「残り105個だぞ。しかも、レアな元素もたくさんある」
「でも、不可能じゃないですよ!」
ナトリの前向きな言葉に、秀城は勇気をもらった。
「...そうだな。頑張ろう」
その夜、秀城は不思議な夢を見た。
暗闇の中、五つの色の光が見える。
赤、青、緑、黄、黒。
そして、声が聞こえた。
「集めろ...元素を集めろ...」
「我々のために...」
秀城は飛び起きた。
汗をかいている。心臓が激しく鳴っている。
「...夢?」
だが、妙にリアルだった。
「気のせいか...」
秀城は再び横になった。
二日目の午後、三人は森を進んでいた。
「そろそろ休憩しましょうか」
オクシアが提案した。
「そうだな」
道端の大きな岩の影で休憩を取った。
水を飲み、乾燥肉を食べる。
その時、ナトリが何かに気づいた。
「...誰かいます」
「え?」
秀城は周囲を警戒した。
確かに、気配がする。複数。
「魔物じゃない...人間だ」
茂みから、五人の人影が現れた。
全員、黒いローブを着ていて、顔を隠している。
「誰だ!?」
秀城は剣を抜いた。
「メンデレ・秀城」
リーダーらしき男が名前を呼んだ。
「我々は『元素狩り』。お前を狩りに来た」
「元素狩り...?」
「転移者よ。お前の力、我々が頂く」
男が合図すると、五人が一斉に攻撃してきた。
「まずい!戦闘態勢!」
秀城は【鉄壁】を展開した。
だが、敵の攻撃は多彩だった。
一人は炎魔法、一人は氷魔法、一人は雷魔法、一人は剣、一人は弓。
「囲まれた!」
「【炎の矢】!」
ナトリが反撃した。
だが、敵は簡単に避けた。
「レベルが高い...!」
敵のステータスが表示された。
╔═══════════════════════════╗
║ 元素狩り・戦闘員 ║
╠═══════════════════════════╣
║ レベル:12 x5 ║
║ HP:300/300 ║
║ 攻撃力:60 ║
║ 防御力:45 ║
╚═══════════════════════════╝
「全員レベル12!?」
秀城たちより一つ上。しかも五人。
「くそっ...!」
炎魔法が秀城を襲った。
「【銀の壁】!」
防御壁で防いだが、貫通してきた。
ダメージ!
HP:480→430
「威力が高い!」
「【氷の槍】!」
オクシアが反撃した。氷の槍が敵の一人に命中した。
敵HP:300→250
「効いてる!でも、まだまだだ!」
敵の剣士が秀城に突進してきた。
「速い!」
剣が秀城の腕を切り裂いた。
ダメージ!
HP:430→380
「いてっ!」
「メンデレさん!」
「大丈夫!【水蒸気爆発】!」
秀城は融合魔法を放った。高温の水蒸気が三人の敵を包み込んだ。
錬金術師ボーナス!
敵に180のダメージ! x3
敵HP:300→120
敵HP:250→70
敵HP:300→120
「よし!ダメージが入った!」
「だが、まだ倒せない!」
敵の弓使いが矢を放った。複数の矢が同時に飛んでくる。
「【アルミブレード】!」
秀城は剣でアルミニウム魔法を発動させ、矢を切り落とした。
「新しい魔法...!アルミニウムか!」
敵のリーダーが驚いた声を上げた。
「情報通り、習得速度が異常だ!」
「どういうことだ!?」
「説明してる暇はない!早く捕らえろ!」
敵の攻撃が激しくなった。
三人は必死に防戦した。
だが、徐々に追い詰められていく。
秀城のHPは半分以下。ナトリとオクシアも傷ついている。
「このままじゃ...!」
その時、森の奥から声が聞こえた。
「【雷撃】!」
黄色い雷が、敵の一人を直撃した。
敵に200のダメージ!
敵を倒した!
「なっ!?」
敵が混乱した。
「誰だ!?」
森から、一人の青年が現れた。
年齢は二十五歳くらい。金髪に青い瞳。青と白の服を着ていて、手には杖を持っている。
「援軍だ」
青年は笑った。
「偶然通りかかったんだが、五対三はフェアじゃないだろ?」
「誰だ、貴様!」
「俺か?俺はジンク・エレクトロ。亜鉛使いの冒険者だ」
ジンクは杖を構えた。
「さあ、続きをやるか?今度は五対四だ」
敵のリーダーが舌打ちした。
「...撤退だ!」
「逃がすか!」
ジンクが追おうとしたが、敵は煙幕を張って逃げた。
煙が晴れると、敵の姿は消えていた。
「...逃げられたか」
ジンクは杖を下ろした。
「君たち、大丈夫か?」
「ああ、何とか...助かりました」
秀城は礼を言った。
「礼には及ばない。冒険者は助け合うものだ」
ジンクは三人を見た。
「それより、君たち、狙われてるみたいだな」
「元素狩り...って、何なんですか?」
「聞いたことがある。元素使いを狙う犯罪組織だ」
ジンクは真剣な顔になった。
「彼らは、元素使いを捕らえて、その力を奪うらしい」
「力を奪う?」
「詳しくは分からない。だが、犠牲者は元素魔法が使えなくなるという」
秀城は背筋が寒くなった。
「それは...」
「君、転移者だろ?」
ジンクは秀城を見た。
「噂は聞いてる。全元素習得能力を持ってるって」
「はい...」
「なら、狙われるのも当然だ。君は、彼らにとって最高の獲物だからな」
ジンクは腕を組んだ。
「これから気をつけろ。彼らはまた来る」
「...分かりました」
「それと、一つ提案がある」
「提案?」
「俺も、君たちのパーティーに入れてくれないか?」
ジンクは真剣な顔で言った。
「一人より四人の方が安全だ。それに、俺も色々旅をしてて、行き先が同じなら一緒の方が効率的だ」
秀城は二人を見た。二人とも頷いた。
「お願いします」
「よし!じゃあ、改めて自己紹介だ」
ジンクは手を差し出した。
「ジンク・エレクトロ。レベル13、亜鉛使いだ。よろしく」
「メンデレ・秀城、レベル11、元素錬金術師です」
「ナトリ・エルフレア、レベル11、炎魔法使いです」
「オクシア・ブリーズ、レベル12、氷魔法使いです」
四人は握手をした。
「さて、じゃあ傷を治そう。【癒しの光】」
ジンクが回復魔法をかけてくれた。
HP全回復!
「亜鉛の魔法か?」
「ああ。亜鉛は傷の治癒を促進するからな」
ジンクは笑った。
「これから、よろしく頼む」
その夜、四人は野営地で焚き火を囲んでいた。
「元素狩り...危険な組織だな」
ジンクが言った。
「俺も、何度か遭遇したことがある。厄介な連中だ」
「どうして、元素使いを狙うんでしょう?」
ナトリが不安そうに聞いた。
「分からない。だが、何か目的があるはずだ」
ジンクは焚き火を見つめた。
「元素使いの力を集めて、何をするつもりなのか...」
秀城は、あの夢を思い出した。
五つの色の光。そして、声。
「元素を集めろ...」
まさか...
「メンデレさん、大丈夫ですか?」
オクシアが心配そうに聞いた。
「ああ、ちょっと考え事を...」
「疲れてるんだ。今日はもう休もう」
四人はそれぞれのテントに入った。
秀城は横になったが、なかなか眠れなかった。
元素狩り。
彼らは、何を企んでいるのか。
そして、自分は本当に狙われているのか。
「...気をつけないと」
秀城は目を閉じた。
三日目、四人はミネラルタウンに到着した。
小さな鉱山の街で、人口は千人ほど。
ギルドに立ち寄ると、ギルドマスターが重要な情報をくれた。
「元素狩り?ああ、最近この辺りでも目撃情報がある」
「やっぱり...」
「気をつけろ。彼らは容赦ない」
「他に、元素使いの被害は?」
「二週間前、マグネシウム使いの冒険者が襲われた。命は助かったが、魔法が使えなくなったと聞いた」
秀城は息を呑んだ。
「本当に、力を奪われるんですね...」
「ああ。恐ろしいことだ」
ギルドマスターは地図を指差した。
「君たちが東に向かうなら、メタルシティを経由するといい。そこは大きな街で、警備も厳重だ。元素狩りも簡単には襲えない」
「分かりました。ありがとうございます」
ミネラルタウンで一泊し、翌日また東へ向かった。
四日目の午後、森の中で四人は魔物の群れと戦っていた。
レベル11のゴブリンの群れ。数は十匹。
「数が多い!」
「俺が引きつける!【雷撃】!」
ジンクが雷魔法で三匹のゴブリンを倒した。
「すごい威力...!」
「亜鉛は電気伝導性が高いからな!」
残りのゴブリンを、四人で協力して倒した。
╔═══════════════════════════╗
║ 戦闘勝利! ║
║ 経験値:200を獲得! ║
║ お金:150リアを獲得! ║
╠═══════════════════════════╣
║ 経験値:80→280/1500 ║
║ 所持金:2694→2844リア ║
╚═══════════════════════════╝
「ジンクさん、強いですね!」
ナトリが感心した。
「レベル13だからな。でも、メンデレもすぐに追いつくさ」
ジンクは笑った。
「それより、亜鉛の元素、習得しないか?」
「え?いいんですか?」
「ああ。仲間だからな」
ジンクは秀城の前に立った。
「亜鉛の元素は...守りと、再生だ」
「守りと再生?」
「亜鉛は、鉄を錆から守る。亜鉛メッキって知ってるだろ?」
「ええ」
「それに、亜鉛は生命に必要な元素だ。傷の治癒、免疫の強化、酵素の働き...全てに亜鉛が関わる」
ジンクは真剣な顔で言った。
「亜鉛の本質は...犠牲と保護だ」
「犠牲と保護?」
「亜鉛メッキは、亜鉛が先に錆びることで、鉄を守る。自分を犠牲にして、他を守る」
ジンクは秀城を見た。
「お前は、誰かを守りたいか?」
秀城は仲間たちを見た。
ナトリ、オクシア、そしてジンク。
「...守りたいです」
「なら、亜鉛はお前に合っている」
「亜鉛の声を聞いてみろ」
秀城は目を閉じた。
亜鉛。青白い金属。
「亜鉛は静かに働く。目立たないが、必要不可欠」
静かに。
秀城も、目立つことは好きじゃない。でも、役に立ちたい。
「亜鉛は犠牲になる。でも、それが誇りだ」
犠牲。
秀城も、仲間のためなら犠牲になれる。
「亜鉛の声を...」
意識を集中する。
すると、温かい感覚が生まれた。誰かを包み込むような、優しい感覚。
「聞こえる...」
守りたい、支えたい、犠牲になってもいい。
それは、秀城の願いだった。
仲間を守りたい。誰かの盾になりたい。
「俺は...守護者になる」
その瞬間、秀城の体が青白い光に包まれた。
╔═══════════════════════════════════╗
║ 重要!元素習得! ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 【亜鉛(Zn)を習得しました!】 ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 原子番号:30 ║
║ 元素記号:Zn ║
║ 分類:遷移金属 ║
║ 特性:防食性、生理活性、展性 ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 習得可能魔法: ║
║ ・亜鉛メッキ(コスト:18MP) ║
║ ・癒しの光(コスト:22MP) ║
║ ・防御強化(コスト:25MP) ║
║ ・再生促進(コスト:30MP) ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ ステータス上昇! ║
║ 防御力:122→132(+10) ║
║ HP:480→510(+30) ║
║ 運:36→40(+4) ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 重要!融合魔法解放! ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 【真鍮】 ║
║ Cu+Zn (銅+亜鉛) ║
║ コスト:25MP ║
║ 効果:銅と亜鉛の合金、楽器素材 ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 【酸化亜鉛】 ║
║ Zn+O (亜鉛+酸素) ║
║ コスト:20MP ║
║ 効果:白色顔料、日焼け止め ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 【硫化亜鉛】 ║
║ Zn+S (亜鉛+硫黄) ║
║ コスト:22MP ║
║ 効果:蛍光物質、夜光塗料 ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 【塩化亜鉛】 ║
║ Zn+Cl₂ (亜鉛+塩素x2) ║
║ コスト:20MP ║
║ 効果:脱水剤、防腐剤 ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 経験値+100! ║
║ 経験値:280→380/1500 ║
╚═══════════════════════════════════╝
「十四個目!」
「おめでとう」
ジンクが拍手した。
「これで、お前も仲間を守る力を手に入れた」
「ありがとうございました」
秀城は深く頭を下げた。
「さて、じゃあ先を急ごう。メタルシティまで、あと二日だ」
四人は再び東への道を進んだ。
五日目の夜、野営中に秀城はまたあの夢を見た。
五つの色の光。
そして、今度ははっきりと声が聞こえた。
「メンデレ・秀城...」
「誰だ!?」
「我々は、お前を見ている...」
「元素を集めろ...我々のために...」
「やめろ!」
秀城は飛び起きた。
汗びっしょりだった。
「...また、同じ夢」
これは、ただの夢じゃない。
何か、警告のような...
「元素狩りと、関係があるのか...?」
秀城は眠れなくなった。
焚き火の番をしながら、朝を待った。
感想等お待ちしています。




