第11話 こっちでも宣戦布告
恐ろしいほど察しがいいクラウスは、私の奥の手に気付いたようだ。飛行船ができることで、これまでの貿易ルートが大きく変わってくる。エル・ファベル王国に対する切り札でもあるので、使いどころを気をつける必要はあった。
独立国を成立させるために必要なものは、国民、領土、政治、他国が独立国として認めるかどうか――だ。アトラミュトス獣王国とティリオ魔王国は今まで通りの対応でもいいけれど、独立宣言をしたのちに、どのような反応を示すか注視しなければならない。
特に魔王の真意がクラウス――エミールを取り戻すことだとするなら、戦争を強いる可能性があることも視野に入れて動くべきだろう。どちらにしても各国首脳会談を行えるよう準備も必要だ。
「(魔族と戦争になった場合、戦力的に不利だわ。それと三カ国同時侵攻をさせないためにも、先手を打つ必要がある)クラウス」
「はい、何でしょう」
「ティリオ魔王国の対処を一任するわ」
「おや、私に任せてもいいのですか?」
楽しいことが大好きなクラウスのことだから、面倒な条件をわざと引き受けてくる可能性は十分にある。いや完全にそうする気満々だろう。
(どれだけ私が貴方を見ていたのか、きっと貴方は知らないわ。……私の想いも、私が何を切り出したのかも本当のところはわかっていないし、一生気付かないのかもしれないと思っていた。でもこれからは──)
クラウスの主人として彼に認められる主人でありたいし、それに両思いになったのなら、恋人としての関係も築いて行きたい。
だからこそ彼に侮られる訳にはいかないと奮起して、先に彼の手を封じる。
「もちろん、私の有能な執事が私にできない無理難題を受領する訳がないもの」
「それは……」
「ロルフも、そう思うでしょう」
「ああ。お嬢の執事というならそれ相応の働きをしてこそであって、主人の手を煩わせるなど言語道断だろう」
ロルフの賛同を得た私はクラウスに視線を向けた。
胡乱な目をして視線を泳がせている。私が言わなければ全力で面倒な方向にするつもりだったのだろう。まったく油断も隙もない。
「クラウスなら三日と待たずに解決してくれるって信じているわ! 有能だもの」
「なっ……」
「そうだな。有能な執事なれば楽勝だろう。有能であれば、の話だが」
「ねー」
「なー」
「……わかりました。わかりましたよ。そこまで言うのなら執事として、最高の結果をお嬢様にはお届けしましょう」
「ふふっ、約束よ」
執事モードのクラウスは基本的に隙がない。笑顔も崩さずに有能ぶりを見せつけていたが、今回は私とロルフの掛け合いに白旗を上げた。
(ふふふ、少しはクラウスの見ている景色に近づけたかしら?)
「代わりに戻ったら、私に…………たくさん、ご褒美を下さいませんか? 下さいますよね」
「――っ」
途端に執事モードが消えて、上目遣いで強請る姿に胸がキュンキュンしてしまう。なんというオンオフの切り替えの早さ。
その甘え上手な感じは、どこでマスターしたのか非常に興味はあるけれど、今はそれどころではない。クラウスの期待に満ちた目に対して、どうすれば満足するのか。
ロルフの巷の恋愛小説を読みあさったと言っていた。つまり答えは恋愛小説のような甘い反応を求めているとことだ。
(さっきは手を掴んで微笑んだけれど、それじゃダメってこと? となると……)
私は顔を近づけたクラウスの頬にキスをする。
「──っ!??」
「帰ってきたら、もう一度してあげます」
「…………………っ、*+□&%■#$*◆◇*|~□■!?」
(ついによく分からない言語を……)
顔を真っ赤にして口をパクパクさていて、なんだか可愛らしい。もう一度キスをしたらどうなってしまうのだろう。
「お嬢……」
「私の愛しい人は……どこでそんなテクニックを……王都で爛れた生活を……?」
「いや巷の恋愛小説を参考に??」
「…………っ、すぐに戻ってきます。……浮気も、心変わりも許さない……ですからね」
「まあ、それこそあり得ないわ。私が好きなのは今も昔もクラウスだけだもの」
「~~~~っ、繝槭う繝上ル◆◇縺昴s縺ェ縺薙→繧定◇◇◇∫ァ√?蠢?r縺ゥ繧後□縺第□■■■輔?繧後?縺阪′縺吶?縺ョ縺ァ縺吶!?」
さらに意味不明な言語を投げつけて、クラウスは転移魔法を使って消えてしまった。耳元まで真っ赤だったので、もう少し堪能したかったのに、なんだか残念だ。
「お嬢、どこでそんな技を覚えたんですか?」
「なにが?」
「いえ、頬にキスですよ。三年前は告白するので精一杯だったので……」
「好きな人に対して我慢しないって決めたら、自然とクラウスに触れたいっておもったのだけれど?」
「なるほど。(……天然の人たらし)」
歩き出す私に対してロルフは立ち止まったままだ。真剣に考え込む横顔は見惚れてしまうほどかっこいい。
私にとってロルフは剣の師であり、兄のように思っている。
少なくともこの瞬間までは――。
「お嬢」
「ん?」
ロルフは私の長い髪の一房に触れ、キスを落としたのだ。
「ふえ?」
「お嬢があの陰湿執事とくっ付いて幸せになるのなら幾らでも応援するが、もしあの男がふさわしくないって思ったら、お嬢を堕としにいくんで」
「ふぁ、ふぁああああああ!?」
私を見る碧眼の双眸は真剣で、熱い眼差しにドキリとしてしまう。今まで親しげでフランクに接してきていたロルフとは別人のよう。
(え、これ揶揄っている? それとも──)
「お嬢のことを本気で思っているのは、何もクラウスだけじゃないんだからな」
「――え」
「部屋に付いたみたいだ」
「あ、うん」
ロルフは部屋のドアを開いて、私に中へ入るように促した。言われるまま部屋に入った瞬間、悪女の仮面が剥がれ落ちて、へなへなとその場に座り込んでしまう。
情報量が多すぎて、困惑と羞恥心で頭の中がパンクした。
(え、ん、ちょ、どういうこと!?)
家族として接してきた二人から急に異性として扱われ、クエッションマークが浮かび上がる。昔クラウスとロルフに花の冠を作って、結婚式ごっこを強要したことはあるけれど、あの時と今では全然違う。
クラウスが自分のことを好いてくれているのは嬉しい。好意が斜め上なのがちょっと気になる。いやそれよりも驚いたのはロルフの変化だ。
(冗談……よね? あのロルフが??)
よくよく思い返せば、挨拶代わりにキスをすることはあった。それこそティムやレオにだって時々強請られる。
大切だという意味でのキス――そう家族相当の大切にしているという意思表示ではないか。無理矢理自分を納得させようとしたが、碧眼の美しい目が私の心を射貫いたことを思い出しては頬が熱くなるのだった。
(ロルフの宣言はどういう意図だったの!?? 私とクラウスのことは認めていないとか? それとも認めているけれど、ふさわしくないと思ったら動くって牽制??)
やることが山積みなのに、さらに心をかき乱す案件が追加したことで、泣きそうになったのは言うまでもない。
楽しんでいただけたのなら幸いです。
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