94 光元国とカセイダード王国
光元国には、真帆、ワカル、姫子、大地の4人が残された。
じいが神から受けたお告げに従い、4人が、光元国の4大一族の苗字を名乗ることになった。
ミエルの【神の代行者】を引き継いだ神代家と、神代家を支える、神原家、志宝家、白沢家の4家が光元国を支える中心となった。
唯一の問題は、光元国だけでなく、チータマルム星全体で、魔法が使えなくなったことだった。
魔法は物語の中だけの話となっていたが、姫子と大地だけは気付いていた。
「きっと、白丸と千夜が行ったカセイダード王国では魔法が使えるのだろう」
白丸と正義のために暴れまわったことを思い出すと、さびしく感じる二人だった。
◇
カセイダード王国には、白丸、千夜が移住した。
モンテ家の名前と【紋章の盾】(通信機の親機)は、白丸が受け継いだ。
【モンテマニーの紋章】の赤いプレートは、姫子から千夜に譲られた。
「これからは、白丸の一番近くにいる女性はあなただからね」という言葉に嬉しさを感じた千夜だった。
『輝け! 【モンテマニーの紋章】! という名乗り口上は恥ずかしいけれど、正義の代名詞みたいなものよね。白丸の伴侶としての義務よね』
白丸、姫子、大地にとっての正義のあかしを大事にして、誇りを持とうとした千夜だった。
そして、カセイダード王国における三権分立の「行政」を受け持つことになった。
◇
カセイダード王国の国王としてミエルが立ち、みやび(マーサ)を正妃にした。
カセイダード王国における三権分立の「立法」を受け持つことになった。
アランとアリスは、みやび様とミエルを支え続けた。
カセイダード王国における三権分立の「司法」を受け持つことになった。
ミエル国王の政治が良かったので、民衆たちは選挙で代表を選ぶことを求めなかった。
貴族政治による迫害が無く、貴族という身分制度が無用の争いを防ぐための調停者として良い方向で機能していた。
民衆同士で競争や足の引っ張り合いを始めると貴族からの制止が入った。
これにより、努力が正しく評価される社会になった。
上司へのゴマスリは不要、派閥争いもできない代わりに、貴族側は民衆側を正しく評価することを求められた。
貴族が民衆の才能や実力に嫉妬することは無かった。
正しく評価することが貴族の仕事、技量を磨くのが民衆の仕事として、分業されたからだ。
評価するための最低限の技量を持つことが貴族に要求されたが、競争の外に居ることで住み分けができたことが大きかった。
自分の力量を誇る貴族は恥であり、民衆側の才能を守ることが貴族の誇りだった。
このような人選が出来た大きな理由は、ミエルの度量と、みやびの人の良さ、マーサの頭脳と鑑定などの能力が大きかった。もちろん、それを支えたアラン、アリス、白丸、千夜の功績が大きいことは言うまでもない。
モンテ家は民衆側の有力貴族として、大公爵の地位を得ていた。
◇
シクペリア様は、カセイダード王国が順調なスタートを切ったことに満足していた。
しばらくの間、カセイダード王国を見守っていたが長くは続かなかった。
「事業や仕組みが軌道に乗ると、なぜか、関心がうすれてしまうんだよなあ。
というわけで、カセイダード王国はよろしく頼む、サアロフィア」
16方位第16神 政治調和の女神 サアロフィアは、困惑していた。
「お待ちください。シクペリア様、私はルビエライン王国を見守ることで精一杯です。
そのお役目は、ご辞退させてください」
シクペリア様は、駄々をこねた。
「カセイダード王国は軌道に乗っているから大丈夫だよ。サアロフィアならできるって」
「飽きたおもちゃをひとに譲るような対応では困ります」
「いいか、サアロフィア、良く聞いてくれ。政治と調和において、一番くわしい女神は誰だと思う?」
「それは、もちろん、ワタシですが? ちょっと、それとこれとは」
シクペリア様は良い笑顔で去っていった。サアロフィアはあきらめるしかなかった。
「仕方ありません。ゆくゆくは、ルビエライン王国とカセイダード王国を縁続きにして、いっしょに見守れる体制を作りましょう。
・・・
そう言えば、シクペリア様たちは、約150年後に【天祥】を送り出す予定よね。
ワタシの天祥にふさわしい魂を探さなきゃね。イウラとミサキを頼れば、良い魂を教えてくれるはず。うん、そうしよう、【天祥】がいれば支援が楽になるからね」
◇
16方位第16神 政治調和の女神 サアロフィアに、カセイダード王国を押し付けたシクペリア様は、イウラ、ミサキ、ルウナに料理を振舞っていた。
「どうだ、わたしの料理は?」
「美味しいです」と、ルウナが紅姫の焼き魚を思い出しながら喜んでいた。
「美味しいですわ」と、ミサキが微かな笑顔を見せていた。
「美味しいわ」と、イウラがうっとりとした笑顔を見せていた。
食後の休憩で、ルウナがシクペリア様に質問をしていた。
「カセイダード王国が落ち着いたら料理を作ってもらえる話でしたね。ボクの予想よりも、早かったです。どんな手を使ったのですか?」
シクペリア様は、胸を張っていった。
「16方位第16神 政治調和の女神 サアロフィアに、引き継いだんだ!
彼女は政治方面に優秀だから、もう大丈夫だ」
ミサキは、さらに、無表情になった。
『あっ、サアロフィアが困って、助けを求めてくる未来が見えてしまったわ』
イウラは、笑顔を維持したが頭を高速に回転していた。
『サアロフィアを支援できるような魂を探さなきゃ!
ぜったいに、要求されるわ。どうしようかしら?
あっ、ルウナがお世話になった、モンテマニー大公爵とメクバール執事が最適ね。
モンテマニー大公爵をサアロフィアの天祥候補にして、メクバール執事を次に生まれる女神の天祥として、確保するようにしましょう。
王真加勢陀との交渉が必要になるかもね。高くつきそう』
イウラとミサキがシクペリア様の両脇を固めているから、世界が上手く回っていることに気付いたルウナだった。
『イウラとミサキがシクペリア様のそばに居ても、他の神様からの嫉妬が無いことが不思議でしかたなかった。しかし、今回のことで分かった気がする、シクペリア様のフォローをしていることが代金だったんだな』
◇
ルウナは自分の部屋に戻っていた。
『ボクに出来ることは無さそうだからね。出しゃばらない方が良いよね』
イウラはミサキの部屋に来ていた。
ミサキはイウラが来ることを予想していたようで、驚いてはいなかった。
「イウラが来ることは分かっていたわ」
「それなら、話が早いわね。サアロフィアが支援を求めてきたときに備えて、サアロフィアの【天祥】になれそうな魂のことで相談があるんだけれど...」
「ええ、もちろんよ。心当たりがあるのなら、早めにキープしないとね」
「心当たりがあると言えばあるけれど、150年前の話になるわ」
「とっくの昔に転生しているか、王真加勢陀がキープしているでしょうね」
「その通りね。だからね、ミサキのチカラが必要となるの」
「ええ、どうしたいの?」
「過去の私に手紙をだすわ」
「ええ、過去の私を通して、過去のイウラに渡すくらい協力するわ」
イウラは困ったような言いにくそうな顔をしていた。
ミサキは微かに優しい笑顔をイウラに向けた。
「心配しなくても、シクペリア様との食事の機会を寄越せなんて言わないわ。安心してね」
イウラはさらに困った顔をした。
「そうじゃなくてね、あのね」
イウラは本当に言いにくそうにしていた。
「どうしたの?」
「わたしにもし、未来からの手紙が来たとしても、真偽判定に100年くらいかけて、偽物という判断をするわ。誰かが私をだまそうとしていると考えて、絶対に信じないわ」
ミサキは首をかしげて、訳が分からない様子だった。
「じゃあ、どうして欲しいの?」
イウラは決心した顔をした。
「わたしの代わりに手紙を書いて欲しいの」
「それだと、なおさらダメじゃないの? わたしの言葉をイウラが信じるかしら?」
イウラは髪を後ろに書き上げて、耳につけない髪につけるイヤリングを手に取って見せた。
「手紙に、このイヤリングを押し付けるわ」
イウラのイヤリングを手に取って確認した。
「イウラしか知らない暗号になる訳ね。そのことを過去の私に説明すれば良いのですね」
イウラは首を横に振った。
「いいえ、ダメよ。教えないでね」
「えっ?」
「手紙を受け取った過去のミサキと過去のルウナは気付かなかったけれど、過去の私だけが手紙に残った微かなイヤリングのくぼみに気付かなくてはダメよ」
「手が掛かるわね。めんどくさい」
「仕方ないと思ってね。」
ミサキは、少し考えた上で、こう付け加えた。
「こうなったら、サアロフィアの【天祥】だけでなく、これから生まれる新しい女神の【天祥】になれそうな魂を全部キープしましょう。そうしないと二度手間三度手間になるわ」
「確かにね。それでは、私がキープしておきたい魂は、モンテマニー大公爵、執事のメクバール、黄花の弟子の理香の3人ね」
「他には?」
「うーん、千の理岩将軍は、まあいいかな?」
ミサキは、少し考えた上で、こう答えた。
「じゃあ、モンテマニー大公爵、執事のメクバールは、イウラの神力でキープしてね。
黄花の弟子の理香は私の神力でキープするわ。それで、公平ね」
「2人と1人で、なぜ公平なのか分からないけれど、ミサキが言うなら、公平なのでしょうね。わかったわ」
「では、交渉成立ね」
ミサキは複雑な心情だった。
『千の理岩将軍は、わたしがキープすることにしましょう。
でも、本当にイウラは理解が早くて助かるわ』
これにより、過去のミサキに2通の手紙が届いた。
1通は、ミサキ経由でイウラに届ける手紙で、モンテマニー大公爵と執事のメクバールの魂をキープすることを依頼する手紙で、イウラのイヤリングのくぼみがある。
もう1通は、ミサキのみに届ける手紙で、黄花の弟子の理香と理香の父親の千の理岩の魂をキープすることを依頼する手紙だった。
過去のミサキは少し驚いた後で、嬉しく思った。
『面白い未来が待っているのね』
つづく
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