93 大陸大移動、神の怒りと奇跡
シクペリア様は、悪い笑顔をしました。
「ルウナに出会って以来、異世界アイデアに夢中になっていたからな。
人間たちを痛い目に合わせることを長いことしていなかった。
だから、『神はいない!』などと思い上がり、他者を攻撃するのだろう。
他人より優れているつもりか知らないが、高いところから落とせば全員が動かなくなるし、食べ物や水が無ければ、1週間で活動を停止するか弱い存在だということを思い出してもらおう」
クックックッと悪い笑顔をしていたシクペリア様だった。
そして、次の瞬間、輝くような笑顔で、イウラ、ミサキ、ルウナに向き直ったシクペリア様は、3女神に命じた。
「世界中に同時中継で、私の言葉を伝えよう。
イウラは、世界気品同盟語で同時通訳してくれ。
ミサキは、世界中心国語で同時通訳してくれ。
ルウナは、正義団結国語で同時通訳してくれ。
わたしは、もちろん、光元国語で話す」
イウラ、ミサキ、ルウナの3女神は冷や汗を流した。
『同時通訳は大変だけれど、やるしかない』
シクペリア様は、さらに笑顔で続けた。
「わたしが与えた光元国語を忘れた罰当たりどもが話す言葉は、栄語がベースになっているようだ。栄語を意識した光元国語で、ゆっくりと話すから安心してくれ!
さあ、やるぞ!」
イウラ、ミサキ、ルウナの3女神は身構えた。
それに対して、シクペリア様は、無表情になって元気を無くした。
「お腹が減って、チカラが出ない。
ミサキの美味しい料理を食べさせてくれないか?
イウラとルウナもミサキの手料理を食べたいだろう?」
ミサキは仕方ないですねというような笑顔を見せてくれたようだった。
「それには、材料が必要です。私一人分の食材しかありません。
皆さんの部屋からも料理できそうなものを持ってきてもらいます。
では、15分後に、私の部屋に集合してください」
シクペリア様、イウラ、ルウナは、ミサキに敬礼をした。
シクペリア様は自室にある食材を確認し始めた。
ミサキ、イウラ、ルウナは、自分の部屋に戻った。
◇
ミサキの部屋に集まった4神たち。
15分後に集まった食材を見たミサキは、献立を考えていた。
「シクペリア様、あと何分くらい待てますか?」
シクペリア様はお腹を手で抑えながら答えた。
「10分くらい?」
「もう、仕方ありませんね。それなら、ご飯は出来ていますので、チャーハンにしましょうか?」
「よろしくお願いします」
シクペリア様、イウラ、ルウナは、声を合わせて、ミサキにお願いした。
ミサキはエプロンを付けて、長く美しい黒髪を頭の高い位置で、ポニーテールにまとめると、材料を手際よく切り刻んだ。
大きな中華鍋を振り回す様子は、美しい姿からは想像できないくらい力強かった。
こうして、できあがったミサキのチャーハンに、みんなは満足していた。
ひとり2人前くらいの量のチャーハンを平らげた。
ルウナが幸せそうに声をあげた。
「美味しかったあ、幸せを感じる。それに、人に作ってもらった料理を食べると幸せ度があがるね」
イウラが優しく、ルウナを見つめた。
「そう言えば、ほとんど、ルウナが作っていたわね。たまに、紅姫が料理をしていたわね。あっ、ミサキ、紅姫というのは、人間だったころのルウナの仲間でね。
シクペリア様が天祥となるべく神力チャージをしている人間よ」
ミサキは優しい雰囲気を出した。
「まあ、それなら、シクペリア様も料理をされませんか?」
「そうだな、気が向いたらな」
「きっと美味しく出来ますわ。ルウナもそう思うでしょ!」
「うん、イウラの予想通りだと思うよ! シクペリア様の料理を食べてみたいな」
ミサキとイウラの圧を受けて、ルウナがシクペリア様におねだりをした。
それに気を良くしたシクペリア様は、あっさりと了承した。
「そうだな、カセイダード王国が一段落したら、機会を持とう」
「楽しみですわ」
「ええっ、とっても、ねえ、ルウナ」
「うん、待ちきれないよ」
ミサキ、イウラ、ルウナに念押しされたシクペリア様は、何を作るべきか真剣に考えようと決めた。
◇
シクペリア様たちは、食後の休憩を済ませてから、シクペリア様の部屋に戻った。
チータマルム星の全体に影響を及ぼすことができる背景模型の様な場所を見下ろしていた。
シクペリア様が真面目な表情をして、再度、説明をした。
「チータマルム星全体に対して、世界中に同時中継で、私の言葉を伝えよう。
イウラは、世界気品同盟語で同時通訳してくれ。
ミサキは、世界中心国語で同時通訳してくれ。
ルウナは、正義団結国語で同時通訳してくれ。
わたしは、栄語を意識した光元国語で、ゆっくりと話す。
始めても良いか?」
イウラ、ミサキ、ルウナの3女神は身構えつつも、首を縦に振った。
それを見て、満足したシクペリア様は、世界に向けて、神力を発揮した。
「今、光元国は昼ごはんが済んだばかりだな。ちょうど良い時間帯だな。
まずは、世界中を昼にしよう。光元国を離れた人間たちからすれば、眠ろうとしたのに明るくなったり、まだ眠っていたいのに明るくなって嫌かもしれないな。
しかし、...
これから、起こす神の奇跡というか怒りを知ってもらうためには、明るい方が良いからな!」
チータマルム星全体が明るくなった。
光元国は元々昼だから影響は小さい。しかし、光元国から離れた場所に住む人間たちからすれば、なにが起こったのか分からず、あわてふためいていた。
世界中に、シクペリア様の声と同時通訳する3女神の声が響き渡った。
「人間たちよ。聞こえるか? わたしは、この世界を作った神である。
16方位第1神 神々の創造者 シクペリアだ」
「わたしが創った世界に感謝することを忘れた人間たちに、神がいることを思い出させてやろう。世界中のひとたちに対して、同時に、私の声を聞かせている。
愚かにも、光元国語を忘れた人間のために、同時通訳を準備してやった」
「わたしは、男性神だが、同時通訳は3人の女神にお願いしている。
世界気品同盟語は、16方位第2神 愛と美の女神 イウラ・ノータの声だ。
世界中心国語は、16方位第4神 未来知見の女神 ミサキの声だ。
正義団結国語は、16方位第14神 純愛と美しさの女神 サトス・ルウナの声だ」
世界中の人々は驚きながら、空から聞こえる声に耳を傾けていた。
そして、ひとつの疑問を感じていた。
「第2神と第14神は、同じではないのか? なにが、ちがうんだ?」
しかし、眠ろうとしていたところを邪魔され、まだまだ眠るところを起こされた人間たちにとっては、それほど大事ではなかった。
ひとびとは不満を感じて、怒りを覚えていたが、次の瞬間には、それどころではなかった。
大地震が起こったからだ。
シクペリア様は、光元国の東側を切り取り、東側の遠い場所まで移動しました。すると、東側に移動させた大陸の西側が崩れました。
「ふむ、それでは、光元国の西側は、少し離す程度にしないと、光元国が崩れて、消滅してしまうな」
シクペリア様は、西側に切り離した大陸は、光元国が崩れないように、少しだけ離しました。それでも、大型の船が無いと渡れない距離は確保できました。
世界中の人たちは叫んだ。
「うわあ、なんだ、これは?」
「こわいよう」
そして、泣き叫んだ。
泣き声を通り抜けるように、空から声が聞こえた。
「これが、神の怒りのひとつ、地震だ。世界中に起こしたから、大地震だな」
とつぜんの出来事に理解できないひとたちの耳に、同時通訳の声が聞こえる。
「地震、こわい」
という感想が記憶になった。
人間たちが、地震の怖さを理解したころに、空に稲妻が光り出した。
何本も何本も、大地にカミナリが落ちた。
カミナリを受けた大きな木が一瞬で燃えた。
「カミナリ、こわい」
という感想が記憶になった。
そして、火事になった場所も多かった。
「火事、こわい」
という感想が記憶になった。
最後には、空から怒鳴り声が響いた。
「思いあがるな! 人間ども!
おまえたち人間は、神によって生を受けることを許されて、生かされているのだ。
それなのに、自分よりも弱い人間を見つけては、集団で攻撃するとは、なに様のつもりだ! おまえたちが言う強い者も弱い者も私からすれば、一瞬で、この大地から退場させられる同じ人間だ。みんなで仲良くしろとは言わない。嫌いな人間や好みでない異性を攻撃するな!」
その言葉を聞いた思いあがった人間たちが言い返した。
「それでも、俺たちをどうこうすることもできまい。
悔しかったら、ここまで、降りてこい。
安全なところから、偉そうに物を言いやがって!
ふざけんな!」
世界各地で、そう叫ぶ者が大勢いた。
その者たちは...
天から雷が落ちて燃えた。そして、地割れがして、大地の底に飲み込まれていった。
「地震、カミナリ、火事、オヤジ こわい」
という感想が記憶になった。
それを見た寺の坊主たちは、世界中に触れ回った。
「神仏をあがめよ。王真加勢陀」
王真加勢陀の名前が光元国じゅうに響き終わった後で、火事を消すための大雨が降り、火が消えた。その後で、空が晴れた。
「雨降らす、空照らすの神様、ありがとうございます」
長いので、【雨照らすの神】と呼ばれた。
なお、シクペリア様、イウラ、ミサキ、ルウナの名前を覚えていた者は、ごく少数で、さらに、150年も経つと、誰も覚えていなかった。でも、これは、別のお話。
◇
ひと息ついたシクペリア様は、光元国の人たちが良い心を維持できるように、聖剣を落として、湖を作りました。
「湖の底に聖剣が刺さっている限り、光元国のひとたちは、美しい和の心を持ち続けることが出来るだろう。この湖は、美和心湖と名付けよう」
シクペリア様のネーミングセンスはいまひとつだと思った3女神のイウラ、ミサキ、ルウナであったが、ツッコミは入れなかった。
『この際、名前なんかどうだっていいわ』
シクペリア様は考えた。そして、ミサキに問うた。
「元光元国の人たちは、光元国に帰ろうとするのではないか?」
ミサキは未来を予知した。
「その通りです。そして、光元国の人たちは、お人好しが災いして、軒を貸して母屋を取られることになり、子孫を残せず、絶滅するでしょう」
シクペリア様は予想通りかという顔をした。
「それでは、光元国のダミーを、同じ緯度の場所に用意しよう。
「東の遠くに切り離したA大陸」、「西側に少しだけ離したB大陸」の中間くらいに、聖地を作っておこう。
得るさ、例のものを、という意味を込めて、
【エルサレモノ】
と名付けよう」
イウラ、ミサキ、ルウナは、こころを強くして耐えた。
『ネーミングセンスが悪すぎる』
シクペリアはさらに考え込んでいた。
「うん、わたしが神の光を届ける場所からでた愚かな人間たちには、適当な名前の神をあがめさせよう。もう、わたしは、加護をする気がないので、どうでもいい。
『来る人を愛します』
という意味を込めて
【クルヒト=アイラブ】
という神をあがめさせよう。
どこにでもいる中年男性の姿にしておけばいいか」
その後、クルヒト派とアイラブ派の二つに分かれて、それぞれを唯一神だと主張する宗教戦争の原因となった。
第4神 未来知見の女神 ミサキなら、こうなる未来を予想できたはずだが、ミエルの心配ごとで頭がいっぱいで、その未来を予知しなかった。
◇
シクペリア様による奇跡というか神の怒りを起こした後で、ルウナが質問をした。
「シクペリア様、150年後くらいにはカセイダード王国も安定していますよね?」
「うむ、そうなるだろう。ルウナはなにか希望があるのか?」
ルウナは姿勢を正して、シクペリア様に提案した。
「カセイダード王国の人たちに、チータマルム星の光光元国を守ってもらいたいのです。そのための前線基地というか国を作るための場所を聖域として、キープしてもらえませんか? その聖域には、チータマルム星のどんな国も手出しできないようにして欲しいのです」
シクペリア様は、あごに手を当てて考え出した。
「そうだな、良い考えだ。 今回の神の奇跡を見て、人間たちの思い上がりもマシになるだろう。ダメだった場合は、これから作るカセイダード王国のひとたちに教育してもらう方が良いだろう。このチータマルム星は、私の初めての作品だから、良い状態を維持したい」
ルウナは、嬉しそうにお礼を言った。
「ありがとうございます。シクペリア様」
シクペリア様は、イウラとミサキに問いかけた。
「イウラが作った人間たちが快適に暮らせる場所で、光元国と気候が近く、150年後まで犯されない場所を、調べてくれないか?」
「はい、分かりました。シクペリア様。
ミサキ、この範囲で、安全な場所が無いか、未来を見てくれる?」
ミサキは、イウラに示された範囲で、条件に合う場所を未来を見ながら探した。
しばらくして、ミサキが安心した様子を見せた。
「1カ所だけ良い場所があったわ」
ミサキが示した場所は、
①緯度・経度: 北緯34度〜36度、西経164度〜166度
②中心座標: 北緯35度、西経165度
③形状・規模: 一辺約200kmの正方形の領域
④ロケーションの特徴: 光元国と正義団結国のほぼ中間の海、日付変更線近く
だった。
ルウナは、不思議そうな表情を見せた。
「海の上だよ? 陸地が無いと住めないのでは?」
ミサキは気を悪くすること無く、答えた。
「この海に到着した超大型宇宙船が陸地まで作ってしまうみたいね。
カセイダード王国の科学力はすごいわね」
イウラとルウナは、信じられない様子で固まっていた。
シクペリア様は誇らしげにしていた。
「これから始まる【カセイダード王国】の未来が楽しみだな」
その夜、カセイダード王国に、イウラたちが選んだ人間たちが、神のチカラで瞬間的に移動させられた。
そして、チータマルム星に残ったひとたちが困らないように、ミサキが見た未来にそって、シクペリア様が多くの処置を済ませたのだった。
つづく
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