91 イウラ、ルウナ、ミサキに選ばれた人たち
16方位第2神 愛と美の女神 イウラ・ノータの部屋で、イウラと16方位第14神 純愛と美しさの女神 サトス・ルウナが選別作業を続けていた。
イウラは光元国からカセイダード王国に移住させる人たちを選んでいた。
「150年前とはかなり変わったわね。光元国から出て変化した人たちも多い。
光元国内に居る人たちも、外から出て戻っているひとたちは生きる方針が変わっているわ」
ルウナはイウラが選ばなかった人たちを調べていた。
「ボクが人間だったころの男性たちは、女性を無理やり襲う人たちが居ても、その後は人生の伴侶として大事にしていた。でも、どうしてだろう。今の男性たちは無理やり襲った後は、知らんふりしている。しかも、一人ではなく、複数の女性を襲っている。襲っていない場合でも、二股、三股と多くの女性を相手にしている。
女性なら誰でもいいってことは無いはずなのに」
イウラが移住対象者を選びながら、答えた。
「光元国は神様の愛情で照らされた国だから、そこで日の光を浴びるだけで、心が満たされるの。でも、一度でも、光元国を出てしまうと幸せを感じることが減ってしまうの。本人の意志に反して出たひとは変化しないけれど、自分の意志で出た人は自律自戒が減ってしまうので、動物以下に落ちてしまうわ。人間の男と女ではなく、オスとメスになる。つまり、多くの種をまくという本能に勝てなくなるの」
ルウナは納得をしつつも理解に苦しんでいた。
「うーん、ボクは、紅姫、黄花、青紫のおかげで恵まれていたんだなあ」
「そうよ、シクペリア様が管理していたころの光元国だから、超一級品の美女たちよ」
イウラは神力をチャージ中の黄花の魂を見つめていた。
ルウナは神力をチャージ中の青紫の魂を見つめていた。
それからも、光元国のひとたちを選び続けたイウラが両手を伸ばしていた。
「うーん、やっと、選び終わったわ。予想したよりも、きれいなこころの持ち主は少なかったわ」
イウラは、精神が健全なものを選んだ。
言い換えれば、他人を落とし入れるウソをつかない個体だ。
ルウナは、イウラが選んだひとたちの精神を確認して、問題がないことを確認した。
「どうだった。ルウナ」
「うん、すごいよ。イウラが選んだ人たちはボクよりもきれいな心の持ち主だと思う」
「うふふ、ありがとう」
◇
イウラとルウナは、16方位第4神 未来知見の女神 ミサキの部屋を訪れていた。
リストを受け取ったミサキは、ほっとしたような表情を浮かべた。
「では、イウラとルウナが選んでくれた人たちと、ミエルたちを抜いた後で不幸になる人を予知して、リストに追加しましょう」
イウラは顔を青ざめて言った。
「待って、ミサキ。精神が健全なひとたちで、移住しても良いというひとたちは、リストにあるひとたちだけよ」
ルウナもミサキを止めようとした。
「そうだよ。次に不幸になる人たちの中に、自分を助けるために他人を生贄に出そうとするするひとがいるかもしれない」
ミサキはつらそうに首を横に振った。
「イウラとルウナの言うことは分かるわ。でも、この人数では足りないわ。
イウラに設定追加してもらって、「一姫二太郎」で子供が出来ると設定する。
そして、
第一子=父親と同じ髪色の女児
第二子=母親と同じ髪色の男児
というルールを追加するとしても、近親相姦を防ぎ、遺伝子上のエラーを修正できる最低数は、各髪色ごとに28組は必要になるわ。
黒髪、暗い茶髪、明るい茶髪、赤髪、金髪の5種類の髪色をシクペリア様は要求されると思う。
だから、28組=56人の男女を5セットとなると、140組=280人の男女を選ばないといけない」
イウラは、遺伝子上のエラーを修正できる最低数という言葉に対しては、反論できなかった。
ミサキは続けた。
「でも、光元国に残りたい人たちまで、カセイダード星に強制移住させることへの罪悪感はあるわ」
ルウナは、それよりも見過ごせない危険について、熱く語った。
「それは、まだいいわ。それよりも問題なのは、裏表がある人がカセイダード行きに選ばれることだよ。自分より強いひとの前では大人しく、自分よりも弱いひとには攻撃者として、うっぷん晴らしをするひとが含まれてしまったら、正義を行うことは無理になるよ」
ミサキは悲しそうな表情を見せた。
「そうなる可能性は高いわね」
「だったら!」
「でも、数が足りない場合、シクぺリア様は強い個体、容姿が美しい個体を、目についた個体から順番に選んでしまうわ。そうなったら、わたしのミエルを愛してくれるみやびさんを傷つけるひとが選ばれてしまう。それだけは避けたいの。なんとしても」
ルウナは納得するしかなかった。
「そうだったね、最初の目的は、ミエルさんとみやびさんを守ることだったね。
でも、できる限り問題が無いひとを選んで欲しい」
ミサキは言いにくそうに言った。
「ルウナの言う通りにしたい。でも、ある集団が抜けた後に不幸になる人たちを予知するだけでも、神力を大量に消費するわ。移住させる予定の140組=280人の男女を全員未来視することは無理よ」
イウラは代案を考えた。
「それなら、私たちが交配計画を立てれば、人数を減らしても問題ないわ」
ミサキが申し訳なさそうに言った。
「イウラの気持ちは有難いけれど、カセイダード王国では、そこまで干渉できないわ」
ルウナは納得が出来なかった。
「どうして、シクペリア様の御力があれば、余裕だよね」
「シクペリア様は、自主自律するひとたちの世界を作りたいのよ。
それこそ、放置しておいても大丈夫なくらいのね。
だから、次に私たちが干渉できるのは、約150年後に転生させる予定の【天祥】たちと信者を通してになるわ」
「ミサキ、それなら、わたしがデザイン変更するわ。遺伝子が近い場合には、恋愛感情が生まれないように設定するわ」
「イウラ、ありがとう。シクペリア様は聞いてくれないわ。人数が少なかったら、シクペリア様が不足分をご自身で選定されるわ。だから、ダメなのよ」
ルウナが状況整理を求めた。
「イウラとミサキに教えて欲しいんだけれど、もしかして、少しくらいの不純物や悪人たちを含んでしまうとしても、ボクたちが今、最低数の男女140組=280人を選ぶしか無いということなの?」
ミサキは首を縦に振って答えた。
「その通りよ」
「それなら、イウラ、ミサキ。こうしようよ。必要数に達するまで、精神が正常な人たちを選ぼうよ。こうなったら、光元国に残りたいと思う人でも、強制的にカセイダード王国に移住してもらえば、最低必要数に足りるよね」
今度はイウラが答えた。
「それは、ダメよ。【幸せ半分こ】の精神に反するわ」
「でも、光元国に残る人は悪人の方が多くなるよね。それなら、カセイダード王国に行く方が幸せになれるよね」
「そうとは、限らないわ。日和見主義や風見鶏もいるからね。
たとえ悪でも自分自身が幸せになれるなら、それで良いと考えるひとも多いわ。
それは、ルウナが人間だった頃を思い出せば分かるわよね」
「そうだったね。どこに行っても、ボクをいじめる人たちがいたよ」
ルウナは、当時を思い出して、目に涙を浮かべていた。
ミサキは、イウラとルウナが作ったリストに、追加する人間を書き足した。
「カセイダード王国に移住させる人間は、イウラとルウナの保証済み50%を含みます。光元国に残る人間たちは、イウラとルウナの保証済み30%を含みます。
光元国は、日和見主義や風見鶏をギリギリ抑え込めるでしょう。限界値の20%は超えています」
イウラは了承した。
「上出来ね。これなら、カセイダード王国は正義の国になれるでしょう。悪がいたとしても、目立つことはできないでしょう。光元国は、人数が逆転するまでは目立つことはしないでしょう。」
ミサキはルウナに願うような目で見た。
「ねえ、ルウナ。あなたたちの【天祥】に神力がチャージが終わるまでに、素晴らしい異世界アイデアを考えて欲しいわ」
「そうね。ミサキが言う通り、ルウナならできるわ」
「うん、考えてみるよ。正直者がバカを見なくて済む仕組みをカセイダード王国に取り入れてもらおう」
イウラ、ミサキ、ルウナの3人は、移住させる人間のリストを持って、シクペリア様の部屋に行くことを決めたのだった。
シクペリア様は、新たな世界創造に集中しているので、しばらく猶予がありそうだった。
つづく
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