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【完結】みんなの安全を守ってきた「神の代行者」、パーティを追い出されたから、自分の安全を優先します。【台本形式】  作者: サアロフィア
第10章 神の代行者から神への昇格

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90 食事、服選び、じいの判断

白丸はミエルに案内されて、口入屋、職業紹介所を見学している。

アランとアリスはそれぞれ求職者と求人者に対応していた。


「白丸さん、こちらをご覧ください。アランが求人者と面接をしています」

「ふむふむ」


白丸は鑑定スキルを使って、求職者の情報を見ていた。

『打たれ弱そうだから、人間関係の厳しい職場には向かないな』


ミエルは説明を続けた。

「第一印象から感じた内容で、どのような仕事を紹介するかを決めています。

御本人が希望する仕事よりも、ご本人が苦痛なく出来そうな仕事を紹介しています。

あの求職者の場合は能力は高そうですが、卑怯な人たちによる加害者と被害者を入れ替える戦術や、言動否定による認知機能低下で追い詰められる可能性がありそうです。

だから、アランは、仕事環境に余裕があり人間関係が良い職場か、おだやかな雇い主と1対1で働ける職場を紹介するでしょう」


白丸は驚いたが平静を装った。

「そうですか、ここから見て分かるなんて、ミエルさんもアランさんもすごいですね」

「ありがとうございます。過去のつらい経験が活かせて良かったです」

誉められたはずなのに、ミエルは少し悲しそうな顔をしていた。昔の嫌なことを思い出したようだ。


ミエルがアリスの方に案内しようとしたら、求人者と思われるものが怒鳴り散らしていた。

「女では話にならん。責任者を出せ!」

アリスは毅然と対応していた。

「責任者からは私が対応するように命じられております。

わたしの説明で納得できないなら、他を当たってください」

求人者の男性はますます怒り狂い、声を荒げていた。

「口で言っても分からないのか?」


右手を後ろに引いて、アリスに殴りかかろうとしたとき、みやびが間に入って止めた。

「そこまでさ。殴り合いがしたいなら、わたしが相手するさ!」

「く、くそ。武闘家みやびか。うっとうしい」

冷静だったアリスが静かに怒りを伝えた。

「うっとうしいとは、どういう意味ですか?」

「言わなくても分かるだろうが」


ミエルは、白丸に一礼してから、アリスとみやびのそばに駆け付けた。

「わたしの部下たちに文句があるなら、お帰りください」


怒り狂っていたはずの男性は店主であるミエルを見ると、筋肉で作った笑顔で愛想わらいを始めた。

「これは店長様、良いところに来てくださった。たった今、こちらの店員さんたちから暴言と暴行を受けたのです。店長から注意して下され」


ミエルは作り笑いをしながら、答えた。

「さようでございますか。わたしは、見ていました。聞いていました。

だから、知っています」

「おお、それなら、話が早い」

「もう一度、言いましょうか?

わたしの部下たちに文句があるなら、お帰りください」


求人者の男性は被害者づらを始めた。

「おお、なんとひどい。こちらの言い分も聞いてくれないとは」


ミエルは、求人者の男性を警戒して視線を留めたまま、命令を出した。

「みやび、なにがあった」

「『口で言っても分からないのか?』と上段突きをアリスに放とうとしたさ」

ミエルは、続けて言った。

「アリス、状況説明」


アリスは、気を静めながら言った。

「こちらの仕事を受けたひとたちから苦情が来ました。

1件目は男性から、仕事の内容に対する十分な説明がなく、質問しても無視された。

それなのに、仕事が出来ないと馬鹿にされ、職場のうさばらしのマトにされました。

2件目は女性から、気遣いが出来る気持ち良い笑顔で話すひとでしたが、この男性は自分への恋愛的な好意と勘違いし、『目が合ったよな』と肩を抱き寄せたり、抱きつこうとしました。女性は勘違いさせたと反省し、目を合わせないようにして、無表情で仕事をしたら、『目を合わせて話をしろ。なんで不愛想な表情をするんだ!』と皆の前で、つるし上げ、これは皆の注目のマトにしたという意味です。

まとめると、仕事に関係がないところの好き嫌いで人格否定することで、見せしめにして、職場を支配するために生け贄を求めていると判断し、人を紹介しないことになりました。

こちらの手札を見せる必要はないため、『条件にあうひとはいません。お引き取りください』とだけお伝えしたところ、大きな声で怒鳴り、わたしに言うことを聞かせようとされました。最後には、暴力を振るおうとされたため、みやび様が止めに入ってくださいました」


ミエルは戦闘態勢に入った。求人者の男性からは見えないが、攻撃呪文をいつでも打てるように用意していた。

「みやび、アリス。よく分かった。ありがとう。

さて、私は、この店の店長です。

それはお分かりか?」


ミエルに睨まれて、誤魔化せないと思ったようだ。

「店長なら店員に言うことを聞かせろよ」

「お断りします。わたしが仕事を任せている店員に文句があるなら、お帰り下さい」

「こちらは客だぞ。分かっているのか?」

「あなたは客ではありません」

「なんだと」

「お店の商いを邪魔する敵です」

「客と店員、どちらの言い分を信用するんだ」

「もちろん、店員です。あなたの店はちがうのですか?」

「こんな店、どこでも通用しないぞ」

「あなたに言われたくありません。お帰り下さい。2回目」


その様子を見ていた白丸、姫子、大地は助太刀しようと考えていたが、千夜に止められた。

「大地さん、お役人を呼んできてくれますか?

私たちが手を出すよりも、お役人さんに仕事と手柄をあげましょう」

「わかった。呼んできます」


大地に呼ばれて役人が駆け付けた。ミエルと客と呼べない男性の言い争いは続いている。


「あなたがなにを言われても、当店の結論は同じです。お帰り下さい。3回目」

「ミエル、蹴りだしてもいいかさ」

「ダメだよ。恨みを買うと良くない。やじ馬も集まって来たから、『恥をかかされた』と逆恨みされそうだからね」

「覚えておけよ。俺を怒らせたら、どうなるか分からんぞ!」

「どうするおつもりですか?」

「それは言えないなあ」


求人者の男性が下卑た笑いを浮かべたところで、お役人たちが後ろから両腕をからめてつかまえた。

「くわしく聞かせてもらおうか? 代官所でな!」

「わしは悪くない。くそー、ただでは済まさないからな」


大地はお役人たちに頭を下げて礼を言った。

「ありがとうございました」

そして、求人者の男性から睨み返されるまで目を合わせ続けた。

逆うらみの対象を自分にするためだった。


千夜は、白丸と姫子に小声でささやいた。

「大地さんの努力もむなしく、みやびさんが狙われることになりそうです。護衛をつけてあげてください」

「必要無いと思うぞ」

「ええ、みやびさんは強いからね」

「そんな気楽では困ります」

千夜は感じた不安の根拠を説明できなかった。


ミエルは、求人者の男性が見えなくなってから、未来を見てしまった。

『しまった。この男性が雇った連中がみやびを刺し殺すのか?

殺しておくべきだった。ボクはあますぎた。せめて、口がきけないくらい燃やしておくべきだった』



◇


ミエルは、白丸たちに頭を下げていた。

「お見苦しいところを見せてしまいました」

白丸は、それを否定した。

「いや、ミエルさんの判断は正しいと思う。

ただ、俺なら斬っていた」

ミエルは複雑な表情をしていた。

「残念ながら、カタナを持っていませんので」

ミエルは苦笑いをしていた。

『【風の刃】で切り刻むことはできたけど、しなかったことを後悔している』


千夜と姫子は、ミエルの表情を見て、今後の心配をしていた。


そして、お昼ごはんを食べる時間まで、アランとアリスの対応を見学していた。

姫子は、

『この店は本来、白丸が出すべき店よね』

と、心苦しさを感じていた。



◇


お昼ごはんは、ワカルの店で一般客と同じ献立を食べていた。

ワカルが料理の説明をしていた。


「本日の献立は、昆布だしで付けた鮭の切り身を焼いたもの。豆腐の味噌汁、お揚げと大根の炊いたん、押し麦と小豆入りごはんです。

この店では、日替わりでひとつの献立を提供しています」


白丸は料理を美味しそうに眺めながら、感想を述べた。

「とても美味しそうだが、客が希望の料理を注文する訳ではないのだな」

「その通りです。多くの献立を用意すると、原価があがってしまい高くなります。

選べない代わりに安くはないものの高くない値段で食べてもらうことが出来ます」


姫子は大賛成という笑顔だった。

「『文句があるなら食べるな!』で良いと思うわ。いただきます。うん、美味しい」

ワカルは嬉しそうに言った。

「ありがとうございます。そして、すでにあるお店の商売を邪魔しないという縛りがあるので、こうするしかなかったのです」

大地が納得していた。

「ミエルさんの制限を守ってくださっているのですね。感謝します」


白丸は嬉しそうだった。

「そうだな。領民たちの仕事を減らさないように、新たな商売の方法を考えてくれたことがとても有り難い。客が料理を選んで注文する店はすでにあるからな。いただきます」


千夜は満足そうに料理を食べていた。

「鮭の切り身にしみ込んだ昆布だしのおかげで良い味です。豆腐の味噌汁に入っている白菜も、大根もお揚げも美味ですわ。そして、押し麦と小豆が入ったご飯は、なぜか分かりませんが美容と健康に良い気がします」


ミエルたちと白丸たちは、いっしょに食事を楽しんだ。



◇


食休み後の休憩をしてから、姫子たちは、真帆の店で服選びを楽しんだ。

とは言え、3種類しか店には置いていない。


店長の真帆が接客をした。

「当店では、3種類だけに置くことで、選ぶ苦労を減らすことにしています。

まあ、言い換えれば、多くの種類を作ることができないとも言いますね」


姫子は、その3種類の服を穴が開くほど見つめていた。

「うーん、いろいろな服から選ぶことが楽しいのだけれど、3択も良いかもね。

ああ、そうか、この店もすでにある店の商売を邪魔しないように気を付けているのですか?」

「おっしゃるとおりです。私が以前働いていた店なら、多くの種類を取り扱っていますが」

姫子は、嫌そうな顔をした。

「いやあ、あの店に行く気はもうないわ」

「ですよね」

姫子は捕まって大暴れした店のことを思い出していた。

『慰謝料代わりに多くの服をプレゼントしてもらったけれど、もう近づきたくないわ』


真帆は接客を続けた。

「ただし、色違いは用意しております。注文品になるため、お日にちをいただきますが」

姫子は断った。

「うん、遠慮するわ。この中から選ぶわ」


店の中にある服は3つのデザインだが、それぞれ色を変えてあった。

取り違えがないので安心だと思った。

パステルカラーの淡い色で、赤、青、黄色の服があった。


姫子は千夜を誘った。

「千夜は、どれにする?」


千夜は優しく笑顔で答えた。

「白丸の隣に立つことを考えると、紅白になるように赤にしようと思いましたが、黄色にしますわ」


姫子は即決できる千夜がすごいと思った。

『そうか、多くの服があると迷うけれど、3択だから早く選べるのね』

姫子は大地に向かって、笑顔で声を掛けた。

「だーいち。どっちが良いと思う。残りは赤と青の2択だから楽よ!」


大地は思い悩んだ。

『どっちが正解なんだ。あとで、あっちの方が良かったと言われないように、両方とも良いというべきなのか?』


うんうんと悩んでいると、店長の真帆が大地に小声でアドバイスをくれた。

「大地さん、正解なんてありません。

正解は作るものです」

「作るもの?」

「ええ、そうです。どっちの服を着た姫子さんを脱がしたいと思うかです」

「ありがとう、それなら簡単だ」


大地は姫子に近寄って、姫子を見つめた。

「な、なによ、大地。どうしたの? みんなが見ているわ」

大地は嬉しそうに微笑んで答えた。

「紅桜姫子さんには、やっぱり赤が良く似合うよ。その赤い方の服を来た姫子といっしょに町を歩いて、いっしょに帰りたいな」

「そ、そう。じゃあ、大地の希望に応えて赤い方にするわ」

「ありがとう。(小声で)夜が楽しみだよ」

姫子は聞こえないふりをしていたが、耳が赤かった。


千夜が白丸に寄り添って聞いた。

「姫子さんがうらやましいですわ。白丸様は、わたしが選んだ黄色い服をどう思いますか?」

白丸は嬉しそうに、照れながら答えた。

「ああ、千夜に良く似合うと思う。大地と姫子のように、千夜と長くいっしょにいたいものだ。そのときは、大地のように、小声で千夜にささやくことにしよう」

「今すぐでも構いませんよ」

「大地の小声が聞こえたのか?」

千夜は笑顔を見せただけだった。


白丸たちは、満足して帰っていった。



◇


白丸たちは、じいと話をしていた。

じいは、白丸たちが見てきた店の内容を聞いて感心していた。

「よそ者を入れることは反対でしたが、ここまで行儀が良く、領内を発展させてくれるひとたちは大歓迎ですな。150年前に住んでいた伝説の人たちも良い人たちだったと聞いております」


白丸はうんうんと、うなづいていた。

「商売の制限事項を聞いて、『やってられるか!』と出ていく者が多い中で、制限があるからこそ、違う方法を形にするなんて、見事だと思う。

ところで、その店をモンテ家が保護することはできるだろうか?

じい、なんとかなるだろうか?」


じいは少し考えて、結論を出した。

「あの伝説の店を貸している時点で、モンテ家が関係していることは分かるはずです。

しかし、怒鳴りだす客がいることを考えると分かっていない連中というか輩も多そうですな。ミエル殿たちを家臣待遇で抱え込むべきですが、6名中4名はモンテ領から出てしまうのが惜しいですな。残る2名の容姿と気立てさえ良ければ、モンテ家の養子にしてしまう方が誰の目にも分かりやすいでしょうな。


千夜、姫子。

残る予定の2名の容姿はどうじゃ。

千夜と姫子には見劣りするだろうが、美しいひとたちか?」


千夜は静かに答えた。

「真帆さんも、ワカルさんも美形のうちに入ると存じます」

姫子も同意した。

「二人とも、わたしの血縁に入れても良いくらいには、美形ね。

まあ、わたしと大地と比べたら、見劣りするけどね。

どう? 安心した? 大地」

「うん、姫子の伴侶の座をめぐって争わなくて良いなら安心したよ」


白丸も安心していた。

「それでは、ミエルたちの店はモンテ家御用達にして、真帆さんとワカルさんは俺の妹と弟にして庇護したい。それで良いな。じい」


じいは満足そうに返事をした。

「御意でございます」


つづく


お読みいただき、ありがとうございます。 作者のサアロフィアです。


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