87 アランとアリスは確定だけど
ミエルが結論を出したときには、女神ミサキは帰った後だった。
ミエルがみやびを見て言った。
「ねえ、みやび。聞いてくれるかな?」
「もちろんさ、ミエル」
「女神様からのお告げがあって、この町を出ることになった」
「うん、覚えているさ」
「覚えている? あれ? ということは、あれは夢ではなかったの?」
「夢だけど、私も居たさ」
「もしかして、マーサさんも」
「マーサは私の中に居るさ。話したいなら代ろうか?」
「うん、その前に、みやびに聞きたいことがある」
「なにさ?」
「ボクはみやびといっしょに居たいんだ。だから、みやびもいっしょに町を出て欲しいんだ」
「もちろんさ。ミエルが行くところについていくさ」
「ありがとう、みやび」
ミエルは黙り込んで考え事をしていた。
それから、みやびの方を向いて、質問してきた。
「マーサさんも、この町を出ることに賛成してくれるか聞いてくれる?」
「代わったほうが早いさ。シフト マーサ」
みやびは、マーサと人格を代わった。
「はじめまして、というのも変だけれど、マーサです」
「はじめまして、雰囲気が変わるなあとは思っていたけれど、別人格とは思いませんでした」
「まあ、気づかない方が普通よ。それで、聞きたいことはなに?」
「マーサさんは、町を出てからも、ボクと一緒にいてくれますか?」
「...もちろんよ」
『みやびに泣かれると大変だし。アホダマイトの影響下に入ったときに危険だし』
ミエルは首をかしげながら聞いてきた。
「いま、間が空いたけれど、なにか不満があるなら言ってね」
「大丈夫よ。聞かなくても大丈夫なのに、聞いてきたから、すこしあきれただけ」
「そうなの? 人のこころの中は分からないからね」
「まあ、わたしの意志を尊重してくれて、うれしいわ。じゃあ、みやびに代わるわ。
他にもなにかありますか?」
「アランとアリスはみやびの護衛なので、嫌と思われてもついて来てもらおうと思っているんだけれど。みやびがどう思うか聞きたいんだ。」
「聞いてみるわ...うん、無理は言えないけれど、ついて来て欲しいって」
「じゃあ、つぎは、理由を聞かれたときにどう答えるか?なんだけれど、
【女神さまのお告げ】というわけにも行かないので、【嫌な予感がする】としか言えないだけれど、それも良いかな?」
「わたしは、ミエルさんの判断が正しいと思う。みやびさんは、ミエルのいう通りにするって」
「ありがとう。そして、真帆さんとワカルさんには無理強いしない。
お店があるから残りたいと言ったときは、残ってもらうつもりだよ」
「そうね。それで良さそうよ。わたしに聞きたいことが無いなら、みやびさんに代わるわ」
「うん、マーサさん、お願いします」
「ミエル、アランとアリスはついて来てもらう。真帆さんとワカルさんは自分で決めてもらうで、いいと思うさ」
「ありがとう、みやび」
◇
朝ごはんを終わらせて、真帆さんとワカルさんが店に行ってから、ミエルは、アランとアリスを呼び止めた。
ミエルの左となりには、みやびが居て、
ミエルの正面にアラン、アランの右となり、みやびの正面にアリスがいた。
ミエルは話を切り出した。
「朝から、驚かせるようなことを言うけれど...」
アランとアリスを顔を見合わせてから、嬉しそうに言った。
「みやび様がご懐妊されたのですね。おめでとうございます」
ミエルがみやびの方を見た。なんだか嬉しそうだ。
「みやびの変化に気付けなかったなんて、みやび、ありがとう」
「ごかいにん...ちがうさ、ミエル、赤ちゃんはできていないさ」
『むずかしい言葉も、マーサのおかげで分かるさ』
アランはアリスに肘でつつかれて、申し訳なさそうに言った。
「早とちりでした。すみません」
ミエルは悟りきった顔をした。
『アリスも同罪だと思うけれど、アランは尻に敷かれているんだな』
「まあまあ、あらたまって言ったから、そう思ったんだね。
まあ深刻で真面目な話だというのは同じだからね。
じつは、嫌な予感がするから、この町を出たいんだ」
「とすると、旧カニング公爵領のときと同じですね。
また、多くの人が危険な目にあうのでしょうか?」
「いやいや、ボクとみやびにだけ嫌なことが起こりそうなんだ」
アリスが神妙な面持ちで聞いてきた
「わたしたちの護衛が役に立たない未来が見えたのですか?」
ミエルは両手を振って否定した。
「いやいや、ふたりの護衛レベルは高いから、そんなことはないよ」
みやびは意味が分からなかった。
『たしかに、アランとアリスの護衛が間に合わない未来だから、言えばよいのにさ』
マーサがみやびに説明した。
『ふたりの護衛が間に合わなくて、みやびさんが天国に行く未来を見たなんて言ったら、二人の立つ瀬が無いわ。もしかしたら、意地になるかもしれない。
だから、ミエルは言わなかったのよ』
『ふたりのプライドを傷つけないようにか?さ?』
『その通りよ』
みやびは気持ちの問題だと思ったので、ミエルに助け舟を出した。
「わたしはミエルが嫌な未来を見たなら、ミエルの言う通りにしたいさ。
嫌かもしれないけれど、アランとアリスも町を出て、いっしょに来て欲しいさ」
アリスは、かしこまったポーズで答えた。
「アランとアリスは、みやび様をお守りするために、ここにいます。
みやび様が行くところが、わたしたちのいるべきとことです。
そうよね? アラン」
「もちろんです。アリスの言う通りです。」
ミエルとみやびは、アランはアリスの言う通りにする関係だと深く理解した。
◇
夜ご飯の後で、真帆とワカルも入れて話をした。
ミエルが話を切り出した。
「真帆さん、服屋さんの調子はどうかな?」
「まあまあね。常連客も増えてきたから、ひとりで食べる分なら余裕が出てきたわ」
「ワカルさん、食べ物屋さんの調子はどうかな?」
「ぼちぼちです。常連客もいるから、ひとりで食べる分なら稼げています」
ミエルは少し考えてから、本題を二人に伝えた。
「実は、ぼくとみやびに良くないことが起きそうな予感がするんだ。
だから、みやび、アラン、アリスとボクの4人は、この町を出ようと思っている。
お二人は、お店が順調なようだから、この町に残りたいという選択も良いと思う」
真帆は、少し考えてから答えた。
「たしかに、商売が軌道に乗っているから、残りたいのですが...」
真帆は、ワカルの方を見た。ワカルが説明を続けた。
「しかし、ボクたちは戦えないし、戦っても弱いので、お店を守れるかどうか...」
ミエルは、ふたりの心情を理解して、結論を出した。
「近いうちに、白丸さんたちが店に来ると思うから、相談してみるよ」
つづく




