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サウナーと薬師ルミ

サウナーと薬師ルミ


白い蒸気の中で、俺はゆっくりと目を閉じた。


……はずだった。


「寝るんじゃないよ」


ぱしん、と額を叩かれた。


『痛っ』


目を開けると、さっきまで半分凍っていたはずのルミ婆さんが、寝床から上半身を起こしてこちらを睨んでいた。


いや、睨んでいるというより、観察している。


「魔力切れだね。顔が土みたいな色になってる」


『土……』


「イル、水を持ってきな。あと、干し肉を少し。塩気のあるものがいい」


「はい!」


イルは慌てて小屋の外へ走っていった。


俺は床に座り込んだまま、なんとか呼吸を整える。


体が重い。

指先が痺れる。

頭の奥がじんじんする。


前世で、仕事終わりに無理してサウナに入りすぎた時の感覚に似ている。


いや、あれよりひどい。


『魔力切れって、こんなにしんどいんですね』


「当たり前だよ。あんた、身体の中の薪を全部燃やしたようなもんだからね」


『薪……』


「この村じゃわかりやすい例えだろ」


ルミ婆さんは鼻で笑った。


その顔色はまだ悪い。

腹から下には氷が残っている。

それでも、声には力が戻っていた。


小屋の入口で、村長がこちらを見ていた。


「ルミ。動いて平気なのか」


「平気なわけないだろう。今にも倒れそうだよ」


「なら寝ていろ」


「寝てたら、この若いのがそのまま倒れるだろうが」


ルミ婆さんは俺の方を顎で示す。


「ゴルド。この子を簡単に使い潰すんじゃないよ」


村長は何も言わなかった。


ただ、深く眉を寄せた。


俺は慌てて手を振る。


『いや、俺が勝手にやっただけなので』


「それが危ないんだよ」


ルミ婆さんの声が鋭くなる。


「力を持ってる人間が、善意だけで走ると早死にする。覚えておきな」


その言葉に、胸の奥が少し冷えた。


前世でもそうだった気がする。


頼まれたら断れない。

少し無理すればいけると思う。

自分がやれば早いと思う。


そして気づいたら、心も身体も削れている。


サウナで死んだ俺に言われると、妙に説得力がありすぎる。


『……気をつけます』


「返事だけは素直だね」


ルミ婆さんはそう言うと、今度は炉の中のサウナストーンをじっと見た。


「それが、あんたの石かい」


『はい。サウナストーンです』


「さうな、すとーん」


ルミ婆さんは聞き慣れない言葉を噛むように繰り返した。


「変な名前だね」


『よく言われます』


「嘘つきな。今思いついただろ」


鋭い。


イルが水と干し肉を持って戻ってきた。


「レンさん、これ!」


『ありがとう』


俺は水を飲み、干し肉を口に入れる。


硬い。

しょっぱい。

でも体に染みる。


魔力が戻る感じはしないが、少しだけ目の前がはっきりした。


ルミ婆さんは俺の様子を見て、少しだけ頷く。


「魔力切れは寝るのが一番だ。飯と水を入れて、とにかく休む。無理に魔法を使えば、魂に傷がつく」


『魂に?』


「そうさ。魔力は血や肉だけじゃない。魂の底からも湧く。底まで削ると、戻らなくなることがある」


ぞっとした。


ヘファイストスに拾われた時、俺は魂だけの状態だった。

その感覚を少しだけ覚えている。


真っ暗で、身体がなくて、でも考えることだけはできる。

あそこまで削れるということなのだろうか。


『無茶はしないようにします』


「そうしな」


ルミ婆さんはそう言って、今度は村長を見た。


「ゴルド。村人全員を今すぐここに並ばせるのはやめな。死人が増える」


「わかっている」


「本当にわかってるかね。希望を見せられた人間は、絶望してる時より厄介だよ」


村長の顔が硬くなる。


外には、サウナ小屋を囲むように村人たちが集まっている。


さっきまで疑いの目だった人たちが、今は別の目でこちらを見ていた。


期待。


それは疑いよりも、重い。


「うちの母も診てくれ」


「子どもが凍り始めてるんだ」


「次は俺の妻を」


「頼む、頼むよ」


声が重なる。


俺は立ち上がろうとした。


だが、膝に力が入らない。


『くっ……』


「ほら見な」


ルミ婆さんが呆れた声を出す。


イルが俺の腕を支えた。


「レンさん、休んでください」


『でも』


「でもじゃないです」


イルの声が、いつになく強かった。


「レンさんまで倒れたら、誰がみんなを助けるんですか」


その言葉に、俺は動けなくなった。


正論だった。


俺がここで倒れたら終わりだ。


ルミ婆さんは村長へ言う。


「今日はここまでだ。サウナ小屋を温かく保つだけにしな。治療は明日から順番を決める」


「順番か」


「重い者からだ。ただし、今にも砕けそうな者は逆に危ない。熱に耐えられないかもしれない。まずは症状が胸まで来ている者を一人。次に腹までの者を二人。足だけの者は家で保温だ」


村長は頷いた。


「村の者に伝える」


村長が外へ出ると、すぐに村人たちの声が大きくなった。


「なぜ今日やらない!」


「うちはもう待てないんだ!」


「ルミ婆さんは助かったじゃないか!」


「うちの子も入れてくれ!」


その声に、イルの肩がびくりと震えた。


俺は、どうにか立ち上がろうとした。


やはり説明しなければ。

俺の口から。


しかしルミ婆さんが俺の腕を掴んだ。


「座ってな」


『でも、俺が説明しないと』


「今のあんたが出ていけば、倒れるまで頼まれるだけだよ」


『……』


「救う順番を決めるのは、救う力を持つ者の仕事じゃない。村のことを背負ってきた者の仕事だ」


ルミ婆さんは小屋の外を見る。


「ゴルドは嫌われ役になる覚悟がある。そこは任せな」


外では、村長の低い声が響いた。


「静まれ!」


ざわめきが止まる。


「レンは今、魔力を使い果たしている。これ以上求めれば、村を救う力そのものを失う」


「でも村長!」


「順番はこちらで決める。ルミと相談し、重い者から治療する」


「うちの子はどうなるんですか!」


「全員を救うための順番だ」


村長の声は揺れなかった。


「不満がある者は、わしに言え。レンに詰め寄ることは許さん」


沈黙が落ちた。


しばらくして、村人たちの声が少しずつ遠ざかっていく。


俺は、長く息を吐いた。


『……助かった』


「これで助かったと思うのは早いよ」


ルミ婆さんは苦い顔をする。


「明日からが本番だ」


『ですよね』


「それに、あんたに聞きたいことが山ほどある」


ルミ婆さんの目が、鋭く光った。


「まず、そのサウナってやつ。あれはただの火の魔法じゃないね」


『はい』


「熱だけじゃない。蒸気に浄化の力が乗っていた。白霜樺と蟒蛇草の効き方も変わっていた」


『変わっていた?』


「蟒蛇草は、進行を遅らせるだけの薬草だ。呪いを外に追い出す力なんてない」


ルミ婆さんは、黒ずんだヴィヒタを手に取った。


「白霜樺も同じだ。たしかに清めの力は少しある。でも、あんなに強く呪素を引き剥がすほどじゃない」


『じゃあ、俺のスキルが薬草の効果を強めたってことですか?』


「たぶんね」


ルミ婆さんは頷く。


「熱、蒸気、香り、汗、血の巡り。あんたのサウナは、身体の内側にある悪いものを外へ押し出す力がある」


『サウナっぽい……』


「何を言ってるかわからんが、そういう力なんだろうさ」


俺は少し考える。


そういえば、前世のサウナでもよく言われていた。


汗をかいて悪いものを出す。

身体を温めて巡りをよくする。

気分を整える。


医学的にどこまで正しいかは別として、サウナに入った後のあの感覚は確かにあった。


身体だけではなく、心の中の重たいものまで少し軽くなるような感覚。


この世界では、それがスキルとして形になっているのかもしれない。


『つまり、俺のサウナはデトックス魔法……?』


「でとっくす?」


『悪いものを出す、みたいな意味です』


「なら、そうだね。ただし、出した悪いものをどう処理するかが問題だ」


ルミ婆さんは小屋の隅を見る。


「さっきの黒い獣。あれはあんたが消した。でも毎回あんなのが出るなら、村人を治すたびに戦うことになる」


『……たしかに』


それはまずい。


治療のたびに呪いの欠片が実体化し、襲ってくる。

MP切れの状態で出てこられたら詰む。


『何か、閉じ込める方法とかありますか?』


「あるにはある」


ルミ婆さんは自分の腰袋を探った。


しかし途中で顔をしかめる。


「……家に置いてきたね」


「私、取ってきます!」


イルがすぐに立ち上がる。


「一人で行くな」


ルミ婆さんが止める。


「もう日が傾いている。村の中とはいえ、今は何が起こるかわからない」


その瞬間、小屋の外から叫び声が聞こえた。


「魔物だ!」


全員が固まる。


続いて、鐘のような音が村に鳴り響く。


カン、カン、カン。


緊急を知らせる音だろう。


村長の声が響く。


「南門だ!動ける者は武器を持て!」


イルの顔が青ざめた。


「南門……私の家の方です」


俺は立ち上がろうとする。


今度は、体が少しだけ動いた。


だが、魔力はほとんど戻っていない。


ステータスを確認する。


MP2/15。


『くそ……』


サウナストーン一個出せるかどうか。


ルミ婆さんが俺を睨む。


「行く気かい」


『イルの家があります』


「今のあんたは足手まといだ」


『それでも行きます』


ルミ婆さんは舌打ちした。


「なら、これを持っていきな」


彼女は黒ずんだヴィヒタを俺に投げた。


『これはもう使えないんじゃ?』


「普通にはね。でも呪素を吸っている。囮くらいにはなる」


『囮?』


「凍呪の欠片は、熱と浄化を嫌う。けど同時に、呪素に引かれる。そいつを投げれば一瞬だけ気を逸らせる」


『わかりました』


「それと、無理に魔法を撃つんじゃないよ。あんたがやるべきは倒すことじゃない。時間を稼ぐことだ」


俺は頷いた。


『イル、ここにいて』


「嫌です」


即答だった。


『危ない』


「私の家があります。お母さんとお姉ちゃんがいます」


イルの目には涙が浮かんでいた。

でも、引く気はなかった。


「私、道を知ってます。レンさんより早く案内できます」


俺は何も言えなかった。


ルミ婆さんがため息をつく。


「ゴルドに怒られるね」


『俺も怒られますかね』


「あんたは確実に怒られる」


『ですよね』


俺は黒ずんだヴィヒタを握り、小屋の外へ出た。


冷たい空気が、汗ばんだ肌に刺さる。


サウナ小屋の中の熱から外へ出た瞬間、前世なら外気浴だと喜ぶところだ。


だが今は違う。


村の南側から、悲鳴と怒号が上がっている。


「こっちです!」


イルが走り出す。


俺もその後を追う。


体は重い。

足がもつれる。

それでも走る。


南門に近づくにつれ、空気がさらに冷たくなっていく。


雪の上に、黒い霧のようなものが這っていた。


そして門の前に、そいつらはいた。


狼に似た魔物。


だが、山で見た小さな狼とは違う。


全身が白い毛に覆われ、背中から氷の棘が生えている。

目は青白く光り、口から黒い息を吐いていた。


三体。


いや、門の外にさらに影がある。


村人たちが槍や斧を構えているが、明らかに押されていた。


「雪牙狼だ!」


誰かが叫ぶ。


「なんで村まで来るんだ!」


雪牙狼の一体が飛びかかる。


村人の槍が弾かれ、男が雪の上に倒れた。


『まずい!』


俺は反射的に手をかざす。


『サウナ!』


魔法陣が一瞬だけ出た。


しかし、赤い石は出ない。


頭の奥に痛みが走る。


『ぐっ……』


やはりMPが足りない。


雪牙狼の一体がこちらを見る。


青白い目が、俺を捉えた。


『イル、下がって』


「レンさん!」


雪牙狼が駆ける。


速い。


避けられない。


俺はルミ婆さんに渡された黒ずんだヴィヒタを投げた。


雪牙狼は空中で軌道を変え、ヴィヒタへ噛みついた。


その瞬間、ジュッと黒い煙が上がる。


雪牙狼が嫌がるように首を振った。


効いた。


だが、一瞬だけだ。


『村人さん!今です!』


近くにいた大柄な男が、斧を振り下ろす。


雪牙狼の肩に命中したが、深くは入らない。


「硬ぇ!」


雪牙狼が男へ爪を振るう。


俺は周囲を見る。


火。

火が欲しい。


サウナストーンが出せないなら、普通の熱源でもいい。


門の近くに、松明が落ちている。


俺はそれを拾った。


火は弱い。

風で消えかけている。


でも、これしかない。


『イル!水じゃなくて、油みたいなものはある?』


「油?」


「ランプ油なら、家に少し!」


『取ってこれる?』


「はい!」


イルが走ろうとした瞬間、別の雪牙狼が家の方へ回り込もうとしていた。


イルの家の方角。


『行かせるか!』


俺は松明を握りしめる。


サウナが使えない。

ロウリュもできない。

熱波も無理。


でも、熱を送る動きだけなら。


俺はヴィヒタの代わりに松明を構えた。


前世で見た熱波師の動きを思い出す。


大きく振る。

空気を掴む。

熱を乗せる。

相手へ送る。


『熱波!』


叫んだ瞬間、松明の火がぶわっと広がった。


炎そのものが伸びたわけではない。

熱い空気が、目に見えない波のように前へ飛んだ。


雪牙狼が一瞬ひるむ。


『スキルは、石がなくても使えるのか……!』


頭の中に文字が浮かぶ。


熱波

周囲の熱源を利用し、熱を任意方向へ送る。

威力は熱源と使用者の技量に依存。


『なるほど、なら!』


俺は松明を振る。


一振り。


雪牙狼が下がる。


二振り。


黒い霧が薄くなる。


三振り。


雪牙狼の顔の霜が溶け、青白い目が揺らいだ。


「今だ!」


村人たちが一斉に槍を突き出す。


一体目の雪牙狼が倒れ、黒い煙を上げながら魔石に変わった。


だが、まだ二体。


そして門の外から、さらに低い唸り声が聞こえる。


「でかいのが来るぞ!」


雪の向こうから現れたのは、他の雪牙狼の倍はある巨大な個体だった。


背中の氷の棘は長く、角のように曲がっている。

口から吐く息だけで、近くの柵が白く凍っていく。


頭の中に文字が浮かぶ。


雪牙狼・呪化個体

凍呪に侵食された魔物

危険度:高


『高って……』


今の俺にどうしろと。


呪化個体が咆哮する。


その声に反応して、残りの雪牙狼が一斉に村人たちへ襲いかかった。


陣形が崩れる。


南門が破られる。


このままでは村に入られる。


俺は松明を握る手に力を込めた。


火はもうほとんど残っていない。


MPもない。


体力も限界。


でも、ここで退けばイルの家まで行かれる。


イルの母と姉は動けない。


『イル!家に戻れ!戸を閉めろ!』


「でも!」


『早く!』


イルは泣きそうな顔で頷き、家の方へ走った。


その背中を見送った瞬間、呪化個体がこちらを見た。


青白い目。


背筋が凍る。


獲物として見られている。


俺は笑うしかなかった。


『異世界来て二日目で、これはハードすぎるだろ……』


その時、胸の奥が熱くなった。


いや、熱い。


魔力ではない。


サウナ上がりの心臓の鼓動のような、体の芯から湧く熱。


頭の中に声が響く。


警告:MP不足

ヘファイストスの加護が補助起動します。

収納内の魔石を魔力へ変換しますか?


『収納内の魔石……?』


そういえば、ゴブリンや狼の魔石を吸収した時、全部レベルアップに使われたと思っていた。


だが、いくつかは収納に入っていたのか?


考えている暇はない。


『変換!』


収納の中で何かが砕ける感覚がした。


体の奥に、熱が戻る。


MP7/15。


十分ではない。


でも、一発撃てる。


俺は呪化個体の頭上を睨む。


『サウナ』


魔法陣が現れる。


今度は消えない。


真っ赤なサウナストーンが一つ、空中に生まれる。


だが、ただ落とすだけでは足りない。


相手はでかい。

動きも速い。


なら、逃げ場を消す。


『温度、最大。範囲、南門前。ロウリュなし。熱波、前方固定』


自分でも何を言っているのかわからない。


だが、スキルは応えた。


サウナストーンが空中で砕けた。


砕けた破片が、赤い火の粉のように広がる。


そこへ俺は松明を振る。


『熱波!』


熱が前方へ押し出される。


赤い破片が熱風に乗り、呪化個体へ降り注いだ。


ジュウウウウウッ。


雪牙狼の白い毛が焼け、背中の氷が溶ける。


呪化個体が悲鳴を上げた。


村人たちが目を見開く。


「今だ!押し返せ!」


大柄な男が叫び、村人たちが一斉に動いた。


槍が刺さる。

斧が入る。

石が飛ぶ。


呪化個体は暴れたが、動きが鈍っている。


俺はもう一度手をかざす。


MPは残り1。


これで最後。


『サウナ……!』


小さな魔法陣。


握りこぶしほどのサウナストーンが一つだけ現れる。


狙いは、呪化個体の足元。


落とす。


雪の上で石が赤く光る。


俺は叫んだ。


『誰か、水!』


村人の一人が反射的に桶を投げた。


俺はそれを受け取り、サウナストーンへぶちまける。


ジュワァァァァァ――!


大量の蒸気が南門を覆う。


白い蒸気に触れた黒い霧が、悲鳴のように消えていく。


呪化個体の体から、黒い蛇のようなものが何本も這い出した。


『やっぱり中にいるのは呪いか!』


俺は最後の力で松明を振った。


『熱波ぁぁぁ!』


蒸気が一気に前へ走る。


黒い蛇たちは蒸気に飲まれ、次々に弾けた。


呪化個体の青白い目から光が消える。


そして巨体が、雪の上に崩れ落ちた。


静寂。


残りの雪牙狼たちは、呪化個体が倒れたのを見ると、門の外へ逃げていった。


村人たちはしばらく動けなかった。


やがて誰かが言った。


「倒した……」


別の誰かが続く。


「レンが倒した……」


違う。


俺一人じゃない。


そう言おうとした。


だが、声が出なかった。


膝が崩れる。


視界がぐにゃりと曲がる。


ああ、この感じ。


前世の最後に似ている。


水風呂のあと、外気浴へ向かおうとした時の。


『これは……まずい……』


倒れる直前、誰かが俺を受け止めた。


大柄な男だった。


「おい!レン!」


イルの声が遠くから聞こえる。


「レンさん!」


ルミ婆さんの怒鳴り声も聞こえた。


「だから無茶するなって言っただろうが、この馬鹿サウナー!」


馬鹿サウナー。


ひどい呼び名だ。


でも、悪くない。


俺はそう思いながら、意識を手放した。

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