39.魔物出現
一瞬で、学園の雰囲気が変わった。
あちらこちらで、たぶん先生達だろうと思われる避難を促す声が聞こえる。
『゛世界に満ちる精霊達よ。我らを守れ゛』
その中で、先生達が十数人で学校全体に守りの膜をはる。精霊たちも多くいる。魔法の民も数人いるようだが、学校全体に結界を張るには人が足りないようだ。先生達も、十数人でやっとだ。
テライトやメイト様、アルト先生やリリスさんとは別れた。
「街の方は、大丈夫なの?」
途中で出会ったエルトと、地下に行く階段を目指しながら、会話をする。もちろん、走っている。エルトは街の方も心配している。
「多分、自衛団が居るはず。今は気にする余裕はないよ!」
「あっ、止まって!!」
「えっ!?」
エルトがいきなり声を上げ、私の前に手を伸ばす。少しバランスを崩しながら止まった。
ギャァァァァ
「なんで!?」
目の前に魔物がいた。見た目は虫に近いが、2メートル以上ある体長は黒く禍々しい。
上の守りの膜を見ると、一部が破れている。エルトの手を握り、魔物と反対方向に逃げる。
「゛世界に満ちる精霊達よ。魔物を燃やす火を゛!」
「゛世界に満ちる精霊達よ。魔物を消す炎を゛!」
エルトと私は叫ぶように言う。大きな火の玉が魔物を襲い、火柱が上がる。だが、魔物には効いていないようでまったく止まらない。
「゛世界に満ちる精霊達よ。魔物を怯ます水を!」
「゛世界に満ちる精霊達よ。魔物に凍える冷気を゛!」
エルトが魔物にかけた水を冷気によって冷やし氷にする。
魔物の姿は虫だから、寒いのに弱いのだろうか。わずかに動きが鈍る。数度それを繰り返し、距離を少し稼いだ。
「はぁっはぁっ。」
エルトが息が続かなくなっている。
周りの精霊たちは木々を操り、私たちが逃げやすいようにしてくれているが、追いつかれるのは時間の問題だろう。
(誰か、ここに来て!)
光が収束していく。
いつの間にか、私達は竜の上にいた。
『大丈夫か?姫。あれは、普通の精霊術では倒せぬ。連鎖の精霊術が必要だ。魔法はわからんがな。』
「ありがとう。連鎖の精霊術?」
エルトは、まだ少し苦しそうだ。
ひと2人乗せても余裕がある竜もそこそこ大きいな。
ふと場違いなことを思ったが、思考を元に戻した。
『ああ。それは王に聞くが早い。とりあえず王の所に行くぞ。』
翼が動き加速する。だが、風はあまり変わらない。
「アイ!?どうして居るの!?」
竜から降り、走ってくる私達に気づいたリリスさんが駆け寄って来ようとしたが、私たちの後ろから来る影を見て止まった。
「なるほど、追われているのねっ!」
竜はリリスさんの隣に降り、魔物に向ってその爪を振る。
「゛フリーズ゛」
魔物が凍りつくが、内側からヒビが入った。
「メイト様!連鎖の精霊術を!」
少し遠くにいたメイト様のところにいく。メイト様は、魔物を見て、納得したように頷いた。
「アイ、君の精霊の民としての名は?」
「え?ルミナスです。」
「ふむ。」
メイト様は、私に連鎖の精霊術の御言を教える。
「覚えたね?じゃあ、唱えようか。テライト、リリス。足止め頼む。」
「はいはい。」
「わかりました。」
「゛我はソレス、太陽の民」
「我はルミナス、月の民」
『我らは望む。悪しき物を浄化し滅する力を。精霊達よ、我らの願いを叶えよ゛』
力がごっそり抜けたような気がする。
ギィァ、ァ
魔物が苦しんでいる。少しずつ、魔物の中から黒い何かが漏れ出てくるが、それは精霊たちが放つ光によって消されていく。
精霊たちも、普段と違い力に満ち溢れているように見える。
そして、魔物は消えた。
「ふう。やっぱり疲れるなぁ。よくアイは立ってられるね。あーあ、婚約者と会えなかったよ。」
メイト様は座り込み、くっくっと笑っている。テライトとリリスさんがこちらに来た。私は一応立ってはいるがとても疲れている。
「お疲れさん。メイト、アイ。」
「お疲れ様ですメイト様。アイ」
周りを見てアルト先生がいないことに気が付いた。
「アルト先生は?」
「ああ、魔物がこちらから居なくなった時、自分が探すって言ってどこかに行った。」
アルト先生はハーフエルフだからけっこう足が早いからかな。あと、生徒思いだから探しに行ったのかな。
「エルト、大丈夫?」
エルトは竜の上にいた。仰向けで上を見ている。
「あはは。途中で仲間はずれになったけど無事だよ。」
「うっ、ごめん……」
エルトは完全に戦力外だったことで拗ねているようだ。だけど、自分の力も分かっているので、落ち込んでいる。
その後は、学校はしばらく休みになるとのこと。寮も閉まるので、全員が帰る。
あの魔物、私を狙っていたような……?気のせいだったらいいんだけれど。
あと、連鎖の精霊術を教えてもらうことにした。
いざと言う時のためにね。
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「んー。やっぱ、このくらいの魔物じゃすぐやられるか。」
青年が四角い結晶をのぞき込み、困ったように笑う。だけれど、その表情は少し楽しそうでもある。
「むー」
近くにあるソファーの上で寝ている男の子が唸る。起きたのかと青年は振り返るが、起きてはいないようだ。
青年はくすりと笑い、男の子の頭を撫でる。
「鍵はまだ眠ったままか。エレウカが封じてるんだろうなぁ。まあ、君には役立ってもらうよ。エレウカのアンチコードとしてね。」
男の子の頭を撫でながら、不穏な言葉を漏らす。
「うーむ。巫女が居るのも面白そうだけど、絶対邪魔してくるなぁ。面倒くさ。だけど、後でいいか。」
テーブルに乗った珠を見つめ、青年はニヤリと笑った。
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挿絵を描こうとしたけど、いざ描いてみると自分の絵心の無さに落胆した作者です_| ̄|○
そしてよく考えてみれば、挿絵のアップの仕方も分からないことに気が付きました_| ̄|○
こんな作者ですが、これからも応援よろしくお願いします
(*´・ω・`*)




