40.王宮
連鎖の精霊術を教えてもらうことになった。
だけど別に王宮でなくてもいいんじゃないかと思う。それを聞いたら、メイト様は目をそらして笑った。何か企んでる?
「そういえばアイ、君がこっちに来てからどのくらい経つ?」
「5ヶ月くらいですね。」
「もう、そのくらい経つのか。」
この世界の1年は10ヶ月。今の季節は秋ぐらいかなぁ。メイト様は私に待つように言って、王宮の奥に行ってしまった。
「私にどうしろと?」
しばらく待っていたが、誰も来ないし、何も起きない。
《あ、お客さんかにゃ??》
「精霊か。あなたは?」
ふわふわとした服を着た二足歩行の猫がぽてぽて歩いてきた。私は精霊と思ったけれどどうやら違うようだ。怒ったように猫はぴょんぴょん飛び跳ねた。
《ぼくは精霊じゃないにゃ!ケット・シーだにゃ!ってあれ?》
ぴょんぴょん飛び跳ねるのをやめ、手(前足)で考えているようなポーズをとる。なんとなく微笑ましい姿だ。
そして何を思ったのか私の目をじっと見ている。
《よく考えるにゃ、ぼく。ぼくはケット・シー。呼び出した人しか見えない筈にゃ。つまりこのお客さん(?)はぼくは見えてないはずにゃ。だからぼくじゃなくてここにいる精霊に話しかけたんだにゃ。》
なんか一匹で混乱してる。そして一匹で結論を出したけど、ここの精霊達は私のそばに今はいないよ?
「うん。よく分からないけど、ケット・シー?かな。あなたに話しかけてるんだけれど。」
とりあえず声をかけてみた。
《そんにゃはず……ってなんですとー!》
いちいちリアクション大きいなぁ。
あ、跳んで距離をとった。猫か。いや、ちょっと変わってるけど猫だった。
《猫じゃないにゃ!ケット・シーだにゃ!》
心を読まれた!?いや、顔に出てたのか。まあ、いいや。
とりあえず、このねk……
《ケット・シーだにゃ!》
わかってる。ケット・シーをどうしろと?
「お?アイじゃないか?」
しばらくケット・シーを眺めていると、横にあった階段からシシリアが降りてきた……ってなんで!?
シシリアは相変わらずの軍服スタイル。
「シシリア様?どうして居るのでしょうか?」
人が居るので、敬語で話す。シシリアはちょっと残念そうな顔をしたけれど、しょうがないねというように首を振った。
ケット・シーが器用に歩いてシシリアの所に行く。シシリアはケット・シーを肩にのせた。
「ああ、今急に呼び出されたからな。学園に魔物が出た件についてで。」
「そうなのですか。そしてそのケット・シーっていう猫は?」
《猫から離れろにゃ!》
「……?こいつが見えるのか?」
どうしてシシリアも驚くの?ちょっと首を傾げつつ答えを待つ。
「こいつは一応私の召喚獣だ。元は魔獣だ。従属させて召喚獣にした。だが、今は他の人が見えるくらいに魔力は送ってないんだけどな?」
「私に言われても・・・。」
2人で考えていると、ケット・シーが私を指差してシシリアに言った。
《シシリア様、この人から創造神の力を少しだけ感じるにゃ。》
創造神ねぇ。……私にあまり関係ない神様なんだけれどね。
シシリアももっと首を傾げたんだけど。
「やぁ、ごめんごめん。アイはちょっと中庭で遊んでいて?シシリアと話があるんだ。」
メイト様が奥から出てきた。テライトも一緒だ。だけどテライトは少し難しい顔をしている。考え込んでいるようだ。
そして中庭。うん。王宮の中庭だからとても豪華。
お茶会をするためなのかな?テーブルやイス、そして小さな石造りの建物。壁はなくて、柱で支えている。
あまり見たことのない花も沢山あり、とてもいい香りがする。
精霊は……いつも通りかな。かなりくつろいでいるが。
「で、コルザはさ。メイト様に付いてなくてもいいの?」
「ん、ああ。今はアイの護衛をしろってさ。」
護衛というか、雑談相手だよね。普通にお菓子とかお茶とか出てるし。
「ねぇ。エレウカって知らない?」
「エレウカか。時々神話とかに出てくる奴だな。」
「神様なの?」
「神ではないけど、この世界の意思?みたいなものだ。詳しくは分からん。」
やっぱり神様では無いようだ。
「ところでコルザ、あの時さ。どこ居たの?」
そういえば、コルザを二日目以降全く見ていなかったことを思い出した。それを聞くとコルザはげっそりした。
「兄様に、仕事押し付けられてた。」
メイト様、仕事終わってから来たんじゃないんですか。まさかの押し付けでしたよ。
「アイは連鎖の精霊術を聞きに来たんだっけ?」
「うん。」
もともとの目的はそれだったんだけどな。メイト様達の話し合いが始まってしまったようだ。
「色々な種族の長が来てたな。」
たぶん、魔法をフル活用してるね。魔法の民さん頑張れ。
海の種族はまだ見たことないなあ。
「うーん。俺は少ししか連鎖の精霊術は使えないしなぁ。まあ、どういうものかは説明してやるよ。」
「連鎖の精霊術は、同時に御言を唱える同詠唱とは全く違う。一つ目の違いが、術の違いだ。これはわかるな?二つ目は、あまり使わない精霊の民としての名を使う。アイの場合はルミナスだな。その名で使える連鎖の精霊術が変わるんだ。」
ふむ。気になる点がある。
「精霊の民の名で変わる?」
「精霊の民の名には種類があるんだ。王、騎士、占い師、自然の者。王が多様な技を使える。騎士はまあ、人を守る技が殆どで、占い師はまだはっきりとは分からない。自然の者はその者の名にある森とか、地とかを味方につけられる。」
いくつあるんだろう。精霊の民の名って。聞いてみたがテライトもよく覚えていないようだ。そんなに多くはないらしいが。
「占い師は?」
「歴史を振り返っても、現れたのが少ない上に情報がない。かろうじて、精霊の民の名が分かるぐらいだ。」
ものすごくレアだった。
「なら、違う種類の名で連鎖の精霊術をしてみたら?」
「効果が混ざって新しい術ができる。」
「できるんだ。」
「ああ。だが、威力はやはり王の組み合わせが強いぞ。それと連鎖の精霊術をする場合は4人までかな。組めるのは。だが、四人の場合精霊の民の名の種類が被ってはだめだ。三人までなら被ってもいい。」
めんどくさいなぁ。制約が沢山ある。
「それを出来るのは?」
「平均よりライネスに近いヒーブリッドとライネス。それ以外はちょっと耐えるのは無理だ。」
ふむ。身分は関係ないようだけど、力か……。
使えるか使えないかは生まれた時に決まるようだ。でも一応は高等部3年の授業で習うようだ。
精霊の民の名の王とか後で調べてみよう。
「話し合い長いなぁ。そしてコルザに聞いたから御言を覚えるだけになった。ほんとに王宮でなくても良いんじゃ……」
「どうせ返してくれないと思うがな。」
お菓子に手を出しつつポツリと呟いた。
ケット・シー(ФωФ)
はい、二足歩行以外は猫です。どっからどう見ても猫です。
これでも高位の召喚獣です。




