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35.学園祭②

ぞわっ。


……何か悪寒がしたような?

女神騒動で信仰者が増えたそうだ。詳しくは知らない。


女神って誰だろうなぁ。


「ふあー」


エルトが隣で欠伸をしている。今は、お菓子屋の店番だが、もう少しで1日目が終わるのでお客さんはすくない。


つまり、暇なのだ。

私はうたた寝をしてしまいそうだ。


「うーん。もうそろそろ片付けする?」


時間を見ると、あと5分ほどだ。余ったクッキーや、クレープ記事は保冷箱に入れ、料理道具を洗う。

それでも、人は多いからすぐに終わってしまう。


「暇な人はもう帰っていいよー」


もう学園祭1日目終わったので皆に声を掛ける。

皆はそれぞれ帰りはじめた。




コト……コト



「?エルト何か硬いもの動かした?」

「いいえ?調理用具も洗ったし何もしてないよ?」


音が聞こえた気がする。

でも、今ここにいるのは私とエルトだけだ。

それに、私達は椅子に座ってお喋りをしていた。

椅子も、動かしてない。



コト…コト……



やはり聞こえる。教室のロッカーの中からだと思われる。


「開けてみようか。」


音が聞こえた周辺のロッカーを片っ端から開けていく。


5番目のロッカーを開けた時、何かが飛び出した。


「ティールの幼体?」


飛び出したそれは、教室の隅でプルプルと震えている。毛は茶色でもふもふしていて、柔らかそうだ。


「誰か連れてきたのかな?」

「アイ、かなり冷静だね。あれ一応魔物に入るよ?」


ティールとは、兎の魔物だ。

でも元がうさぎのため、魔物のくせに争いを好まない。

魔物も普通に子供が産める。


その幼体を拾い上げ、観察をしてみる。目は赤く、身体は普通のうさぎと何も変わらない。

ただひとつ、魔物のため成体がかなりでかくなるし、人の言葉を覚えることが出来る。


「もっふもふだ。首輪は…あった。」


カチャッ


見にくかったので、首輪を外し、その幼体をエルトに預けた。

少し暴れたが、すぐに大人しくなった。


「えっと、《フェルンス所有・イーニア(ティール)》って書いてあるよ。」


イーニアがこのティールの名前らしい。

フェルンスは人の名前だろうか。


「フェルンスは確か先生の名前だよ。2年の担任だったかな」


エルトが知っているようだ。

私は首輪をティールにもう一度はめ、フェルンス先生のところに行くことにした。



「えっと、フェルンス先生……ですよね?」

「ああ。僕だけど。」


目の前のゾンビ、いや、フェルンス先生が答えた。

フェルンス先生の担任しているクラスはお化け屋敷で、先生も参加していたようだ。化粧はまだ落とされてはいない。


「その化粧、すごいですね。」


何がすごいかというと、物凄くリアルなのだ。

皮膚の上にたぶん絵の具かなにかだと思うが、怪我や傷などが書かれている。

それが全身だ。暗いところで見たら、ヒューマンゾンビと間違えるだろう。


ヒューマンゾンビはこの世界の魔物で、人の死体に実態を持たない魔物、アンデットが乗り移ったもの。とても厄介な魔物だ。


「あの、このティールの子どもの首輪に先生の名前が書いてあったんですけれど、知っていますか?」

「ティール?」


私はティールを先生に渡した。フェルンス先生は、ティールをなでている。


「僕のペットのイーニアだよ。いなくなってたんだ。」


イーニアは気持ちよさそうにしている。

寝てるような気がするが。


「僕の父さん、魔法の民なんだ。母さんは精霊の民だけど。僕は精霊の民として生まれたんだ。父さんはね、魔物使いって呼ばれていて、いろんな魔物を仲間にする事ができるんだ。」


イーニアを頭の上に乗せ、フェルンス先生はなぜ魔物をペットにしているかを話し始めた。


茶髪のストレートの髪にもふもふとした毛玉が・・・。

話よりもそちらが気になるが、話を聞いておこう。


「姉さんは魔法の民だけど、魔物使いにならずに、騎士団に入っているよ。このイーニアは誕生日プレゼントとして父さんにもらったんだ。当時は卵だったけど。」


魔物は見た目がどうであれ卵で生まれるという。卵からうさぎ、それももふもふしたうさぎが出てくるのは違和感あるなあ。


「魔物は慣れれば、そこらの動物と変わらないよ。少し賢いだけのね」


確かに、魔物であるイーニアは襲ってくる魔物達と雰囲気が違う。魔物より動物に近くなっているのかもしれない。

でもやはり知能は高いらしい。



「イーニアを連れてきてくれてありがとうね。あと、明日ここのお化け屋敷を体験してみるといいよ」


さらっと宣伝をされた。

あのリアルメイク、とても怖い。だから、行きたくないな。

正直あんなレベル高いとは思わなかった。



あ、フェルンス先生は女性ですよ?

フェルンス先生も僕が一人称だ。

顔は残念ながら、化粧で分からなかった。


印象でいうと、一人称が僕っていうだけの普通の常識人だと思う。

特殊メイクが得意らしいが。どこで身につけたんだろうそんなメイクの技術。


「もうそろそろ、寮に帰ろう。」

「そうだね」


外はもう既に暗い。早く帰った方が良いだろう。



「ただいま。」

「おかえりー、アイ。晩御飯きてるよ。たべようか」

「珍しい。待っててくれたんだ」

「僕くらい待てば待てるさ。」


テーヌをからかったら、テーヌが少しむくれてしまう。

それが面白い。

こう思う私はSかな?


晩御飯を持ってきて、食べ始める。

少々冷めてしまっていたようだ。


「明日、僕らのクラスでスポーツ大会があるんだ。参加自由だから参加しない?」

「あはは、どうしようか。」


キラキラと、目を輝かせたテーヌに断るのは気まずい。まあ、断る理由もないから、テーヌが言い募れば断るのはさらに難しい。


「参加自由のスポーツ大会たぶん皆参加するよだからアイも参加してねもし明日来なかったらこの口調でいろいろぶつぶつ言ってあげるよ参加するかこの口調をずっと聞かされるかどちらがいいかな僕だったら前者をおすすめするよ後者なら僕はきついからアイが前者を選んでくれることを祈っているよ」


何か早い口調で長文を言い続けたテーヌ。

途中で、きついとか言ってた気がするけど、これをずっと聞かされるのは気が滅入るな。


「はいはい、都合が良ければ参加するから」

「やったー!」


暴れるな、テーヌ。

晩御飯がこぼれるから。あ、もう遅かったや。


「……お風呂入ろうか」


スープを頭からかぶってしまっている。


「……うん。」


たぶん、ご飯が減ったことに落ち込んでる。

自業自得だ。



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