31.新学期
いよいよ明日から新学期。なかなかに濃い夏休みだったような気がする。いや、気のせいではないか。
「夏休みなのに疲れたなぁ。」
柔軟運動している。背中とかポキポキいってるけど気にしない。うん。あ、つった。
「いたた。」
治った。私は、体をおこして新学期の準備を始めた。今は、精霊を見る力は抑えている。ずっと使っていると疲れるからだ。
「この本はいるかな。トランプとチェス盤は暇つぶし用に。今日のうちに寮に持っていこう」
この世界は物理いるんだろうか?不思議に思う。
バックに教科書などを詰め込んで、執事のソレオさんに頼んで馬車を出してもらう。メイドさん達や、執事さんたちに寂しそうな顔をされた。
「お気を付けていってらっしゃいませ。」
「ええ。行ってきます。」
執事のソレオさんは、気配がない。そして、無口。それはそれで個性的だ。忍者とか似合いそう。
「着きました。」
「ありがとう。」
久々に学園の校門前。やはりでかいな。記憶を頼りに寮に向かう。途中で勘の時もあったけど。
「あ、アイ、久しぶり。」
「テーヌか、久しぶり。」
量の扉を開けるとテーヌが片付けをしていた。テーヌも里帰りをしていたらしい。ちょっと焼けている。自分も言えないけれども。
「テーヌ日焼けした?」
「ああ。親戚の家に行ったんだ。海の近くでね。楽しかった。えっとね…」
テーヌがジェスチャーをしながら楽しそうに報告する。よほど思い出に残ってるのか話がテーヌには珍しく長い。
「へぇ。」
「今度、来なよ。歓迎するよ。」
今度、ねぇ。暇あるかな?
「行けるなら行きたいな。」
テーヌはそれを聞いて嬉しそうに笑った。
「あ、そうだ。片付けしないと。」
テーヌと話していたので自分の荷物の片付けが全然すすんでいない。テーヌは崎に片付け終えてどこかに遊びに行った。
「えっと、教科書類は棚に。ん?」
テーヌが話していた置物がある。木彫りのものだ。形はダイヤ型が何個もくっついているようなもの。
「とれてる。」
その下に一つダイヤ型のものが落ちていた。木彫りではなく、水晶から出来ているようで透明だ。
「机に置いとこう。」
それを拾い、机の上に置く。
拾った時一瞬頭痛がしたような気がした。
その後は何ともなかったので、気にしないことにした。
「久しぶりー」
「久しぶりだね」
荷物の片付けを終え、暇だったので寮の中を歩いていたら、エルトが後ろから声を掛けてきた。
「領地はどうだった?」
「まあ、変わらないかな。ただ、魔物が増えてきてて色々と大変だよ」
エルトがため息をつく。魔物かぁ。魔法の国でも魔物がたくさんいた。増えてきているのは本当かも知れないな。
「アイは?」
「魔法の国に行ったりテライトと一緒に狩りをしたりしたね」
「そっか。そういえば、テライトさんは節約家だったっけ」
かなりの節約家だけどね。テライトが貴族だということをたまに忘れるくらい。
「あ、エルトさんにアイさんか。久しぶりね。」
廊下の向こうからアルト先生が来た。
「アルト先生、お久しぶりです。エルフの里に行ったんですよね。」
「ええ。いい気分転換になったわ。皆の顔が見れたし。」
アルト先生が笑う。やっぱり美人だな。今思ったけど、この世界やたらと美人が多い。
「でも、どうやって行ったのですか?」
「普通に、森を通って。」
先生曰く、エルフは道を通るより森を通った方が早いらしい。純粋なエルフならば馬より早いという事だ。
「わしは、半分エルフだから、ちょっと早いだけね。」
充分早いと思います。
「凄いです」
「エルフ族の特徴なのですね」
いつか、エルフの里にも行きたいな。
「そういえば、課題ちゃんとやった?」
アルト先生がニコッと笑う。私は普通に笑ってたけど、エルトが何故か固まっているような気がする。
「ちゃんとしましたよ。」
「……」
アルト先生がエルトを見て、苦笑いをする。
「明日まで頑張れ」
エルトはUターンして、急いで部屋に帰っていった。頑張れ、エルト。
「わしもそろそろ行くね。また明日」
アルト先生も職員寮に帰っていった。
「お腹空いたな。」
いつの間にかお昼だ。私は食堂に向かう。
まだ夏休み中だけど、もう結構な人が戻ってきているから、食堂も空いている。
「あ、いた!アイ、一緒に行こう。」
「テーヌ、用事は終わったの?」
「うん」
テーヌが後ろから飛びついてきた。少しよろけたが、壁に手をつき、転倒はしなかった。
「あ、そうだ。テーヌが持ってきてた置物の水晶?が外れてたよ。」
「またか。少し目を離すと外れるんだ。」
テーヌは面倒くさそうにいった。
でも、置物は大切にしているらしい。
「まあ、後で直すよ。っとと。」
テーヌが階段につまづく。が、持ち前のバランス神経で、踏みとどまる。
「獣人の血はやっぱり入ってるんだね。」
「まあね。」
本人は特に何とも思ってない様子だ。
「そういえば、二学期から3クラス全てに武術が入るんだよ。武器なしの。どっちかというと護身術に近いかな。」
「へぇ。そんなのもあるんだ。」
「女子は軽くだけどね。1組以外」
1組は体育系だったな。2組、3組は体育重視ではないから軽くなんだろう。
「合同の時もあるの?」
「あるよ。」
大変そうだな。まあ、頑張ろう。
食堂は人は混んではいなかった。席は半分くらい埋まってるぐらい。
「アイか。久しぶりだな。」
「コルザ、久しぶり。」
コルザが食堂でうどんかな?を食べていた。私を見ると、片手を上げて声を掛けてきた。コルザの周りは数人男子が居て、奥から女子達がこちらを見ている。
男子が、私を見て目をそらしたけど、どうして?
女子は女子で、私とコルザを交互に見ている。
「アイ?」
「今行くー。」
テーヌが向こうで、私を呼ぶ。急いでテーヌの所へいく。急いだ理由は視線が居心地の悪かったのもある。
無事に席を取ることが出来た。まあ、半分空いていたから。
「やっぱり、美味しいね。」
「足りないなあ。僕、もうちょい貰ってくるよ。」
テーヌは大食らいだったな。もうちょいとか言いながら大盛りを貰ってくるし、でも太らないのが不思議だ。
「これも獣人の血なの?」
「種族にもよるけどね」
種族かあ。いくつぐらいあるんだろう。
かなりありそうだなあ。
「やること無いなあ。」
「そうだね...」
寮の部屋に戻ってきたけど、特にする事も無いのでダラダラと過ごしている。
「水晶はどうするの?」
「そうだった。僕の置物のやつ外れてたんだっけ。」
テーヌが水晶を置物に嵌める。
―――少し前に扉の前で見た少年がいる。
「本当に?」
私を見据え、苦い顔をしている。私は、少年に返す。
「ええ。これからは私の力を利用しようとする者も出てくる。だから、その前に。」
少年は、それを聞くと悲しそうな顔をした。
「記憶、無くなっちゃうよ?この世界から消えちゃうよ?」
「無くならないよ。少しの間、心の奥に仕舞われるだけ。消えるのはしばらくの間だけだから。」
「でも。」
私は、少年の頭を撫でた。
...もう少しで少年の名前が分かりそう。だけど、分からない。
「...分かった。[其方の力を六つに分け封印する]。」
「[其方は精霊の民にあらず]、」
「[其方はこの世界の者にあらず]、」
「[全ては、来たる時まで]。」
少年の口から、詠唱が響き渡る。私から出た六つの光は固まり何かを形づくる。
私が消える。完全に消える前、私は、少年の名を言った。―――
「エレウカ」
そうだ。あの少年はエレウカ。だけど、それ以外が思い出せない。
精霊の民にあらずって、この世界であったこと?なら、私はこの世界にいた?その前に、あれは私なの?
分からない。
「どうしたの?アイ」
「いや、なんでもないよ。」
私は、また謎を持った。
次から少し更新遅くなります。すみません




