26.不思議な記憶
―――ゆめ、かな。私は、一人の少女の前にいる。その子は、ずいぶん痩せているが、目には光が灯っている。その子の背中には黒い翼がはえている。
「…様。私は、ここに国を作りたいです。皆、夢物語だというけれど、…様はどう思われますか?」
名前の部分がよく聞こえない。景色がまるで、周りを見るかのように、変わる。そしてもう一度、少女に視線をあわせた。
「もし、君が国を作れば、いい国になるよ。君、いや、…はしっかりしているからね。皆が夢物語だと言っても、…が諦めなければきっと出来る。」
私であり、私でない誰かがそう少女にいった。たぶん、笑顔で。
この子は始祖の魔法の民の一人だと何故か分かった。
その子は、笑った。―――
「…不思議な夢。でも、なんだろう?懐かしいような気もする。」
私は起き上がり呟いた。シシリアはもう起きているようだ。ベッドには居ない。身支度を済ませ、ドアをあける。
「おはよう。アイ」
ちょうど、ドアの前にシシリアがいた。
「おはよう。シシリア」
シシリアと共に朝食をとりに、広間へ向かう。
ふと、少女の面影とシシリアが重なったような気がした。けれど、一瞬だったからよく分からない。
「おはよう。アイ、よく眠れた?」
テライトがもうすでに席についていた。
大きなテーブルの上には豪華な料理が並んでいる。
「おはよう。まあまあかな。」
テライトに挨拶を返し、席につこうとしたけど、どこに座ればいいのかが分からない。そのまま、おろおろしているとシシリアが私の袖を引っ張って隣へ座らせた。
「....昨日でだいぶ仲良くなられたようで。」
テライトがシシリアに向けた言葉に、何故か少し皮肉が混じっているような気がした。シシリアは平然と料理を口に運んでいる。テライトはその様子を見てため息をつき、料理に手をつける。
「アイも食べなさい?美味しいわよ?」
テライトを完全に無視している。
朝食を終え、服を着替える。着替えの服はテライトからもらい、シシリアと一緒に部屋にいく。シシリアは軍服っぽい服に、私はワンピースに着替えた。
「シシリアは服ってなんて言うの?。この国では珍しいものだけど。」
魔法の国では、軍服は見かけなかった。だから、不思議に思い、聞いてみた。
「ああ。これ?これはミリタリーファッションの物なの。けっこう高価だから持ってる人は少ないのよね。前世でも憧れてたのよね。」
単に値段の問題だった。あと、シシリアが軍服が好きなのも要因の一つだろう。女王が好きなデザインだから。
「話変わるけど、シシリア。この国の初代の王は女性?」
ふと、夢の内容が気になった。あれは、ただの夢にしてはとても現実味があった。
「ええ。初代の王は女性という史実は残ってはいるわ。だけど、本当か分からない。かなり古い記録だからね。ちなみに、今の魔法の民と外見がちょっと違ったらしいけどね。」
初代の、女王。夢の中の女の子。何となく、同一人物のような気がするけど、何故私はそんな夢を見たのだろう?
「一晩泊めて頂き、ありがとうございました。では、また。」
シシリア様に挨拶を済ませ、城を出ようとした。
「どうせ、まだこの国に居るんだろう?二、三日は構わないぞ?」
シシリアはこちらの行動を分かっていたようだ。テライトを見ると固まっている。シシリアの口調が戻っている。
「し、しかし、王がお帰りになるのでは?」
「ああ、構わない。夫はそういう質だ。知っているだろう?」
テライトが慌てて言うと、シシリアはそれをばっさり斬った。テライトはため息をつき、シシリアは笑った。
「泊まれ。」
強制的にまた城に泊まることになった。
「かなり個性的な方でしたね。兄様。」
ここからは兄弟ごっこの始まりだ。城ではシシリアに見抜かれてしまったが。
リリアさんは、帰るときに声をかける。
「さすが、メイトの従姉妹だよ。」
テライトは疲れたように肩をすくめた。
「わぁ、あれは何でしょう?」
大きなバルーンのような物が飛んでいる。カラフル。
「ああ、あれは移動用の物だな。精霊の国でいうと、馬車とかと同じ用途で使ってある。でも、あれは観光的な意味もあるから遅いよ。」
テライトがバルーンのようなものを見ながら説明をする。
「乗ってみる?」
テライトがこちらを向き、そう言った。
「はい!」




