20.久しぶりの人達
転入して3ヶ月がすぎ、もとの世界でいう夏休みに入った。
あの不思議な映像のことはまだほぼ分かっていない。アルト先生は、一度故郷に帰るそうだ。エルフの街ってどんなところだろう。私は一度、テライトの家に帰る。だから荷物をまとめて、送りを頼もうとした。
「何で、いるの?」
数百メートルさきにテライトの馬車とテライトが見えた。テライトはこちらに気付くと馬車になにか指示をし、こちらに小走りで走ってきた。この世界小走り流行ってるの?
「3ヶ月お疲れ様。アイ、学校どうだった?苛められたりしてない?」
テライトがとても心配そうに私に聞く。前にもまして過保護になってません?
「心配ないよ。クラスにもなれたし、友達も結構できた。だから、何で泣くの?」
いきなり泣き出してしまったテライトの背中をポンポンとたたく。そうしたらもっとテライトが泣いてしまった。何で?誰か説明お願いします。
「あ、テライトさんじゃん。久しぶりです。」
コルザがテライトを見つけ、話しかけてきた。テライトは涙を拭き、コルザに挨拶をした。
「コルザ殿、お久し振りです。」
テライトはかしこまって礼をした。コルザは笑い、手を軽く振った。
「テライトさん、気軽でいいよ。俺の弓の先生だし。」
初めて聞いたぞ、それ。同級生にいるなら教えてよ。
「はははっ。相変わらず変わらないね。コルザ。」
早いな。砕けるの。目が笑ってないね。どうしたんだろう。
「じゃ、帰ろうか。」
テライトがこちらに手を差し出しながらいう。とりあえず、恥ずかしいので、手をとらずに馬車に乗り込む。テライトがショックを受けたような顔をしたが、場所を考えろと思う。
....で、なぜメイト様とコルザが先に乗ってるんだい?
「やあ、久しぶりだな、アイ。うちの弟が世話になっている。」
メイト様がにやにや笑いながらいう。コルザがあわてて、世話になってねぇし、とか言っているが、メイト様はますますにやにやにやするだけだ。........って、私も関係あるよね!?
「いえ、世話になってはいないですけれど、お久し振りです。」
多分メイト様の中では世話になる=恋人という式ができていると思う。うん。
「なんだ、そうなのか。残念。」
にやにやしながら言わないでください。何か怖いです。
「って、いつの間に乗ってるんだ!?メイト!」
テライトが入ってきた。テライトも知らなかったらしい。この王様、やんちゃだなあ。
「今さっき。」
「今さっきの間に!?メイト、無駄にそんな熟練の技を使わないでくれ!」
あ、やっぱり身体能力高いのか。メイト様。
「兄上....。」
やれやれというように見ているコルザ。言っとくが、君も同じことやってるからね?
「コルザも同罪。」
「なんで!?」
王族兄弟似てるなあ。
「いや、久々にテライトの家に行きたかっただけだ。」
メイト様、ノリが軽い。これで良いのか王様。何かこの世界に来てから心で突っ込むことが多くなった気がする。
「俺は、テライトさんと模擬戦を!」
コルザが目をキラキラさせて、訴えている。テライトはしばらく唸った後、ため息をついた。
「それは構わないが、特に何も出せないぞ。」
「別にいい。買ってるから。」
メイト様が、袋からお菓子のようなものを取り出す。王様のイメージが台無しだ。
「はあ!」
「まだ甘い!」
庭で、テライトとコルザが木刀で打ち合っている。二人とも武器の適正は剣ではないが、かなりの使い手だ。
「アイ、君は精霊に好かれているのかい?」
メイト様が、こちらに来て、私に訊ねた。
「分からないです。どうしてそれを聞くのですか?」
すると、メイトは驚いたようにこちらを見て言った。
「君には精霊が見えないのかい?」
「見えるのですか?」
メイト様は手をなにかに差し出すように前に出した。
「見えるよ。王族は代々見えるんだ。コルザも見えているはずだよ。そっか、見えないのか。その髪色、目の色は王族より濃いから見えてると思ってた。」
なるほど。でも、残念ながら私はここの世界の生まれではない。
「そうなのですか。」
できるなら、私も精霊みたいなあ。
「でもどうして、アイの周りにはそんなに精霊がいるんだろうね?」
「え?そんなに居るのですか?」
私には精霊達が見えないのに何故?
「うん。」
また、謎が増えるばかりであった。




