13.集団宿泊①
「いよいよ、出発ですよ。」
アルト先生が言う。
ちなみに、私たちが乗っているのは、馬車の少し大きいもので、
バスに近いかもしれない。
「クロノの街まで、一時間近くかかるけど、トイレとか大丈夫?」
多分大丈夫だと思うけどな。皆、トイレ殺到してたし。
こういうところはもとの世界と同じだな。
「出発ーー!」
『おー!』
馬車に揺られながら、外を見てみる。
緑の景色が流れていく。たまに、他の馬車とすれ違う。
向こうで、馬に乗っている人がいる。騎士さんかな?
訓練場っぽいところも通りすぎた。
狼っぽい生き物が寝てる。狼にしてはでかい。
「綺麗でしょう。」
「!?....エルトか、驚かさないでよ。」
いきなり話し掛けられたから驚いた。
「あはは、ごめん。そういうつもりは無かったんだけど。」
悪びれもせずにエルトはいった。今はエルトの隣に座っている。
そういうつもりあっただろうと疑い目を向けると、エルトは目をそらした。
「まぁ、いいけど。確かに綺麗だね。」
「それは良かった。」
「眠い....」
馬車に揺られ続けて30分ぐらいたった。
回りの子は、寝てたりトランプしてたりしてる。
エルトは....うん、寝てるな。
「アイ、ちょっと白龍の鱗貸してよ。」
前から声がしたと思ったらコルザだった。
「何するの?」
「ちょっとね、確かめたいことがあるんだ。」
確かめたいこと?
「白龍の鱗は、術を弾くということが云われてるんだ。」
初耳。何か興味深いな。
「壊さないなら、いいよ。」
「ありがとう。」
「"世界に満ちる精霊達よ。少しの火を鱗に当てよ"」
ボウッ。
ちっちゃい火が鱗に当たる。
火はすぐに消えたけど、わずかに弾かれたような動きをした。
「本当に弾いたね。」
「うん。返す、ありがとう。」
まあ、新しいことが分かった。
コルザはなにかをメモして、もとの席に帰っていった。
眠いからもう寝よう。
エルトに寄りかかって、目をつぶった。
「アイ、到着したよ。」
むにむに。
「ん?」
目に開けると、エルトが起きていた。
頬をむにむにされている。私が。
「ああ、もう着いたのか。ここがクロノの街?」
「そうだよ、じゃあ降りよう。」
馬車から降りると、目の前には門があった。門番もいる。
回りは森だ。
「シルフェル学園の人達ですね。確認しました。お入りください。」
門をくぐり、街にはいる。
街は森と共存しているようだ。
建物は石で出来ており、つた等が繁ったものもあれば、
木の上に建物があったり、建物の中心を木が通っているものもある。
「すごい」
思わず呟く。
私の他に、初めて来た子は景色に見入っている。
「クロノの街へようこそ。」
兵士さんたちが穏やかに笑った。
「ここが泊まる宿だよ。ペアを組んで、部屋を決めてね。」
どうやら、宿は貸し切りらしい。
私は、エルトと組む。
「どこにしようか。」
エルトは、部屋の場所を地図で見ながら悩んでいる。
「アイさん、エルトさん場所は決まった?」
アルト先生がやって来た。
「あとは、君たちだけだよ。ここの5部屋余ってるけど。何処にする?」
場所を確認する。
「なら、この部屋で。」
選んだ部屋は3階にあり、階段が近い。そして、窓が街の方を向いているので、街を眺めることが出来る。
部屋の名前がないのでちょっと不便だ。
「分かった。鍵は部屋にあるよ。二十分したら、ここにきて。」
「分かりました。ありがとうございます。」
荷物をもって、三階に上がる。
エルトは少しキツそうだが、大丈夫そうだ。
部屋に着き、荷物を下ろす。
まだ、時間はあるからエルトと喋りながら時間を潰す。
喋っていたら、エルトが私の髪で遊び始めたから、逃げる。
追いかけられる。
「"世界に満ちる精霊達よ。この者を縛れ"」
不可視の縄でエルトを止めて、動けなくする。
その間に、髪を整える。
「解除。」
「精霊術で縛んなくてもいいじゃん。」
ちょっと拗ねたようにエルトがいう。
「そうしないと、止まらなかったでしょう。エルト。」
溜め息をこぼしながらいうと、エルトは、ニコッと笑って
「ばれてたか。」
という。目で分かるわ、エルトが考えてること。
「もうそろそろ時間だね。いこうか。」
「揃ったね。じゃあ《ミュウの箱庭》に行くよ。」
ミュウの箱庭とは、クロノの街の中にある公園だ。
公園といっても、草原のようなところだ。
「ミュウの箱庭で何をするのですか?」
「ん?鬼ごっこ。」
鬼ごっこ?




