↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「平民は愛されない」はずなのに、雲の上の第一王子様から溺愛されています!?  作者: 東明時裕夜
第二章 レレナのお茶会と、高貴なもの達との出会い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/68

幕間11 メイド長と従者の茶飲み話

 リリアーナたちがいるお茶会へ茶菓子の給仕を終えたナットは、王城の一階南側にある使用人区画――その廊下の左手にある休憩室で、一人のメイドと共にお茶を飲んで息をついていた。


「ふぅ……」

  「かなりお疲れのようですね、ナット様」


 ナットは深いため息をつきながら、休憩室の真ん中にある四角いテーブルに座って、白いカップを片手に温かいお茶を口にした。彼の後ろにある小窓からは柔らかな光が差し込み、その背中を静かに照らし出している。


 そんな彼の姿を隣の椅子から心配そうに見つめ、一緒にお茶を飲んでいるのは、この王城のメイド長兼料理人を務める女性――茶髪をすっきりとまとめ、茶色の瞳を持つ白と黒のメイド服を着た四十代前半のシャークリ・リズールであった。


「まぁ、色々あったからね」


 彼が言う『色々』とは、ナセド殿下の動向調査に始まり、リリアーナ様の付き添いで赴いた城下町のレストランでの一件、そして先ほどのお茶会で追及された『金貨騒動』のことである。


「色々ですか? もしかして、リリアーナ王女様の件ですか?」

  「そうだよ、シャークリメイド長」


 シャークリメイド長は、ナットにとって二年間一緒に働いてきた頼もしい仲間である。そのため、リリアーナ様がこれまで起こしてきた騒動のことも、彼女はある程度知っていたのだ。


「そうですか。しかし、まさかこの王城にあんな美しい平民の娘がやってくるとは思いませんでしたよ。他のメイドたちも、『あれは誰だ』と騒いでいましたし……」


 驚きを口にしながらお茶のカップをテーブルに置いたシャークリに、ナットは「まぁ、あんなに綺麗なドレス姿で現れたら、誰だって驚くよな」と深く納得しながら言葉を返した。


「そうですね。でも……ナセド殿下は、あの平民の娘さんに惚れているのでしょうか? 相手の方も、殿下に?」


 ナセド殿下とレレナがお互いに想い合っているのか、というシャークリの鋭い指摘に対し、ナットは手にしたお茶を一口飲んでカップを置くと、はっきりと答えた。


「あぁ、間違いないね。僕の見立てでは、どちらも惚れてるよ」


「なるほど。しかし相手は平民……決して結ばれることはないと、私は感じていますが」


「まぁ、そうだろうね。しかし、それを破って恋をしている。……それはそれで、面白いと思わないか?」


 身分差という正論を口にするシャークリに対し、ナットは、薄い笑みを浮かべて頭の後ろで両手を組んで椅子の背もたれに寄りかかりながら、彼女を見据えてそう言った。


「はぁ、そうですか」


 シャークリが呆れた顔で呟くと、ナットは組んでいた手をほどいて姿勢を正し、再びティーカップを手に取った。そして、浮かべていた薄い笑みをスッと消し、真顔になって口を開く。


「だが、殿下の恋がどこまで行くかはわからない。とりあえず今は、流れに身を任せて見守るだけだと僕は思うよ、シャークリメイド長」

「そうですね、ナット様」


 静かに成り行きを見守ることにした二人。すると、ナットは何かを思い出したかのように、金髪の少女の顔を思い浮かべながら呟いた。


「それと……先ほど茶菓子を持っていった時、リリアーナ様はあの平民の娘のことを、ちゃんと名前で呼んでいたんだ」


「えっ、そうなんですか、ナット様!? 平民を毛嫌いなさっているあの王女様が、その平民の娘を名前で……!?」


 シャークリは信じられないといった様子で大きく目を見開いた。普段からリリアーナ様の行動や性格をよく知る彼女が、ここまで驚くのも無理はない。


「あぁ、そうだ。レストランの時はずっと『平民の娘』と呼んでいたからね。レレナが名乗った時も、あの子は素直じゃないから小声で名前を褒めるくらいだったんだ。けれど……今はしっかりと、彼女のことを名前で呼んでいたよ」

「そうなのですね、王女様は……」


 驚きと共に深く納得するシャークリ。ナットは面白そうに目を細めながら、また天井を見上げた。


「しかし、相変わらずリリアーナ様はお美しい」

「はぁ、ナット様。まだ、王女様のこと好きなのですか?」


 シャークリのさらなる指摘に、ナットは悪戯っぽい笑みを浮かべて答える。彼女はナットがリリアーナ様に恋していることを知る、数少ない仲間だ。それでも、何度聞いても不思議に思ってしまうのだ——あの気位の高い王女様の、どこにそこまで惹かれるのかと。


「あぁ、もう二年も仕えてるからね。まぁ、リリアーナ様はまったく気づいてないけど。……でもいいんだ。今はそれで」


 そう呟くと、ナットは穏やかな笑みのままお茶を飲み干した。すると、シャークリは呆れた顔でこう続けた。


「はぁ、でも、物好きですよね。あんなわがまま王女様に。あなた様がリリアーナ様にこき使われているのを知っています。嫌だと思わないのですか?」

「思わないね。だって、こういうのが好きなのさ……。じゃあ、僕はもう行くよ」


「そうですか、わかりました」


 ナットは優しい笑みを崩さずに立ち上がり、シャークリにそう告げて、自分の部屋へと戻っていったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。