幕間7 ナセドとリリアーナ
数時間後、夕暮れになる前のこと。閉ざされた王城の北門にたどり着いたナセドは、衛兵に大きくて重厚な門を開けてもらい中へと入った。
衛兵たちから敬礼を受けながら進もうとすると、何故かそこには、胸を張って待ち伏せをしているレーナ・アベット公爵令嬢の姿があった。
ナセドが城に帰還する時間を常に把握していた彼女は、平民の娘の件を切り出し、さりげなくお茶会への参加を申し出るなら「彼が一人になる今しかない」と思い至り、こうして待ち伏せていたのだ。
「ナセド殿下……」
「レーナ。何故、君がこんな時間にここにいる? リリアーナや令嬢たちのお茶会は終わっているはずだろう」
ナセドが険しい表情を向けたのには理由があった。今はもう夕暮れ前であり、いつもならリリアーナが適当に相手をして、てっきり彼女は自分の屋敷へ帰ったものと思っていたからだ。
レーナはゆっくりとナセドに近づき、自身のドレスの胸元に忍ばせていた青い扇子を左手で取り出すと、パチンと開いて口元に当てた。
「はい。確かにリリアーナ様たちのお茶会は終わりました。しかし、あなた様に一つ、お話ししたいことがありまして」
「ん? 何だ?」
ナセドは険しい顔の中にも不思議そうな色を浮かべ、その青い瞳で、射抜くように鋭い視線を彼女へと向けた。
「実はですね、あなたが私や他の令嬢たちに内緒で、お茶会を決行しようとしているという風の噂を……どこからともなく小耳に挟みましてね」
「何?」
レーナの突拍子もない発言を聞き、ナセドは驚いて目を細めた。すると彼女は薄い笑みを浮かべ、その黒く輝く瞳でナセドを見つめながら、「はい、殿下」と静かに頷いた。
その言葉にナセドは深いため息をつき、すぐさま誤魔化しを図ろうとした。しかし、リカードとの会話を立ち聞きしてすべてを知っている彼女に、そんな嘘が通用するはずもなかった。
「はぁ……。どこで聞いたかは知らんが、確かに君たちに内緒でお茶会を開こうとしていた事実は認めよう。しかし、それはリリアーナや母上と行う、ただの家族水入らずの茶会だ」
(嘘ですわ、殿下。私、全部知っておりますわよ。あなたが平民の娘を誘おうとしていることなんて……。でも、そうやって不器用な嘘をつくところも、少し可愛らしいですわね)
心の中でそう微笑みながら、レーナは白銀のドレスの大胆なスリットから薄い水色のヒールを覗かせて、一歩前へと歩み出た。
そして、扇子の奥で口元を緩ませて笑い声を漏らすと、さらに彼に近づき、開いていた扇子をパチンと閉じてナセドに向け、甘く囁くように告げた。
「ふふっ……殿下は、嘘がお下手ですね」
「うっ、嘘など……っ」
微笑み続けるレーナの大胆な誘惑に若干の動揺を見せたナセドは、なんとか誤魔化すように首を横に振り、努めて毅然とした態度をとった。
「ふふふ、強がる必要はありませんわ。私、知っておりますわよ。毎回、城下町へ出向いていることを……」
「知っている? というか、何故、そんな話をする?」
鋭く睨みつけるようにナセドが問い詰めると、彼女は笑みを崩さず、言葉を続けた。
「なんとなくです。な・ん・と・な・く」
一瞬、そのペースに呑まれそうになったナセドだったが、ハッとして表情を引き締めた。城下町への移動ならともかく、極秘に進めていたお茶会のことまで彼女の耳に入っているという事実が、どうしても引っかかったのだ。
ナセドは強引に話を元へと戻す。
「……いや、『なんとなく』じゃない。さっきのことだ。リリアーナにでも聞いたのか?」
レーナは閉じた扇子を、自身の口元へと軽く当てた。
「いいえ、ただ城の者から聞いただけですわ」
「そうか……。だが、君が思っているようなことは何もない。ただの気晴らしだ」
「ただの気晴らし……ですって? 嘘ね、私にはわかるわ。そこに『女』がいるのでしょう?」
レーナから鋭い指摘を受けると、ナセドは必死に平静を装いながら、「ち、違う。さっきも言ったようにただの気晴らしだ」と嘘をつき通そうとする。
しかし、レーナは口元に当てていた扇子を再び彼へと突きつけ、容赦なく畳み掛けてきた。
「ふふっ、そこまでただの気晴らしだと言うのなら、私もお邪魔しようかしら。あなたのその……お・ちゃ・か・い・に」
「くっ……」
優雅に微笑みながらも、一言ずつはっきりと区切って凄みを見せるレーナの気迫に押され、ナセドは再び深くため息をついた。
それは完全に観念した顔だった。ここで断っても、彼女のことだ、必ず当日になって押しかけてくるに違いない。さらに、「何故ついてくるんだ」と問い詰めても無駄だろうと悟ったナセドは、仕方なさそうに口を開いた。
「はぁ……わかった。だが、さっきの言葉を一つ訂正しておこう。君に家族水入らずと言ったが、あれは嘘だ。その日、まだ名は明かせないが、大切な客人が来ることになっている。だから、その客人とお茶をするんだ」
真面目な顔のまま、ナセドは平民の娘であるレレナのことを『客人』と呼んだ。彼なりの苦しい言い換えであったが、すべてを知っているレーナは、ふふふと余裕の笑みを浮かべた。
(全く、殿下はまだ嘘をつき通そうとするのですね。……そういう不器用なところが、憎めませんのよ)
「大切な客人……ですのね」
「あぁ。だから、妃候補の君や他の令嬢たちを誘いたくはなかったんだが、君に知られてしまったからには仕方がない。来てもいい……だが、その客人を虐げようとするなよ」
「はい、わかっていますとも。この高貴な公爵令嬢が、その方を虐げようとするなんてありえませんわ」
(ええ、ありえませんわ。平民の女を見下したりはしますけれどね。でも、そのお茶会で見せつけてあげるわ。私が、その平民の娘よりもずっといい女だと。ナセド殿下に、あんな決意などさせないくらいにね)
ナセドからの手厳しい釘刺しにも全く動じることなく、レーナは心の中で平民の娘に対する激しい闘志を燃え上がらせていた。
しかし表面上は、完璧な淑女の微笑みを微塵も崩さない。彼女は手元の青い扇子をスッとドレスの胸元へ仕舞い込むと、艶やかに告げた。
「それでは、私はこれで失礼いたしますわ。また三日後に……お会いしましょうね、ナセド殿下」
優雅に言い残すと、レーナはくるりとドレスを揺らして背を向けた。そして、敬礼する衛兵たちの間を通り抜けて北門を潜ると、貴族街のある方角へとコツコツと小気味よいヒールの音を響かせながら、一切の隙のない足取りで帰っていくのだった。
「はぁ、結局、レーナも来るのか?まぁ、お茶会の日にちすらわかっていたのだしな。しかし……いや、大丈夫だ、俺がいる」
再びため息をついたナセドだったが、レレナのことを思い出し、ギュッと左手の拳を握りしめた。何があっても彼女を守り抜く――それは、彼にとって決して揺るがない決意であった。
「とりあえず、とんだ足止めを食ったが……早いところあいつの部屋へ行くか」
レーナとの一悶着から気を取り直したナセドは、南側にある二階へ通じる階段を上がっていき、とある部屋の前に立った。
そこは、ナセドの母であるフィオネ王妃の私室のすぐ隣——王妃と同じように鉱石でできた四角いネームプレートに『リリアーナ』と刻まれた、茶色の扉の前であった。
怒りと呆れが入り混じった表情を浮かべたナセドは、ため息をつきながら、コンコンと扉をノックした。
すると、扉の向こうから、部屋でもう一人の人物とお茶をしているリリアーナの声が聞こえてきた。
「誰かしら?」
「私だ。リリアーナ」
「お兄様ね。入っていいですわよ」
「あぁ、入るぞ」
リリアーナの返事を聞き、ナセドは茶色の扉のドアノブに手をかけて、ガチャリと開けた。そこはフィオネ王妃の私室とは、少し違う部屋である。
ナセドから見て、左側にはベッドが置かれている。そして右側の壁には、王城の外の景色が一望できる扉と同じくらいの高さのガラス張りの窓と、その左隣にリリアーナが愛用している豪華な机が配置されていた。
また、ベッドの反対側には、フィオネの部屋にあるのと同じ四角い台に乗ったランプが部屋を暖かく照らし、そのすぐ横には、リリアーナの私服などが収められたクローゼットと本棚が並んでいる。
そして部屋の中央には丸テーブルが置かれており、そこには白地に青の模様があしらわれたティーポットが用意されていた。城の従者が淹れたものかはわからないが、ポットと同じ柄のティーカップには、温かい紅茶が注がれている。
そのテーブルを囲んで優雅にお茶を飲んでいたのは、白と黄色を基調としたお揃いの柄のドレスを着た、二人の金髪の女性であった。
一人は、普段、公務で着ている群青のドレスではなく、娘のリリアーナに合わせたドレスを着たナセドの母、フィオネ王妃。
そしてもう一人は、先日レレナに暴言を吐いた張本人、リリアーナ王女であった。
「母上……? いらしたのですか」
妹に説教をしに来たナセドだったが、部屋に思わぬ珍客である母の姿があり、僅かに目を丸くした。それでも努めて真面目な顔を崩さずに尋ねると、フィオネは片手に持ったティーカップの紅茶を優雅に一口飲んでから、ふんわりと微笑んだ。
「あら、ナセド。いらっしゃい。あなたが妹の部屋に来るなんて珍しいわね」
「そうですわね。お母様」
不思議そうな顔でこちらを見る母と妹に対し、ナセドはフンと短く息を吐いた。そして厳しい表情を崩さぬまま、部屋の中へと数歩足を進める。
(リリアーナと二人だけで話すつもりだったが、母上がいるなら仕方ない。母上にも聞いてもらうとしよう)
心の中でそう呟き、諦めをつけながらも、険しい顔でナセドは優雅にティーカップを傾けているリリアーナへ鋭い視線を向け、低い声で問い詰めた。
「リリアーナ、お前……。俺に黙って、従者のナットと一緒に平民の娘が働くレストランに行ったな?」
「あれ?もうバレてしまいましたの?」
リリアーナは全く悪びれる様子もなく、平然とした態度でそう返した。すると、横でお茶を飲みながら笑みを浮かべていたフィオネが、おもむろに口を開いた。
「へぇ、リリアーナ。この前、城にいないと思ったら、ナットと一緒に平民の娘に会いに行ったのね」
「えぇ、そうですわ、お母様……」
母からの追及に対しても、リリアーナは平然とした態度を崩さない。しかし、フィオネはそれ以上何も言わなかった。リリアーナが口は悪くとも本当は優しい子であり、決して本気で意地悪をするわけではないと分かっているし、実直な従者のナットが一緒なら、大それた真似はしないだろうと考えているからだ。
だが、愛する彼女を侮辱されたと感じているナセドは、そう簡単に引き下がるわけにはいかなかった。彼は険しい表情のまま、さらに言葉を畳み掛ける。しかし、その途中で思わぬ照れ隠しを覗かせた。
「そこのレストランの主から聞いたぞ。店内で騒いだ上に、そっ、その……レレナに、暴言を吐いたとか」
彼女の名前を口にしたナセドは、少し照れて視線を泳がせつつも、すぐにいつもの冷静な態度を取り戻した。そして険しい顔を崩さず、再びリリアーナを睨みつけた。
「リリアーナ……」
それを聞いたフィオネは、冷めた表情をリリアーナに向けた。だがそれと同時に、ナセド自身が一つのミスを犯していることに気づいていなかった。以前、彼はフィオネに平民の娘の名前を『秘密だ』と言っていたにもかかわらず、うっかり口を滑らせてしまったのだ。
そのことにいち早く気づいたフィオネは、リリアーナを冷ややかに見据えつつも、照れながら名前を呼んだ息子の姿に、内心で少しだけ口元を緩めた。
(……あらあら、ナセドったら。この前は名前を秘密だと言っていたのに、あの子が暴言を吐かれたのが許せなくて、つい言っちゃったのね。ナットが止めきれなかったのかは知らないけれど、それにしても、この前リリアーナには意地悪しないようにと釘を刺したばかりだというのに……)
そう心の中で呟いたフィオネは、ティーカップをコトリと丸テーブルに置いた。
「リリアーナ。あなた、この前『平民の娘がお茶会に来ても意地悪はしない』と言ったわよね。それなのに勝手な行動をして、あの子が働くレストランを騒がせたことには目を瞑ってあげようかと思いましたけれど、さすがに暴言はいけませんわよ」
「ち、違いますわ、お母様。私はただ、お兄様が毎日通っているレストランで働く平民の娘が気になっただけですもの。それに、暴言とは失礼ですわ。私はただ、可愛くないと言っただけです。お兄様もレストランの方から聞いていると思いますけれど、私はあの後ちゃんと謝りましたわよ。ナットに促されて……」
平然を装っていたリリアーナだったが、フィオネの鋭い指摘に少し戸惑いつつも、真面目な顔で兄と母へ説明を返した。
「なるほど、ちゃんと謝ったのね」
リリアーナの言葉を聞いて納得したフィオネは、冷めた表情を和らげた。だが、ナセドはそうはいかず、横から口を挟んだ。
「それは聞いている。しかし、『可愛くない』と彼女に言うのは少しひどいと思うぞ」
ナセドがレレナに暴言を吐いたことについて強く文句を言うと、リリアーナは少し頬を膨らませ、反論した。
「ひどい? 本当のことじゃない」
「本当のことだと? あんなに……」
『可愛いのに』と言おうとしたナセドは、ハッとして言葉を詰まらせた。それを見たリリアーナは目を丸くし、横では『あらあら』とフィオネがニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「お兄様……。まぁ、でも、いい名前ですし、少しは可愛いと認めてあげなくもないですけど」
そしらぬ顔で、リリアーナは最後だけナセドに聞こえないよう小声で呟いた。それは、素直になれない彼女なりの本音だった。
「ん? 今、何か言ったか?」
当然、彼には聞こえておらず、そう尋ねられると、リリアーナは少しだけ頬を熱くさせ、瞬時に胸元へしまっていたいつものピンク色の扇子を左手で取り出し、パチンと開いて口元を隠した。
「いいえ、なんでもないですわ」
その姿を見たフィオネは面白そうな顔で、素直じゃないリリアーナと、『可愛い』と最後まで口に出せないナセドの二人の会話を聞いて、心の中で呟いた。
(……ふふふ、リリアーナったら。その子を少し認めているじゃないの。あんな照れ隠しをして、我ながら可愛い娘だこと。でも、リリアーナが認めるほどの平民の娘か。会うのが楽しみになってきたわ。あと、ナセドはレレナのことを可愛いと言いかけたわね。やっぱり、私が思っていた通り、ドロドロに溶かされているのね)
「とっ、ともかくだ。どうせリリアーナも、お茶会には母上と一緒に参加するのだろう? だが、絶対に余計なことはするなよ。もし何かしたら、俺は許さないからな」
ナセドは強引に話を戻し、真面目な顔のままリリアーナにそう忠告した。すると、彼女は持っていた扇子を閉じ、威厳を保ちつつも、少しゾクッとするような薄笑いを浮かべた。
「……えぇ、わかっていますわ。お兄様。でも、この前はたまたま口が滑っただけですからね」
と、ありえない言い訳を続けるリリアーナに対し、ナセドはこれ以上何も言わず、「わかった」と一言だけ返すと、再びフィオネの方へと視線を向けた。
「あと母上。先ほど北門でレーナに捕まりまして……その、どこで気づいたのかは知りませんが、お茶会のことがバレました」
「あら、そうなのね。さすがは強引さが売りで、勘の鋭い妃候補だこと」
カップに入った紅茶の香りを楽しみながら、レーナへの感想を漏らすフィオネに、ナセドは眉間に皺を寄せ、困ったような、それでいて真面目な顔つきを浮かべた。
「はぁ、そんな変な褒め方しないでください」
すると、ナセドとフィオネの様子を見ていたリリアーナが、すかさず開いた扇子で扇ぎながら、興味深そうな顔で口を挟んだ。
「なるほど。お兄様、レーナに隠してお茶会をしようとしていたのですね」
「そうだが、お前はこの前、そこは聞いていなかったのか?」
その真面目な兄の問いかけに、リリアーナはからかい混じりに、そう答え返した。
「えぇ、もちろん聞いていましたわ。平民の娘を誘うところまで、ね」
そう区切りながら返すリリアーナに、ナセドは納得したように、短く「そうか」と返した。
二人の少しばかりの会話が終わると同時に、フィオネは静かに、彼を試すような視線をナセドへと向けた。
「……それで、ナセド。彼女が来ることが決まってしまったけれど、対応は考えてあるのかしら。私も援護はしてあげられるけれど」
「その点に関しては、これから考える予定です。それに、あの子が気づかないように守るつもりですから」
母の問いに対し、迷いなく覚悟を告げたナセド。彼はまた脳裏に、いつもレストランで働く桃色の髪の娘の笑顔を浮かべているようだった。
「お兄様……」
兄のあまりにも覚悟の決まった顔つきを見たリリアーナは、思わず扇子を下げてその横顔を見つめた。それはこれまで妹として見たことのない、一人の男としての顔だった。
そして、ナセドの言葉に納得したフィオネは、「なるほど、わかったわ。ナセド」と、静かに言葉を返した。
「じゃあ、俺はこれで。父上にも報告しないといけないので」
「えぇ、行ってらっしゃい、ナセド」
短く言葉を交わし、笑顔で見送る母に軽く頭を下げると、ナセドは静かに部屋を後にした。
再び二人きりになった室内。するとフィオネは、ティーカップのお茶を一口飲んだ後、ゆっくりと立ち上がり、座っている娘へ怖い顔で詰め寄った。
「リリアーナ……」
「はい、なんでしょうか、お母様」
「あなたってほんと、素直じゃないわね。まぁ、そういうとこ、私に似ているからいいけど」
その言葉を聞いたリリアーナは、「そ、そんなことありませんわ」と、また少し頬を熱くさせ、必死に誤魔化した。
だが、フィオネにはわかっていた。自分の娘なのだから。そして、フィオネはふふふと笑い、「次のお茶会で会うときは、いじめるのは大概にね。もう一回、約束よ」と怖い顔で念を押した。
すると彼女は、しゅんとなりながらも威厳を崩さず、「はい、わかりました。お母様」と言った。
そして、そう約束させた後、フィオネは自分の部屋へと戻り、一人になったリリアーナはお茶を飲みながら、少し恐怖を感じた顔で天井を見上げ、それからスッと真面目な表情を浮かべた。
「はぁ、今のお母様、少し怖かった。でも、お兄様があんな顔をするなんて初めて見たわ。けど、相手は平民。住む世界が違う。それでも、お兄様はあの子が好きなのね。とりあえず、お茶会はしっかりしないといけませんわね」
そう独り言を呟くリリアーナ。一方、ナセドにとっては、妹への説教やレーナとの一悶着があり、おまけに愛するレレナともすれ違ってしまうという、なんとも慌ただしい一日が終わった。




