四百十話
此処は何処だ? なんて道に迷った訳では無い。場所が解らないだけだ。
村への帰路ならばマッピングされているからな。当然そっちの意味で迷う事は無い。無いのだが真面目に現在地がどこなのか解らない。
さて、どうしようか? と思っていたんだけど、どうやら天は俺達に味方をした様だ。
「と、そんな風に感じてたんだけど、どうやら目の前に街らしき跡地発見だな」
「問題は、住民の有無にモンスターが占領して居ないかどうかだね」
「ミャン!」
「イオちゃんが「臭いは感じない」って言ってるの」
ふむ、イオの嗅覚にヒットするモノは居ないという事か。
ただ、何も無いという事は当然だけど人も外には居ないという事だ。
「とりあえず、周囲から少しずつチェックだな」
「二手に分かれて調査する?」
「いや、此処は安全重視で纏まって行動しよう。確かに分かれた方が効率は良いけど、別に急ぐような事でも無いしな」
救助の必要がある人が多数居るのであれば、効率を考えて分かれた方が良いけどね。
此処では誰かが襲われている訳でも無いし、崩壊している街に生命反応が有る訳でも無いから自分達の安全第一だ。
「何時もの編隊で行こうか。風は空から、イオと双葉が前衛で俺が一番後ろ。美咲さんは中央でそれぞれのフォローよろしく」
ダンジョンアタック時の基本編隊。これが一番俺達にとって安定しているから、こういう場所でも使えると言う訳だ。
という訳で、発見した街の跡地を隈なく探索と行きますか。
探索を開始して数時間。はっきり言おう、間違いなくここはゴーストタウンだ。
いや、モンスターのゴーストの事では無く、街に誰も何もいないという意味でのゴースト。
「使えそうなものは……特にない感じ?」
「食料品は当然だけど全滅、製造品に関しても研究所で良いのが作れるから必要無いかな」
「工具とかもあるけど……持って帰る必要は無さそうだよね」
戦車などを大量に作ろうと思ったら鉄などの物資は足らないと言えるけど、それでも必要なのは魔鉄やらミスリルといったファンタジー鉱石だ。
今更、魔力の魔の字も含まない鉄製品など必要とは言えないし、ダンジョンから手に入れた鉄製品を鋳つぶしている訳だから、鉄だけで考えれば十分量は有るんだよな。……随分と資源が豊富になったもんだ。
「この場所を拠点にする前提でだけど、持ち帰るよりも残しておいて此処で使う方が良いと思う」
「あー……拠点も必要だよね」
ある程度建物は残っているからな。壁を造って建物を補強しておけば、即席とは言え随分と良い拠点にはなる。……まぁ、その際ひと様の家だった場所を使うかどうかは悩ましい処だが、うん、俺としては気分的に良しとしないので、何か別の建物にしたい。
「とりあえず、見つけた建物でいうとだ……民家が幾つか、マンションやら市営住宅っぽい場所が多いな」
「スーパーやコンビニもあるけど」
「睡眠をとると言う前提でいうなら……あー、事務室とかはあるか」
仮眠ぐらいなら取れるだろうな。まぁ、野宿よりも随分と休まる空間ではあると思う。
「電気や水道は……まぁ、生きてないよな。とりあえず手持ちの道具で何とかするとして」
「あ、ガソリンスタンドがあるよ」
「……魔法が無ければ飛びつきたい処だけど、魔法があるからスルーで」
詳しく聞いた訳じゃないけど、ガソリンや灯油って腐るって聞いたし。使用期限は明確には無いって話だけど、酸素に触れて居たり、湿度が高かったり日に当たる場所はやばいって……誰が言ってたんだっけ? とりあえず、そうなった場合個人で処理するのは危険とも言ってた気がする。
なので、多少魔力を使って安全に火を使えるならそちらの方が良い。危険物には近づかない方針で。
「燃料だから使えるかな? と思ったけど、確かに魔法が有るから別に必要無かったね」
「ま、トラップとしてなら使えるかもしれないけどね」
某ゾンビゲームみたいに、ポリタンクに燃料を入れて敵を燃やすみたいな感じで。まぁ、それをやった処でただの燃料だからな……モンスター相手には余り通用しないだろうけど。
「あ、そういえばシェルターって無かったね」
「だなぁ……こう、それなりに大きい場所に見えたから在ると思ったんだけど」
残っている建物やらを調べてみたけど、シェルターと思わしきものは何処にも無かった。もしかしたら、建物の地下にあるのかな? と思って色々と調査もしてみたんだけどね。
しかし、そうなると個々の住人だった人達は何処へ逃げたのだろうか。
もし、モンスターと戦闘をしたというか、蹂躙されたのならばもう少しそういった痕跡が残っているはずなんだけど、そういったモノは何一つとして見つからなかった。
「途中でも話したけど、何かの拍子に地面に埋まってしまったのか、もしくは周囲に見える森の中にのまれたのか……そもそも最初から無かったのか」
「今の情報量だと解らないよね」
とは言え、正直交渉しなくても良いという事を考えたらある意味楽ではある。住民の消息が不明だから不謹慎ではあるけどね。
ま、此処の住民が戻って来た時に少しでも安全だと言う事で、使用料の代わりに防壁の建築や道の整備をしておくことで勘弁して貰うとしよう。
「という事で、暗くなるまでにやれる事を一気に終わらせようか」
「壁の建築に寝る場所の確保と補強、夕飯の支度もあるよね」
「だな。折角寝れそうな場所があるのに、今日もテントと言うのは流石に嫌だしな」
どうせ寝るならフカフカなベッドの上が良い。という事で、探索はイオ達に後を任せて、俺と美咲さんは防壁の建築と寝床の確保及び夕飯の支度に分かれる。
勿論、大量に土魔法を使うと言う事で俺が防壁の建築へ。まぁ、土魔法での防壁造りはもう随分と慣れたものだしな。
ただ、其処まで広い範囲を防壁で覆う必要は無い。ある程度で良いんだよ……まぁ、今後拡張する可能性は有るけど。
「ま、最初から拡張の事を考えて広くしたところで扱いに困るけどな」
所詮、俺達からしてみたら道中にある拠点の一つに過ぎない。なので広くし過ぎて……例えばだけど、知らない相手が空白地帯に入り込んでいたなんて事が有っても問題だ。
必要な分を必要なだけ作る。これが今の世界における基本だ。という訳で、さくっと防壁造りを頑張ってきますかね。
――守口達――
都心に向かった守口達だが、其処で見た物は縄張り争いで揉めている二つのグループだった。
「おい! 此処は俺達の狩場だぞ」
「何言っているんだ? 我々が管理している土地だろう」
どちらも、この場所が自分達の管理区域だと主張していて、守口達からしてみれば実に頭の痛い話だ。
なにせ、これから交渉をしようと思っていた相手が、実は最低でも二つのグループがありしかも争い合っているというのだから。
となれば、当然此処に守口達が来ようものなら確実に反発される訳で、間違いなく交渉失敗という未来が守口達には見えているという訳だ。
さて、何故二つのグループがこの場所にあるかという事だが、それは都心と言う事も有りこの地域には複数のシェルターが存在した。
当然、数年の間シェルター内で生活した者同士の仲間意識は高い……まぁ、戦闘が出来る者同士ならばと言うモノ達も居るが。
それは今は良いとして、仲間意識が高くなる分だけ違う場所の人間に対して、その分冷ややかな反応になりがちだ。
そして、それは当然獲物争いでも起きる訳で。
「お前達は反対側にも狩場が在るだろう! この場所は必要ないじゃないか!」
「足りねーよ! あの狩場がどんなものか知っているのか? 虫だぞ虫!!」
因みに、村とそれに属した街がある意味特別だ。何せ食糧問題がほぼほぼ解決されているのだから。
だが、それ以外の場所ならばこういった光景は当たり前。
「守口さんどうしましょうか?」
「あの中に入って行くのか? 俺は嫌だぞ。もう少し様子を見た方が良いんじゃないか?」
どうやら守口は、この言い争いに巻き込まれるのを嫌い様子を見る方針で行く様だ。
とは言え、この光景が日常的な物であるなど守口達は知らない。彼等もまた、あの地の恩恵をしっかりと受けて居る者だからだ。
とは言え、シェルターに居る頃の事を思い出すことが出来れば、この状況に終わりが無い事ぐらいは予測できそうなのだが。どうやら随分と守口達も村の人達に染まってしまったらしい。
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という訳で、初めてゴーストタウンに出会った結弥達でした。
他の遠征組ならば、同じようなゴーストタウンに遭遇しているのではないでしょうか。
まぁ、やる事は拠点にする為の要塞化なんですけどね。




