四百九話
進んでは周囲のチェックを繰り返していくと、意外にも面白い発見がある。
「結弥君アレ見てアレ!」
「ん? っと、おー……空を飛ぶペンギン?」
「だよねぇ……ペンギンが空飛んでるよね」
あの可愛らしい手をパタパタとさせながら空を飛ぶペンギンの群れを発見。
とは言え見た目に騙されてはいけない……どれだけ可愛いと言っても、モンスターの群れだからな。
「ちょっかいは掛けるなよ? 今回の目的は別だし」
「解ってるけど……あれだけ可愛いとテイムしたいよね!」
「……さっきそれで痛い目をみたでしょうが」
そう、美咲さんは可愛い! と叫んだが為にそこに居た鼬系のモンスターに……ガスを吹き付けられて痛いというか、臭い思いをしているんだよな。
まぁ、言ってしまえばそのモンスターは、スカンクみたいな奴と言った処だろう。自らの身を守る為にガスを吹き付けて来るタイプ。……毒ガスじゃなくて良かったよって話だな。
「あ、あれは気が付かない内に接近してたし!」
「あー確かに。まさか俺達の警戒網の内側にするりと入って来るとはなぁ」
面白い特性を持ったモンスターも居たものだと思いつつ、気を引き締める必要があるなという話。
今回の鼬が敵対的でなく、ただ驚いてガスを吹き付けて来るだけだったから良かったような物の、これが普通に襲ってくるモンスターであればと思うと……ね。
「ただ、敵意が無かったから発見出来なかったのかもだけどな」
「魔力まで擬態というかか巧妙に隠せるみたいだったしねー……もしかしてお昼寝でもしてたのかな? だとしたら悪い事をしたなぁ」
『もしくは、敵では無いレベルであれば、探査出来たとしても無意識の内に弾いておるのかもな』
あー……確かに。全ての存在に気を配っていては休まるタイミングが無いからな。
「ま、それはそうとしてモンスター側のスキルだとすれば問題だから、気を付けるに越した事は無いだろ」
「だね。……それにしてもあのペンギン達って何を食べているんだろう?」
空をスイスイと泳ぐペンギン。しかし獲物を取っている訳では無いように見える……と言うか、空には魚なんて飛んで無いよな。
それよりも……。
「あんなに堂々と群れで飛んでいて大丈夫なのか? 空って割と危険地帯だと思うんだけど」
「風ほどの速度で飛べている訳でも無いみたいだしねぇ」
ワイバーンが飛んで来たり、怪鳥と言える様な巨大な鳥が飛んでいたり……まぁ、どちらも稀な話だろうけど、それ以外にも高速で飛ぶ鳥タイプのモンスターや、スズメバチみたいな虫タイプのモンスターだって居る。
ゆっくりパタパタと飛んでいるペンギンでは、素早い奴等の餌食でしかないのでは? と思うんだけど。
『大丈夫だろうな。アレでいて魔法が得意なタイプのモンスターだぞ』
「魔法が得意なんだ……意外では無いのかな?」
「まぁ、アレだけゆったりとしていると……いや、手はものすごいバタバタしてるけどさ。あんなスピードだと何かしら対抗策が無いと生き延びてはいないか」
それに、ペンギンであるならば、突進するモーションなら相当なスピードが出るんじゃないか? あの氷山から海へとダイブするのは中々の速さだったハズだし。……てか、泳ぎ自体速かったはずなんだけど。
「空を水中の様には泳げないって事かな。いや、空を泳ぐって時点で可笑しい話だけど」
「そうだよねぇ……」
ま、こんな感じで面白かったり可愛かったりする新しい発見が幾つかあったりする。
うーん……やはりと言うか、こう場所が変われば生息するモンスターも随分と変わって来るな。
「それにしても、此処ってどこら辺だ? 全く元の面影が無いから解りにくいんだけど」
「確かにそうなんだけど……そもそも、こっち側ってあまり来た事が無いかなぁ」
土地勘が全くないのは間違いない。ただ、それでも車に乗って通った事が有る場所等は有るはずなんだよな。
都心付近であれば、色々な建物が森に侵食されていたりと微妙な形で場所を特定出来た。だけど、ここら辺ってなにも無いんだよなぁ。一面樹木といった感じだ。
「それにしても、シェルターは見つからないね」
「あー……もしかしたら道? から外れているのかもしれないし、木々に飲み込まれている可能性だってあるからなぁ」
下手をすれば、地面の状況が変化して埋まっているなんてパターンも有るかもしれない。まぁ、あまりそのパターンは想像なんてしたくないけどな。
ただ、もしシェルターの存在が近くに在り、外に出られる状況であれば人と遭遇して居ても可笑しくないハズなんだけど、それが無いとなれば……。
「この周囲にはシェルターが無いのか、外に出れない状況って事だろうな」
地面に埋まっている以外にも、強いモンスターがシェルター付近で縄張りを張っているパターンだってある。うん、そうなると今頃中に居る人達は絶望じゃないだろうか。
とは言え、見える範囲でその痕跡は無いし、今回の遠征からして態々探す必要性も無い……無いんだけど。
「どうしようか……一応連絡を入れておく?」
「そうだね。此処までシェルターが無いってのも可笑しい話だしな。一度本部に連絡をと言うのが良いだろうね」
見捨てるなんて判断をするのは楽だけどさ。そう簡単に見捨てると言うのも問題が有る話だけど……まぁ、言ってしまえば下心がある。
もしシェルターが有るならば恩を押し売りして、此方の味方にし、遠征用の拠点にしてしまおうっていう奴だ。全て善意で救助なんて出来る様な状況では無いからな。
という訳で、さっそく新しい通信方法を使ってみる。
「あーあー……聞こえますか? テステステス」
村に建てられた塔に搭載された通信機能だけど、これが何処までの範囲で通信できるかのチェック。
とは言え、此処が何処か解らないんだけどね! まぁ、通信を辿ればある程度位置を把握できるので問題は無い……はず。
「と、どうやらここら辺はもう範囲外っぽいね」
「あちゃー……となると、アレを使うの?」
まぁ、新しい施設と言うか機能なのでまだまだ改良点が有るのは間違いない。
なので、研究者達もそのことを踏まえてしっかりと準備をしている。
「えっと、風にこの中継器を持って貰って、空を飛んで少し戻って貰えば良いんだっけ」
「説明を受けただけだとそんな感じだったかな」
風と言う空を飛べる仲魔の強み。空に中継器が在れば、範囲を延長出来るんじゃね? という単純な考えだけどな。
まぁ、単純ではあるが効果は絶大のようだ。
「あーあー聞こえますか?」
『はいもしもし、此方協会本部です』
「あ、通じた! 白河です!」
少し声が遠い感じがするけど、風による中継器を飛ばすというのは成功のようだ。うん、良かった。
と、折角通信が繋がったので、現状の報告やらシェルターに関しての話を上に報告して欲しいと言っておく、と同時に集めたデータの送信も試みてみる。
まぁ、魔導AIに蓄積されたマッピングデータやらモンスターのデータだ。これ等を送って置けば後々楽だからな。……とは言え、機能テストという面が大きいけどな。
「色々データを送ってみますけど……欠けが有るかもしれないので」
『解ってますよ。戻ってきたらデータの照らし合わせですね』
「はい。今回の送信はテストですから宜しくお願いしますね」
そう言ってから通話を切り、アラクネ先生にデータの送信を頼む。
『送信は……コレだな。うむ、中々に便利な機能だ』
「だね。リアルタイムでやり取りが出来るとなれば、かなり作戦の幅が広がるから……とは言え、その度に風に飛んで貰わないといけないけど」
まぁ、今はという話だろうけどな。
ただ、以前の事を考えれば随分と楽になったのは間違いない。何せ、以前は風に村や街まで飛んで貰っていた訳だし。
ただ、中継器を使うとは言えこうして通信が上手く行ったんだ。これは随分と幸先のいい話だろう。
「それじゃ、後は上の人達がする判断に任せるとして、俺達は先に進むとしますか」
「了解!」
さてさて、この先は何が有るのやら……面倒なモンスターが出るとかでなければ良いんだけどね。
ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!
空飛ぶ鮫とか……脅威的な存在がいるとか。ペンギンなら可愛いですよねぇ(*'▽')
ただ、モンスターですので刺があります、ご注意ください。(因みにテイムは今の処しない方向です)




