三百話
人手不足の問題解決になる訳では無いが、少しでも戦力を強化する為に五両ある戦車の内二両を使い、魔石ダンジョンと海辺の街に居る戦闘が出来るメンバーを入れ替える。
これにより、海辺の街での一時的な戦力を魔石ダンジョンに潜って居るメンバーで向上させながら、この街に居る戦闘班の強化を魔石ダンジョンで行い、素材確保の人手を維持も行う。
実質的な人数は変わらないんだけどね。それでも、一人一人の質が向上するからやれる事は増える……はず。
そんな訳で、此処に住む人達には見知った人探索者が減る為に不安に思う事も有るだろうけど、多少は我慢してもらうしかない。
まぁ、気が楽な点と言えば、ギャーギャーと乗っ取りをされる! なんて騒ぐ人が居ないって事だろうか。これは、これまでの協力が効果を発揮してると言う事だろう。
「しかし、守口さん。対人戦闘の訓練をしてますけど、これ効果あります?」
「……やらないよりましだろう。精神的な面を即座に強化するのは無理だが、少しでも動ける状況を作るのは必要だ。それに、この訓練は別に探索者の為だけじゃないぞ?」
「と言うと?」
「街の人に見せている。特に被害を受けた者達相手にだな。戦闘訓練をしている所を見せて、彼らが何かあれば守ってくれるという情報を視覚的に与えて、何かあった時に慌てず避難できるようにする為だ」
なるほど。安心しすぎて平和ボケになったり慢心したりするのはよくないが、緊張しすぎたり恐慌状態に陥ってまともに行動出来ないというのも問題だ。
そして、此処には襲撃を受けた者が居る。ともなれば、安心できる要素を見せたところで、慢心するほど警戒を解く事は無い。
「強さを見せるというのは何も威嚇だけではないという事だな。強化も図れて一石三鳥と言ったところか……まぁ、威嚇する相手には見せてないが」
「なるほど。それにしても、やっぱりと言うべきか組織だった戦闘になると探索者側にボロが出ますね」
「ま、一パーティーでの戦闘なら十分なんだがな」
現状は、探索者達三パーティーと自衛官や警察官混合の三パーティーで模擬戦中。
別に、これは固定で組んでいる訳じゃない。随時入れ替えながらだ。それこそ、探索者・自衛官・警察官の混合パーティー同士での模擬戦なんてのもやった。
ただ、守口さんと話した通りで、探索者は一パーティーずつだと十分にやりあえる。……が、複合パーティーとなると、連携が上手く取れていない。
「探索者は両サイドか完全に遊軍扱いがベストか……そうすれば、彼らのスペックを最大に活かせるだろう」
「住民の避難誘導でも良いのでは? 護衛は必要でしょうし」
そんな会話をしているけど、俺の役目……と言うか、俺達の役目はもう既に決まっている。
それは、部隊の目になる事。何せ、俺達には風とイオが居て、彼らの通訳が出来る双葉が居る。
となれば、やることは必然的に、上空からの情報を収集する風、高速で移動しながら臭いを追って情報を得てくイオ。そんな二体と作戦本部の繋ぎ双葉……を護衛するのが俺と美咲さんの仕事。
……なんというか、イオ達がメインで俺や美咲さんって完全におまけなんだよな。
「あ、探索者チームが包囲されたか。模擬戦終了かな」
「次は探索者を活かせるだろう方法でやってみるか……そうだな」
組み合わせを入れ替えては何度も試す。
そんな模擬戦を繰り返していくうちに、改良すべき点やら活かせるだろう立ち回りを発見していく守口さんと上野さん。
「そういえば、上野さんってどれほど強いんです?」
「あー……そういえば、此処でずっと指揮や改良点探しをしてたからな。こちらに来た探索者は俺の実力を知らないか」
「自衛官チームなら知ってるけどな。俺と上野は同じレベルで動けていたのを見ていたし」
「それは崩壊前だろう? 今はお前よりも弱いと思うぞ」
なるほど。守口さんと同レベルだったという事は、自衛隊が潜って居たダンジョンで二十層以上を攻略していたレベルは最低限あるという事か。
「個人の実力となればブランクがあるからな。正直ダンジョンにでも潜って鍛えなおしたい処ではある。が、今はそうも言ってられないからな」
「組織運営が優先だな。まぁ、出来るだけフォローはするが……昔みたいに前に出るなよ?」
「あはは。そこらへんは理解してるさ。個人やパーティーの戦闘力だけ見たら、お前が連れてきたメンバーを見るとなぁ……少し落ち込むぞ」
「ははは! 優秀だろう? まぁ、ダンジョンを踏破出来るレベルの奴らばかりだからな!」
守口さんが上野さんに自慢している。そして、そんな自慢をされた上野さんはと言うと……実にうらやましそうな顔をしてみている。
とは言え、現状をしっかりと理解しているのだろう。前衛と言うか戦闘は完全に任せるつもりの様だ。
「俺は住民側や後方支援を担当するのが良いだろう……が、最悪戦闘は十分出来るものと思ってくれ」
「精神面を考えると上野さんの方が動ける気がしますけど」
「そこはまぁ、誰がどうなるかなんて解らないからな。バックアップは重要だろう?」
まぁ、上野さんの言う通りなんだよな。前を守口さんが後ろを上野さんが担当する事で、かなり層が厚い守りになる。
「白河は自分が出来る事が無いと思っているな。だが、そうでもないぞ。お前も知ってるだろう? 情報の重要性は」
「まぁ、知ってますけど……それらを集めるのってイオと風ですからねぇ」
「ははは。そんな彼らを仲魔にしたのは白河と藤野だろう」
まぁ、イオは自分から俺に着いて来たし、風は卵から美咲さんが孵したんだよな。双葉は何といえばいいんだろう? 芽が出たで良いのだろうか。
「仲魔……確かに。なんか家族的な感じですけどね。後は……皆のマスコット?」
「確かに! そういえば、イオや双葉の人形に続いて、風のおすまし人形なんてのも出たそうだぞ?」
「……なんというか、商魂たくましいというか……まぁ、金銭は発生してませんけど」
「そのうち飛ぶように売れるんじゃないか? 狼の郵便屋さん人形も人気みたいだしな」
「ちょっと、守口! その人形ってなんだ? 子供受けしているのか?」
「おう。こっちの村に街二つとダンジョン前の拠点で大人気だ」
「……癒しと言う訳か。ふむ、子供たちの事を考えたらそういったものも必要か」
上野さんが何やら考え込んでいる。しかし、そんな上野さんをみて守口さんが……悪い笑顔をしている!
「おう、必要だぞ? そらもう、かなり重要だ。子供の笑顔が防衛を行う者のやる気を向上させるしな! それに、顔が怖い探索者が「頑張ってお兄さん!」とか言われた後には、そいつ……めっちゃ張り切って普段の倍近くの素材を回収してきたぞ」
「……そいつ大丈夫か?」
「勿論だ。大量の素材と人形を交換して、全ての子供にばらまいてたな」
そんな人もいたのか……。強面ってだけで避けられてきたんだろうか? それで、守ってくれる人だと子供が認識したのか、人気が出たという事か。
「あ、もしかしてそいつって……」
「おう。俺のパーティーにいた盾役だ。今は俺が運営に力を入れているからな……フリーで頑張ってやがる」
「あー、あいつなら昔から子供に甘かったからなぁ」
「高校生たちが大変になったあの時も、激怒してたからな。中途半端な情報を出しやがって! と」
「あいつからしたら、高校生も大学生も子供だからなぁ」
あー……うん。アレは酷かったからな。俺の場合は情報に切れる前に何とかしようって動くのが先だったけど。
とは言え、随分と子供と言う判定に幅が広いな。高校生どころか大学生も子供か。
「ま、そんな訳で、子供のケアも忘れるなよ? 後、模擬戦はまだまだ続けるからな」
「それじゃ……模擬戦俺も参加してくるかな。守口、悪い点の洗い出しは任せた」
「おう。それじゃ、しっかりと見ておく」
タイミングよく模擬戦が終わったので、次の模擬戦に参加すると移動した上野さん。
さて、一体どういう戦い方を見せてくれるんだろうか。
兎に角……しっかりと現状の戦力を分析していかないとな。何をするにしても、全員の得手不得手を知らないと対策を立てたとしても出来ませんなんて事になりかねない。
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