二百九十八話
海辺の街にて情報収集をする。と言っても、被害者に色々と話しを聞くという行為自体は、彼らを助けた人達がやっているので、その情報を貰うという形になる。
なので、その聞き取り行為は必要無いので、俺達がやっているのは獣を探す時の様に、なんらかの痕跡が無いかと、街周辺の場所を探る作業。
足跡が無いか、キャンプの後は無いか、匂いに違和感が無いかと調査をしているけど……結果と言えば、ご飯の種が増えるぐらいだ。
「それにしても、聞いた話だと不思議な人達だよね……真っ白で魔女が着るような服。それと顔を隠してるんだっけ?」
「何かの儀式でもやろうとしているんじゃないか? って思っちゃうよな」
「案外そうだったりしてね」
サバトでもやるのだろうか? と、話を聞いた時に感じた。ただ、彼らはそんな服装であっても、その動きは相当なモノだったそうで。
「強いって言ってたね」
「うー? ますたーやみさちゃんよりもつよいの?」
「それは解らないな。誰がどれぐらい強いかなんて会ってみないと解らないし」
とはいえ、出来れば出会いたくないタイプの人達だ。願わくば、このまま違う場所でモンスターにでもやられてくれと思わなくもない。
ただ、その望みは薄いだろうな。崩壊前の政令指定都市に向かおうと思うのであれば、間違いなく第二の街━村から見て開放二番目故に第二の街……街の名前はまだ悩んでいるそうだ━を通らなくてはいけない。
以前なら、他にもルートが有ったんだけどな。
魔力による森林化の速度が異常な為に、道と言う道が破壊されたのは周知の事実で、此処に来るまで……ぶっちゃけ、第二の街から一本道だったんだよ。
そして、森の中を突っ切ろうと思ったとしても、普通の実力では無理だ。
森の奥に行けば行くほど、モンスターの質が上がって行く。外周部分は猿やらゴブリンなんだけど、中間部分になるとオーク等がいて、深部にもなると……それこそ、スズメバチやらゴリラやらが居る。
そして、最深部は……まぁ、見に行ってないから解らないといった感じ。まぁ、深部自体もちらっと見ただけだしな。
因みにこのモンスター調査自体は、襲撃者の痕跡探しをした時に同時進行でやった作業。
なので、最深部をちらっと見ただけで終えた理由は、さすがにこの深部を移動できるはずが無いだろうと判断したから。……まぁ、情報通りの力量ならばだが。
ただ、深部に潜れるだけの実力を有していても、それはそれで戦闘音が響き渡るはずで、その音が聞こえない訳が無いし、風の上空からの警戒に引っかかる。なので、力量が有ろうが無かろうが奥まで詳しく調査は不要という訳だ。
「それにしても、誰がどれだけのメンバーと物資を持って支援に来るだろうな? 守口さんは間違いなく来ると思うけど」
「守口さんは遠征部門のリーダーだからね。もしかしたら、アレで来たりするかな」
「あー……アレで来たらインパクトでかいよな。演出する為にも可能性は高いだろうな」
アレとは、村で生産された魔力仕様の自動車だ。……ぶっちゃけアレを自動車と言っていいかなぞだけど。何せ、キャタピラと多脚のスイッチ型だからな。
ただ、それを使えば人や物資の輸送がかなり楽になる。と言うか数を増やせる。
「手紙にも書いたみたいだけど、早急に壁の建築をしないと駄目だよね」
「まぁ、其れらの作業をするのが戦闘班では無いからな……アレを使った方が護衛も楽だし」
正直な話。俺達や影山さん達で土魔法を使えるメンバーを集い、魔法で壁を作る方が早いのは間違いない。
ただ、それでやっちゃうと限られたメンバーにしか現状出来ないし、防衛や調査をするメンバーの手を使うので、問題が起きかねない。例えば、魔力が減っている状態で戦闘とか。
なので、俺達……と言うよりも、村や街に協会の方針として、他の人で出来る者は他の人がやる。
壁の建築自体は、研究所で作られた優秀な素材や道具があるから、誰でもできる作業とも言えるしな。……研究員優秀過ぎん? と、思う案件なんだけど、まぁ……彼らの日常を見ていると、素直に凄いと言いたくなかったりするのも事実あったり。
「とは言え、支援が来るまで何もしないって訳にもいかないからな」
簡易的な物だとしても無いよりはマシだろうと、村でシェルターから出た当初の様に、塹壕と木の壁を造っていたりする。
これも、木を伐って来るのは俺や影山さんだけど、それを使って壁を造るのは現地の人達に任せている。
ま、協力プレイと言うやつだ。これも良い印象を持ってもらう為にやっている事。当然、森の中で手に入れた肉等も提供している。
おかげで、随分と住民の態度が柔らかくなって来た。これなら、守口さん達が来た時に行うだろう話し合いはスムーズに進むと思う。
ただ、被害者の方々は……まだまだと言った感じだけど。
「そういえば、襲撃者は強かったんだよね?」
「そう聞いたけど、何か引っかかる事でもあった?」
「うん。強かったって事は、元が探索者の人達だったのか、自衛隊の人達だったのか、警察の人達だったって可能性が高いよね」
「あー……うん、言いたい事は解った」
美咲さんの発言。それは、下手をすれば相手にするのは守口さん達の同僚……顔も知りの可能性があるのでは? と言う事だ。
さて、ここで問題。
俺達は随分と力を手に入れた。魔法にしても装備品にしてもだ。それは、探索者の皆が頑張った結果であり、研究員達の趣味への暴走が有ったからだ。
だが、そういった歩みをしたのは、果たして自分達だけだろうか? もし、真っ白のコートが、その下に着用している装備を隠すためのモノだったら? 魔法を覚える為の魔本にしても、ダンジョンに潜って大量にGETしていたらどうだろう。
この条件下で、もし彼らの正体が探索者だった人達ならまだやりようはある。
だけど、自衛官やら警察官だった人達なら……守口さん達にしか対処出来ないだろうな。
「集団対集団かつ、対人となるとなぁ……俺達は足手まといになりかねないからな」
おそらく、一対一や一パーティー対一パーティーであれば十分戦闘になる。それは、守口さん達にも言われてる事。
だけど、俺達の本質は対モンスターなんだよな。しかも、正面衝突で無く影からこそこそ。
多対多で班でなく小隊以上の戦闘だと、俺や美咲さんにできる事と言えば偵察ぐらい。もしくは超遠距離攻撃だな。……正直ワイバーン狩りも割と連携が大変だったし。
それに……人型モンスターとの戦闘は慣れたとはいえ、モンスターなんだよな。人間相手に戦闘出来る探索者はどれだけ居るんだろうな。
「問題点しかないなぁ。とりあえず、俺達にできるのは調査ぐらいなんだよな」
そんな訳で、森に入っては痕跡を探しつつモンスターを狩り、木を伐って帰還する。
そんな日々を過ごしていると……遂にと言うべきか、街の人の度肝を抜くだろう支援部隊が現れた。
キャタキャタの音を鳴らしながらやって来る自動車……いや、アレもはや小型の移動要塞だな。
そう突っ込みを入れたくなる程、自動車は改良されていた。うん、街の人達の前に俺や美咲さんが驚いたわ。
「うわぁ……なんだか頑丈というか強靭というか、凄くパワーアップしてるね」
「おいおい……ガトリング砲が完成したのか? やけにでかいけど、あそこに装着されているのってそうだよな」
例に挙げるなら……あれだな! CIWSのファランクスに近いだろうか。
もしかして、対人戦になるかもしれないからと用意して来たのかな。まぁ、視覚的な衝撃はデカいので、それだけでも十分に仕事はしている。
そして、そんな自動車……いや、もはや戦車だな。その戦車の扉が開き、中から守口さん率いる救援メンバーが降りて来た。
「おう! 白河に影山久しぶりだな! 手紙を貰ってから会議をして駆け付けたもんだから、少し時間が掛かったが……大丈夫そうだな」
「お久しぶりです。まぁ、大丈夫かどうかと言えば……その機体のお蔭で、街の人達の意識は全く大丈夫じゃないんですけどね」
チラリと後ろを確認すると、うん……目を見開いたまま気絶している人。口をパクパクと魚の様にしている人。そして、触れたい乗りたいと騒ぎだす人と、反応は様々だがまともな状態とは言えない。
「あちゃー……インパクト重視にしたんだが、ちょっと強烈すぎたか?」
「でしたね。てか、あのガトリング砲は開発成功したんですか?」
「いや、アレは見せかけだな。とは言え撃つ事は出来るぞ? ただ、秒間二~三発だ」
うへぁ。あれだけ巨大にして漸くその連射速度か。とは言え、弾丸式のライフルなどを考えれば、十分に連射出来る方だ。……ボトルアクション式だからなぁライフルって。
とは言え、かなり心強い支援ともいえる。うん、ガトリングの事じゃないぞ? 支援部隊で来た人達だ。
守口さんは、俺達と再会の挨拶をした後、直ぐに街のリーダー格の人達と話し合いに入った。
ただ、その時に一つだけ街の人達に、今から直ぐに壁の建築をする。と言った後、連れて来た人達に壁の建築へと向かわせた。
その際、街の人達にも手伝って貰うみたいだけど、うちの村特性のコンクリートや道具を見て驚愕は……まぁ、しないか。戦車見た後だしな。
ブクマ・評価・感想・誤字報告ありがとうございます!!




