二百九十六話
準備回です。
装備開発と言うのはふっとしたアイデアで生まれる物もあれば、様々な技術の組み合わせで誕生する物もある。
そして、今俺が持っている武器……と言うか道具は、ある意味ダンジョン探索の原点と言える装備。
そう、自衛隊仕様のスコップだ。……自衛隊仕様のって言うと長いから軍用スコップと言っていこう。
ただし、この軍用スコップ従来のそれとは全く違う仕様であり、ある意味チート武器と化した物。
なにせ……ちょっと魔力を流せばあら不思議、軍用スコップの刃の部分にシールドが覆う状態で展開される様になっている。
これにより、突きから打撃まで更に強化された事になる。
まぁ、何故軍用スコップなのか? と聞かれたら、ロマンと実用性の両立だろうな。軍用スコップってクッソ便利だからな。それこそ、突きも斬りも打撃も出来るっと、これは使い始めた当初にも思った事だけど。
調理道具にもなるなんて事も考えてた記憶がある。まぁ、調理自体は現状だとバックパックに詰め込んでいるのでやる必要が無いが。
「しかしあれだな。何もない場所にマナシールドを展開するより、随分と省エネで楽な感じだ」
「別に軍用スコップじゃなくてもよかったと思うけど……今だと普通に武器とか作ってる訳だし」
「まぁ、其処は思い出補正やらロマンやらと色々あるから。それに、軍用スコップ以外で剣鉈も同じ様な仕様で作ったみたいだけど、当初はこの二つを使い分けてたからな」
これらをメインで使っていた時の戦い方を思い出しながら、美咲さんと会話をしていく。
ただ、マナブレードが有るなら要らないのでは? と思う人も出てくるが、実はそうでもない。
何せ、マナブレードは大食いだ。常時展開していたらバッテリーなど直ぐに減ってしまうし、必殺技である魔力爆破を使えば、バッテリーは空になってしまう。
だが、今回試作として渡された軍用スコップと剣鉈は、バッテリーを使わない。全部自分の魔力で展開する物。
マナブレードほど自由度は無い。何せ、刃の部分を覆う程度だからな。だが、それが逆にマナブレードとの使い分けとなる訳で。
「魔力消費量も少量だからな。普段使いはこっちの軍用スコップや剣鉈にして、大物狩りはマナブレードといった感じにすると良さそうだ」
「ハンドガンやライフルは?」
「残弾数ってのが有るだろ。俺達が次に任される仕事を考えたら、継続戦闘寄りの思考をしないとな」
何せ、補給が大変と言える遠征に出る訳だから。
なので、マナバッテリーの消耗や銃弾の使用は極力気を付けなくてはいけない。
武器もメンテが大変なのは問題だしな。自前の魔力も消耗を抑えながらだが、バッテリーよりも自前をメインに戦闘を構築するべきと言う……まぁ、ある意味縛りプレイを要求されているようなモノだ。
「だからさ、この少量の魔力でシールドを展開できる武器は便利なんだよ。しかも、展開しておけば、メンテ要らずだぞ? 刃毀れやら凹みやらを気にしなくていいからな」
刀身を覆う展開をするという事は、当然だがシールドが先にモンスターにヒットする事になる。
そして、そのシールドで打撃やら斬撃を入れるのだから、刀身にダメージが入る事が無い訳で。
「確かに、長距離遠征を考えたら便利な武器って事かぁ……それなら、槍とかハンマーでも良かったんじゃない?」
「そこは、万能ツールな軍用スコップなら荷物を減らせるからな。その分、他の荷物を持てる利点もあるし」
そして、剣鉈と軍用スコップ以外にも渡されている武器がある。それは美咲さん用の弓だ。
「そっちの弓はどうなのさ?」
「ん? いい感じだよ! こう、魔法矢を射る事が出来るようになったよ」
「おー……どんな方法で解決したんだ?」
「こう、弓に魔力を流すと、弦が魔力を含む? 覆う? 感じになるみたい」
ふむ、弦の部分にシールドでも展開しているのかもしれないな。
とにかくこれで、こちらの手数は随分と充実した事になる訳だ。……銃弾も矢も弾数制限があるからなぁ。
正直、塩探しの遠征と言う話を聞いて、ここが一番気になってた事だし。
「そういえば、簡易的なマナバッテリーチャージャーも受け取ったけど、アレ使えるんかね?」
「カタログスペックだけで言うなら、一日に一個のバッテリーをフルチャージ出来るって書いてあるけど」
「……保険程度だな」
どう考えても緊急用には使えない。
以前の説明を受けた時、マナバッテリーは協会にあるスタンドで回復させなければならない。
この法則は今も変わっておらず、自前の魔力をバッテリーに送り込めば確かに回復はするのだが……バッテリーにダメージが入り、後々問題が起きる。チャージ出来なくなったりとかな。
その解決の為にと開発されたのが、この道具なのだが……まぁ、美咲さんの説明を聞いて解るようにチャージにかかる時間が長すぎる。
「マナシールドにマナブレードと魔法銃にバッテリーを使うからな。これ等で戦闘を組み立てたらバッテリーの消費量半端ないんだが」
「えっと……チャージャーは全部で……うん、五個だから全く足らないね」
そう、まったく足らない。何せマナシールドを持っているのは俺・美咲さん・イオ・風の四人だ。双葉は……まぁ、俺かイオにくっついてるから必要無い。
と、この時点ですでに四つのバッテリーを使う事になる。一日一個チャージするアイテムでは全く足らないのは当然だろう。
「ま、そういう訳で遠征時は旧スタイルの戦闘方法になるだろうな」
「……鉄串とかマキビシも足りるかな?」
「十分に用意はしておくけど、そっちの使用も考えて使わないとまずいな。シールド展開する武器じゃないし」
「あー、後使い捨て系のアイテムも……持っていく物資足りる?」
「足りるかどうかよりも、持っていけないのが正解だろうな……水は魔法で何とかするとして、食料やらも必要だからな」
魔法鞄によるバックパックなどが有るとはいえ、それでも持っていける数は限られている。無限鞄では無いからな。
そして、キャンプ道具やら食料品に布と医療品なども持っていく訳で、割とアイテム数の制限が厳しい。当然だけど、装備品の予備も持って行かなきゃいけないしな。
「準備でここまで頭を悩ませるとは……バックパックのアップグレードはまだかな! できれば無限に収納できるとか!」
「無いものねだりをするよりも、必要なものを振り分けなさいな」
「……はーい」
そんな訳で、着々と進める遠征準備。
それにしても、本当に研究所の人達には頭が上がらないな。もしこの新兵器が無ければ……バックパックの中には予備の武器を沢山入れる必要があった訳だから。
━━研究所━━
従来の武器を組み合わせたことで、新しく使えるアイテムを白河達に渡した研究員だが、彼らは既に次のステップへと手を進めていた。
「この兵器が実装されれば……改革になるぞ!」
「いやいや、それ、バッテリーの消耗激しいでしょ! 兵器を起動させたら一分でバッテリー切れとか! それも、従来の武器に使っていた〝従来のバッテリー〟では無く、新型の〝大容量バッテリー〟でですよ!」
「だ、だがなぁ。こう、ロマンとしてみても実用性を見ても素晴らしい思うのだが」
「確かに! これはロマンです! 我々の世代なら自分で使いたくなる程の代物です! ですが、バッテリーの消耗を考えると却下ですね」
研究員達の会議室では、次なる新兵器について激しく意見をぶつけ合っている。
だが、現状は否定派の意見が強い。何せ会議室の中では否定する彼の意見に頷くメンバーが多いからだ。
ただ、それも仕方のない話で……例えるならば、彼の言う〝従来のバッテリー〟だとマナブレードの魔法爆発を使うと一発で空になるが、〝新型のバッテリー〟ならば十発は撃てる。
ただし……そのサイズは従来のバッテリーの五倍ほど。因みに、従来のバッテリーのサイズは単一電池を二個縦に並べたぐらい。
と、そんな十倍の容量があるバッテリーを、たった一分で消し去る新兵器だ。強力で有る事に間違いはない。
「確かに、これは素晴らしいものですよ! でも、もう少し稼働時間を延ばせませんか?」
「必要な機能を削れば何とかなるかもしれんが……それだと今度は欠陥品になりかねんぞ」
「それは万能性を望みすぎでは? もう少し機能制限をするか、それとも機能を分けるとか出来ませんかね?」
ぐぬぬと悩む開発者。だが、彼ならばきっと何とかしてくれるだろう。そう考え、反対している人も次々と提案をしていく。
それもそのはず。この新兵器はロマンでありながら、実用性だけで言うならとんでもない代物だからだ。
それは、探索者の様々な能力を様々な面で支援する物で……その試作品と言える黒く光る鎧の様な物が、研究者の後ろでそのボディをキラリと光らせていた。
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と、準備をしている回ですが……ぶっちゃけ、遠征に塩ダンジョンは試練ダンジョン相手だったりするので……ざっくりとダイジェスト的に終わらせる予定です。
そして、最後なにやらフラグが立ってますが……さてなんでしょうね。




